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水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫) 文庫 – 1973/8/1
安部 公房
(著)
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狂っているのは、私か世界か。
人間存在の不安感を描ききった世にも奇妙な11編。
ある日突然現われた父親と名のる男が、奇怪な魚に生れ変り、それまで何の変哲も無かった街が水中の世界に変ってゆく「水中都市」、コモン君が、見馴れぬ植物になる話「デンドロカカリヤ」。
安部短編作品の頂点をなす表題二作に、戯曲「友達」の原型となった「闖入者」や「飢えた皮膚」など、寓意とユーモアあふれる文体の内に人間存在の不安感を浮び上がらせた初期短編11編を収録。
目次
デンドロカカリヤ
手
飢えた皮膚
詩人の生涯
空中楼閣
闖入者
ノアの方舟
プルートーのわな
水中都市
鉄砲屋
イソップの裁判
解説 ドナルド・キーン
本文より
ある日、コモン君は何気なく路端(みちばた)の石を蹴とばしてみた。春先、路は黒々と湿っていた。石は、石炭殻のようにひからびたこぶし大の目立たぬものだったが、何故蹴ってみようなどという気になったのだろう。ふと、その一見あたりまえなことが、如何(いか)にも奇妙に思われはじめた。
分るだろう。誰だってそんな憶えがあるにちがいない。思わずあたりを見まわして、他の人もそんなことをするものかどうか、そっと確かめてみたりする。
(「デンドロカカリヤ」)
本書「解説」より
安部氏の作品は初期から非現実的な要素が非常に多い。(「飢えた皮膚」の)「おれは飢えていた」というようないかにも写実的な出だしを読んで行くと、並大抵の作家が書いたものだったら、そこから始まる小説の発展が大体想像できるが、「そしてある日、おれの皮膚は死の不安に似た冷たさを感じ、暗い緑色に変っていた」というような結末は安部氏でなければ思い付かないと思う。結末を読むと、安部氏はふざけているのではないかと不安を感じる読者がいるかも知れないが、安部氏の場合、ふざけるということは真面目さと矛盾しない。人間の喜劇には悲壮な場面が多いが、喜劇だと定めてしまわなければ、耐えられないほど苦痛だろう。
――ドナルド・キーン(コロンビア大学名誉教授)
安部公房(1924-1993)
東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
人間存在の不安感を描ききった世にも奇妙な11編。
ある日突然現われた父親と名のる男が、奇怪な魚に生れ変り、それまで何の変哲も無かった街が水中の世界に変ってゆく「水中都市」、コモン君が、見馴れぬ植物になる話「デンドロカカリヤ」。
安部短編作品の頂点をなす表題二作に、戯曲「友達」の原型となった「闖入者」や「飢えた皮膚」など、寓意とユーモアあふれる文体の内に人間存在の不安感を浮び上がらせた初期短編11編を収録。
目次
デンドロカカリヤ
手
飢えた皮膚
詩人の生涯
空中楼閣
闖入者
ノアの方舟
プルートーのわな
水中都市
鉄砲屋
イソップの裁判
解説 ドナルド・キーン
本文より
ある日、コモン君は何気なく路端(みちばた)の石を蹴とばしてみた。春先、路は黒々と湿っていた。石は、石炭殻のようにひからびたこぶし大の目立たぬものだったが、何故蹴ってみようなどという気になったのだろう。ふと、その一見あたりまえなことが、如何(いか)にも奇妙に思われはじめた。
分るだろう。誰だってそんな憶えがあるにちがいない。思わずあたりを見まわして、他の人もそんなことをするものかどうか、そっと確かめてみたりする。
(「デンドロカカリヤ」)
本書「解説」より
安部氏の作品は初期から非現実的な要素が非常に多い。(「飢えた皮膚」の)「おれは飢えていた」というようないかにも写実的な出だしを読んで行くと、並大抵の作家が書いたものだったら、そこから始まる小説の発展が大体想像できるが、「そしてある日、おれの皮膚は死の不安に似た冷たさを感じ、暗い緑色に変っていた」というような結末は安部氏でなければ思い付かないと思う。結末を読むと、安部氏はふざけているのではないかと不安を感じる読者がいるかも知れないが、安部氏の場合、ふざけるということは真面目さと矛盾しない。人間の喜劇には悲壮な場面が多いが、喜劇だと定めてしまわなければ、耐えられないほど苦痛だろう。
――ドナルド・キーン(コロンビア大学名誉教授)
安部公房(1924-1993)
東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
- ISBN-104101121079
- ISBN-13978-4101121079
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日1973/8/1
- 言語日本語
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- 本の長さ336ページ
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他人の顔 | 壁 | けものたちは故郷をめざす | 飢餓同盟 | 第四間氷期 | 水中都市・デンドロカカリヤ | |
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【新潮文庫】安部公房 作品 | ケロイド瘢痕を隠し、妻の愛を取り戻すために他人の顔をプラスチックの仮面に仕立てた男。──人間存在の不安を追究した異色長編。 | 突然、自分の名前を紛失した男。以来彼は他人との接触に支障を来し、人形やラクダに奇妙な友情を抱く。独特の寓意にみちた野心作。 | ソ連軍が侵攻し、国府・八路両軍が跳梁する敗戦前夜の満州──政治の渦に巻きこまれた人間にとって脅迫の中の”自由”とは何か? | 不満と欲望が澱む、雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちが結成した”飢餓同盟”。彼らの野望とその崩壊を描く長編。 | 万能の電子頭脳に、ある中年男の未来を予言させたことから事態は意外な方向へ進展、機械は人類の苛酷な未来を語りだす。SF長編。 | 突然現れた父親と名のる男が奇怪な魚に生れ変り、何の変哲もなかった街が水中の世界に変ってゆく……。「水中都市」など初期作品集。 |
無関係な死・時の崖 | R62号の発明・鉛の卵 | 人間そっくり | 燃えつきた地図 | 砂の女 | 箱男 | |
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自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく「無関係な死」など、10編を収録。 | 生きたまま自分の《死体》を売ってロボットにされた技師の人間への復讐を描く「R62号の発明」など、思想的冒険にみちた作品12編。 | 《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところへあらわれた自称・火星人──彼はいったい何者か?異色のSF長編小説。 | 失踪者を追跡しているうちに、次々と手がかりを失い、大都会の砂漠の中で次第に自分を見失ってゆく興信所員。都会人の孤独と不安。 | 砂穴の底に埋もれていく一軒家に故なく閉じ込められ、あらゆる方法で脱出を試みる男を描き、世界20数カ国語に翻訳紹介された名作。 | ダンボール箱を頭からかぶり都市をさ迷うことで、自ら存在証明を放棄する箱男は、何を夢見るのか。謎とスリルにみちた長編。 |
密会 | 笑う月 | 友達・棒になった男 | 方舟さくら丸 | カンガルー・ノート | |
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夏の朝、突然救急車が妻を連れ去った。妻を求めて辿り着いた病院の盗聴マイクが明かす絶望的な愛と快楽。現代の地獄を描く長編。 | 思考の飛躍は、夢の周辺で行われる。快くも恐怖に満ちた夢を生け捕りにし、安部文学成立の秘密を垣間見せる夢のスナップ17編。 | 平凡な男の部屋に闖入した奇妙な9人家族。どす黒い笑いの中から”他者”との関係を暴き出す「友達」など、代表的戯曲3編を収める。 | 地下採石場跡の洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた〈ぼく〉。核時代の方舟に乗れる者は、誰と誰なのか?現代文学の金字塔。 | 突然〈かいわれ大根〉が脛に生えてきた男を載せて、自走ベッドが辿り着く先はいかなる場所か──。現代文学の巨星、最後の長編。 |
飛ぶ男 | (霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集 | |
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安部公房の遺作が待望の文庫化! 飛ぶ男の出現、2発の銃弾、男性不信の女、妙な癖をもつ中学教師。鬼才が最期に創造した世界。 | 19歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」、全集未収録の「天使」など、世界の知性、安部公房の幕開けを鮮烈に伝える初期短編11編。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1973/8/1)
- 発売日 : 1973/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 336ページ
- ISBN-10 : 4101121079
- ISBN-13 : 978-4101121079
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 42,321位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2017年11月2日に日本でレビュー済み
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期待を裏切らない安部ワールドです。短編なので、1つ読んで余韻を噛みしめながらだったので、長いこと楽しめました。
2013年12月17日に日本でレビュー済み
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少し前から安部公房を何十年ぶりかに再読していて、やはりいいなと思います。
とんでもないところへ連れてゆかれるというか、持ってゆかれるという、この妙な不安感と、
それでいて、しっかりした文体で、比喩や表現が豊かで、言葉の運びが軽妙だから、つい笑ってしまう。
そして、原因と結果の積み合わせの結果で(言葉をかえるならば、ごくごく実存主義的なやり方で)
いつのまにか、思いもよらない結末へと導かれてゆく、不安まじりのなんとも言えない快感が好きです。
さて、初期短編集だそうです。いろいろな雑誌に掲載されたものを収録したようです。
短編の作品も全体のプロットや緊張感が長編小説と同じくしっかりしていて、それでいて言葉が簡潔で小気味がいいです。
他のレビューアーも書かれていましたが、読んで一番に感じたのはメタモルフォーゼ(変身)です。
またイソップとか、プルートとか、ギリシャ・ローマ神話や古代西洋古典で見た名称があちらこちらにちりばめられています。
べつにそういう予備知識なしに、現代社会にあてはめて読んでも、遜色はないと思いますが、
こういったテーマの作品ばかりを一冊にまとめた人はえらいと思いました。
ときに難解と言われるようですが、私は好きです。
とんでもないところへ連れてゆかれるというか、持ってゆかれるという、この妙な不安感と、
それでいて、しっかりした文体で、比喩や表現が豊かで、言葉の運びが軽妙だから、つい笑ってしまう。
そして、原因と結果の積み合わせの結果で(言葉をかえるならば、ごくごく実存主義的なやり方で)
いつのまにか、思いもよらない結末へと導かれてゆく、不安まじりのなんとも言えない快感が好きです。
さて、初期短編集だそうです。いろいろな雑誌に掲載されたものを収録したようです。
短編の作品も全体のプロットや緊張感が長編小説と同じくしっかりしていて、それでいて言葉が簡潔で小気味がいいです。
他のレビューアーも書かれていましたが、読んで一番に感じたのはメタモルフォーゼ(変身)です。
またイソップとか、プルートとか、ギリシャ・ローマ神話や古代西洋古典で見た名称があちらこちらにちりばめられています。
べつにそういう予備知識なしに、現代社会にあてはめて読んでも、遜色はないと思いますが、
こういったテーマの作品ばかりを一冊にまとめた人はえらいと思いました。
ときに難解と言われるようですが、私は好きです。
2023年2月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安部公房の初期作品は、伝えたいことを表すのではなく、抽象画を文字で描き読者が感じるものが作品の姿なのかもしれない。
しかし、そういった手法は安部の筆が極まった作品でなければ、読者に届くことは難しかったのではないだろうか。
壁ほど無機質な感じではないけれど、燃えつきた地図やカンガルーノートにくらべ、つめたい絵画のような作品が、この本には11作収められている。
しかし、そういった手法は安部の筆が極まった作品でなければ、読者に届くことは難しかったのではないだろうか。
壁ほど無機質な感じではないけれど、燃えつきた地図やカンガルーノートにくらべ、つめたい絵画のような作品が、この本には11作収められている。
2013年7月3日に日本でレビュー済み
安部公房は、「完璧な嘘」の構築に命がけだったと言ってもいい。
だが、完璧な嘘など存在するのだろうか。
完璧な嘘をつくろうとする自分は、いったい何者なのか。
こういった逡巡の痕が、『水中都市』にも顔を出す。
主人公の同僚が描いた三枚の絵画。二人の勤務する工場が、水に沈んでいる。
絵画に導かれるように、水中都市と化す世界。主人公に突きつけられる不条理。
「なぜ、こんな目に会うんだ。」
「君が現実を愛しているからさ。」
なんとも印象的な会話である。
この短編集におさめられた作品は、多くが1964年に書かれている。
『砂の女』(1962)と『燃えつきた地図』(1967)執筆の、間隙にあたる。
個人的な意見にすぎないが、
嘘を、嘘として提出するという方法論が、最も強く押し出された時期の作品群ではないだろうか。
設計図がはっきりと見え過ぎる作品は、文学上級者には毛嫌いされる。
だが、嘘としての潔さに見え隠れする、文学的テーマの奥深さには驚嘆せざるを得ないのだ。
ぜひとも、偏見を捨て、読んでみてもらいたい。
公房先生をはじめて読む場合にも、この短編集はもってこいである。
いきなり『箱男』や『密会』を手に取るよりも、これがいい。
長編であれば、『第四間氷期』あたりがいいだろう。
だが、完璧な嘘など存在するのだろうか。
完璧な嘘をつくろうとする自分は、いったい何者なのか。
こういった逡巡の痕が、『水中都市』にも顔を出す。
主人公の同僚が描いた三枚の絵画。二人の勤務する工場が、水に沈んでいる。
絵画に導かれるように、水中都市と化す世界。主人公に突きつけられる不条理。
「なぜ、こんな目に会うんだ。」
「君が現実を愛しているからさ。」
なんとも印象的な会話である。
この短編集におさめられた作品は、多くが1964年に書かれている。
『砂の女』(1962)と『燃えつきた地図』(1967)執筆の、間隙にあたる。
個人的な意見にすぎないが、
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設計図がはっきりと見え過ぎる作品は、文学上級者には毛嫌いされる。
だが、嘘としての潔さに見え隠れする、文学的テーマの奥深さには驚嘆せざるを得ないのだ。
ぜひとも、偏見を捨て、読んでみてもらいたい。
公房先生をはじめて読む場合にも、この短編集はもってこいである。
いきなり『箱男』や『密会』を手に取るよりも、これがいい。
長編であれば、『第四間氷期』あたりがいいだろう。
2023年12月5日に日本でレビュー済み
「闖入者(ちんにゅうしゃ)」が、読みごたえがある。
民主主義という戦後日本への「闖入者」への一考察が実に面白く、著者の社会的な事象への深い関心が窺われる。
” これまでも多くの政治体制が試みられてきたし、またこれからも過ちと悲哀にみちたこの世界中で試みられていくだろう。民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にも出来ない。実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが ” ・・・この、ウインストン・チャーチルの言葉と共に味わうべき佳品と評し得よう。
民主主義という戦後日本への「闖入者」への一考察が実に面白く、著者の社会的な事象への深い関心が窺われる。
” これまでも多くの政治体制が試みられてきたし、またこれからも過ちと悲哀にみちたこの世界中で試みられていくだろう。民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にも出来ない。実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが ” ・・・この、ウインストン・チャーチルの言葉と共に味わうべき佳品と評し得よう。
2009年7月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
常に人間の存在の意義・曖昧さを問い掛ける作者の初期の短編集。作者特有の寓話性の高い作品が多いが、「メタモルフォセス=人間の存在の危うさの象徴」と捉えている印象を受けた。物語は寓話的なのに、登場人物の視線は舐めるように読者に絡み付く点は常の如く。
タイトル作「デンドロカカリヤ」は人間の植物化をかなり戯画的に扱ったものだし、「手」の主人公は鳩だが、軍用伝書鳩→手品用鳩→剥製→鳩の像→弾丸と変形を繰り返す。そして、変形は"必然"なのだ。「飢えた皮膚」は、飢えた男が有閑女を"皮膚が保護色になる"と脅かす話だが、最後の一頁で作品の解釈を転回させる秀作。二重の意味で変形を扱っている。「詩人の生涯」では、詩人の老母(39歳!)はジャケットに変形するが、極寒の中、息子の身体を包む。そして、詩集が完成すると...又しても二重の変形。そして、もう一つのタイトル作「水中都市」では、音信不通だった主人公の父が魚に変形し、街自身も水に覆われるという異形の世界が、ありふれた物語のように淡々と描かれる。
そんな中、「闖入者」は、主人公のアパートの部屋が突然見知らぬ大家族に乗っ取られるという不条理的冒頭から、民主主義の多数決と無関心が"個"を押し潰す様を戯画的に描いた、作者の作風を代表する秀作。「鉄砲屋」は無垢な島民を、自由主義が席巻する様を皮肉タップリに描いたもの。
「変形」をキーワードに、高度な小説技法で人間の存在の意義を問い掛けた傑作短編集。
タイトル作「デンドロカカリヤ」は人間の植物化をかなり戯画的に扱ったものだし、「手」の主人公は鳩だが、軍用伝書鳩→手品用鳩→剥製→鳩の像→弾丸と変形を繰り返す。そして、変形は"必然"なのだ。「飢えた皮膚」は、飢えた男が有閑女を"皮膚が保護色になる"と脅かす話だが、最後の一頁で作品の解釈を転回させる秀作。二重の意味で変形を扱っている。「詩人の生涯」では、詩人の老母(39歳!)はジャケットに変形するが、極寒の中、息子の身体を包む。そして、詩集が完成すると...又しても二重の変形。そして、もう一つのタイトル作「水中都市」では、音信不通だった主人公の父が魚に変形し、街自身も水に覆われるという異形の世界が、ありふれた物語のように淡々と描かれる。
そんな中、「闖入者」は、主人公のアパートの部屋が突然見知らぬ大家族に乗っ取られるという不条理的冒頭から、民主主義の多数決と無関心が"個"を押し潰す様を戯画的に描いた、作者の作風を代表する秀作。「鉄砲屋」は無垢な島民を、自由主義が席巻する様を皮肉タップリに描いたもの。
「変形」をキーワードに、高度な小説技法で人間の存在の意義を問い掛けた傑作短編集。
2015年6月27日に日本でレビュー済み
安部公房の昭和20年代の短篇集。
デンドロカカリヤ・・・デンドロカカリヤという奇妙な植物に主人公のコモン君が変身してしまうという変な話。
手・・・主人公はかつて伝書鳩だったが、剥製にされ、腐ってしまって燃やされ、「平和の鳩」の像となり、溶解されてその一部が弾丸となり、平和の鳩の像を切った「手」という人間に撃ち込まれるという変な話。
空中楼閣・・・空中楼閣建設事務所の人員募集に惹かれた主人公は、事務所を探す。空中楼閣とは、天候コントロールのための気象台かもしれないし、国家世論統一のための観念的呼称なのかもしれない。
闖入者・・・ある日、狭いアパートにどやどやと家族連れがやってくる。抗おうしても多数決の暴力でことごとく否決され、力でも人数によって押さえつけられる。弁護士に相談に行くと、弁護士の家も闖入家族に襲われている。
など計11篇
デンドロカカリヤ・・・デンドロカカリヤという奇妙な植物に主人公のコモン君が変身してしまうという変な話。
手・・・主人公はかつて伝書鳩だったが、剥製にされ、腐ってしまって燃やされ、「平和の鳩」の像となり、溶解されてその一部が弾丸となり、平和の鳩の像を切った「手」という人間に撃ち込まれるという変な話。
空中楼閣・・・空中楼閣建設事務所の人員募集に惹かれた主人公は、事務所を探す。空中楼閣とは、天候コントロールのための気象台かもしれないし、国家世論統一のための観念的呼称なのかもしれない。
闖入者・・・ある日、狭いアパートにどやどやと家族連れがやってくる。抗おうしても多数決の暴力でことごとく否決され、力でも人数によって押さえつけられる。弁護士に相談に行くと、弁護士の家も闖入家族に襲われている。
など計11篇