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砂の女 (新潮文庫) 文庫 – 2003/3/1
安部 公房
(著)
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欠けて困るものなど、何一つありはしない。
砂穴の底に埋もれていく一軒家に故なく閉じ込められ、あらゆる方法で脱出を試みる男を描き、世界二十数カ国語に翻訳紹介された名作。
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。
砂穴の底に埋もれていく一軒家に故なく閉じ込められ、あらゆる方法で脱出を試みる男を描き、世界二十数カ国語に翻訳紹介された名作。
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。
- ISBN-10410112115X
- ISBN-13978-4101121154
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日2003/3/1
- 言語日本語
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- 本の長さ288ページ
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登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (2003/3/1)
- 発売日 : 2003/3/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 288ページ
- ISBN-10 : 410112115X
- ISBN-13 : 978-4101121154
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 2,595位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2024年2月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
もう40年以上前から読んで何度も読み返す作品です。2021年にコロナにかかって、隔離の期間がありました。軽症というかほとんど症状がないのに、公権力によって、外出が禁じられ家の外に一歩もで出られない状況が続きました。隔離の終わるもう何日も前から4日後に出られる、明後日には出られる、明日には出られるとなって、指折り数えて当日を迎えました。ところが、もう出てもいいとなった時に、不思議と出たいと思う気持ちが薄れ、いつだって出ようと思えば出られる、と思い、半日以上家に留まっていたのでした。作品の主人公のラストと見事に重なり、環境にすぐ順応してしまう人間の柔軟性と硬直性を感じざるを得ませんでした。
2022年7月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
100分で名著に取り上げられていたので、読んでみました。
テレビで見た時の印象はもっと幻想的な怖さをはらんだ物語と感じましたが、実際読んでみると主人公の理論的な考えや、科学的な描写があまりにも細かくて、途中で少しうんざりしてきました。
生き物の環境に対する順応性。
住めば都という概念だろう。
そこに住む人と人との繋がりが生まれ、風景や馴れ親しんだ家や道具に取り絡められ、身動きができなくなっていく。
私も空調の効いた快適な部屋に居ながらも、もしかしたら砂のすり鉢の底にいるのかもしれない、自分から落ちたのかもしれない。
テレビで見た時の印象はもっと幻想的な怖さをはらんだ物語と感じましたが、実際読んでみると主人公の理論的な考えや、科学的な描写があまりにも細かくて、途中で少しうんざりしてきました。
生き物の環境に対する順応性。
住めば都という概念だろう。
そこに住む人と人との繋がりが生まれ、風景や馴れ親しんだ家や道具に取り絡められ、身動きができなくなっていく。
私も空調の効いた快適な部屋に居ながらも、もしかしたら砂のすり鉢の底にいるのかもしれない、自分から落ちたのかもしれない。
2023年11月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
寓意にあふれた作品で、読者はストーリーを遂うのと同時並行的に「なぞ解き」が迫られる中編である。
(初めて拝読したが、途中で何度も映画の「岸田今日子」の、のっぺりとした顔が脳裏に浮かんでくるのは、如何ともしがたい。。。)
砂の穴の中でも、外の世界でも「同じ状況、大した差はない」のではないか・・・砂の穴に「居ついてしまう男」
の心理は、人間の生の哀しい、否、たくましい性(さが)なのかもしれないと、ふと思わせる面白さ。
安部公房の奇をてらったかの如き構成が、「理に落ち過ぎず、ギリギリのところで小説の体を保った稀有な作品」と評し得よう。
(初めて拝読したが、途中で何度も映画の「岸田今日子」の、のっぺりとした顔が脳裏に浮かんでくるのは、如何ともしがたい。。。)
砂の穴の中でも、外の世界でも「同じ状況、大した差はない」のではないか・・・砂の穴に「居ついてしまう男」
の心理は、人間の生の哀しい、否、たくましい性(さが)なのかもしれないと、ふと思わせる面白さ。
安部公房の奇をてらったかの如き構成が、「理に落ち過ぎず、ギリギリのところで小説の体を保った稀有な作品」と評し得よう。
2024年5月28日に日本でレビュー済み
絶望の淵、そしてその環境の暗さや匂いまで漂うような臨場感
人間の卑しさが苦しくてたまらない 読み手にそこまで感じさせるほど圧倒的な小説でした
人間の卑しさが苦しくてたまらない 読み手にそこまで感じさせるほど圧倒的な小説でした
2024年3月29日に日本でレビュー済み
今年は安部公房の生誕100年ということらしい。各誌でいろいろな特集がとりあげられ、演劇活動を含むこの作家の多彩な才能が紹介されている。ということで「箱男」にするか「他人の顔」にするか晩年の「箱舟さくら丸」にするかと考えた挙句やはり映画にもなった本著「砂の女」を再読することになった。
はじめてこの本を手にしたときは衝撃だった。何かの対談だった気もするが安部は手段と目的ということについてことさら興味深い話をしていたのを覚えている。
物語は砂地にすむ昆虫の採集を目的とする男が沿岸の小さな村の砂掻き人夫として捕らえられ砂と格闘する話といえばそれまでだが、まぎれもなく現在が抱えた複雑な問題を照らし出すきわめて寓意にとんだ構造となっている。村を侵蝕する砂の流動を食い止める砂掻きという労働それは目的なのか手段なのか。冒頭、安部公房は次のようにいっている。
「鳥のように、飛び立ちたいと願う自由もあれば、巣ごもって、誰からも邪魔されまいと願う自由もある。砂との闘いを通じて、その二つの自由の関係を追及してみたのがこの作品」と。
砂のがわに立てば、形あるものは、すべて虚しい。確実なのは、ただ、一切の形を否定する砂の流動だけである。しかし、薄い板壁一枚へだてた向うでは、相も変らず、砂掻きをつづける女の動作がつづいていた。あんな女の細腕で、いったい何が出来るというのだろう。まるで、水をかきわけて、家を建てようとするようなものじゃないか。水の上には、水の性質にしたがって、船をうかべるべきなのだ。(p39)
捕らわれの身となった男はこんなことがあっていいものかと訴えるように自問する。
だが、それにしても、ありえないことだ。あまりにも常軌を逸した出来事だ。ちゃんとした戸籍をもち、職業につき、税金もおさめていれば、医療保険証も持っている、一人前の人間を、まるで鼠か昆虫みたいに、わなにかけて捕らえるなどということが、許されていいものだろうか。(p47)
理不尽な恐怖と不安の中で幾度となく脱出を試みるのだが簡単にはいかない。なるほど導入部の掴みといい最後の括りといいサスペンスに充ち満ちた絶妙の描写が印象的である。
八月のある日、男が一人、行方不明になった。休暇を利用して、汽車で半日ばかりの海岸に出かけたきり、消息をたってしまったのだ。捜索願も、新聞広告も、すべて無駄に終わった。(p3)
とはじまり、最後はこうなっている。
失踪に関する届出の催告
不在者 仁木順平 生年月日昭和二年三月七日
右の不在者に対し 仁木しの
から失踪申告の申立があったから、不在者は昭和三十七年九月二十一日までに当裁判所に生存の届出をされたい。届出のない場合は失踪宣告を受けることになります。また不在者の生死を知っている者は、右期日までにその旨当裁判所に届け出て下さい。
昭和三十七年二月十八日
家庭裁判所(p217)
となっていて、家庭裁判所の審判をもっておわっているのだ。
村を守るための砂掻きという労働、誰でも防砂林でもつくればと考えるだろう。それでも女はこれが一番いいのだという。男はもがき苦しみながらも手段と目的、自由とはどういうことか、存在とはと考えつづけるのだった。
物語は終盤になって思いがけない展開をむかえる。脱出に成功したかと思われた男はアリ地獄のような砂の沼にはまり村の男らに助けられふたたび女の家に連れ戻されるのだが、男は砂穴の暮らしに一つの「希望」をみつける。砂の毛管現象による溜水装置の発明だった。
やがて女は妊娠し砂穴の家から町の病院へ運ばれる、半年ぶりに降ろされた縄梯子を伝って男は外へ出て深呼吸する。
穴の底で、何かが動いた。自分の影だった。影のすぐ上に、溜水装置があり、木枠が一本、外れていた。女を運び出すときに、誤って踏みつけられたのだろう。あわてて、修繕のために、引き返す。水は、計算で予定されていたとおり、四の目盛りまで溜っていた。
・・・略)別にあわてて逃げだしたりする必要はないのだ。いま、彼の手のなかの往復切符には、行先も、戻る場所も、本人の自由に書き込める余白になって空いている。(p216)
男はどのような自由を手に入れたのだろうか、読後にのこされた奇妙な感覚この問いかけは何を意味するのだろう。
さすがに安部公房、やっぱり安部公房だなおもしろい。
はじめてこの本を手にしたときは衝撃だった。何かの対談だった気もするが安部は手段と目的ということについてことさら興味深い話をしていたのを覚えている。
物語は砂地にすむ昆虫の採集を目的とする男が沿岸の小さな村の砂掻き人夫として捕らえられ砂と格闘する話といえばそれまでだが、まぎれもなく現在が抱えた複雑な問題を照らし出すきわめて寓意にとんだ構造となっている。村を侵蝕する砂の流動を食い止める砂掻きという労働それは目的なのか手段なのか。冒頭、安部公房は次のようにいっている。
「鳥のように、飛び立ちたいと願う自由もあれば、巣ごもって、誰からも邪魔されまいと願う自由もある。砂との闘いを通じて、その二つの自由の関係を追及してみたのがこの作品」と。
砂のがわに立てば、形あるものは、すべて虚しい。確実なのは、ただ、一切の形を否定する砂の流動だけである。しかし、薄い板壁一枚へだてた向うでは、相も変らず、砂掻きをつづける女の動作がつづいていた。あんな女の細腕で、いったい何が出来るというのだろう。まるで、水をかきわけて、家を建てようとするようなものじゃないか。水の上には、水の性質にしたがって、船をうかべるべきなのだ。(p39)
捕らわれの身となった男はこんなことがあっていいものかと訴えるように自問する。
だが、それにしても、ありえないことだ。あまりにも常軌を逸した出来事だ。ちゃんとした戸籍をもち、職業につき、税金もおさめていれば、医療保険証も持っている、一人前の人間を、まるで鼠か昆虫みたいに、わなにかけて捕らえるなどということが、許されていいものだろうか。(p47)
理不尽な恐怖と不安の中で幾度となく脱出を試みるのだが簡単にはいかない。なるほど導入部の掴みといい最後の括りといいサスペンスに充ち満ちた絶妙の描写が印象的である。
八月のある日、男が一人、行方不明になった。休暇を利用して、汽車で半日ばかりの海岸に出かけたきり、消息をたってしまったのだ。捜索願も、新聞広告も、すべて無駄に終わった。(p3)
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失踪に関する届出の催告
不在者 仁木順平 生年月日昭和二年三月七日
右の不在者に対し 仁木しの
から失踪申告の申立があったから、不在者は昭和三十七年九月二十一日までに当裁判所に生存の届出をされたい。届出のない場合は失踪宣告を受けることになります。また不在者の生死を知っている者は、右期日までにその旨当裁判所に届け出て下さい。
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村を守るための砂掻きという労働、誰でも防砂林でもつくればと考えるだろう。それでも女はこれが一番いいのだという。男はもがき苦しみながらも手段と目的、自由とはどういうことか、存在とはと考えつづけるのだった。
物語は終盤になって思いがけない展開をむかえる。脱出に成功したかと思われた男はアリ地獄のような砂の沼にはまり村の男らに助けられふたたび女の家に連れ戻されるのだが、男は砂穴の暮らしに一つの「希望」をみつける。砂の毛管現象による溜水装置の発明だった。
やがて女は妊娠し砂穴の家から町の病院へ運ばれる、半年ぶりに降ろされた縄梯子を伝って男は外へ出て深呼吸する。
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・・・略)別にあわてて逃げだしたりする必要はないのだ。いま、彼の手のなかの往復切符には、行先も、戻る場所も、本人の自由に書き込める余白になって空いている。(p216)
男はどのような自由を手に入れたのだろうか、読後にのこされた奇妙な感覚この問いかけは何を意味するのだろう。
さすがに安部公房、やっぱり安部公房だなおもしろい。
2020年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
砂の穴に閉じ込められて、まず自分のことを反省する人はいない。誰かのせいにしてしまう。
その有様を明確に示しているのは、過去の時代に書かれているにもかかわらず、古さを感じない。
今、コロナ禍に置かれていることを考えると、まだ、誰かのせいにしないだけ良いが、自分の今までを
振り返ることはこれから出発するためには大事で、ばねを圧縮させ、飛び上がるエネルギーを蓄えるタイミングと捉えることはできないだろうか。
その有様を明確に示しているのは、過去の時代に書かれているにもかかわらず、古さを感じない。
今、コロナ禍に置かれていることを考えると、まだ、誰かのせいにしないだけ良いが、自分の今までを
振り返ることはこれから出発するためには大事で、ばねを圧縮させ、飛び上がるエネルギーを蓄えるタイミングと捉えることはできないだろうか。
2024年5月2日に日本でレビュー済み
1962年刊。短篇「チチンデラ ヤパナ」をもとにした書き下ろし長篇。男の失踪というその導入部から一気に引き込まれる。ムダのない叙述と描写、理路整然とした説明、しかも比喩という比喩がぴたりと文脈にはまる。不条理なシチュエーションなのに、圧倒的なリアリティ。「巧い」のひと言に尽きる。
砂丘、昆虫採集、ハンミョウ、そして砂粒。道具立てが絶妙だ。セクシュアルな場面も逃走劇もある。裸そのものよりも、砂に覆われた裸のほうがはるかにエロティック――フォトグラファー安部公房がそこにも顔を出す。
作品の着想を得たのは酒田の砂丘だという。酒田がフォトグラファー土門拳の故郷というのもなんかの因縁か。
砂丘、昆虫採集、ハンミョウ、そして砂粒。道具立てが絶妙だ。セクシュアルな場面も逃走劇もある。裸そのものよりも、砂に覆われた裸のほうがはるかにエロティック――フォトグラファー安部公房がそこにも顔を出す。
作品の着想を得たのは酒田の砂丘だという。酒田がフォトグラファー土門拳の故郷というのもなんかの因縁か。