神戸在住で、神戸ゆかりの本作を読みたかったのだが、芥川賞作品にも関わらず絶版で、図書館でも長い予約待ちになりそうだったので、中古の本書を購入した。
神戸には旧・移民収容所(旧・神戸移住センター)の建物が残っていて、一か所は移民による落書き跡まで保存されているので、本作第一部の舞台は現場を比較しながら味わうことができた。著者の石川が秋田出身で、秋田出身の人たちを特に手厚く描くのだが、その方言のニュアンスは残念ながら私には馴染みがなくて分からなかった。また、描かれる移民たちの多くほどの貧乏はしていないから、本当の実感は分からない。しかし、体験した震災の当時なども想起しながら、思い切り空想の翼を広げさせてもらった。
カバー以外に挿絵はなく、巻末の解説もあっさりしたもので、文章をプレーンに味わうに適する。
新漢字・現代仮名組。40年以上前の刷で、届いたときに巻末に近い部分に若干ページの癒着があり、剥がすときに1ページだけ少し傷んでしまったが、それも一つの味と思う。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
蒼氓 (新潮文庫 い 2-5) 文庫 – 1951/12/1
石川 達三
(著)
- 本の長さ254ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1951/12/1
- ISBN-104101015058
- ISBN-13978-4101015057
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1951/12/1)
- 発売日 : 1951/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 254ページ
- ISBN-10 : 4101015058
- ISBN-13 : 978-4101015057
- Amazon 売れ筋ランキング: - 82,300位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2014年4月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大作であった。
舞台は1930年代の日本。ブラジルへ移住する日本人移住者の模様が描かれた作品である。
本作を読むまで学んで来たこの当時の日本の生活習慣、これから戦禍に包まれ世界から孤立して行く社会情勢が表の歴史だとすれば、本作に描かれた物語は裏の歴史であろうか。
物語の主人公として描かれている移民の大半が東北の農民達で、農家の作物が冷害によって育たなくなりその結果による貧困を打開するために当時日本が人口増加対策として掲げていたブラジル移住計画に参加した事がきっかけで物語は始まって行く。
まずこの物語から感じられたのはブラジルへ行けば新天地があり、大金を掴めて成功できるの言うプロバカンダによりほぼ騙された形で土地も家をも捨ててブラジルへ移住して行った無知さと、移住したブラジルで、親類、知人、言葉の通じない異国で働き生活し、家族を増やし一生を過ごして行った動物的バイタリティの凄さ。この二つではないだろうか。
現代の様な情報が溢れ過ぎてる中では「ブラジルへ行けば成功できる」と言う謳い文句だけを鵜呑みにし土地も家も全てを捨てて移民となって移り住む感覚が理解出来ない所にその当時の日本の息が詰まる様な閉塞的な生き方と現代日本とのギャップを感じずにはいられない。言わば日本にいても、生まれ育った土地で農家をしていても生活が出来ない限界点にまで達した人物ばかりであり、現代日本でも貧しい人と言うのは存在するが、この当時の貧しさと今の日本の貧しさとは意味合いが全く違う。当時は明日食べる物も保証されない生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた農民達の貧しさの打開策がブラジルへ移住することしか手段がなかった。
言わば職業選択の自由もなければ、生活の補填としてアルバイトが出来る様な雇用先もなかった、現代日本では考えられない位の封建的な社会であった。
かと言って他に何か選択肢がなかったかと言えば疑問ではあるが、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた農民達の心情とブラジル移住計画が謳う大義名分が合致した所に農民達の生きるバイタリティ、極端な生き方が表れている。
現代日本では少子高齢化が進み、数十年先の近未来に於ける日本の人口分布は都市部にしか人が住まわなくなり、その空いた農村部には人が住まわなくなるこの現状を移民として飛び立った当時の日本人がもし知ったとしたら、そしてもう一つの人口減少対策として、日本へ海外から移民として定住する外国人が増えている現代の移民国家日本をこの作品に描かれたブラジル移住者達が見たらどう思うだろうか。
舞台は1930年代の日本。ブラジルへ移住する日本人移住者の模様が描かれた作品である。
本作を読むまで学んで来たこの当時の日本の生活習慣、これから戦禍に包まれ世界から孤立して行く社会情勢が表の歴史だとすれば、本作に描かれた物語は裏の歴史であろうか。
物語の主人公として描かれている移民の大半が東北の農民達で、農家の作物が冷害によって育たなくなりその結果による貧困を打開するために当時日本が人口増加対策として掲げていたブラジル移住計画に参加した事がきっかけで物語は始まって行く。
まずこの物語から感じられたのはブラジルへ行けば新天地があり、大金を掴めて成功できるの言うプロバカンダによりほぼ騙された形で土地も家をも捨ててブラジルへ移住して行った無知さと、移住したブラジルで、親類、知人、言葉の通じない異国で働き生活し、家族を増やし一生を過ごして行った動物的バイタリティの凄さ。この二つではないだろうか。
現代の様な情報が溢れ過ぎてる中では「ブラジルへ行けば成功できる」と言う謳い文句だけを鵜呑みにし土地も家も全てを捨てて移民となって移り住む感覚が理解出来ない所にその当時の日本の息が詰まる様な閉塞的な生き方と現代日本とのギャップを感じずにはいられない。言わば日本にいても、生まれ育った土地で農家をしていても生活が出来ない限界点にまで達した人物ばかりであり、現代日本でも貧しい人と言うのは存在するが、この当時の貧しさと今の日本の貧しさとは意味合いが全く違う。当時は明日食べる物も保証されない生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた農民達の貧しさの打開策がブラジルへ移住することしか手段がなかった。
言わば職業選択の自由もなければ、生活の補填としてアルバイトが出来る様な雇用先もなかった、現代日本では考えられない位の封建的な社会であった。
かと言って他に何か選択肢がなかったかと言えば疑問ではあるが、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた農民達の心情とブラジル移住計画が謳う大義名分が合致した所に農民達の生きるバイタリティ、極端な生き方が表れている。
現代日本では少子高齢化が進み、数十年先の近未来に於ける日本の人口分布は都市部にしか人が住まわなくなり、その空いた農村部には人が住まわなくなるこの現状を移民として飛び立った当時の日本人がもし知ったとしたら、そしてもう一つの人口減少対策として、日本へ海外から移民として定住する外国人が増えている現代の移民国家日本をこの作品に描かれたブラジル移住者達が見たらどう思うだろうか。
2021年11月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安い価格ではないが絶版なので探していたし、出品時のランクは「良い」なので購入。
臭いがひどい。
臭いも評価の対象にしてほしい。
臭いがひどい。
臭いも評価の対象にしてほしい。
2015年12月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以前から読みたいと思っていた本でしたが、絶版物で手に入りませんでした。
購入できてとてもうれしいです。
迅速な対応、ありがとうございました。
購入できてとてもうれしいです。
迅速な対応、ありがとうございました。
2014年10月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以前から読みたかったこの本、書店に尋ねたところすでに廃刊になっていると言われ、アマゾンで検索してこちらで中古を購入しました。まるで中古とは思えないきれいな状態で届きました。内容も期待通り面白くて、大満足です
2013年2月24日に日本でレビュー済み
芥川賞の対象作は『蒼氓』は、同時収録の『南海航路』、『声無き民』によって三部作を構成しており、国策としてブラジル移民が奨励されていた1930年が時代背景となっている。 『蒼氓』はブラジル移民たちの出航前夜を、『南海航路』は船中の情景を、『声無き民』はブラジル到着後が描かれる。
当時のブラジル移民は、貧農といわれる人々が主で、ブラジルでの豊かな暮らしを夢見ている。なけなしの田畑を売り、縋るように移民に賭ける姿が『蒼氓』では活写されていく。
九百余名の移民たちは、神戸の海外移民収容所で共同生活を営み、準備を進めるわけだが、戻る場所を失った彼らの後悔、希望、不安が人いきれの中で渦巻くのだ。
独身者が渡航できないため家族を偽装するものがいる。ブラジル入国を禁止されているトラホームや脚気を隠すものがいる。息も絶え絶えの赤子を抱えるものがいる。審査失格となり失意のもとに収容所を後にするものがいる。何より、移民たちの無知蒙昧さが痛々しい。
石川達三自身が、監督官としてブラジルへ渡航した経験があるからこそ、本作品は、真に迫っているのだろう。
本作品は、誰か特定の人物を主役に据えているわけではないが、弟のため恋人と別れて偽装結婚し、流されるまま移民となった佐藤夏にスポットがあたっている。ある夜、佐藤夏は、移民監督助手から陵辱を受けてしまう。しかし、佐藤夏は、これさえもさえも甘んじてしまうのだ。このイノセントとも言える精神は、受難の人として、ブラジル移民を象徴しているように思えてくる。
移民たちが、45日に及ぶ苦難の航海を経て(『南海航路』)、新天地ブラジルで見出したものは何か(『声無き民』)。私は、この三部作を通して、”諦念”という語を連想した。決して明るい未来があるわけではない。しかし、その中で人生を見出していく術はあるのだ。ラストの、ブラジルの風景に溶けていくような佐藤夏の姿には、希望を拭い去ったがゆえの芯の強さを見ることができる。
当時のブラジル移民は、貧農といわれる人々が主で、ブラジルでの豊かな暮らしを夢見ている。なけなしの田畑を売り、縋るように移民に賭ける姿が『蒼氓』では活写されていく。
九百余名の移民たちは、神戸の海外移民収容所で共同生活を営み、準備を進めるわけだが、戻る場所を失った彼らの後悔、希望、不安が人いきれの中で渦巻くのだ。
独身者が渡航できないため家族を偽装するものがいる。ブラジル入国を禁止されているトラホームや脚気を隠すものがいる。息も絶え絶えの赤子を抱えるものがいる。審査失格となり失意のもとに収容所を後にするものがいる。何より、移民たちの無知蒙昧さが痛々しい。
石川達三自身が、監督官としてブラジルへ渡航した経験があるからこそ、本作品は、真に迫っているのだろう。
本作品は、誰か特定の人物を主役に据えているわけではないが、弟のため恋人と別れて偽装結婚し、流されるまま移民となった佐藤夏にスポットがあたっている。ある夜、佐藤夏は、移民監督助手から陵辱を受けてしまう。しかし、佐藤夏は、これさえもさえも甘んじてしまうのだ。このイノセントとも言える精神は、受難の人として、ブラジル移民を象徴しているように思えてくる。
移民たちが、45日に及ぶ苦難の航海を経て(『南海航路』)、新天地ブラジルで見出したものは何か(『声無き民』)。私は、この三部作を通して、”諦念”という語を連想した。決して明るい未来があるわけではない。しかし、その中で人生を見出していく術はあるのだ。ラストの、ブラジルの風景に溶けていくような佐藤夏の姿には、希望を拭い去ったがゆえの芯の強さを見ることができる。
2016年8月20日に日本でレビュー済み
置かれた人生の厳しさを感じます。
何も思慮せず生きている自分がここにいることを。
そしていつの日かこの世界を去らなければいけないのに、
無関心でいたことを痛感致しました。
何も思慮せず生きている自分がここにいることを。
そしていつの日かこの世界を去らなければいけないのに、
無関心でいたことを痛感致しました。
2007年9月9日に日本でレビュー済み
冒頭の、雨の神戸の描写に、暗い小説かと思いながら読み始めました。
1930年の、ブラジルへ渡る移民たちを描いた三部作です。
田畑や家財一切合財を手放して出てきたのに、病気で渡航を許されない家族、思う人と
別れて船に乗る娘、煙管を握りしめて、周りに心を開かない婆さん……酒を飲んで景気
よく踊ったり歌ったりしている男たちでさえ、どこか暗く見えてくる。
それなのに、一気に読みきってしまいました。日が経つにつれ、幸も不幸もひっくるめ
て現実を受け入れていく登場人物たちの姿の、そのエネルギッシュなこと。
そして、第三部のラストの、ブラジルの日差しをあびる移民たちの姿。
階級社会、人間のもつずるい一面など、考えさせられる部分も多くありましたが、なに
よりも、生きていくエネルギーをもらえる、そんな小説でした。
1930年の、ブラジルへ渡る移民たちを描いた三部作です。
田畑や家財一切合財を手放して出てきたのに、病気で渡航を許されない家族、思う人と
別れて船に乗る娘、煙管を握りしめて、周りに心を開かない婆さん……酒を飲んで景気
よく踊ったり歌ったりしている男たちでさえ、どこか暗く見えてくる。
それなのに、一気に読みきってしまいました。日が経つにつれ、幸も不幸もひっくるめ
て現実を受け入れていく登場人物たちの姿の、そのエネルギッシュなこと。
そして、第三部のラストの、ブラジルの日差しをあびる移民たちの姿。
階級社会、人間のもつずるい一面など、考えさせられる部分も多くありましたが、なに
よりも、生きていくエネルギーをもらえる、そんな小説でした。