1954年刊の書き下ろし。北日本の山あいの町で繰り広げられるドタバタ劇。山師と地熱発電、革命を目論む秘密結社、政治家どうしの利権争い……戦後数年経ったばかりの頃の地方の町なら、ありえたかもしれない。
登場人物はみな個性的、総勢25名のキャスト。紆余曲折の展開があるので、「日曜劇場」のような連ドラに仕立てたら、けっこういけるかも。
通俗小説のように書いてみるという作者の「実験」のようにも感じられる。哲学・文学・思想のニオイがさほどないのもいい。もちろん、筋書きは緻密に計算されていて、細部ではいつもの安部公房らしさが顔を出す。たとえばギニョール人形劇が登場し(いわば劇中劇)、そこではシュールな展開があったりする。
冒頭は、降りしきる雪のなか、下りの最終列車から大きなトランクをもった男が降り立つシーン。ここで読者の心をつかまえ、最後まで一気に読ませる。後半が駆け足なのが少し残念。
(なお、新潮文庫版は改稿版。エンディングがオリジナルとは少し異なる。)
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飢餓同盟 (新潮文庫) 文庫 – 2006/9/1
安部 公房
(著)
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購入オプションとあわせ買い
権力への羨望が、人を町を狂わせる。地方都市を舞台に、人間の滑稽なまでの生態に迫った傑作。
眠った魚のように山あいに沈む町花園。この雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちは、革命のための秘密結社“飢餓同盟”のもとに団結し、権力への夢を地熱発電の開発に託すが、彼らの計画は町長やボスたちにすっかり横取りされてしまう。それ自体一つの巨大な病棟のような町で、渦巻き、もろくも崩壊していった彼らの野望を追いながら滑稽なまでの生の狂気を描く。
本文より
疑惑……というのは、花井大助についての、妙な噂だった。しっぽが生えているというのである。小さな、腫物ていどのもので、注意して見ないと気づかないくらいだとはいうが、しっぽということになれば、もう大小は問題でないだろう。しかしむろん見たものがあるわけではないらしい。噂が噂をうんで伝説になったというのが正しいのだろう。花井が小学生のころ、どうしても身体検査をうけるのをいやがって、受持の教師に噛みついたという噂がある。また、彼が決して水泳ぎに行こうとしなかったというのも大きな根拠の一つになっている。……(第一章)
本書「解説」より
(作品にみなぎる)アイロニーとユーモアは、いったいどこに由来するのか、その出所を、わたしたちははっきり見極めなければならない。たぶん、これは、現実が寓話以上に寓話的であると映る作者の眼と、「まったく、現実ほど、非現実的なものはない」と感じる作者の心から出てくるものだろう。(略)
『飢餓同盟』には、作者が戦後の芸術運動や政治運動のなかで発見した、作者自身の姿がうつし出されていると同時に、また、わたしたちすべての人間のうちにひそむ狂気が明るみに出されているように思われる。
――佐々木基一(文芸評論家)
安部公房(1924-1993)
東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
眠った魚のように山あいに沈む町花園。この雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちは、革命のための秘密結社“飢餓同盟”のもとに団結し、権力への夢を地熱発電の開発に託すが、彼らの計画は町長やボスたちにすっかり横取りされてしまう。それ自体一つの巨大な病棟のような町で、渦巻き、もろくも崩壊していった彼らの野望を追いながら滑稽なまでの生の狂気を描く。
本文より
疑惑……というのは、花井大助についての、妙な噂だった。しっぽが生えているというのである。小さな、腫物ていどのもので、注意して見ないと気づかないくらいだとはいうが、しっぽということになれば、もう大小は問題でないだろう。しかしむろん見たものがあるわけではないらしい。噂が噂をうんで伝説になったというのが正しいのだろう。花井が小学生のころ、どうしても身体検査をうけるのをいやがって、受持の教師に噛みついたという噂がある。また、彼が決して水泳ぎに行こうとしなかったというのも大きな根拠の一つになっている。……(第一章)
本書「解説」より
(作品にみなぎる)アイロニーとユーモアは、いったいどこに由来するのか、その出所を、わたしたちははっきり見極めなければならない。たぶん、これは、現実が寓話以上に寓話的であると映る作者の眼と、「まったく、現実ほど、非現実的なものはない」と感じる作者の心から出てくるものだろう。(略)
『飢餓同盟』には、作者が戦後の芸術運動や政治運動のなかで発見した、作者自身の姿がうつし出されていると同時に、また、わたしたちすべての人間のうちにひそむ狂気が明るみに出されているように思われる。
――佐々木基一(文芸評論家)
安部公房(1924-1993)
東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
- 本の長さ272ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2006/9/1
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101121044
- ISBN-13978-4101121048
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登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (2006/9/1)
- 発売日 : 2006/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 272ページ
- ISBN-10 : 4101121044
- ISBN-13 : 978-4101121048
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 214,561位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年3月20日に日本でレビュー済み
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2009年11月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「壁」、「箱男」等のように寓話性を前面に出さず、物語中に風刺・寓意を散りばめるタイプの作品。舞台は寂れたかつての温泉街の花園町。キャラメル工場主任の花井は新聞社社長重宗、開業医藤野の娘"うるわし"等と共に"ひもじい"同盟を結成している。同盟の目的は伏せられたまま物語は進行する。
その代わり、安倍氏の作品としては登場人物とその関係が多彩。町に招かれた医師の森は診療所も与えられないまま一ヶ月間患者がおらず、患者に"飢えている"。"分離電極法"と言う温泉復活法を携えて故郷に錦を飾ろうと20年振りに戻って来た地下探査技師の織木は、その軍事目的への転用を迫られ、恐怖と絶望のため魂の"飢餓状態"に陥り、自殺未遂をする。その遺書は花井にも衝撃を与えた。"ひもじい"様とは、飢餓除けの神様らしい。花井の姉里子は織木のかつての恋人であり、"うるわし"の叔父の幸福に陵辱され死んだ。花井にシッポがある事も明かされている。精神に欠乏感を持った人々を象徴的に描こうとしているように見えるが(「壁」にも通じるテーマ)、ストーリーが何処に向かっているかは不明のまま。
"ひもじい"同盟(改名して「飢餓同盟」)はどうやら労働者革命組織なのだが、花井は織木の"分離電極法"を用いて温泉を復活させ発電会社を興し、社長の座に座ろうと企てる。手厳しい皮肉である。更に花井は、現在行なわれている町会議員の補欠選挙を通じて、資本家どうしの争いを批判するが、返す刀で共産党も批判する。「全ての思想を否定するが、自らの主観は尊重する」花井の姿は滑稽であり風刺が効いている。
歯車が狂い出した花井のユートピア革命の行方は...。寒村でのプチ革命の顛末を通して、人間社会の理想と限界を鋭く映し出した秀作。
その代わり、安倍氏の作品としては登場人物とその関係が多彩。町に招かれた医師の森は診療所も与えられないまま一ヶ月間患者がおらず、患者に"飢えている"。"分離電極法"と言う温泉復活法を携えて故郷に錦を飾ろうと20年振りに戻って来た地下探査技師の織木は、その軍事目的への転用を迫られ、恐怖と絶望のため魂の"飢餓状態"に陥り、自殺未遂をする。その遺書は花井にも衝撃を与えた。"ひもじい"様とは、飢餓除けの神様らしい。花井の姉里子は織木のかつての恋人であり、"うるわし"の叔父の幸福に陵辱され死んだ。花井にシッポがある事も明かされている。精神に欠乏感を持った人々を象徴的に描こうとしているように見えるが(「壁」にも通じるテーマ)、ストーリーが何処に向かっているかは不明のまま。
"ひもじい"同盟(改名して「飢餓同盟」)はどうやら労働者革命組織なのだが、花井は織木の"分離電極法"を用いて温泉を復活させ発電会社を興し、社長の座に座ろうと企てる。手厳しい皮肉である。更に花井は、現在行なわれている町会議員の補欠選挙を通じて、資本家どうしの争いを批判するが、返す刀で共産党も批判する。「全ての思想を否定するが、自らの主観は尊重する」花井の姿は滑稽であり風刺が効いている。
歯車が狂い出した花井のユートピア革命の行方は...。寒村でのプチ革命の顛末を通して、人間社会の理想と限界を鋭く映し出した秀作。
2017年3月21日に日本でレビュー済み
舞台は雪深い小さな町・花園。かつては温泉町として栄えた(宮城県か?)。花井太助は、キャラメル工場の主任であり、「ひもじい同盟」という貧乏くさい集まりのリーダー。この町に地下探査技師の織木という男がやってきていきなり服毒自殺を試みる。織木は、地下構造を測定する方法を発明し、今は枯れてしまった温泉脈の心臓を探り当て、地熱発電をするつもりだったらしい。
この織木のことを知った花井は興奮。織木の技術を使って地熱発電所を作れば、ちょっとした財閥をつくることも夢ではない。花井は、金儲けをしたいのではなく、共産主義的思想(というかアナーキー思想)に基づく社会変革の資金を手に入れることに興奮している。花井は、革命をしたあとでまた独裁政府を作るという共産主義には共鳴しない。花井は思想の否定、思想からの自由、絶対自由、と一切の権力否定を志向する。
織木は死なずに復活。花井たちは地熱発電所に熱中。地下のどこを掘れば蒸気がでてくるのかその「ポイント」を探る必要がある。
しかし、花園を支配する多々良は、花園温泉復活を公式発表し、地熱開発協会を発足させ、地価も高騰。計画は横取りされてしまう。花井は閉じ込められて発狂し、織木は死に、ひもじい同盟から昇格した「飢餓同盟」は消滅。要するに、革命の資金源は、あっさりと権力に奪われてしまうという喜劇。
安部公房は、八方をふさいでいる壁そのもののうちに、壁を突破する可能性を探り続ける、というテーマを中心にしているという。ユートピア夢想者の花井に壁突破の可能性を垣間見させる織木は、人間計器みたいな存在であり、温泉、ひいては、地熱発電のための「ポイント」を探り当てるキーパーソン。理想実現のためには資金が必要、ということだったのだが、地熱発電所建設が目的化し、やがてその計画そのものが地元の有力者に横取りされてしまう。花井は狂人として精神病院行き。高邁な理想が現実の中で挫折し、変質していく過程を寓話的に示す小説である。
この織木のことを知った花井は興奮。織木の技術を使って地熱発電所を作れば、ちょっとした財閥をつくることも夢ではない。花井は、金儲けをしたいのではなく、共産主義的思想(というかアナーキー思想)に基づく社会変革の資金を手に入れることに興奮している。花井は、革命をしたあとでまた独裁政府を作るという共産主義には共鳴しない。花井は思想の否定、思想からの自由、絶対自由、と一切の権力否定を志向する。
織木は死なずに復活。花井たちは地熱発電所に熱中。地下のどこを掘れば蒸気がでてくるのかその「ポイント」を探る必要がある。
しかし、花園を支配する多々良は、花園温泉復活を公式発表し、地熱開発協会を発足させ、地価も高騰。計画は横取りされてしまう。花井は閉じ込められて発狂し、織木は死に、ひもじい同盟から昇格した「飢餓同盟」は消滅。要するに、革命の資金源は、あっさりと権力に奪われてしまうという喜劇。
安部公房は、八方をふさいでいる壁そのもののうちに、壁を突破する可能性を探り続ける、というテーマを中心にしているという。ユートピア夢想者の花井に壁突破の可能性を垣間見させる織木は、人間計器みたいな存在であり、温泉、ひいては、地熱発電のための「ポイント」を探り当てるキーパーソン。理想実現のためには資金が必要、ということだったのだが、地熱発電所建設が目的化し、やがてその計画そのものが地元の有力者に横取りされてしまう。花井は狂人として精神病院行き。高邁な理想が現実の中で挫折し、変質していく過程を寓話的に示す小説である。
2017年9月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
初期の長編ですが、序盤から引き込まれ、ラストまで一気に読んでしまいました。安部公房が好きな方にはお勧めです。
2008年3月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
面白いけどちょっと難しいので、初めての安部公房なら、私は断然『箱男』をプッシュします。
2016年6月16日に日本でレビュー済み
『飢餓同盟』
欲望が排除を生み、排除が革命を生む。
欲望が排除を正当化し、排除が革命を正当化する。
どちらが正気でどちらが狂気か。
正気は狂気であり、狂気は正気である。
生を渇望する時、人はとことん残酷になることを、
まざまざと見せつけられた。
非現実的な現実を徹底的に描こうとした、
強い作品を目の当たりにした印象だった。
欲望が排除を生み、排除が革命を生む。
欲望が排除を正当化し、排除が革命を正当化する。
どちらが正気でどちらが狂気か。
正気は狂気であり、狂気は正気である。
生を渇望する時、人はとことん残酷になることを、
まざまざと見せつけられた。
非現実的な現実を徹底的に描こうとした、
強い作品を目の当たりにした印象だった。
2013年6月6日に日本でレビュー済み
主人公花井太助の住む町花園。この町はかつて温泉で栄えた町であったが震災により温泉街が無くなってしまったところが舞台だ。
町の様子も日本の現存している場所で言うと西成ぽいイメージが出て来た。
この町は町長多良根と医者藤野健康、幸福兄弟の2大勢力が牛耳っている。
ある日花園出身の織木という者が故郷に戻り自殺を図りますがかろうじて命は取り留めたものの
彼が残した遺書を花井は読んでしまいます。
そこから彼が花井の姉里子に惚れていてろくな医師免許も無い藤野幸福に誤診、強姦され狂って死んでしまった事、
花園から無くなった温泉減を掘りあて地熱発電をこころみるべく研究していた事、戦争中ドイツ製のヘクザンなる薬により人間兵器の様にされていた告白が書かれており
これを知った花井は織木を利用し温泉減を掘り当てて花園に地熱発電を設置し、
兼ねてから怨恨を持っていた町の2大勢力をぶっつぶす革命を起こすと 飢餓同盟を発足する。
同盟の参加者には 騙されて花園へ来た紙芝居屋の矢根、駅員の狭山、町の用心棒的存在の源さん、イボ蛙というあだ名の男、医者の森、そして織木
で発電所を目的に行動をし始めるのです。
最初は花園の置かれている町の環境があまりにもわびしく暗い背景がたんたんと書かれています。
そして織木の遺書から始まり花井が躍起になって計画を進めていくのですが
後半数十ページに掛けてだんだん仲間とのいざこざや行動がおかしくなり初めて行きます。
そしてめくるめくして抱いた憎悪と計画の結果が全て集結された終わり方だと思います。
こういうテーマのお話には一発大逆転勝利の終わりを願う人も少なくないと思いますが
ところがどっこいそうとは、、な終わりです。
花井の生い立ちが不幸なだけにとても、、、に感じます。
星は個人的に5でも良かったのですが文庫本の裏表紙のあらすじに一言書きたいです。
どうして肝心要のネタバレをあらすじに書きますかねぇ、、。
よって★は1つ減らさせていただきました。
町の様子も日本の現存している場所で言うと西成ぽいイメージが出て来た。
この町は町長多良根と医者藤野健康、幸福兄弟の2大勢力が牛耳っている。
ある日花園出身の織木という者が故郷に戻り自殺を図りますがかろうじて命は取り留めたものの
彼が残した遺書を花井は読んでしまいます。
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花園から無くなった温泉減を掘りあて地熱発電をこころみるべく研究していた事、戦争中ドイツ製のヘクザンなる薬により人間兵器の様にされていた告白が書かれており
これを知った花井は織木を利用し温泉減を掘り当てて花園に地熱発電を設置し、
兼ねてから怨恨を持っていた町の2大勢力をぶっつぶす革命を起こすと 飢餓同盟を発足する。
同盟の参加者には 騙されて花園へ来た紙芝居屋の矢根、駅員の狭山、町の用心棒的存在の源さん、イボ蛙というあだ名の男、医者の森、そして織木
で発電所を目的に行動をし始めるのです。
最初は花園の置かれている町の環境があまりにもわびしく暗い背景がたんたんと書かれています。
そして織木の遺書から始まり花井が躍起になって計画を進めていくのですが
後半数十ページに掛けてだんだん仲間とのいざこざや行動がおかしくなり初めて行きます。
そしてめくるめくして抱いた憎悪と計画の結果が全て集結された終わり方だと思います。
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ところがどっこいそうとは、、な終わりです。
花井の生い立ちが不幸なだけにとても、、、に感じます。
星は個人的に5でも良かったのですが文庫本の裏表紙のあらすじに一言書きたいです。
どうして肝心要のネタバレをあらすじに書きますかねぇ、、。
よって★は1つ減らさせていただきました。
2015年9月2日に日本でレビュー済み
私の感性にはぴったりとはまる作品。
安部公房自身は失敗作と評したようだが何が失敗なのか全く分からない。
登場人物全てが実世界の各典型であり生き生きとしており無駄がない。
特に人形使いの矢根の描写は秀逸。
安部公房自身は失敗作と評したようだが何が失敗なのか全く分からない。
登場人物全てが実世界の各典型であり生き生きとしており無駄がない。
特に人形使いの矢根の描写は秀逸。