タイトルにあるように「幸福」、「家族」、「人としての生き方」と、いろいろ考えさせられる素晴らしい作品だと思います。
極端に違う「生き方」をする太一郎と数夫の兄弟が登場します。
この二人の「生き方」の違いは、終盤になって説明されますが、死んだ父親を見てとにかく我武者羅に上を目指して生きてきた兄と、それに反発してきた弟です。
主人公はその弟数夫です。
下町の町工場に勤める無口な男性です。
それでも、その彼の人柄に惹かれる女性も何人かいます。
中でも、組子・素子の姉妹には非常に好かれ、彼自身も好いています。
これに、数夫の妹踏子、姉妹の父親勇造とその愛人多江を含めた大きな「家族」が、様々な問題にぶつかって行きます。
「生き方」と言う意味では、高度成長期に生きた私たちは、兄太一郎の「生き方」を目指してきました。
しかし、その逆に「人間らしさ」を目指す「生き方」も、その反省として出てきました。
この作品は、それを反映した作品になっています。
そして、結果として、後者の「生き方」に軍配を挙げているように思えます。
姉妹の主人公を巡っての恋の鞘当ては、妹のひたむきなじっと耐える愛に軍配を挙げ、花火の様な姉の愛を退けていますが、それでもこの瞬間の愛の魅力も熱く語っていると思います。
兄太一郎の元に戻った妻英子が、片苦しさに耐えかねながら、それでもタイの地に一緒に旅立ちます。
その同じ日、弟数夫は小さな神社で小さな結婚式を挙げます。
外見的な華やかさと、内面的な充実。
「幸福」って一体何なんでしょうか?
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幸福 (新潮文庫 む 3-6) 文庫 – 1985/10/1
向田 邦子
(著)
愛してはいけない女(ひと)との、ただ一度の過ちを胸に秘め、小さな町工場で油にまみれて働く、無口な青年数夫。そんな彼の前に、兄の婚約者だったそのひと、組子が再び現れた・・・。数夫を慕う組子の妹素子、組子を見守る中年男八木沢、そして数夫を憎む兄の太一郎。さまざまな愛が、互いにからみあい、もつれ、傷つけあう姿を通して、本当の「幸福」とは何かを問いかける、男と女の愛のドラマ。
- 本の長さ572ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1985/10/1
- ISBN-104101294062
- ISBN-13978-4101294063
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1985/10/1)
- 発売日 : 1985/10/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 572ページ
- ISBN-10 : 4101294062
- ISBN-13 : 978-4101294063
- Amazon 売れ筋ランキング: - 967,816位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 594位日本の戯曲・シナリオ
- - 11,074位新潮文庫
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1929-1981)1929(昭和4)年、東京生れ。実践女子専門学校(現実践女子大学)卒。
人気TV番組「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」など数多くの脚本を執筆する。1980年『思い出トランプ』に収録の「花の名前」他2作で直木賞受賞。著書に『父の詫び状』『男どき女どき』など。1981年8月22日、台湾旅行中、飛行機事故で死去。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2004年5月23日に日本でレビュー済み
兄のかつての恋人であり、自分の恋人の姉である女性とのたった一度の過ちを胸に秘める無口な主人公。
心の深いところで結ばれながら、結ばれない2人。
なんとなくさえないはずの彼なのに登場する男も女も彼に「ホレ」てしまう。
ボケてしまった姉妹の父親が、彼を息子のように可愛がる。
彼の魅力の源が、わかるようでわからない、不思議な脚本でした。
表紙をめくるとこんな一節が飛び込んできます。
「素顔の幸福は、シミもあれば涙の痕もあります」
向田邦子さんは、この本に、とてもとても大切なテーマを盛り込んで私たちにプレゼントしてくれたような気がします。
心の深いところで結ばれながら、結ばれない2人。
なんとなくさえないはずの彼なのに登場する男も女も彼に「ホレ」てしまう。
ボケてしまった姉妹の父親が、彼を息子のように可愛がる。
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表紙をめくるとこんな一節が飛び込んできます。
「素顔の幸福は、シミもあれば涙の痕もあります」
向田邦子さんは、この本に、とてもとても大切なテーマを盛り込んで私たちにプレゼントしてくれたような気がします。