「箱男」を読み終わって一晩たつと、頭の中ですべてが統合されてくる。
「方舟さくら丸」の時もそうだったが、あまりにもぶっとんだ世界なので
読んですぐには頭が混乱してしまう。途中ではぐらかされて、箱男の
脳の中にまぎれこむ。
一晩経つとすべてのエピソードが時系列でななく、登場人物の一人一人が
統合されて一つの人格に収斂してゆく。
最後、「救急車のサイレンが近づいて来た。」わけだけれど、最後の解説にも
ここには触れていない。なぜ触れないのか不思議だけれど、触れられないという
べきか。自分なりの解釈が成り立っても、絶対こういう意味なのだという
確信はもてない。天才安部公房が答えてくれれば嬉しいが。。。
記述がほとんどない人物がひとり。それは出て行った医者の奥さん。
他に女性としては看護婦とピアノ教師が出てくる。現実社会で奥さんが出て行って、
箱男の幻想の中に棲み着くのは、医者の愛人の看護婦。過去の思い出としてのピアノ教師、
彼女は「ぼく」にスコープでのぞかれた罰として、部屋に連れ込んで彼を鍵穴から覗く。
彼は覗こうとした対象のピアノ教師に覗かれて、勃起して射精してしまう。ピアノ教師は
その場面を楽しんでいたと思われるのだ。
その存在は箱男の幻想の中で医者の愛人、後の箱男自身の愛人の看護婦となっているの
かもしれない。これらの女性2人は同一人格かと思える。また「ぼく」とABCDすべての
者は同一人格と考えれば話が理解しやすい。
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箱男 (新潮文庫) 文庫 – 2005/5/1
安部 公房
(著)
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購入オプションとあわせ買い
全国各地には、かなりの数の箱男が身をひそめている。
どうやら世間は箱男について、口をつぐんだままにしておくつもりらしい――。
ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。
読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述されてゆく、実験的精神溢れる書下ろし長編。
本文より
さらに五日目からは部屋にいるかぎり、食事と、大小便と、睡眠以外のほとんどを、箱のままで過すようになった。一抹の疚(やま)しさを除けば、べつに異常なことをしているという意識はない。それどころか、この方がずっと自然で、気も楽だ。これまでは嫌々ながらだった独り暮しまで、今ではかえって、禍い転じて福となった思いである。
六日目。いよいよ最初の日曜日。来客の予定はないし、外出の計画もない。(中略)
そして、翌朝――ちょうど一週間目――Aは箱をかぶったまま、そっと通りにしのび出た。そしてそのまま、戻ってこなかった。
(「たとえばAの場合」)
本書「解説」より
考えてみればわれわれ現代人は、隅々まで約束事や習慣や流行や打算に支配され、その上、この小説の主人公がかつてそうであったように、「ひどいニュース中毒」に罹っている。「自分で自分の意志の弱さに腹を立てながら、それでも泣く泣くラジオやテレビから離れられない。」もしもそういうものをすべてかなぐり捨てたら、世界はどう見え、われわれはどんな存在になるだろうか。風景が均質になり、いままで大切に思っていたものも、無価値と思って無視してきたものも、同等の価値をもって目にはいって来る。それと同時に、こちらの方向感覚、時間感覚も麻痺し、われわれ自身でなくなって、「贋のぼく」が現われる。
――平岡篤頼(文芸評論家)
安部公房(1924-1993)
東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
どうやら世間は箱男について、口をつぐんだままにしておくつもりらしい――。
ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。
読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述されてゆく、実験的精神溢れる書下ろし長編。
本文より
さらに五日目からは部屋にいるかぎり、食事と、大小便と、睡眠以外のほとんどを、箱のままで過すようになった。一抹の疚(やま)しさを除けば、べつに異常なことをしているという意識はない。それどころか、この方がずっと自然で、気も楽だ。これまでは嫌々ながらだった独り暮しまで、今ではかえって、禍い転じて福となった思いである。
六日目。いよいよ最初の日曜日。来客の予定はないし、外出の計画もない。(中略)
そして、翌朝――ちょうど一週間目――Aは箱をかぶったまま、そっと通りにしのび出た。そしてそのまま、戻ってこなかった。
(「たとえばAの場合」)
本書「解説」より
考えてみればわれわれ現代人は、隅々まで約束事や習慣や流行や打算に支配され、その上、この小説の主人公がかつてそうであったように、「ひどいニュース中毒」に罹っている。「自分で自分の意志の弱さに腹を立てながら、それでも泣く泣くラジオやテレビから離れられない。」もしもそういうものをすべてかなぐり捨てたら、世界はどう見え、われわれはどんな存在になるだろうか。風景が均質になり、いままで大切に思っていたものも、無価値と思って無視してきたものも、同等の価値をもって目にはいって来る。それと同時に、こちらの方向感覚、時間感覚も麻痺し、われわれ自身でなくなって、「贋のぼく」が現われる。
――平岡篤頼(文芸評論家)
安部公房(1924-1993)
東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
- ISBN-104101121168
- ISBN-13978-4101121161
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日2005/5/1
- 言語日本語
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- 本の長さ248ページ
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他人の顔 | 壁 | けものたちは故郷をめざす | 飢餓同盟 | 第四間氷期 | 水中都市・デンドロカカリヤ | |
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【新潮文庫】安部公房 作品 | ケロイド瘢痕を隠し、妻の愛を取り戻すために他人の顔をプラスチックの仮面に仕立てた男。──人間存在の不安を追究した異色長編。 | 突然、自分の名前を紛失した男。以来彼は他人との接触に支障を来し、人形やラクダに奇妙な友情を抱く。独特の寓意にみちた野心作。 | ソ連軍が侵攻し、国府・八路両軍が跳梁する敗戦前夜の満州──政治の渦に巻きこまれた人間にとって脅迫の中の”自由”とは何か? | 不満と欲望が澱む、雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちが結成した”飢餓同盟”。彼らの野望とその崩壊を描く長編。 | 万能の電子頭脳に、ある中年男の未来を予言させたことから事態は意外な方向へ進展、機械は人類の苛酷な未来を語りだす。SF長編。 | 突然現れた父親と名のる男が奇怪な魚に生れ変り、何の変哲もなかった街が水中の世界に変ってゆく……。「水中都市」など初期作品集。 |
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無関係な死・時の崖 | R62号の発明・鉛の卵 | 人間そっくり | 燃えつきた地図 | 砂の女 | 箱男 | |
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自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく「無関係な死」など、10編を収録。 | 生きたまま自分の《死体》を売ってロボットにされた技師の人間への復讐を描く「R62号の発明」など、思想的冒険にみちた作品12編。 | 《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところへあらわれた自称・火星人──彼はいったい何者か?異色のSF長編小説。 | 失踪者を追跡しているうちに、次々と手がかりを失い、大都会の砂漠の中で次第に自分を見失ってゆく興信所員。都会人の孤独と不安。 | 砂穴の底に埋もれていく一軒家に故なく閉じ込められ、あらゆる方法で脱出を試みる男を描き、世界20数カ国語に翻訳紹介された名作。 | ダンボール箱を頭からかぶり都市をさ迷うことで、自ら存在証明を放棄する箱男は、何を夢見るのか。謎とスリルにみちた長編。 |
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夏の朝、突然救急車が妻を連れ去った。妻を求めて辿り着いた病院の盗聴マイクが明かす絶望的な愛と快楽。現代の地獄を描く長編。 | 思考の飛躍は、夢の周辺で行われる。快くも恐怖に満ちた夢を生け捕りにし、安部文学成立の秘密を垣間見せる夢のスナップ17編。 | 平凡な男の部屋に闖入した奇妙な9人家族。どす黒い笑いの中から”他者”との関係を暴き出す「友達」など、代表的戯曲3編を収める。 | 地下採石場跡の洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた〈ぼく〉。核時代の方舟に乗れる者は、誰と誰なのか?現代文学の金字塔。 | 突然〈かいわれ大根〉が脛に生えてきた男を載せて、自走ベッドが辿り着く先はいかなる場所か──。現代文学の巨星、最後の長編。 |
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飛ぶ男 | (霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集 | |
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価格 | ¥649¥649 | ¥825¥825 |
安部公房の遺作が待望の文庫化! 飛ぶ男の出現、2発の銃弾、男性不信の女、妙な癖をもつ中学教師。鬼才が最期に創造した世界。 | 19歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」、全集未収録の「天使」など、世界の知性、安部公房の幕開けを鮮烈に伝える初期短編11編。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (2005/5/1)
- 発売日 : 2005/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 248ページ
- ISBN-10 : 4101121168
- ISBN-13 : 978-4101121161
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 11,952位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2013年4月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安倍公房の世界観、好きです。商品状態も悪くはなく、良い買い物が出来ました。ありがとうございました
2015年5月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安倍公房やはり変態であり、天才である。
各小節はとても分かりすく、箱男が何なのか何がしたいのかがよくわかる。
ただ小節ごとの繋がりが分かりづらい。
納得のいく終わりもなければ、この小説を読んだからと言って何か得られるわけでもない。
最近(2015年)はとにかく何事にも意味を求めたがり、自己啓発本や生活に役立つ、金が儲かるような本が溢れている。
小説でさえこの本を読んだから教養が高まるかもしれない、等と卑しい目的で読む始末である。
この「箱男」に何か求めている人は読まない方が良いだろう。
各小節はとても分かりすく、箱男が何なのか何がしたいのかがよくわかる。
ただ小節ごとの繋がりが分かりづらい。
納得のいく終わりもなければ、この小説を読んだからと言って何か得られるわけでもない。
最近(2015年)はとにかく何事にも意味を求めたがり、自己啓発本や生活に役立つ、金が儲かるような本が溢れている。
小説でさえこの本を読んだから教養が高まるかもしれない、等と卑しい目的で読む始末である。
この「箱男」に何か求めている人は読まない方が良いだろう。
2024年1月19日に日本でレビュー済み
劇中劇あるいは一種の推理小説。面白くはなかった。
解説から読むべきであろう。
解説から読むべきであろう。
2017年4月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一回では、理解しづらいですが 何回も読むと安部先生の伝えたいことが少しずつ分かってきます。
2013年10月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安部公房と行ったら箱男。
はっきり言って、よく分からな無い構成ですが、このカオスをどう泳ぎきるか。
読み手によって、評価も、感想も、読後感も違うものでしょう。
それこそ、安部さんに踊らされているような気がします。
はっきり言って、よく分からな無い構成ですが、このカオスをどう泳ぎきるか。
読み手によって、評価も、感想も、読後感も違うものでしょう。
それこそ、安部さんに踊らされているような気がします。
2023年3月6日に日本でレビュー済み
安部公房の傑作と言われる「砂の女」を読んでも正直この作者が生きていればノーベル賞だったと言われる理由がわからなかった。ただその後この「箱男」を読んですごさがわかった。僕の印象では、作風は違うけど大江健三郎の「万延元年のフットボール」に匹敵する作品。ノーベル賞の有力候補になったのも納得できた。
2008年5月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
人間を描写する上で最高の部類じゃないかな、この小説はさ。
箱男という見られることを拒否した人間を軸に、見ることと見られることとの関係性を
安部公房一流の観察力と内面から滲み出す知性の輝きをもって表現してるのが、この作品。
確かに、この作品を傑作とみなせいという意見もあると思う。ラストが、あまりにも迷路に
なっているからだ。だが考え抜いて突き詰めれば人間の思考は迷路みたいなものなんだから
結局、当然の帰結というわけだ。
そして不思議な事に、なぜか時代が経つにつれて、この作品の伝えたいことが明確になって
くるような気がしてるのは僕だけじゃないと思うんだがなー。時代が追いついて来たというか
なんとゆうかさー。
いろんな解釈ができる話だが、僕が思うに一番は「開き直り」だよな。良くも悪くも。
四角四面の箱ってものを伸縮自在なものに変えてるわけよ。つまる所、何男でもいいわけさ。
箱じゃなくてもね。開き直りならさ。
そして開き直って初めて認識する事っては多々あるもんでさ。つまり認識者にはなれる。
ただ認識することと達観することはまた違って、開き直れば、それまで繋いでものを切る
わけだから達観には永遠に届かない。人間って皮肉な動物だと、これを読むたび思うよ。
箱男という見られることを拒否した人間を軸に、見ることと見られることとの関係性を
安部公房一流の観察力と内面から滲み出す知性の輝きをもって表現してるのが、この作品。
確かに、この作品を傑作とみなせいという意見もあると思う。ラストが、あまりにも迷路に
なっているからだ。だが考え抜いて突き詰めれば人間の思考は迷路みたいなものなんだから
結局、当然の帰結というわけだ。
そして不思議な事に、なぜか時代が経つにつれて、この作品の伝えたいことが明確になって
くるような気がしてるのは僕だけじゃないと思うんだがなー。時代が追いついて来たというか
なんとゆうかさー。
いろんな解釈ができる話だが、僕が思うに一番は「開き直り」だよな。良くも悪くも。
四角四面の箱ってものを伸縮自在なものに変えてるわけよ。つまる所、何男でもいいわけさ。
箱じゃなくてもね。開き直りならさ。
そして開き直って初めて認識する事っては多々あるもんでさ。つまり認識者にはなれる。
ただ認識することと達観することはまた違って、開き直れば、それまで繋いでものを切る
わけだから達観には永遠に届かない。人間って皮肉な動物だと、これを読むたび思うよ。