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新史 太閤記(下) (新潮文庫) 文庫 – 1973/5/29
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豊臣秀吉の天才的人心掌握を描く司馬遼太郎版『太閤記』。
備中高松城を水攻めのさなか本能寺の変を伝え聞いた秀吉は、“中国大返し”と語り伝えられる強行軍で京都にとって返し、明智光秀を討つ。柴田勝家、徳川家康ら、信長のあとを狙う重臣たちを、あるいは懐柔し、あるいは討ち滅ぼすその稀代の智略は、やがて日本全土の統一につながってゆく。
常に乱世の英雄を新しい視角から現代に再現させる司馬遼太郎の「国盗り物語」に続く戦国第二作。
本文より
ともあれ天下の堅城といわれた鳥取城は落ち、因幡(いなば)一国は平定した。この天正八年から九年にかけての時期は、織田家の家臣時代での秀吉の得意の絶頂ともいうべきときであったであろう。
――どうだ。
と、姫路城での夜食のときなど、小姓(こしょう)を相手に誇った。誇らざるをえない。この大いなる成功を、古今、何者が為しえたか。
「おれだけだ」
みなが閉口するほど、賑やかに自慢した。自分の業績をつつみかくせるほど、秀吉は陰気な謙譲家ではない。
「古の頼朝も義経も、みな貴種の出だ。うまれながらにして武門の棟梁(とうりょう)であった。おれをみよ。前身は尾張中村の草刈り童(わらべ)である。御当家にあっては御草履をとる小者から身をおこした。こういう男は、唐天竺にもいまい」(「高松城」)
司馬遼太郎(1923-1996)
大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。1993(平成5)年には文化勲章を受章。“司馬史観”とよばれる自在で明晰な歴史の見方が絶大な信頼をあつめるなか、1971年開始の『街道をゆく』などの連載半ばにして急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。
- 本の長さ544ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1973/5/29
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-10410115211X
- ISBN-13978-4101152110
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【新潮文庫】司馬遼太郎 作品 | 信長、秀吉……権力者たちの陰で、凄絶な死闘を展開する二人の忍者の生きざまを通して、かげろうの如き彼らの実像を活写した長編。〈直木賞受賞〉 | 幕末の混乱の中で、劣等感から命ぜられるままに人を斬る男の激情と苦悩を描く表題作ほか変革期に生きた人間像に焦点をあてた 8 編。 | 戦国時代の武将たちに利用され、やがて殺されていった忍者たちを描く表題作など、歴史に埋もれた興味深い人物や事件を発掘する。 | 戦国の争乱期に遅れた伊達政宗の生涯を描く表題作。坂本竜馬ひきいる海援隊員の、英国水兵殺害に材をとる「慶応長崎事件」など 7 編。 | 歴史小説に新時代を画した司馬文学の発想の源泉と積年のテーマ、”権力とは””日本人とは”に迫る、独自な発想と自在な思索の軌跡。 | 初めてこの地を旅した著者が、「文明」と「文化」を見分ける独自の透徹した視点から、人類史上稀有な人工国家の全体像に肉迫する。 |
草原の記 | 司馬遼太郎が考えたこと 1~15 | 国盗り物語〔一〕~〔四〕 | 燃えよ剣〔上・下〕 | 花神〔上・中・下〕 | |
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一人のモンゴル女性がたどった苛烈な体験をとおし、 20 世紀の激動と、その中で変わらぬ営みを続ける遊牧の民の歴史を語り尽くす。 | 40年以上の創作活動のかたわら書き残したエッセイの集大成シリーズ。第 1 巻は新聞記者時代から直木賞受賞前後までの 89 篇を収録。 | 貧しい油売りから美濃国主になった斎藤道三、天才的な知略で天下統一を計った織田信長。新時代を拓く先鋒となった英雄たちの生涯。 | 組織作りの異才によって、新選組を最強の集団へ作りあげてゆく”バラガキのトシ”──剣に生き剣に死んだ新選組副長土方歳三の生涯。 | 周防の村医から一転して官軍総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげた、日本近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く |
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秀頼、淀殿を挑発して開戦を迫る家康。大坂冬ノ陣、夏ノ陣を最後に陥落してゆく巨城の運命に託して豊臣家滅亡の人間悲劇を描く。 | 秦の始皇帝没後の動乱中国で覇を争う項羽と劉邦。天下を制する”人望”とは何かを、史上最高の典型によってきわめつくした歴史大作。 | 猿飛佐助の影となって徳川に立向った忍者霧隠才蔵と真田十勇士たち。屈曲した情熱を秘めた忍者たちの人間味あふれる波瀾の生涯。 | 徳川三百年の礎を、隷属忍従と徹底した模倣のうちに築きあげていった徳川家康。俗説の裏に隠された”タヌキおやじ”の実像を探る。 | 幕末の激動期に、封建制の崩壊を見通しながら、武士道に生きるため、越後長岡藩をひきいて官軍と戦った河井継之助の壮烈な生涯。 | 古今最大の戦闘となった天下分け目の決戦の過程を描いて、家康・三成の権謀の渦中で命運を賭した戦国諸雄の人間像を浮彫りにする。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1973/5/29)
- 発売日 : 1973/5/29
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 544ページ
- ISBN-10 : 410115211X
- ISBN-13 : 978-4101152110
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 55,779位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
1923年大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語部卒。「ペルシャの幻術師」で講談倶楽部賞、『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『国盗り物語』『坂 の上の雲』『空海の風景』『翔ぶが如く』など構想の雄大さ、自在で明晰な視座による作品を多数発表。この他『街道をゆく』『風塵抄』『この国のかたち』な どの紀行、エッセイも多数。’96年逝去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 司馬遼太郎と寺社を歩く (ISBN-13: 978-4334747213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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イメージ付きのレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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あの信長から「侍たるものは皆、秀吉にあやかりたく存ずべし」と言わせる発想力と行動力は凄まじい。上司の信長の操縦術も心得ている。器がデカいとは秀吉のような人間を形容するためにある。今の日本にもこんな人間いるのだろうか?
竹中直人の秀吉がイメージにぴったりだ。
名臣としての前半生。
信長の死後、仇を討ち、天下取りへと
駆け上る壮年期。
人たらしの天才であり、軍略の天才でもあった。
しかし、なぜか輝きを失っていく後半生。
無理な朝鮮出兵。後継者問題。
適切な手を打てれば、豊臣政権はもっと
続いたはず。
光の部分はすばらしいが影の部分を
もっと知りたかった。
立身というのを我々日本人は好む。
奴僕のような生い立ちでしかも猿のようにみにくい。このような男が信長という一種、合理主義の権化のような君主に仕える。これだけでも十分にドラマチックなのだが、それに加えてこのハンディキャップの固まりのような男が稀代の出世を遂げる。解説にもあるように、これは小説家ならずとも物語りたい題材だと思う。ここで我々は何をして彼を頂点に登らしめたか?そのモチベーションは一体なんだ、と疑問に感じる。それは前述の出自や容姿の劣等感だけではなく、まさに主、信長の合理主義を究めた強い意志だと知る。つまり目的の達成のためには手段を問わないという姿勢であり、信長は強硬を選び、秀吉は懐柔を採ったということだ。司馬遼太郎氏はそのような秀吉(像)を愛し、それ故に老害により汚れた晩節を描くのは忍びがたかったのだろう。
今太閤と呼ばれ、強烈な個性を持って、ある面国民に愛されたあの党人政治家も亡くなって久しい。かの政党にもその影響を受けた者が少なくなり、いわゆる貴種の2世議員が主流となって、党も傾いている。今もし、党の再起を願うなら、籐吉郎を見よ、と言いたい。意味の無い矜持など捨て去り、本当の意味で、国民に土下座の出来るリーダーを選べと言いたい。汚れた膝はその後で拭えばいいのだから。