1995から2002年にかけて 5シリーズ 50話が放映されたフジテレビの人気シリー
ズ『御家人斬九郎』の原作。原作は短篇10篇 (片手業十話)、中編5篇 (「箱根の山
は越えにくいぜ」「あの世で金が使えるか」「美女は薄命だぜ」「座敷牢に謎があ
るぜ」「青い肌に謎があるぜ」) しかない。テレビシリーズは、原作のアイディア
を取り入れたものもあるが、ほとんどが局の創作である。
主人公の松平残九郎 (通称斬九郎) は、眠狂四郎の流れをくむニヒルな無頼漢だが、
狂四郎と違って出生の暗い影を背負っていないぶん、性格が明るい。渡辺謙の演じ
る斬九郎は女性に対してはストイックな男で、吉原や岡場所に行っても女を抱くわ
けではない。蔦吉姐さんとはお互いに憎からず思っているもののプラトニックな関
係のままだが、原作の斬九郎は吉原に居続けて女をあげ、10日余りで百数十両を使
い切るという遊び人。
若村麻由美の演じる蔦吉は、斬九郎の情報源として活躍するだけでなく、類まれな
美貌、胸のすく啖呵、あでやかな踊りで視聴者を魅了する。原作の蔦吉は斬九郎の
情婦としてわずか数場面にしか登場しない。原作の与力西尾伝三郎は落ち着き払っ
た偉丈夫。南北町奉行所きっての切れ者だ。斬九郎の働きで十万両の公金を回収し
たときなど、斬九郎が片手業料として勝手に600両差し引いたのを咎めるどころか、
600両不足では半端だから1000両不足として処理し、400両を麻佐女に届けるとい
う太っ腹。いっぽう、テレビの伝三郎は小心な典型的小役人タイプに矮小化されて
いる。斬九郎が十万両取り戻したのに自腹で1両払っただけとはみみっちい。
原作は文庫本に収まる程度の量しかないが、柴田錬三郎の作品だけあって、筋書き
がいい。短中篇ながら、事態が二転三転、波瀾に富んでいる。斬九郎は剣技の冴え
もさることながら、相手の意図、事件の裏事情を見抜く眼力がすばらしい。
奇想天外な事件の多い娯楽時代小説の傑作である。
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御家人斬九郎 (新潮文庫 し 5-27) 文庫 – 1984/9/1
柴田 錬三郎
(著)
- 本の長さ387ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1984/9/1
- ISBN-104101150273
- ISBN-13978-4101150277
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1984/9/1)
- 発売日 : 1984/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 387ページ
- ISBN-10 : 4101150273
- ISBN-13 : 978-4101150277
- Amazon 売れ筋ランキング: - 130,735位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2017年4月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
僕の場合はドラマの記憶が強くて、麻佐女様が岸田今日子さんで再生されます。
いかにはまり役で優れた女優さんであったか思い知りました。
作品自体は、江戸時代ラノベという感じでしょうか。
短時間にさくっと読めて良いです。
いかにはまり役で優れた女優さんであったか思い知りました。
作品自体は、江戸時代ラノベという感じでしょうか。
短時間にさくっと読めて良いです。
2023年8月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
渡辺謙&若村麻由美&岸田今日子 等の実写版、優れた演技を先に観てしまい その印象が強いためか? なにか物足りなく感じてしまった。
2016年11月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
よく調べて知識として持っていたしきたりや面白い習慣、それも武家から町人に関するものにいたるまで、細々としたものになりますが、随所に引用していて、物知りもこうなると言葉を尽くすことが叶って満足したことでしょう。
豊臣の末裔が「女子」であるというもの、柴錬立川文庫にもその類の趣旨がありましたね。「薩摩飛脚」の項目など興味深い応用となりました。
テレビドラマとなったものを好んで視聴しました。岸田今日子氏がばば様に扮したわけですが、一例として面白かったです。
豊臣の末裔が「女子」であるというもの、柴錬立川文庫にもその類の趣旨がありましたね。「薩摩飛脚」の項目など興味深い応用となりました。
テレビドラマとなったものを好んで視聴しました。岸田今日子氏がばば様に扮したわけですが、一例として面白かったです。
2018年9月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
元々、文庫本は持っていたんですが・・・
母上様のカギカッコ部分が。どうしても岸田今日子さんの声で脳内再生されてしまいます。
母上様のカギカッコ部分が。どうしても岸田今日子さんの声で脳内再生されてしまいます。
2019年1月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
実に面白い、何度も読み返してます
DVDも買えると良いんですが…
DVDも買えると良いんですが…
2018年10月24日に日本でレビュー済み
柴田錬三郎『御家人斬九郎』は江戸時代後期の貧乏御家人が表沙汰にできない罪人の介錯を副業とする時代小説である。主人公の松平残九郎は名門の家柄であるが、無役で微禄、最下級の御家人である。本名は残九郎で、通り名が斬九郎と設定が凝っている。渡辺謙主演で時代劇になった。
著者は三田文学出身であり、慶應義塾大学卒の私には親近感がある。武士の物語であるが、江戸城にもほとんど行ったことのない下級武士であり、忠義や立身出世という要素はない。公務員臭さはない。民間感覚を大事にした慶應義塾大学の学風を感じさせる。
反骨精神は前老中が出す料理にも発揮される。第四話「柳生但馬守に見せてやりてえ」では小粒な高級料理をこき下ろす。「料亭の名だけで、もったいめかした、子猫の餌ほどの小鯛二尾、それも一向に味らしい味もせぬ」。高い値段の料理を高い値段ということでありがたがる愚かさはない。価格と品質が比例するという浅ましい拝金主義ではなく、健全な消費者感覚がある。
本書は一話完結のオムニバス形式である。この一話一話が非常に短い。想像力を働かされる。文字数や原稿用紙の枚数が報酬の単位となる作家としては贅沢な作品である。
著者は三田文学出身であり、慶應義塾大学卒の私には親近感がある。武士の物語であるが、江戸城にもほとんど行ったことのない下級武士であり、忠義や立身出世という要素はない。公務員臭さはない。民間感覚を大事にした慶應義塾大学の学風を感じさせる。
反骨精神は前老中が出す料理にも発揮される。第四話「柳生但馬守に見せてやりてえ」では小粒な高級料理をこき下ろす。「料亭の名だけで、もったいめかした、子猫の餌ほどの小鯛二尾、それも一向に味らしい味もせぬ」。高い値段の料理を高い値段ということでありがたがる愚かさはない。価格と品質が比例するという浅ましい拝金主義ではなく、健全な消費者感覚がある。
本書は一話完結のオムニバス形式である。この一話一話が非常に短い。想像力を働かされる。文字数や原稿用紙の枚数が報酬の単位となる作家としては贅沢な作品である。
2020年2月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
だいたい話に無理がある。
時代物読んでる人なら気になる部分がある。
ファンタジーではないのだから・・・・
時代物読んでる人なら気になる部分がある。
ファンタジーではないのだから・・・・