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無関係な死・時の崖 (新潮文庫) 文庫 – 1974/5/28
安部 公房
(著)
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追っているはずが、いつのまにか追われる身に。同一・背反の関係が、悲喜劇的に堂々めぐり。
周到な構成力、目をみはる完成度。著者が30代に到達した、抜群の短編集。
自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。
常に前衛的主題と取り組み、未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。
目次
夢の兵士
誘惑者
家
使者
透視図法
賭
なわ
無関係な死
人魚伝
時の崖
解説 清水徹
本書収録「無関係な死」より
客が来ていた。そろえた両足をドアのほうに向けて、うつぶせに横たわっていた。死んでいた。
もっとも、事態をすぐに飲込むというわけにはいかなかった。驚愕がおそってくるまでには、数秒の間があった。その数秒には、まるで電気をおびた白紙のような、息づく静けさがこめられていた。
つづいて、唇のまわりの毛細血管が、急激に収縮し、瞳孔が拡張して、視界が白っぽくなり、ふいに嗅覚がするどくなって、ぷんと生皮のにおいを嗅ぐ。
本書「解説」より
『人魚伝』の主人公が緑色過敏症となったまま(これを、生きつつしかも自然の生命から拒まれた宙づりの状態と言い直しては、あまりにもあからさまで貧相な絵解きにすぎないだろうが)、「物語の檻」にとらえられている。しかしこの差は著者が若年の夢を棄てたことをけっして意味しない。夢みる力の強さが、しだいに夢の苦さを教えてゆき、その苦さが無垢な夢の実現へのかぎりない再出発をうながすという、まるでメビウスの輪のようなふしぎな回路が安部公房の想像的世界において強調されているということなのである。
――清水徹(文芸評論家)
安部公房(1924-1993)
東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
周到な構成力、目をみはる完成度。著者が30代に到達した、抜群の短編集。
自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。
常に前衛的主題と取り組み、未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。
目次
夢の兵士
誘惑者
家
使者
透視図法
賭
なわ
無関係な死
人魚伝
時の崖
解説 清水徹
本書収録「無関係な死」より
客が来ていた。そろえた両足をドアのほうに向けて、うつぶせに横たわっていた。死んでいた。
もっとも、事態をすぐに飲込むというわけにはいかなかった。驚愕がおそってくるまでには、数秒の間があった。その数秒には、まるで電気をおびた白紙のような、息づく静けさがこめられていた。
つづいて、唇のまわりの毛細血管が、急激に収縮し、瞳孔が拡張して、視界が白っぽくなり、ふいに嗅覚がするどくなって、ぷんと生皮のにおいを嗅ぐ。
本書「解説」より
『人魚伝』の主人公が緑色過敏症となったまま(これを、生きつつしかも自然の生命から拒まれた宙づりの状態と言い直しては、あまりにもあからさまで貧相な絵解きにすぎないだろうが)、「物語の檻」にとらえられている。しかしこの差は著者が若年の夢を棄てたことをけっして意味しない。夢みる力の強さが、しだいに夢の苦さを教えてゆき、その苦さが無垢な夢の実現へのかぎりない再出発をうながすという、まるでメビウスの輪のようなふしぎな回路が安部公房の想像的世界において強調されているということなのである。
――清水徹(文芸評論家)
安部公房(1924-1993)
東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1974/5/28
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101121087
- ISBN-13978-4101121086
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出版社より
他人の顔 | 壁 | けものたちは故郷をめざす | 飢餓同盟 | 第四間氷期 | 水中都市・デンドロカカリヤ | |
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【新潮文庫】安部公房 作品 | ケロイド瘢痕を隠し、妻の愛を取り戻すために他人の顔をプラスチックの仮面に仕立てた男。──人間存在の不安を追究した異色長編。 | 突然、自分の名前を紛失した男。以来彼は他人との接触に支障を来し、人形やラクダに奇妙な友情を抱く。独特の寓意にみちた野心作。 | ソ連軍が侵攻し、国府・八路両軍が跳梁する敗戦前夜の満州──政治の渦に巻きこまれた人間にとって脅迫の中の”自由”とは何か? | 不満と欲望が澱む、雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちが結成した”飢餓同盟”。彼らの野望とその崩壊を描く長編。 | 万能の電子頭脳に、ある中年男の未来を予言させたことから事態は意外な方向へ進展、機械は人類の苛酷な未来を語りだす。SF長編。 | 突然現れた父親と名のる男が奇怪な魚に生れ変り、何の変哲もなかった街が水中の世界に変ってゆく……。「水中都市」など初期作品集。 |
無関係な死・時の崖 | R62号の発明・鉛の卵 | 人間そっくり | 燃えつきた地図 | 砂の女 | 箱男 | |
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自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく「無関係な死」など、10編を収録。 | 生きたまま自分の《死体》を売ってロボットにされた技師の人間への復讐を描く「R62号の発明」など、思想的冒険にみちた作品12編。 | 《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところへあらわれた自称・火星人──彼はいったい何者か?異色のSF長編小説。 | 失踪者を追跡しているうちに、次々と手がかりを失い、大都会の砂漠の中で次第に自分を見失ってゆく興信所員。都会人の孤独と不安。 | 砂穴の底に埋もれていく一軒家に故なく閉じ込められ、あらゆる方法で脱出を試みる男を描き、世界20数カ国語に翻訳紹介された名作。 | ダンボール箱を頭からかぶり都市をさ迷うことで、自ら存在証明を放棄する箱男は、何を夢見るのか。謎とスリルにみちた長編。 |
密会 | 笑う月 | 友達・棒になった男 | 方舟さくら丸 | カンガルー・ノート | |
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夏の朝、突然救急車が妻を連れ去った。妻を求めて辿り着いた病院の盗聴マイクが明かす絶望的な愛と快楽。現代の地獄を描く長編。 | 思考の飛躍は、夢の周辺で行われる。快くも恐怖に満ちた夢を生け捕りにし、安部文学成立の秘密を垣間見せる夢のスナップ17編。 | 平凡な男の部屋に闖入した奇妙な9人家族。どす黒い笑いの中から”他者”との関係を暴き出す「友達」など、代表的戯曲3編を収める。 | 地下採石場跡の洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた〈ぼく〉。核時代の方舟に乗れる者は、誰と誰なのか?現代文学の金字塔。 | 突然〈かいわれ大根〉が脛に生えてきた男を載せて、自走ベッドが辿り着く先はいかなる場所か──。現代文学の巨星、最後の長編。 |
飛ぶ男 | (霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集 | |
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カスタマーレビュー |
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安部公房の遺作が待望の文庫化! 飛ぶ男の出現、2発の銃弾、男性不信の女、妙な癖をもつ中学教師。鬼才が最期に創造した世界。 | 19歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」、全集未収録の「天使」など、世界の知性、安部公房の幕開けを鮮烈に伝える初期短編11編。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1974/5/28)
- 発売日 : 1974/5/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 336ページ
- ISBN-10 : 4101121087
- ISBN-13 : 978-4101121086
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 45,216位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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2019年7月18日に日本でレビュー済み
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何だかよくわからないままに、何が起きているのかを知りたくて話の筋を夢中になって追いかけ、
ようやく捉えかけたかと思ってほっとしていると反対側にいた、そんな話が多かったです。
読み終えるごとに余韻に浸りながら、あれはどういうことだろうかと考えてしまう読書体験は、
自分のなかで得心が行くと強烈な記憶に残ります。
純文学を基盤としてホラー・SF・ミステリ・哲学をごちゃ混ぜにし、
表現するために扱う言葉の知識量に圧倒されます。
読みやすいものもあれば、つまずくように読みにくくもなったり、文体の変化も楽しめました。
安部公房でこれが一番かと言われればそうではないですが、おすすめしやすい短篇集です。
ようやく捉えかけたかと思ってほっとしていると反対側にいた、そんな話が多かったです。
読み終えるごとに余韻に浸りながら、あれはどういうことだろうかと考えてしまう読書体験は、
自分のなかで得心が行くと強烈な記憶に残ります。
純文学を基盤としてホラー・SF・ミステリ・哲学をごちゃ混ぜにし、
表現するために扱う言葉の知識量に圧倒されます。
読みやすいものもあれば、つまずくように読みにくくもなったり、文体の変化も楽しめました。
安部公房でこれが一番かと言われればそうではないですが、おすすめしやすい短篇集です。
2023年2月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
課題のためにと買った本。怖かった。
2020年6月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昭和30年代に書かれた10の短編からなる。
どれも読んでいて不安な気持ちにさせるし、常にイライラしながら読むことになる話が続く。
「癒される」とか「ほっこりする」とかいう感じとは対極にある。
なお、作品中にある「今日の観点からみると差別的表現ととられかねない箇所」をそのままにしておくのはいいとしても、巻末の解説については差し替えていってもいいのではないだろうか。
どれも読んでいて不安な気持ちにさせるし、常にイライラしながら読むことになる話が続く。
「癒される」とか「ほっこりする」とかいう感じとは対極にある。
なお、作品中にある「今日の観点からみると差別的表現ととられかねない箇所」をそのままにしておくのはいいとしても、巻末の解説については差し替えていってもいいのではないだろうか。
2008年11月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とかく抽象的で難解な作品を書くと言うイメージがある作者が、人間心理の機微を具体的に描いた短編集。物語の進行に連れて増して行く作品の緊張感と登場人物の"不安"が読む者に乗り移り、その極限において現実世界の恐怖、哄笑、機知、悲哀等に転化される手腕は見事と言える。個人的には、鬼才F.ブラウン「まっ白な嘘」に文学的滋味を加えたような印象を受けた。
幻想味と哀切感が交錯する「夢の兵士」。まさに、F.ブラウンを思わせる奇妙な味の「誘惑者」。人間の曖昧性を描きながらも、ひたすら怖い「家」。「女か虎か」を哄笑談にしたような「使者」。「透視図鑑」は三つの小品から成り、監獄のような木賃宿を舞台にして人間の夢、孤独、欺瞞、矜持などを様々なタッチで綴ったもの。「賭」は謎が次第に膨らむ奇抜なホラ話を軽口体で綴りながら、金・能率・メディアと言ったものに支配されている現代社会を風刺したもの。「なわ」は身近な日常における恐怖がジワジワと染み渡る佳作。タイトル作「無関係な死」は本作の主旋律を奏でるもので、帰宅したアパートの自室に"無関係な死体"が転がっていた現実に向き合った主人公の狼狽、空虚な論理、妄想、機械的動作、策略、絶望などを描き、自縄自縛の中、迷路に陥る主人公の様をアイロニカルに映し出した秀作。「人魚伝」は冒頭から主人公の青年が物語の登場人物である事を意識している事を披瀝して驚かせるが、題名から人魚と青年との恋物語と思っていると...。ここまでの怪異譚になるとは。落ち目のボクサーに託して、人間における時間の連続性の問題を描いた「時の崖」。
バラエティに富んだ親しみ易い題材を用いながら、時にはユーモアと諧謔も交え、人間心理と社会問題を鋭く抉った傑作短編集。
幻想味と哀切感が交錯する「夢の兵士」。まさに、F.ブラウンを思わせる奇妙な味の「誘惑者」。人間の曖昧性を描きながらも、ひたすら怖い「家」。「女か虎か」を哄笑談にしたような「使者」。「透視図鑑」は三つの小品から成り、監獄のような木賃宿を舞台にして人間の夢、孤独、欺瞞、矜持などを様々なタッチで綴ったもの。「賭」は謎が次第に膨らむ奇抜なホラ話を軽口体で綴りながら、金・能率・メディアと言ったものに支配されている現代社会を風刺したもの。「なわ」は身近な日常における恐怖がジワジワと染み渡る佳作。タイトル作「無関係な死」は本作の主旋律を奏でるもので、帰宅したアパートの自室に"無関係な死体"が転がっていた現実に向き合った主人公の狼狽、空虚な論理、妄想、機械的動作、策略、絶望などを描き、自縄自縛の中、迷路に陥る主人公の様をアイロニカルに映し出した秀作。「人魚伝」は冒頭から主人公の青年が物語の登場人物である事を意識している事を披瀝して驚かせるが、題名から人魚と青年との恋物語と思っていると...。ここまでの怪異譚になるとは。落ち目のボクサーに託して、人間における時間の連続性の問題を描いた「時の崖」。
バラエティに富んだ親しみ易い題材を用いながら、時にはユーモアと諧謔も交え、人間心理と社会問題を鋭く抉った傑作短編集。
2022年10月10日に日本でレビュー済み
数十年ぶりに読み返しました。
昭和30年代に発表された短編集ですが、追うものと追われるものの逆転、飼育するものと飼育されるものとの逆転、トポロジカルな空間の歪みなど、一筋縄ではいきません。
論理関係がしっかりし、起承転結が明確な小説を読みなれている人には読みにくいと思いますし、私も初めはそうでした。
しかし、安部ワールドに引き込まれると抜け出せない嗜癖性があります。
昭和30年代に発表された短編集ですが、追うものと追われるものの逆転、飼育するものと飼育されるものとの逆転、トポロジカルな空間の歪みなど、一筋縄ではいきません。
論理関係がしっかりし、起承転結が明確な小説を読みなれている人には読みにくいと思いますし、私も初めはそうでした。
しかし、安部ワールドに引き込まれると抜け出せない嗜癖性があります。
2021年4月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
短編が好きで、初めて此方の著者の本を購入したが、読んでいて非常に疲れる。つまらない。駄作。
2020年4月25日に日本でレビュー済み
久しぶりに安部公房の作品に触れたのですが、短編にもこんな傑作があったことに驚かされました。
全編が悪夢そのものの印象に満ちていて、逆説的にもの凄いリアリティのある悪夢のスライドショーを否応なしに見せられているかのようです。特に私には「家」が印象に残ったので、むしろ「無関係な死」も「時の崖」も物足りない気がしたくらいです。とにかくこんなに恐ろしい話を読んだのは初めてだと思うくらいです。正常と異常の境目が、この小説家特有の粘着力のある説得性によってふやけてしまってくる感じです。
何か作者自身が、無茶振りの設定を自分に課して、どこまで形にできるかを楽しんでいるかのようです。その雰囲気が濃厚なのが「賭」や「使者」で、読んでいるうちに自分も気が変になりそうな気がするとともに、ある種とことん念入りに捏ねられた屁理屈の冴え(まあ、それはほとんど病的な妄想の一歩手前まで来てますが)に思わず苦笑させられます。
皆さんお勧めの「人魚伝」も、実に面白いものでした。ここでは作者の理知的な部分が光って、ロマンチックな期待に冷水を浴びせられる感覚ですが、それがまた素晴らしいです。
また意外に躁然とした饒舌体もこの作家の魅力であり、まだ読んでない戯曲作品も読みたくなってきました。
全編が悪夢そのものの印象に満ちていて、逆説的にもの凄いリアリティのある悪夢のスライドショーを否応なしに見せられているかのようです。特に私には「家」が印象に残ったので、むしろ「無関係な死」も「時の崖」も物足りない気がしたくらいです。とにかくこんなに恐ろしい話を読んだのは初めてだと思うくらいです。正常と異常の境目が、この小説家特有の粘着力のある説得性によってふやけてしまってくる感じです。
何か作者自身が、無茶振りの設定を自分に課して、どこまで形にできるかを楽しんでいるかのようです。その雰囲気が濃厚なのが「賭」や「使者」で、読んでいるうちに自分も気が変になりそうな気がするとともに、ある種とことん念入りに捏ねられた屁理屈の冴え(まあ、それはほとんど病的な妄想の一歩手前まで来てますが)に思わず苦笑させられます。
皆さんお勧めの「人魚伝」も、実に面白いものでした。ここでは作者の理知的な部分が光って、ロマンチックな期待に冷水を浴びせられる感覚ですが、それがまた素晴らしいです。
また意外に躁然とした饒舌体もこの作家の魅力であり、まだ読んでない戯曲作品も読みたくなってきました。