余程特別なドラマでは無いけれど、人の内面をつぶさに描くことで読者を引き込む。そんな小説です。
この「人の内面をつぶさに描く」ことこそが、彩瀬氏の真骨頂。
普段我々が抱えている感情や感覚の更に深い部分を文字にしてくれていることから、時には共感を、時には感動を与えてくれます。
この作品しかり。
登場人物それぞれが心の傷（種類や程度はそれぞれ）を抱えていて、葛藤しながら日常生活を営む様は、リアリティー十分。
ドラマはドラマとして表現するからこそドラマとして成立するわけですが、日常の僕らの身の回りもドラマとして表現されていないだけで案外この作品みたいに何かしら抱えている人同士のかかわり合いで成り立っているのかも知れません。
意識しない精神の領域を揺さぶられました。
同氏の「骨を彩る」もおすすめです。
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