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胡蝶の夢(一) (新潮文庫) 文庫 – 1983/11/1
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時代が求める〝蘭学〟という鋭いメスで身分社会を切り裂いていった男たち。
黒船来航で沸き立つ幕末。それまでの漢方医学一辺倒から、にわかに蘭学が求められるようになった時代を背景に、江戸幕府という巨大組織の中で浮上していった奥御医師の蘭学者、松本良順。悪魔のような記憶力とひきかえに、生まれついてのはみ出し者として短い一生を閉じるほかなかった彼の弟子、島倉伊之助。変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していった男たち。
【著者の言葉】
『胡蝶の夢』を書くについての作者のおもわくのひとつは、江戸身分制社会というものを一個のいきものとして作者自身が肉眼で見たいということであった。
それを崩すのは、蘭学であった。むろん蘭学だけではなく、それに後続する幾重もの波のために洗いくずされてゆくのだが、蘭学もまたひきがね作用の一つをなしたことはいうまでもない。(略)
末期には幕府機関の重要な部分が〝蘭学化〟することによって身分社会は大きくくずれるし、さらに皮肉なことに蘭学を学んだ者が、卑賤の境涯から身分社会において異数の栄達をした。(第四巻「伊之助の町で」)
【目次】
恋が浦
平河町界隈
良順と妻
伊之助
春風秋雨
放れ駒
猫の恋
佐倉へ
順天堂
帰雁
城の中
長崎
はるかな海
伊之助の長崎
司馬遼太郎(1923-1996)
大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。1993(平成5)年には文化勲章を受章。“司馬史観"とよばれる自在で明晰な歴史の見方が絶大な信頼をあつめるなか、1971年開始の『街道をゆく』などの連載半ばにして急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。
- 本の長さ496ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1983/11/1
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101152276
- ISBN-13978-4101152271
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黒船来航で沸き立つ幕末。それまでの漢方医学一辺倒から、にわかに蘭学が求められるようになった時代を背景に、江戸幕府という巨大組織の中で浮上していった奥御医師の蘭学者、松本良順。悪魔のような記憶力とひきかえに、生まれついてのはみ出し者として短い一生を閉じるほかなかった彼の弟子、島倉伊之助。変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していった男たち。 | 幕末海軍の教師団にポンペという軍医のいることを知った松本良順は、あらゆる圧力を断ち切って長崎に走る。やがて佐渡から語学の天才である弟子の伊之助を呼びよせた良順は、ポンペを師に迎え、まったく独力で医学伝習所を開講し、あわせて付属病院を建てる。ひろく庶民に門戸をひらいたこの病院は、身分で閉ざされた社会に、錐でもみ込むように西欧の平等思想を浸透させてゆく。 | ポンペの帰国とともに江戸の医学所の頭取となった松本良順は、緊張した時局の中で不眠に苦しんでいる一橋慶喜の主治医となり、阿片を用いてこれを治す。一方、語学の天才・伊之助は「七新薬」という蘭方の医書を刊行するまでになったが、その特異な性格が周囲に容れられず、再び佐渡に逼塞する。また、赤貧のなかでポンペ医学を修めた関寛斎は、請われて阿波蜂須賀家の侍医となる。 | 瓦解する幕府の海陸軍軍医総裁となった松本良順は、官軍の来襲とともに江戸を脱出し会津に向かう。他方、ともにポンペ医学を学んだ関寛斎も、官軍野戦病院長として会津に進軍し良順と対峙する。そして、激動のなかで何らなすところなく死んでゆく伊之助。徳川政権の崩壊を、権力者ではなく、蘭学という時代を先取りした学問を学んだ若者たちの眼を通して重層的に映し出した歴史長編。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1983/11/1)
- 発売日 : 1983/11/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 496ページ
- ISBN-10 : 4101152276
- ISBN-13 : 978-4101152271
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 28,527位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
![司馬 遼太郎](https://m.media-amazon.com/images/I/01Kv-W2ysOL._SY600_.png)
1923年大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語部卒。「ペルシャの幻術師」で講談倶楽部賞、『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『国盗り物語』『坂 の上の雲』『空海の風景』『翔ぶが如く』など構想の雄大さ、自在で明晰な視座による作品を多数発表。この他『街道をゆく』『風塵抄』『この国のかたち』な どの紀行、エッセイも多数。’96年逝去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 司馬遼太郎と寺社を歩く (ISBN-13: 978-4334747213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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数年前に読んだ、手塚治虫による『陽だまりの樹』で、幕末に漢方医と蘭方医の抗争があったことは既に知ってはいたものの、それが何を意味するのか、あるいは何を日本社会にもたらしたのか、といったところにまでは考えを至らしめなかった。
本書でも幕末における漢方医と蘭方医の抗争を物語の題材として取り上げてはいる。しかし、著者である司馬遼太郎氏が最も描きたかったことは、その背景として存在する「江戸的身分制」そのものであることに、読み進めるうちに自ずと気づかされることになる。
さて、その「江戸的身分制」とはどのようなものなのか。著者は以下のように整理している。
「江戸的身分制は、ほとんど数学的としかいえないほどに多様かつ微細に上下関係の差が組みあわされている。ひとびとは相手が自分より上か下かを即座に判断し、相手が下ならば自分の体まで大きく見せ、上ならば体を小さくして卑屈になる。そういう伸縮の感覚が、江戸社会に暮らす上で重要な芸になっていた」(四巻、339頁)
その特徴を「伸縮の感覚」にあると著者は表現している。
幕府の瓦解によって幕藩体制は終焉を迎える。それと同時にその身分制度も、名目上とはいえ崩壊することになる。そして、本書のようにこの点に焦点をあてるとすれば、それに大いに左右させたものの象徴として、オランダをはじめとする、西洋の学問の日本国内における隆盛をあげることができる。
本書では日本の医学の転換点、つまり、漢方医の国内における権力失墜と、蘭方医の影響力の強化に至る情勢を子細に描いている。この幕末に「蘭方」にその地位をとって変わられた「漢方医」とはどのような存在であったのか。
本書によれば、彼らは、
「『法印、法眼』などと、奥御医師たちは大旗本でも遠慮するほどの位を持っていながら、登城して詰間に詰めても、ふつう用事というのはさほどにない。侍医の最高官の典薬頭にいたっては、毎年、元旦の祝いに使われる屠蘇を献上するだけで、高位と高禄を世襲していた」(一巻、67頁)。
つまり、現代の感覚では考えられないことであるが、当時は医療に対する技術とは関係なしに、「世襲」で医者になることができたということなのだ。
加えて、医者の身分によって、診る患者の身分も異なっていた。当然、将軍を診る医者の方が、町人を診る町医者よりもエライ、ということになってくる。これこそが江戸的身分制度の象徴といえるものだろう。
しかし、オランダの医学による「蘭方」はそれとは全く違う。長崎で良順や伊之助が教えを受けた、オランダ人医師である「ポンぺ」は「医者にとって、病者は平等である」と、ことあるごとに言っていた(四巻、77頁)。この思想は、オランダの市民社会からやってきたポンぺにとってはあたりまえの内容であったのだが、それを受けいれ、学んだ良順らにすれば、強烈な思想であったということは想像に難くない。
つまり、学問や技術というのは、「そのもののみ」がやってくるのというわけにはいかない。医学は医学だけがやってくるのではなく、「オランダの社会思想やヨーロッパの人権思想など、あらゆる非日本的な思想が付着してやってくるものらしい」(二巻、130頁)ということなのだ。
江戸幕府が鎖国により、西洋の学問、文化の輸入を制限していたのも、西洋の思想の国内の流入は、幕府による身分制度を事実上否定すること繋がることが明白だからである。
あとから読み返すと、この小説の主人公のひとりである「島倉伊之助」による体験をもって、以上で触れた本書の命題の伏線が、作品の冒頭部分から描かれていたことにも気づく。
初め、伊之助少年は祖父に連れられて、江戸に留学することになる。その時の体験だ。
彼は後の師、あるいは同志、共同研究者ともなる松本良順のもとに行く前に、そのあっせんを依頼した、「小西屋義兵衛」の屋敷で江戸での初めての夜を祖父とともに過ごすことになった。そこで、伊之助と祖父に寝床として割り当てられたのは「納屋」であった。当然、小西屋の彼らに対する扱いも非常にぞんざいなもので、伊之助は「江戸はこんなものなのか、佐渡はよかった」と涙を流す。その伊之助に対し、祖父はこう諭す。
「江戸は、身分の町だ。身分も能もない傭われ者はつまらぬ目に遭うが、お前はその傭われ者にさえなっていない」(一巻、37頁)、「江戸には百も二百も身分がある(中略)それを心得て身を縮めて生きろ」(同、40~41頁)。
しかし、伊之助は長じて、その身分制度から一歩外に出た立場にある「医者」として人生を歩むことになる(といっても医者としては大成せず、語学力、いうよりは言葉に対する類い稀な記憶力をいかして、通訳、より正確に言えば「翻訳家」として活躍することになる)。
そして、この伊之助という存在が、この小説を非常に魅力的なものにしている。
著者は彼についてこのように評している。
「伊之助はどういうわけか、人の世がわかりにくい」(一巻、140頁)ところがあり、そして「他の人間に対する感覚の何ごとかが欠けている」(同、142頁)ような人間なのだ。
さらに、「人と人との関係が人事という言葉であるとすれば、伊之助には人事の感覚に欠けていた。人事の作法、約束事、あるいは感覚の集積が世間というものである以上、伊之助には世間がわからない」(三巻、139頁)。
語学には凄まじい才能を発揮しつつも、人間関係はからっきし駄目なのである。人には常に誤解され、嫌われる。
そしてなによりも、この人物の一番悲しい点が、当の本人には悪気はさらさら無く、さらに本人はそういった点を全く自覚していない、ということなのだ。
第四巻の巻末解説で、粕谷一希氏は「読者は自らの周囲に、或いは自らの内に、伊之助と同様の社会不適応の部分を共有していることを気づかされるのである」(485頁)と述べている。
この人物を松本良順が見出し、それと同時に同情のような感情も抱きつつ、江戸や長崎において本人の才能を良い方向に伸ばそう、活かそうと働きかける。彼やもう一人の同志とも言える「関寛斎」も同様に、伊之助に対し、なにかと目を掛けてやることになる。
そういった光景と同じような感覚をもって、この作品の読者もどこか同情の目やある種の共感を持ってこの人物を見てしまうのである。
伊之助ほど極端でないとしても、「人からどのように思われているかわからない」という感覚、さらにいえば一種の恐怖感は、誰もが持つ感覚であるように思われる。
それは伊之助のような性質と断絶されたものでは決してない。いわば程度の差があるといったものでしかなく、人間誰もが持つ性質のひとつであるように思われてならないのである。
そう言った意味で、伊之助は特異なキャラクターではなく、多くの人に共感を与えうる身近な人物だと感じる。我々にこのような感情を抱かせる、伊之助のように個性的な人物を描いた作品がこれまでにあっただろうか。
読者は幕末を「医学」の面から捉えるという見方にまず新鮮さを覚える。そして、必然的に当時の「身分制」について考察を巡らすことになる。
当時の医師達にも様々な生き方があり、その生き様を見せつけられた読者は、社会制度の過渡期ともいえる激動の幕末という時代において、己だったらいかに生きうるか、という歴史からの深遠なる問いに悩まされ続けることなるのである。
タイトルにもあるが、そもそもこれが間違いだった。
司馬遼太郎はその知名度と作風から「司馬遼太郎が言うなら間違いないだろう」と言う先入観を持たれてしまう。彼のエピソードに制作にあたり徹底的に資料を集めると言う逸話があるからそれは間違いないだろう。
だが、主人公の伊之助が斜視だったり人格的に破綻していたり、紀多楽真印が蘭学者をいびるという描写は明らかに後世の人間に対して誤解を植え付けてしまっている。
手塚治虫もこの本の影響をモロに受けている節があり、司馬が紀多楽真印を悪役としてしまった故に手塚の作品の中でも彼は悪役として登場する。
伊東玄朴の弟子である佐野常民が芸者遊びで伊東の蘭学書を売り払ったという一節は名誉毀損ものではないだろうか(佐野が何故本を売ったかを生涯伏せたというところからのフィクション)
また司馬の幕末モノに出てくる登場人物の性格は基本的に司馬の好き、嫌いで決まるので勝海舟の扱いは胡蝶の夢に限らず、他の作品でも悪い。
この様にあくまでフィクションとして割り切り、且つ嘘を嘘として見抜けないと司馬の作品は説得力があるだけに非常に危険だと思う。
物語としてはよく出来ているが、織り交ぜたフィクションの毒性を考えると、どうやら司馬遼太郎と言う男の話は手放しで褒められないと言わざるを得ない。
幕末期の医療の断面がとてもよく書かれていて、夢中で読みきりました。