現実にはおそらくありえない理想家族のメルヘンを、日記風に書き綴った佳品。幼い孫の一人から預かったうさぎのミミリーが居間を動き回る都度、幸福感がこぼれてきそうな老夫婦の日常生活は、平穏と感謝とハーモニカの音色に彩られているようだが、作者がその一歩先に見つめているのは、紛れもなく「死」の一点である。
いつも心のこもった手紙を寄越してくれる足柄の長女に、「いい手紙をくれた。ありがとう」と何度も記す作者の胸の奥には、やがて訪れる永遠の別れを前にした父親の情愛が込められているのだろう。
一見平穏な家庭の奥底に潜む亀裂と深淵を「舞踏」「プールサイド小景」で描ききった作者は、それから半世紀後、ささやかな毎日の生きる悦びを容認しそこに射すいかなる不安要素をも排除する強い姿勢で、黄昏の夕陽に突っ立っているかのようである。
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うさぎのミミリー (新潮文庫 し 8-5) 文庫 – 2005/4/1
庄野 潤三
(著)
- 本の長さ251ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2005/4/1
- ISBN-104101139059
- ISBN-13978-4101139050
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2005/4/1)
- 発売日 : 2005/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 251ページ
- ISBN-10 : 4101139059
- ISBN-13 : 978-4101139050
- Amazon 売れ筋ランキング: - 535,881位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1921-2009)1921(大正10)年、大阪府生れ。
九州帝大を2年で終え、海軍に入る。戦後、教職を経て朝日放送に勤め、小説を書き始める。1954(昭和29)年、「プールサイド小景」で芥川賞受賞。平穏な日常の危うさを描き、「第三の新人」の一人として活躍する。1960年の「静物」で新潮社文学賞、1965年の「夕べの雲」で読売文学賞、1972年の「明夫と良二」で赤い鳥文学賞、毎日出版文化賞を受賞。
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