日本きっての論理学者・野矢茂樹(ヴィトゲンシュタイン研究の泰斗)の
エッセー「半歩遅れの読書術」にこの小説が出てくる。高校生の時に読んで
すっかりはまったらしい。はまった理由は、
〇 文体(大阪弁をまじえたとぐろをまくようなリズム)
〇 無頼に混ざったセンチメンタルな香り
だと自己分析されているが、論理学者をとりこにしてしまう野坂昭如の
小説の論理展開もすごい。
この小説で野坂は性(エロス)の不思議さについて多くのアイロニーを交えて
挑戦している。主人公のエロ事師たちのいろんな仕掛けも面白いが私はそれに
ひっかかる(あるいは自ら飛び込んでくる)お客さんたちの描写に釘付けになる。
例えば、お客さんたちは、こう描かれている。
・・親代々の小商い受けつぎ、どういうわけか申し合わせた如くいずこも
がみつい女房に、禿頭尻に敷かれる手合いばかり、たまさかの温泉旅行が
唯一つ息抜き、そこで番頭に卑屈にたのんで手にするエロ写真は、彼等の
お守りとよめた。スブやんの持参する新しいネタ眼にするやいなや、
例外なく手をわななかせて逆上し、しかも数みせるうち必ず一枚二枚を
ひそかにくすねるけちな根性。・・
あ~あ、これって私自身のことじゃないか。隠し棚にあふれるエロ・ビデオ、
パソコンからはみ出しそうなエロ写真群、これらの整理もつかずいやむしろ時間と
共に増え続けている。なぜ捨てないのか。そうか、これらは私が人生をあいわたる
時の護符だからか。納得。
この本にはありとあらゆるエロ事がでてくる。エロ事師たちのあいだでも
エロスの追求に関して、ヒューマニズム重視でいくか、アート(芸術)重視で
いくか意見がわかれているのが面白い。アート派は、ポルノ小説、エロ写真、
AV、エロティック・イラストを追い、ヒューマニズム派は乱交パーティ開催、
売春斡旋、処女斡旋、御座敷ストリップ、ダッチワイフ、性具販売などエロエロな
ことを仕掛ける。後者は時間と共に崩落し雲散霧消し、歴史に残るのは前者
(の優れた一部)のみ。諸行無常の世界である。エロ事師の職業病がインポと
いうのも理解できる。
著者の文体は練れている。「すんまへん、当たりですわ、メンタンピン
ドラドラのドンドンで満貫」。麻雀やりながらのオナニー初体験談義の見事さ。
野坂は作家デビュー前、雑誌『奇譚クラブ』に「戸山一彦」名義で寄稿していたと
いう。そのあたりの経験がこの内容と柔らかな文体に影響しているのか。
33歳のときの処女作である。
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エロ事師たち (新潮文庫) 文庫 – 1970/4/17
野坂 昭如
(著)
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性の享楽を斡旋演出するエロ事師たちの猥雑きわまりない生態を描き、
その底にひそむパセティックな心情を引出した型破りの小説。
お上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり――
享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。他人を勃たせるのはお手のものだが、彼を取り巻く男たちの性は、どこかいびつで滑稽で苛烈で、そして切ない……正常なる男女の美しきまぐわいやオーガズムなんぞどこ吹く風、ニッポン文学に永遠に屹立する傑作。
本書「解説」より
何ともかとも言いようのない、いわば悪趣味の極致とも言うべき赤裸々な文章ではあるけれど、これによってもお分りの通り、野坂昭如氏は、きわめて特異なスタイリストとしての自分の領土から一歩も踏み外してはいないのである。赤裸々ではあるが野卑ではなく、露骨ではあるが下品ではないという、その文章表現上の秘密は、たぶん、この氏の独自なスタイルにあると思って差支えなかろう。スタイルとは、とりも直さず、現実を調理する調理人たる小説家の、その庖丁さばきの謂(いい)である。
――澁澤龍彦(小説家)
野坂昭如(1930-2015)
神奈川県鎌倉生れ。早大中退。様々な職を経て、コラムニストとして活躍。1963(昭和38)年の処女小説『エロ事師たち』で、性的主題を辛辣かつユーモラスに追求、俄然注目される。1967年には、占領下の世相に取材した「アメリカひじき」、戦争・空襲・焼跡の体験を描いた「火垂るの墓」を発表。翌年、この両作で直木賞受賞。1997(平成9)年『同心円』で吉川英治文学賞を、2002年『文壇』およびそれに至る文業で泉鏡花文学賞を受賞する。他の代表作に『骨餓身峠死人葛』『一九四五・夏・神戸』等。
その底にひそむパセティックな心情を引出した型破りの小説。
お上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり――
享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。他人を勃たせるのはお手のものだが、彼を取り巻く男たちの性は、どこかいびつで滑稽で苛烈で、そして切ない……正常なる男女の美しきまぐわいやオーガズムなんぞどこ吹く風、ニッポン文学に永遠に屹立する傑作。
本書「解説」より
何ともかとも言いようのない、いわば悪趣味の極致とも言うべき赤裸々な文章ではあるけれど、これによってもお分りの通り、野坂昭如氏は、きわめて特異なスタイリストとしての自分の領土から一歩も踏み外してはいないのである。赤裸々ではあるが野卑ではなく、露骨ではあるが下品ではないという、その文章表現上の秘密は、たぶん、この氏の独自なスタイルにあると思って差支えなかろう。スタイルとは、とりも直さず、現実を調理する調理人たる小説家の、その庖丁さばきの謂(いい)である。
――澁澤龍彦(小説家)
野坂昭如(1930-2015)
神奈川県鎌倉生れ。早大中退。様々な職を経て、コラムニストとして活躍。1963(昭和38)年の処女小説『エロ事師たち』で、性的主題を辛辣かつユーモラスに追求、俄然注目される。1967年には、占領下の世相に取材した「アメリカひじき」、戦争・空襲・焼跡の体験を描いた「火垂るの墓」を発表。翌年、この両作で直木賞受賞。1997(平成9)年『同心円』で吉川英治文学賞を、2002年『文壇』およびそれに至る文業で泉鏡花文学賞を受賞する。他の代表作に『骨餓身峠死人葛』『一九四五・夏・神戸』等。
- 本の長さ272ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1970/4/17
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101112010
- ISBN-13978-4101112015
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【新潮文庫】野坂昭如 作品 | 性の享楽を斡旋演出するエロ事師たちの猥雑きわまりない生態を描き、その底にひそむパセティックな心情を引出した型破りの小説。 | 中年男の意識の底によどむ進駐軍コンプレックスをえぐる「アメリカひじき」など、著者の”焼跡闇市派”作家としての原点を示す 6編。〈直木賞受賞〉 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1970/4/17)
- 発売日 : 1970/4/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 272ページ
- ISBN-10 : 4101112010
- ISBN-13 : 978-4101112015
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 99,976位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2021年9月19日に日本でレビュー済み
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・織田作之助から野坂昭如に繋がり、この小説を読み始めました。文字に移された大阪弁は、織田作之助のほうが読みやすいです。
・昭和30年代くらいのまだポルノという言葉が一般的でなかった時代の物語です。登場人物たちそれぞれの戦争体験が点描されながら、当時の「エロ、グロ、ナンセンス」の話が展開していきます。空襲で死んだ主人公の母親の亡骸の描写が忘れられません。
・昭和30年代くらいのまだポルノという言葉が一般的でなかった時代の物語です。登場人物たちそれぞれの戦争体験が点描されながら、当時の「エロ、グロ、ナンセンス」の話が展開していきます。空襲で死んだ主人公の母親の亡骸の描写が忘れられません。
2019年5月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
序盤はおもしろいけれども読みにくい文体だなと思っていたのですが、
読み進めるうちにいつの間にかリズム感が出てきて、気づくととても読みやすくなっていました。
物語は非常にユーモアがあり、情景を思い浮かべて何度も噴き出してしまうシーンがありました。
独自の文体と強めの関西弁は読み応えのある濃厚さです。
日本の文学でもかなり重要な位置にいる作家であると読めばはっきりとわかります。
堅苦しさをぶちこわしつつもしっかりと文学性が残った文体。
町田康の文体も野坂昭如の影響を大きく受けているのがわかります。
小説の内容はノリだけでみれば滑稽な青春小説に近いものにも感じられ、とても楽しめました。
荒い言葉や下ネタは多々ありますが、そこまで下品ではなく笑ってしまうような場面ばかりです。
しかし、タイトルや装丁でだいぶ損をしているような気がします。
古臭い装丁も読み終えると親しみをもてるのですが、初めて見たときは
少し古いミステリー系の表紙のイメージで、ただのエロ小説と思っていました。
肩の凝る小説や、美文や描写の美しい小説に退屈しているかたにおすすめです。
ずっと大事に持っておきたい一冊になりました。
読み進めるうちにいつの間にかリズム感が出てきて、気づくととても読みやすくなっていました。
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日本の文学でもかなり重要な位置にいる作家であると読めばはっきりとわかります。
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町田康の文体も野坂昭如の影響を大きく受けているのがわかります。
小説の内容はノリだけでみれば滑稽な青春小説に近いものにも感じられ、とても楽しめました。
荒い言葉や下ネタは多々ありますが、そこまで下品ではなく笑ってしまうような場面ばかりです。
しかし、タイトルや装丁でだいぶ損をしているような気がします。
古臭い装丁も読み終えると親しみをもてるのですが、初めて見たときは
少し古いミステリー系の表紙のイメージで、ただのエロ小説と思っていました。
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ずっと大事に持っておきたい一冊になりました。
2020年11月23日に日本でレビュー済み
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映画(今村昌平監督の)より、より面白い原作。読まなきゃ地獄、読んだら極楽❗浮き世の嫌なしがらみが、読み解ける。
2020年6月9日に日本でレビュー済み
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昭和っぽい面白さ。
2022年7月13日に日本でレビュー済み
粗悪品が届いて返品後、再度注文した本も汚かった。
本の内容は悪くないが本自体が汚いのであれば全体として星一つです。
本の内容は悪くないが本自体が汚いのであれば全体として星一つです。
2016年7月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
学生時代に読んで感動して忘れていましたが、やっと読み直す気になりました。
簡単にいうと悲しい性の男の悲しくもおかしい悲恋と死の話です。
野坂に言わせるまでもなく性は命の高まりです。それを商売にしながら、しかし果たせなかった義理の娘との愛情を追いかける。
そんな一途であるがゆえにおかしい人生の話が描かれています。
ネットでの性に慣れてしまった若い人にぜひ薦めたい一冊です。
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2020年9月8日に日本でレビュー済み
語り口調の長編小説である。猥褻物陳列の罪をすれすれに掻い潜り辛うじて生きているエロ事師たち。何を生甲斐にして生きているのか?それはある種の反抗心(法律の性表現の制限又は規制に対する)とかを誇りにしつつブルーフィルムの制作に命を燃やして生きている種族の物語なのだ。表現の自由とかいろいろあるのだろう。細部に至っては忘れてしまっているが、たつ吉?だったかブルーフィルムを制作していた男が、心筋梗塞かで死んでしまう。そこで仲間が集まって、弔い麻雀をやるのであった。
この作品のだいぶ後になって「テロテロ」を読んだ。
この作品のだいぶ後になって「テロテロ」を読んだ。