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冬の旅 (新潮文庫) 文庫 – 1973/5/29

立原正秋 (著)

4.1 90個の評価

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リアルに描かれる少年院の日常。獄の外の自堕落な生活と、獄の中の懸命な生き方。
非行とは何か? 新聞連載で大反響を呼んだ、ベストセラー小説。

美しく優しい母を、義兄が凌辱しようとした現場を目撃した行助。思わず、義兄の腿を刺してしまった行助は、事実を告げぬまま、少年院に送られる。母への愛惜の念と義兄への復讐を胸に、孤独に満ちた少年院での生活を送る行助を中心に、社会復帰を希う非行少年たちの暖かい友情と苛烈な自己格闘を描き、強い意志と真率な感情、青春の夢と激情を抱いた若い魂にとって非行とは何かを問う力作。

著者の言葉
わけても作者にとって忘れがたいことが二つある。ひとつは、全国の読者から、この作品にたいする共感を示した激励のたよりをたくさんいただいたことであった。高校生から七十六歳の老人にいたるまで、いずれも生きることを真剣に考えている人たちであった。いまひとつは、安が死んだとき、私が行きつけの一杯飲み屋から追いだされたことである。安のような善良な男を殺した小説家に酒はのませられない、というのであった。店の人は本当に怒っていた。(「解説」より)

立原正秋(1926-1980)
1926(大正15)年、朝鮮慶尚北道安東郡生れ。幼くして父を失い、1937(昭和12)年、横須賀の母の再婚先に移る。早稲田大学専門部に入学し、文学部国文科に学ぶが中途退学。「薪能」「剣ヶ崎」で芥川賞候補となり、1966年、「白い罌粟」で直木賞を受賞。凛とした精神性と日本的美意識に裏打ちされた多くの作品を生み、1980年、食道癌により死去。主な小説は『冬の旅』『舞いの家』『残りの雪』『夢は枯野を』『冬のかたみに』『帰路』等。

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本の長さ

704ページ
言語

日本語
出版社

新潮社
発売日

1973/5/29
寸法

14.8 x 10.5 x 2 cm
ISBN-10

4101095027
ISBN-13

978-4101095028
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登録情報

出版社 ‏ : ‎ 新潮社; 改版 (1973/5/29)
発売日 ‏ : ‎ 1973/5/29
言語 ‏ : ‎ 日本語
文庫 ‏ : ‎ 704ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4101095027
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4101095028
寸法 ‏ : ‎ 14.8 x 10.5 x 2 cm

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GM58

全ての愚者に対する強烈な嫌悪感

2020年5月11日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

　主人公・行助のIQ165という天才的な設定に対して、超問題児の義兄・修一郎わずかに91とは、立原先生、愚者に対して相当の嫌悪感をお持ちと見た。その基本感覚、おおいに共感する。人格形成に予め失敗した者と、生来出来の良い者との埋め難い差について、ここまで執拗に描いた作品も珍しい。その病理も極まった感のある、本書から50年後の日本と日本人に、精神的崩壊ついに成ったことを見る。修一郎をはるかに凌ぐ愚か者の楽園となった我が国を、嘆ずるのみ。行助のごとき「出来過ぎた若者」を描くことで、愚者に対する痛烈な批判を行っている作者の先見性はあまりに鋭い。そこに、主人公を不自然なほど賢く設定する最大の理由があったと言える。この作品、一種のカインとアベルだが、「エデンの東」のような救済の書ではない。むしろ、絶望の書である。そして安(やす)を死なせ、行助を死なせるこの語りべの、意、とする処は即ち"諦観"である。愚者は栄え、覚者は儚い。それでも汝は善人賢者たらんと欲するや否や。その問いかけに、心ある者としての読者個々はどうするか。"考えることをやめない人"として。その50年前の問いかけに、全ての日本人が背を向けてはいないだろうか。恥ずべきことと思う。

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Kindleのお客様

物悲しくなりました

2022年6月29日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

登場人物たちの言葉が乱暴で聞き慣れない言葉遣いの部分があり、最初は違和感を感じましたが、読み勧めていくと時代背景や子どもたちの生活環境がそうさせていると感じることができました。

若気の至り、お家柄、そういったものに影響され、やや傲慢な部分や自我の強さなどを持ち合わせているところなど、読みながら腹が立つ部分もありました。青年から大人になるまでの葛藤を感じ、何が正しいのかを考えさせられるような作品です。

1人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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空飛ぶ旅人

「あの子を死なせちゃいかん」思わず一緒に叫んでしまう自分がいた、魂を揺さぶる本。

2016年4月23日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

この小説の主人公、行助はすごい少年だ。ものすごく真っ直ぐに、そしてものすごく深く自分の内面を見つめている。彼の言葉、彼の行動は、読む者の心を大きく揺さぶる。行助が私の心を強くつかみ、お前は本当にこれで良いのか、と激しく問いかけているような気がした。約20年前に文庫本で読んだ。その時の強く新鮮な感想は今も忘れない。今回Kindleで再読。当時の心が揺さぶられた感想は全く変わらない。木場院長の「あの子を死なせちゃいかん」の言葉、行助に対する想いが全て集約されている。この言葉を聞くために再読したと言っても過言ではない。

文庫本のあとがきに、新聞連載中に安が亡くなった章が出た後、作者が近くの行きつけの食堂（だったと思う）に行くと、なぜ安を殺したのだと店主・常連客が激怒し店から追い出された、との作者の言葉があった。私もその食堂の常連だった同じ事をしたと思う。それほど魂に食い込み、魂を揺さぶる本だ。電子化に深く感謝。

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アマゾン紫明

読めば読むほど、深みにはまっていく本

2009年1月7日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

主人公（行助）の取り巻きの構成がよく、主人公の個性をよく引き立てている。特に義兄との関係において、優しさと紙一重のところにある残酷さを見事に表現している所が素晴らしい。どんどん文章の中に読者を引き込んでいく、手法は見事だと思う。登場する女性は、ややでき過ぎの感もあるが、主人公の脇役として、存在感を充分出しており、ある意味、本小説自体の潤滑剤的な存在にもなっている。私にとって愛着のある一冊。

18人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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黙羊

流されてはいけない

2019年1月20日に日本でレビュー済み

　五十年以上前に、テレビで何回か視ただけで、その後の展開が分からなかったが、ようやく原作を読むことができた。読後の感想としては、やや低い評価を下さざるを得ない。　
　主人公が、なぜ二回も少年院にはいらなけれならないのかという疑問が残る小説である。ストーリーの展開にとって必然的な主人公のモティーフに納得して、読者は小説を読みすすむが、途中でそれが理由不明なまま消えてしまうのは、いかがなものか。生涯、義理の兄に劣等感を抱かせるため、己が関わっていない罪を被り、少年院に入るという筋立ては、到底、万人を納得させうるものではない。
　さらに、自分の子どもが、少年院に収容されるかどうかという時に、暴行未遂とはいえ、何があったのかを明らかにしない母親がいるのだろか。
　また、義理の兄の描かれ方が、具体的でまた典型的であると同時に、主人公は、どんな場合でも冷静で理知的、自分の運命を甘受するなど、とても二十歳の若者とは思えない。いくら、行助を悲劇の主人公にするためとはいえ、少々理想化しすぎではないだろうか。
　主人公にとって、二十年という期間はなんであったのか。ただ、死に向かって疾走したとしか、言い様がない。

本書の紹介に、「非行とは何かを問う力作」とあるが、どこにそんなことが、書かれているのか。示していただきたい。
　

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幸運桃兎

難しい

2022年3月9日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

理を貫き、固く固く歩む主人公と、その周りとの相互作用の物語です。明るい気持ちにはなりませんが、それでも何か頑張ってみようとする気持ちも生まれます。　好き嫌いは分かれると思いますが、気持ちに余裕があるときに、読み進めることをお勧めします。

できれば電子書籍よりは紙の本で。

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マック

夢中になって読んだ唯一の本です。

2016年8月9日に日本でレビュー済み

読んだのは約30年前、高校２年生の時であった。
それまで本読みは苦手で未だそれは変わらないが、後にも先にも夢中になって読んだ本はこれしかない。
高校生にオススメの一冊です。

3人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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packpackman

とても面白かった。でも、、、

2017年9月30日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

行助はとてもいいやつで、その生き方をみるに、確かにすがすがしい気持ちにさせてくれる、とてもいい小説である。
ただ、これから本当の彼の人生が始まる、従って小説の中心的な部分が始まる、と思えるところで終わってしまっている印象がどうしても残った。ある意味彼は達観したというか、孤独を孤独とも思わない境地に達するのだが、それが、実社会での生活にもまれる中で、どう維持されるのか、あるいはされないのか、なぜ見せてくれないんだ、とおもった。それがないと、まだ本当に人生を歩み始めていない彼が、観念論的に思索を巡らせたに過ぎないことになりはしまいか。母は彼の考えが全くわからないと悲しみ続けるが、その母の感情の方をもっともと思う読者が多いのではないだろうか。ならば、その母にも一般の読者にも共感し得ない感情をどう生き抜くのか、そこに葛藤は一切生まれないのか、孤独感に襲われることはないのか、そういうことまで書いてほしかった。
それと、彼の仲間がとってもいいやつが多くて、皆常識人で、そういうのは私個人的にはとてもすき（私も安が死んだのはとてもショックだった）だが、ドライに見ればちょっと現実離れしているということになるだろう。それに、修一郎と厚子が会うというのはいくら何でもプロットとして無理がありすぎるし、修一郎は基本だめなやつだが突然いいやつになったりまた元に戻ったりと、その性格の飛躍のさせかたもついて行けないところがあった。

といろいろ問題があることも書いたが、総じていえば、とてもさわやかな気持ちにさせてくれる、とてもいいものを読んだという気持ちの方が遙かに大きいことを強調しておきたい。

最後に、これまでのレビューで正しくないことが書かれているので、訂正を二つ。まず、行助が２度少年院に入り、一度目が無実の罪だったのは事実だが、二度目は確かに罪を犯したのである。また、彼は最後死んだ可能性はあるが死んだとは言い切れない。筆者はあえてそこをはっきりさせてないのに、それを死んだと断言されてしまっては筆者も立場がないだろうと思い、あえて書かせてもらった。

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