本書は、作家・畠山清行氏による「読み物」である。
既に絶版となっている大部の著作を選択再編集したものだ。
保坂正康氏も本書の編集者にふさわしい。
適宜、註や解説が挿入されている。
本書の巻末に次にような但書がある。
【本書は、昭和四十六年に番町書房より刊行された『秘録 陸軍中野学校』(正・続)の二冊を底本として、文庫化にあたって再編集したものです。(詳しくは、巻頭の「編者まえがき」をご覧下さい)。】
本書の編集方針は、この前書きを読めば、よく理解できる。
編者は、第二編の解説に次のように記している。
「…著者の取材に協力している中野関係者が多数いる一方で、本書の内容に否定的な中野関係者も少なからず存在する。敢えてこのことを付け加えておく。但し、他の中野関係書と比して、本書がもっとも幅広く各種のエピソードを伝え、その批評眼も確かで、細かい点は別にして、史実も客観的に伝えている書である…」(p.266)
秘密戦に関するエピソードが多いということは、現代の我々にとって、それだけ、考える材料や教訓を得る具体例が提示されていることで喜ばしい。
読み物として、とても面白い。
昭和40年の週刊誌連載当時、これを読んだ映画関係者の、映像にしたくなった気持ちが分かる。
作家の筆力によって、陸軍中野学校に多くの人々が関心を持ったことは、著者の功績だ。
著者の本書にかけた熱意は、保坂氏による付録「〈小伝〉作家・畠山清行」でうかがい知ることができる。
本作者は、学者でないので、これが精一杯の記述スタイルであったと思うし、それを理解した上で本書を楽しめばよい。
いわば、陸軍中野学校「畠山史観」といった所だ。
尚、出典等、記述の正確さをより求めたいのならば、論文調のスティーブン・C・マルカード氏による
『陸軍中野学校の光と影』(訳者の「あとがき≒論考」と特別寄稿も興味深い)を、
陸軍中野学校の全体を短時間で俯瞰したい方には、
福山隆氏による『「陸軍中野学校」の教え』(動画で謦咳に接することができる卒業生牟田照雄の特別寄稿収録)を、お薦めする。
少年の頃、アマチュア無線の免許を取得した思い出があるので、
第四編中の「サイゴンの偽放送」が興味深かった。
出力のより強いサイゴン放送局が、蘭軍のバンドン放送局になりすまし(放送原稿やアナウンサー等)、
日本軍のジャワ攻略を成功に導いたという史実があった。
また、ガダルカナル撤収作戦では、米軍と同じ周波数帯を使い、
偽情報を流して作戦成功の一助になったと言われている。
この当時の秘密戦(謀略等)の事例をあれこれ考えると、現代の戦争がハイブリット戦争、
超限戦と呼ばれるのが理解できる。
戦争を避けるためにも、こうした様相の変化を理解した上で、外交に努めてほしいと願う。(以上)
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秘録 陸軍中野学校 (新潮文庫) 文庫 – 2003/7/30
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情報に命を賭けた戦士たち。現代日本をも操る「諜報」の水脈。
「謀略は『誠』なり」──
欧米諸国に対して情報戦に出遅れた日本は、昭和十三年、秘密裏に工作員養成機関「陸軍中野学校」を誕生させた。
軍部の因習から離れた合理的、開明的な教育は、敗戦までの僅かな間に驚嘆すべき成果を挙げるが……。
諜報とは何か、謀略とは何か。
出身者たちの活躍と失敗を徹底的に追いながら、戦争の裏面と工作員の実態に迫った傑作ノンフィクション作品。
各章に編者・保阪正康による詳細な「解説」を付記、読者への案内とした。
日本には今でも諜報活動を卑劣な行為として蔑む傾向があるが、戦前の軍部も同じく諜報戦、情報戦を軽視していた。この日本の悪しき伝統に抗する形で、遅ればせながら昭和十三年に創設されたのが陸軍中野学校であり、日本の他の軍事教育機関とは全く異なった、合理的、開明的な教育が行われたという。(保阪正康「編者まえがき」より)
目次より
編者まえがき
まえがき
第1編 諜報戦の内幕
第2編 陸軍中野学校の「秘密教育」
第3編 開戦前夜の南方工作
第4編 日米開戦と対外工作
第5編 戦慄の国内工作
〈小伝〉作家・畠山清行
その後の陸軍中野学校(編者解説)
付録 陸軍中野学校関係年表、南方関係地図
畠山清行
(1905-1991)北海道石狩町生れ。本名きよつら(「せいこう」は筆名)。青年時代にアナーキスト運動に参加するなどしたのちに、文筆の世界に入り、戦後初期には出版社も経営。主に実録作品の分野に健筆を揮った。著書に『秘録 陸軍中野学校』を含めた中野学校シリーズの他、『東京兵団』『キャノン機関』『日本の埋蔵金』『足もとにあるかもしれない宝の話』などがある。
保阪正康
1939(昭和14)年、北海道生まれ。同志社大学文学部卒業後、編集者などを経てノンフィクション作家に。個人誌「昭和史講座」を主宰。2004(平成16)年、一連の昭和史研究で菊池寛賞を、17年、『ナショナリズムの昭和』で和辻哲郎文化賞を受賞。『昭和史七つの謎』『昭和陸軍の研究』『あの戦争は何だったのか』『田中角栄の昭和』『日本原爆開発秘録』『人を見る目』『昭和の怪物 七つの謎』『天皇陛下「生前退位」への想い』「昭和史の大河を往く」シリーズなど著書多数。
「謀略は『誠』なり」──
欧米諸国に対して情報戦に出遅れた日本は、昭和十三年、秘密裏に工作員養成機関「陸軍中野学校」を誕生させた。
軍部の因習から離れた合理的、開明的な教育は、敗戦までの僅かな間に驚嘆すべき成果を挙げるが……。
諜報とは何か、謀略とは何か。
出身者たちの活躍と失敗を徹底的に追いながら、戦争の裏面と工作員の実態に迫った傑作ノンフィクション作品。
各章に編者・保阪正康による詳細な「解説」を付記、読者への案内とした。
日本には今でも諜報活動を卑劣な行為として蔑む傾向があるが、戦前の軍部も同じく諜報戦、情報戦を軽視していた。この日本の悪しき伝統に抗する形で、遅ればせながら昭和十三年に創設されたのが陸軍中野学校であり、日本の他の軍事教育機関とは全く異なった、合理的、開明的な教育が行われたという。(保阪正康「編者まえがき」より)
目次より
編者まえがき
まえがき
第1編 諜報戦の内幕
第2編 陸軍中野学校の「秘密教育」
第3編 開戦前夜の南方工作
第4編 日米開戦と対外工作
第5編 戦慄の国内工作
〈小伝〉作家・畠山清行
その後の陸軍中野学校(編者解説)
付録 陸軍中野学校関係年表、南方関係地図
畠山清行
(1905-1991)北海道石狩町生れ。本名きよつら(「せいこう」は筆名)。青年時代にアナーキスト運動に参加するなどしたのちに、文筆の世界に入り、戦後初期には出版社も経営。主に実録作品の分野に健筆を揮った。著書に『秘録 陸軍中野学校』を含めた中野学校シリーズの他、『東京兵団』『キャノン機関』『日本の埋蔵金』『足もとにあるかもしれない宝の話』などがある。
保阪正康
1939(昭和14)年、北海道生まれ。同志社大学文学部卒業後、編集者などを経てノンフィクション作家に。個人誌「昭和史講座」を主宰。2004(平成16)年、一連の昭和史研究で菊池寛賞を、17年、『ナショナリズムの昭和』で和辻哲郎文化賞を受賞。『昭和史七つの謎』『昭和陸軍の研究』『あの戦争は何だったのか』『田中角栄の昭和』『日本原爆開発秘録』『人を見る目』『昭和の怪物 七つの謎』『天皇陛下「生前退位」への想い』「昭和史の大河を往く」シリーズなど著書多数。
- 本の長さ704ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2003/7/30
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101155216
- ISBN-13978-4101155210
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2023年2月26日に日本でレビュー済み
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2023年4月9日に日本でレビュー済み
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中野学校関係の資料は悉く破棄され、関係者の口が堅いためにどうしても美化されがち。
隣接の憲兵学校出身者が「自分は中野学校卒業生である」と思い込んでいる例すらある
というのは面白かった。畠山さんはかなり思い込みの激しい文章を書かれているので、
どこまでが真実なのかなと思ってしまいました。ロマンは感じますが・・・
隣接の憲兵学校出身者が「自分は中野学校卒業生である」と思い込んでいる例すらある
というのは面白かった。畠山さんはかなり思い込みの激しい文章を書かれているので、
どこまでが真実なのかなと思ってしまいました。ロマンは感じますが・・・
2017年7月24日に日本でレビュー済み
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これ以上にない良い本です。あまり本は読まないのですがこれだけは手放せない、勉強になる本です。
2019年10月19日に日本でレビュー済み
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題名は固い印象を受けますが、とてもわかり易い文章表現で書かれているので、中野学校出身者の様々なエピソードをとても興味深く読みました。良かったです。
2014年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私の年代は日本近代史をなかなか学べていない様にに思われ、今更ながら学びたいと思っています。
真実を知り、歪曲された報道に惑わされることなく、この国の素晴らしさを子供たちにつたえたい。とおもいます。
真実を知り、歪曲された報道に惑わされることなく、この国の素晴らしさを子供たちにつたえたい。とおもいます。
2018年1月22日に日本でレビュー済み
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外交におけるインテリジェンスが叫ばれている今日、戦前・戦中に誕生・活動し、戦後その名で呼ばれるようになった「陸軍中野学校」について関心を持ち、購入しました。出来事・談話紹介等入門書として楽しく読めました。
2015年10月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
値段相応に汚れてましたが、内容は期待通り。楽しめました。よかったです。