柳生一族を描いた作品には、剣の道を極める求道者として真正面から取り上げた作品が多数存在する一方で、柳生一族という魅力的なキャラクターを縦横無尽に使ってファンタジーの世界を構築した作品もそれに匹敵するくらいあるのではと思う。
本書は間違いなく後者に属する作品で、柳生一族が関与する5つの事件を描いた短編集となっているが、冒頭のタイトル作「十兵衛両断」から早速、朝鮮人の妖術師により柳生十兵衛の魂が朝鮮人と入れ替えさせられてしまうというとんでもないシーンから始まる。
一言でいうと荒唐無稽な内容ではあるが、著者の朝鮮王朝に対する知識が深いためか、史実や古文書を掘り下げて描写される場面が多く真実味があり、読み進めるにしたがい次第にこの世界に引き込まれてしまう魅力がある。
5つの短編は何れも何らかの形で朝鮮人が絡むが、一つ一つがバラバラのようで最後は全体が繋がるような構成になっており、とても楽しめる作品であった。著者の柳生一族物はこれ以外にも多数あるようなので、そちらも読んでみようと思う。
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十兵衛両断 (新潮文庫) ホーム&キッチン – 2005/9/28
荒山 徹
(著)
十兵衛、三度死す──徳川家光の治世、兵法師範役・大和柳生家を朝鮮から到来した陰謀が襲う。韓人の呪術に陥れられ、強靭な肉体を失った一代の麒麟児。復讐の鬼と化した十兵衛は、流浪の末にもう一つの新陰流に遭遇する。太閤秀吉、さらには二代将軍の命さえ狙ってきた韓人たちとの間に、柳生一族は如何なる因縁を秘していたか。戦国の世からつづく怨念に、死闘が終止符を打つ。
- 本の長さ505ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2005/9/28
- 寸法29.01 x 15.39 x 11.81 cm
- ISBN-104101210411
- ISBN-13978-4101210414
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2005/9/28)
- 発売日 : 2005/9/28
- 言語 : 日本語
- ホーム&キッチン : 505ページ
- ISBN-10 : 4101210411
- ISBN-13 : 978-4101210414
- 寸法 : 29.01 x 15.39 x 11.81 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,249,383位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
恐るべし!
柳生十兵衛は歴史上に2人存在していたのだ。
まさか!
いくら何でもそんなのあり得まい。そう思う私をあざ笑うかのごとく流れ込んで来る歴史書の裏付け。
おそらく、朝鮮半島に造詣の深い作者ならではの外連味。
そうか、このように歴史を捕らえる事もできるのだなあ、と嘆息の嵐である。
だが、この作品の中で私は柳生友景に心を奪われてしまった。
柳生宗矩より遙かに優れた剣技を持ちながら、日本屈指の陰陽師として成長した柳生家の誇る陰陽剣士。
その容姿は麗しく、どこまでも完璧なそのキャラクターに私は惚れ込んでしまったのだ!
最後まで、この勢いにのせられて、私はページをめくる手を止める事ができなかった。
そして、最後の奥付にたどり付いたとき、ふと気がついた。
……参考文献は?
普通、歴史書の引用がある歴史小説には参考文献が付く。コレは常識だ。
つまりこの話は、全て創作。作中に出てくる、あたかも本物のような歴史書も創作、まさか……人物すらも?
それが事実かは知らない。
だが、私は、この作家に惚れ込んでしまった。
これからも、追い続けようと思う。
柳生十兵衛は歴史上に2人存在していたのだ。
まさか!
いくら何でもそんなのあり得まい。そう思う私をあざ笑うかのごとく流れ込んで来る歴史書の裏付け。
おそらく、朝鮮半島に造詣の深い作者ならではの外連味。
そうか、このように歴史を捕らえる事もできるのだなあ、と嘆息の嵐である。
だが、この作品の中で私は柳生友景に心を奪われてしまった。
柳生宗矩より遙かに優れた剣技を持ちながら、日本屈指の陰陽師として成長した柳生家の誇る陰陽剣士。
その容姿は麗しく、どこまでも完璧なそのキャラクターに私は惚れ込んでしまったのだ!
最後まで、この勢いにのせられて、私はページをめくる手を止める事ができなかった。
そして、最後の奥付にたどり付いたとき、ふと気がついた。
……参考文献は?
普通、歴史書の引用がある歴史小説には参考文献が付く。コレは常識だ。
つまりこの話は、全て創作。作中に出てくる、あたかも本物のような歴史書も創作、まさか……人物すらも?
それが事実かは知らない。
だが、私は、この作家に惚れ込んでしまった。
これからも、追い続けようと思う。
2003年10月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
柳生宗矩(むねのり)邸を訪れた韓人。ノッカラノウムという古代からつたわる呪術で天才、十兵衛の肉体を凡庸な従者の肉体と交換してしまう。のっけから荒唐無稽な話で始まるこの物語。だが、この作者並の力量ではない。ページ
を繰る手が止まらない。
著者は新聞社、出版社勤務を経たのち、韓国に留学、その地の文化・歴史を 学んだという。全編を通じてなされる、資料・文献の引用がともすれば眉唾に
おちいりやすいストーリーに、むしろ重厚さを与える。非学な読者である私など、うまく騙されているようなきがする。しかし、小説は所詮ちいさな嘘。うまく騙されることの心地よさ。
柳生家の隠された秘密。千姫救出で有名な、坂崎出羽守が韓人の陰陽師で あったり意外な展開に興味が尽きない。メ?ビユー作の「高麗秘帖」も是非読ん
でみたい。
を繰る手が止まらない。
著者は新聞社、出版社勤務を経たのち、韓国に留学、その地の文化・歴史を 学んだという。全編を通じてなされる、資料・文献の引用がともすれば眉唾に
おちいりやすいストーリーに、むしろ重厚さを与える。非学な読者である私など、うまく騙されているようなきがする。しかし、小説は所詮ちいさな嘘。うまく騙されることの心地よさ。
柳生家の隠された秘密。千姫救出で有名な、坂崎出羽守が韓人の陰陽師で あったり意外な展開に興味が尽きない。メ?ビユー作の「高麗秘帖」も是非読ん
でみたい。
2019年4月22日に日本でレビュー済み
豊臣秀吉の朝鮮役から孝宗の北伐まで、約五十年にわたる柳生新陰流対朝鮮妖術の攻防を描いた伝奇剣豪小説。
ゆるーく繋がりつつ微妙に矛盾するような全五編の日朝秘話を柳生一族と新陰流を狂言まわしに描くという発想が秀逸でして、「朝鮮妖術」「朝鮮柳生」等々のパワーワードの数々が素晴らしいのであります。朝鮮役で戦没した柳生純厳や陰陽頭の柳生友景など、よくこんな人材を見つけてきたな。
表題作は魂と肉体、二人に両断された柳生十兵衛の対決を描いた五味康佑オマージュ溢れる傑作。老師の意外な正体ににやり、おまけにラストの決着が『柳生連也斎』なんだもの。
四話『太閤呪殺陣』は隆慶一郎の某短編を下敷きに裏返したような凄惨な骨肉の争いと同時進行で、陰陽師と怪獣が空中戦を展開していたりします。時代小説で翼竜が活躍するのはこれが初めて?
巻末の最終話『剣法正宗溯源』は表題作から直結する後日談なのですが、当時の時事ネタ「剣術朝鮮起源説」を話の枕にしてとんでもない方向へ物語が展開することに。柳生十兵衛に待っていた結末がとても切ない。
全編にわたって、そんなアホな!という展開の連続なのにどのエピソードもやっていることは骨太の剣豪小説なんだからたまりません。ところで、南烈堂(南ヨルダン)って何なのよ。
ゆるーく繋がりつつ微妙に矛盾するような全五編の日朝秘話を柳生一族と新陰流を狂言まわしに描くという発想が秀逸でして、「朝鮮妖術」「朝鮮柳生」等々のパワーワードの数々が素晴らしいのであります。朝鮮役で戦没した柳生純厳や陰陽頭の柳生友景など、よくこんな人材を見つけてきたな。
表題作は魂と肉体、二人に両断された柳生十兵衛の対決を描いた五味康佑オマージュ溢れる傑作。老師の意外な正体ににやり、おまけにラストの決着が『柳生連也斎』なんだもの。
四話『太閤呪殺陣』は隆慶一郎の某短編を下敷きに裏返したような凄惨な骨肉の争いと同時進行で、陰陽師と怪獣が空中戦を展開していたりします。時代小説で翼竜が活躍するのはこれが初めて?
巻末の最終話『剣法正宗溯源』は表題作から直結する後日談なのですが、当時の時事ネタ「剣術朝鮮起源説」を話の枕にしてとんでもない方向へ物語が展開することに。柳生十兵衛に待っていた結末がとても切ない。
全編にわたって、そんなアホな!という展開の連続なのにどのエピソードもやっていることは骨太の剣豪小説なんだからたまりません。ところで、南烈堂(南ヨルダン)って何なのよ。
2015年9月9日に日本でレビュー済み
いやあ、すごいね!何というか、こんなのあり?って感じです。
話は柳生一族と朝鮮妖術師の虚実乱れる戦いの物語で、その中心の柱は柳生十兵衛です。何と十兵衛が二人いたり、三度も死んだり、と、まぁ荒唐無稽もここまでいけば立派です。柳生なのに陰陽師である者が出てきたりと、まぁ何でもありですね。
それも、引用文献(本当にあるの?)が引いてあったりして、いかにも本当らしく書いてあるんですね。作者は韓国留学経験があるので、さらにだまされやすくなって、めまいがしそうです。好き嫌いあるとは思いますが、エンターテイメントとしては読み応え有りますよ。
話は柳生一族と朝鮮妖術師の虚実乱れる戦いの物語で、その中心の柱は柳生十兵衛です。何と十兵衛が二人いたり、三度も死んだり、と、まぁ荒唐無稽もここまでいけば立派です。柳生なのに陰陽師である者が出てきたりと、まぁ何でもありですね。
それも、引用文献(本当にあるの?)が引いてあったりして、いかにも本当らしく書いてあるんですね。作者は韓国留学経験があるので、さらにだまされやすくなって、めまいがしそうです。好き嫌いあるとは思いますが、エンターテイメントとしては読み応え有りますよ。
2006年4月26日に日本でレビュー済み
現時点での荒山小説における最高傑作と称して問題なかろうと
思われる稀代の問題作でアリマス。
この作品を一言で語れといわれれば、
「朝鮮柳生」
と言うのみで砂。
ここから全てが始まったのでアリマス。
基本的に短編集なわけですが、5つの短編が、どれもこれも
本来ならば長編化できるだけのネタであるだけに、
無理矢理短編化することによって発生した"もやもや感"が
読者の妄想機関を全開にするわけであり、
その結果が、「俺柳生」の嵐吹き荒れる
「ブシドーMMO/柳生」 なわけでアリマス。
全5作の短編は、それぞれ十兵衛・石舟斎・宗矩・純厳・六丸と
全部柳生が主役であり、おまけに脇役まで柳生がしめ、
ついでに敵まで柳生(&朝鮮妖術師)という、まさに柳生尽くしの
逸品でありま砂。
そして、荒山世界最大の問題妖術であるところの
「朝鮮妖術ノッカラノウム」もコレが初出であります。
タチの悪さで言えば、忍法魔界転生以上のこの妖術、
物語暴走装置としてはまたとない逸品なわけですが、
二重使用で救いようがない領域へ旅立たせてくれるので
使用には注意が必要なのですが、我らの荒山先生がそんなものを
気にするわけがないじゃないか、馬鹿だなあ(満面の笑顔で)
ともあれ、荒山世界を堪能したければ、
まずはこちらからお読みなさるのをオススメするですよ。
ええ、是非是非。
思われる稀代の問題作でアリマス。
この作品を一言で語れといわれれば、
「朝鮮柳生」
と言うのみで砂。
ここから全てが始まったのでアリマス。
基本的に短編集なわけですが、5つの短編が、どれもこれも
本来ならば長編化できるだけのネタであるだけに、
無理矢理短編化することによって発生した"もやもや感"が
読者の妄想機関を全開にするわけであり、
その結果が、「俺柳生」の嵐吹き荒れる
「ブシドーMMO/柳生」 なわけでアリマス。
全5作の短編は、それぞれ十兵衛・石舟斎・宗矩・純厳・六丸と
全部柳生が主役であり、おまけに脇役まで柳生がしめ、
ついでに敵まで柳生(&朝鮮妖術師)という、まさに柳生尽くしの
逸品でありま砂。
そして、荒山世界最大の問題妖術であるところの
「朝鮮妖術ノッカラノウム」もコレが初出であります。
タチの悪さで言えば、忍法魔界転生以上のこの妖術、
物語暴走装置としてはまたとない逸品なわけですが、
二重使用で救いようがない領域へ旅立たせてくれるので
使用には注意が必要なのですが、我らの荒山先生がそんなものを
気にするわけがないじゃないか、馬鹿だなあ(満面の笑顔で)
ともあれ、荒山世界を堪能したければ、
まずはこちらからお読みなさるのをオススメするですよ。
ええ、是非是非。
2008年6月24日に日本でレビュー済み
山岡荘八も五味康祐も山田風太郎 も、
柳生十兵衛二人説を採っていたが、
先達を越えるべき荒山徹 は、なんと三人説である。
そんなもんで驚いてはいけない。
柳生十兵衛の父柳生宗矩は四人出て来るw
史実では有り得ない、親子や師弟の戦いはもちろん、
本人同志の戦いも展開される凄さ。
本人が増殖するのは朝鮮妖術のせいである。
オリキャラ柳生友景ものも2編収録された短編集である。
友景ものとしては『柳生雨月抄』 より前のエピソードになる。
しかし、荒山先生って美少年剣士が好きねぇ。
腐女子の皆さんは瞠目せよ!
エラリー・クイーン ネタもトルストイネタも民明書房ネタも埋まっている、
時代小説の枠を超えた傑作である。
柳生十兵衛二人説を採っていたが、
先達を越えるべき荒山徹 は、なんと三人説である。
そんなもんで驚いてはいけない。
柳生十兵衛の父柳生宗矩は四人出て来るw
史実では有り得ない、親子や師弟の戦いはもちろん、
本人同志の戦いも展開される凄さ。
本人が増殖するのは朝鮮妖術のせいである。
オリキャラ柳生友景ものも2編収録された短編集である。
友景ものとしては『柳生雨月抄』 より前のエピソードになる。
しかし、荒山先生って美少年剣士が好きねぇ。
腐女子の皆さんは瞠目せよ!
エラリー・クイーン ネタもトルストイネタも民明書房ネタも埋まっている、
時代小説の枠を超えた傑作である。
2007年11月16日に日本でレビュー済み
柳生の縁来と朝鮮との関わりをからませ、常に呪術のおどろおどろしい題材を活用して荒唐無稽でユニークなストーリーを展開。読んでいて必ずしもさわやかな読後感が得られるわけではないが、妙に興奮する。一方で、「『差別』は朝鮮からもたらされた」など、戦国末期から徳川政権確立までの期間の日本・朝鮮との歴史的関係について知的好奇心を大いにくすぐられる面もある。