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草の花 (新潮文庫) ペーパーバック – 1956/3/13
福永 武彦
(著)
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「死に向かってひたすらに疾走する恋」、恋愛小説の隠れた名作。
孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌。
研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐりあった藤木忍との純粋な愛に破れ、藤木の妹千枝子との恋にも挫折した汐見茂思。彼は、そのはかなく崩れ易い青春の墓標を、二冊のノートに記したまま、純白の雪が地上をおおった冬の日に、自殺行為にも似た手術を受けて、帰らぬ人となった。
まだ熟れきらぬ孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌である。
【目次】
冬
第一の手紙
第二の手紙
春
解説:本多顕彰
【本文冒頭より】
私はその百日紅(さるすべり)の木に憑かれていた。それは寿康館と呼ばれている広い講堂の背後にある庭の中に、ひとつだけ、ぽつんと立っていた。寿康館では、月に一回くらい、サナトリウムの患者たちを慰問するために映画会が開かれた。しかし私は、まだ病状がすっかり恢復していたわけではなかったから、そこに映画を見に行ったことはない。ただ風のあまりない、日射(ひざし)の暖かな冬の日に、庭の中をぶらぶらと歩いただけだ。泉水があって、その廻りに山吹や椿や楓の木がある。……
福永武彦(1918-1979)
福岡県生まれ。一高在学中から詩作を始める。東大仏文科卒。1948年、詩集『ある青春』、短篇集『塔』、1952年、長篇小説『風土』を発表、注目を集める。1954年、長篇小説『草の花』により、作家としての地歩を確立。以後、学習院大学で教鞭をとる傍ら『冥府』『廃市』『忘却の河』『海市』など、叙情性豊かな詩的世界のなかに鋭い文学的主題を見据えた作品を発表。1961年『ゴーギャンの世界』で毎日出版文化賞、1972年『死の島』で日本文学大賞を受賞。
孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌。
研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐりあった藤木忍との純粋な愛に破れ、藤木の妹千枝子との恋にも挫折した汐見茂思。彼は、そのはかなく崩れ易い青春の墓標を、二冊のノートに記したまま、純白の雪が地上をおおった冬の日に、自殺行為にも似た手術を受けて、帰らぬ人となった。
まだ熟れきらぬ孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌である。
【目次】
冬
第一の手紙
第二の手紙
春
解説:本多顕彰
【本文冒頭より】
私はその百日紅(さるすべり)の木に憑かれていた。それは寿康館と呼ばれている広い講堂の背後にある庭の中に、ひとつだけ、ぽつんと立っていた。寿康館では、月に一回くらい、サナトリウムの患者たちを慰問するために映画会が開かれた。しかし私は、まだ病状がすっかり恢復していたわけではなかったから、そこに映画を見に行ったことはない。ただ風のあまりない、日射(ひざし)の暖かな冬の日に、庭の中をぶらぶらと歩いただけだ。泉水があって、その廻りに山吹や椿や楓の木がある。……
福永武彦(1918-1979)
福岡県生まれ。一高在学中から詩作を始める。東大仏文科卒。1948年、詩集『ある青春』、短篇集『塔』、1952年、長篇小説『風土』を発表、注目を集める。1954年、長篇小説『草の花』により、作家としての地歩を確立。以後、学習院大学で教鞭をとる傍ら『冥府』『廃市』『忘却の河』『海市』など、叙情性豊かな詩的世界のなかに鋭い文学的主題を見据えた作品を発表。1961年『ゴーギャンの世界』で毎日出版文化賞、1972年『死の島』で日本文学大賞を受賞。
- ISBN-10410111501X
- ISBN-13978-4101115016
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日1956/3/13
- 言語日本語
- 寸法10.7 x 1.1 x 15.1 cm
- 本の長さ320ページ
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登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1956/3/13)
- 発売日 : 1956/3/13
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 320ページ
- ISBN-10 : 410111501X
- ISBN-13 : 978-4101115016
- 寸法 : 10.7 x 1.1 x 15.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 47,538位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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イメージ付きのレビュー
5 星
深い孤独と愛
学生時代から何度も読んでいた最も好きな作品です。一ページ目から選び抜かれた言葉のセンスに惹き込まれます。作者はこの作品だけは実写化を禁止していましたが今もしすればBLブームに乗ってきっとヒットしたことでしょう。登場人物のそれぞれの孤独感が繊細に緻密に優れた情景描写と共に描かれて読めば読むほど味わい深い作品です。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年8月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
改めて送られてきた本を手にとって、こんな風に表紙が変わってしまったんだと、
半ば唖然、過ぎ去った月日を思った。
初めて手に取ったときから40年近くも経っているんだから、当たり前か。
しかし、以前の表紙の方が、題名にしっくり来ていたと思うのだが。
それとも、こういう感じの表紙の方が若い人受けするのだろうか?
孤独な雰囲気、純粋さゆえの孤独、そういうイメージは確かにあるが。
福永武彦の他の作品は忘れてしまったが、これだけは買い直しても、中身は変わらない。
主人公は純粋なまま、ある意味純粋さと共に年老いることをやめるかのように、
人生という舞台を自ら降りたのだと思う。
私はとっくにその年を通り越し、随分老いてしまったが。
半ば唖然、過ぎ去った月日を思った。
初めて手に取ったときから40年近くも経っているんだから、当たり前か。
しかし、以前の表紙の方が、題名にしっくり来ていたと思うのだが。
それとも、こういう感じの表紙の方が若い人受けするのだろうか?
孤独な雰囲気、純粋さゆえの孤独、そういうイメージは確かにあるが。
福永武彦の他の作品は忘れてしまったが、これだけは買い直しても、中身は変わらない。
主人公は純粋なまま、ある意味純粋さと共に年老いることをやめるかのように、
人生という舞台を自ら降りたのだと思う。
私はとっくにその年を通り越し、随分老いてしまったが。
2021年6月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
素晴らしい。なぜ今まで手に取らなかったのか。
三浦哲郎など、戦後文学で好きな作家は数多くいるが、透明感のある美しい文章で紡がれた青春の鎮魂歌と呼ぶに相応しい。
一読を強く薦める。
三浦哲郎など、戦後文学で好きな作家は数多くいるが、透明感のある美しい文章で紡がれた青春の鎮魂歌と呼ぶに相応しい。
一読を強く薦める。
2021年7月24日に日本でレビュー済み
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死の島等他の本も読みましたが、この本は福永武彦さん特有の繊細な心理描写の最高傑作だと思います。
2021年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
書店やリサイクルショップにも在庫がなかったので、助かりました。大変満足です。
2009年10月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あちこちの読書人サイトで評価の高い「草の花」。
少なからぬ人々が青春時代に一度は読んで深い感銘を受け、
その後の人生道中の長きにわたって「心の書」としていると言う。
ならば、わたしも死ぬまでに読まねばと、この夏、読んだ。
…しかし、読み終わっても、レビューがなかなか書けない。
面白いことには面白かった…、
愛をまっとうしようとしても叶わぬ汐見の姿に胸が痛んだりもした…。
だけど、なんだかいまひとつよく解らんぞ〜、
というモヤモヤした気持ちが胸の底に残り、
安心して酔えないのだ。
「エへへ、こういうの、わたし、よく解らないんです」
とボンクラ顔してニタリと笑いたくなるような、そんな感じなのだ。
丁寧に読んでも、わたしには汐見の心がよく解らない。
しまった!
この作品を読むには、わたしは歳をとりすぎているのかもしれない!
とも考える。
そうなのか、そうなのかも。
多くの人が言うように、青春時代に読むべき傑作なのかもしれない…。
少なからぬ人々が青春時代に一度は読んで深い感銘を受け、
その後の人生道中の長きにわたって「心の書」としていると言う。
ならば、わたしも死ぬまでに読まねばと、この夏、読んだ。
…しかし、読み終わっても、レビューがなかなか書けない。
面白いことには面白かった…、
愛をまっとうしようとしても叶わぬ汐見の姿に胸が痛んだりもした…。
だけど、なんだかいまひとつよく解らんぞ〜、
というモヤモヤした気持ちが胸の底に残り、
安心して酔えないのだ。
「エへへ、こういうの、わたし、よく解らないんです」
とボンクラ顔してニタリと笑いたくなるような、そんな感じなのだ。
丁寧に読んでも、わたしには汐見の心がよく解らない。
しまった!
この作品を読むには、わたしは歳をとりすぎているのかもしれない!
とも考える。
そうなのか、そうなのかも。
多くの人が言うように、青春時代に読むべき傑作なのかもしれない…。
2020年12月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
学生時代から何度も読んでいた最も好きな作品です。一ページ目から選び抜かれた言葉のセンスに惹き込まれます。作者はこの作品だけは実写化を禁止していましたが今もしすればBLブームに乗ってきっとヒットしたことでしょう。登場人物のそれぞれの孤独感が繊細に緻密に優れた情景描写と共に描かれて読めば読むほど味わい深い作品です。
学生時代から何度も読んでいた最も好きな作品です。一ページ目から選び抜かれた言葉のセンスに惹き込まれます。作者はこの作品だけは実写化を禁止していましたが今もしすればBLブームに乗ってきっとヒットしたことでしょう。登場人物のそれぞれの孤独感が繊細に緻密に優れた情景描写と共に描かれて読めば読むほど味わい深い作品です。
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