精神医学の歴史や現状、法的問題など、知識が広範なだけでなく、さすが実地で臨床に当たっている精神科医が書いているだけあり、とにかく文章に血が通っている。
弱者への配慮や現行法制、日本型の悪人情への批判が鋭いが、それも知識だけでなく経験に裏打ちされているからとにかく説得力に富む。
素人が読んでもわかりやすく、また読み物としても面白い。
おすすめします。
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狂気という隣人―精神科医の現場報告 (新潮文庫) 文庫 – 2007/1/30
岩波 明
(著)
人口の約1%が統合失調症という事実。しかし、それが我々に実感されることがないのはなぜか。殺人、傷害にかかわりながら、警察から逮捕もろくな保護もされず、病院さえたらい回しにされる触法精神障害者。治癒して退院したはずなのに、再び病院へ戻ってくる精神病患者。疲弊する医療関係者。社会の目から遮蔽されてきた精神医療の世界を現役の医師がその問題点とともに報告する。
- 本の長さ265ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2007/1/30
- ISBN-104101305714
- ISBN-13978-4101305714
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2007/1/30)
- 発売日 : 2007/1/30
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 265ページ
- ISBN-10 : 4101305714
- ISBN-13 : 978-4101305714
- Amazon 売れ筋ランキング: - 272,925位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,077位新潮文庫
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mfhty
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「精神科医の現場報告」という副題のとおり、都立松沢病院の救急外来の当直医を務めた著者による現場報告。
松沢病院のことや診療したさまざまなユニークな患者のことを平易な文章で書いており、なかなか興味深い。
一方、制度的な面の記述も随所にある。信じられないことに、日本では全診療科の2割に相当する36万床の精神科病床がある。それにもかかわらず、スタッフは少なく、重篤な患者をきちんと受けいれる体制がない現状が書かれている。
また、(1) 犯罪を犯した精神病患者については、欧米では、入退院には裁判所など司法機関が関与するとともに、特殊病棟で十分なケアがされつつているのに対して、日本では、司法の関与が少なく、医療機関に措置や入退院の判断がまる投げ状態になっていること、(2) 一般の病院や警察は、精神病患者とみるや、本人がたいへんな状況にあっても、みさかいなく松沢病院のような精神病院に搬送してしまうことなどが書かれている。
どこか1点に絞った強い主張があるというタイプの本ではないが、臨床にあたってきた医師ならではの本。私のように、精神科の知識のない人間にとっては勉強になった。
松沢病院のことや診療したさまざまなユニークな患者のことを平易な文章で書いており、なかなか興味深い。
一方、制度的な面の記述も随所にある。信じられないことに、日本では全診療科の2割に相当する36万床の精神科病床がある。それにもかかわらず、スタッフは少なく、重篤な患者をきちんと受けいれる体制がない現状が書かれている。
また、(1) 犯罪を犯した精神病患者については、欧米では、入退院には裁判所など司法機関が関与するとともに、特殊病棟で十分なケアがされつつているのに対して、日本では、司法の関与が少なく、医療機関に措置や入退院の判断がまる投げ状態になっていること、(2) 一般の病院や警察は、精神病患者とみるや、本人がたいへんな状況にあっても、みさかいなく松沢病院のような精神病院に搬送してしまうことなどが書かれている。
どこか1点に絞った強い主張があるというタイプの本ではないが、臨床にあたってきた医師ならではの本。私のように、精神科の知識のない人間にとっては勉強になった。
真実を知った分裂病患者
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一般論として精神障害者が危険であるという科学的根拠は存在していません。
しかし、精神障害者の中に危険な人々が含まれることは、疑いようのない真実です。そうした危険な人々の存在を証拠として、人々は一般的に精神障害者が危険な存在であると考えているのです。
こうした危険な精神障害者の処遇を考えるという点では、特に参考になる一冊でしょう。
ただ、後半に少し触れられている「心神喪失者等医療観察法」についての考え方は、手放しで賛成できる性質のものではありません。
危険な精神障害者の処遇は、本来精神障害者全体の否定的イメージも同時に考えてゆかなければならないものです。一般の犯罪とは無縁な多くの精神障害者に対し、こうした処遇をされる人々と同一視されてしまうというリスクだけを一方的に負わせてしまうこの法律の問題点については、あまり詳しくありません。この法律については、他の書籍を参考にするべきでしょう。
犯罪精神医学や精神科救急などの多くの危険な精神障害者を見続ける立場の人々がやってしまいがちな、危険な精神障害者の側から一般の精神障害者の差別偏見の問題を考えるという態度は、無意味ではありませんが、しかしそれだけで全てが解決できるほど簡単なものではありません。
この本だけを読んで、精神障害者を語るのは危険です。
しかし、精神障害者の中に危険な人々が含まれることは、疑いようのない真実です。そうした危険な人々の存在を証拠として、人々は一般的に精神障害者が危険な存在であると考えているのです。
こうした危険な精神障害者の処遇を考えるという点では、特に参考になる一冊でしょう。
ただ、後半に少し触れられている「心神喪失者等医療観察法」についての考え方は、手放しで賛成できる性質のものではありません。
危険な精神障害者の処遇は、本来精神障害者全体の否定的イメージも同時に考えてゆかなければならないものです。一般の犯罪とは無縁な多くの精神障害者に対し、こうした処遇をされる人々と同一視されてしまうというリスクだけを一方的に負わせてしまうこの法律の問題点については、あまり詳しくありません。この法律については、他の書籍を参考にするべきでしょう。
犯罪精神医学や精神科救急などの多くの危険な精神障害者を見続ける立場の人々がやってしまいがちな、危険な精神障害者の側から一般の精神障害者の差別偏見の問題を考えるという態度は、無意味ではありませんが、しかしそれだけで全てが解決できるほど簡単なものではありません。
この本だけを読んで、精神障害者を語るのは危険です。
影
全国で36万床の精神科の病床があり、全診療科のベッド数の2割以上。
つぶやく子
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知りたいと思う内容に 出会えてよかった本でした。身近に”おかしい?”と感じる人が多いので
何故だろうと思っていたところ、この本にあいました。大変興味深く読めましたので 精神に興味
ある方は さらりと触れる心算でどうぞ、おすすめします。
何故だろうと思っていたところ、この本にあいました。大変興味深く読めましたので 精神に興味
ある方は さらりと触れる心算でどうぞ、おすすめします。
Amazonのお客様
日本は救急医療はやっと欧米並みになりました。しかし、精神科医療、特に精神科救急医療は脆弱で、現場の精神科医師の献身的な努力に支えられています。本書は東京都の精神科救急医療を支える松沢病院の現場報告です。内容は余りにも過酷です。暴れる患者を抑制しながらの静脈注射の大変さと危険さは私も経験していますが、それが毎日の様にある松沢病院は気の毒です。針刺し事故が多い様で、悲しくなります。また未整備の県が多いのは驚きです。また再犯性の高い精神病患者を収容する施設が日本では未整備と聞き、日本の医療レベルの低さに愕然とさせられます。一般の人はもちろん、臨床医も必読の書です。推薦します。
skinheadmama
10年前の著作で、精神病に対する古い固定観念に囚われている部分はあるものの、日本の精神医学界の歴史および福祉行政の実態を知る上では、すぐれて正確な記録である。
専門家でありながら旧弊な概念から抜けきれていないスタンスは、恐らく臨床に忙殺されたゆえであろう。淡々とした修羅場の描写に、筆者の苦労がにじみ出ている。社会に対する問題提起としては、意義ある書だと思う。
しかし、あまりにも過酷なケースを見すぎたためか、重篤例の列挙に偏りすぎているきらいがある。執筆の動機は義憤からなのだろうが、精神病者に対する猟奇的な好奇心と差別意識を、却って煽る部分もあるように思う。
精神病者といっても、健常者に近い症例であるがゆえに、わかりやすい福祉の恩恵を受けづらく、不利益を被っている層に対するメッセージは、本書では提供されない。
医療や福祉の現場では、グレーゾーンな「軽症」患者も、犯罪予備軍や前科者のような重症患者も、同じ「アウトカースト・フィールド」の中で、同列に扱われる。良識ある患者は、自分で自分の身を守らねばならない。
本書を読むメリットとしては…重篤患者とうっかり接して危険な目に遭わないための知識を得られることと、行政と対峙する上での自己防衛策が学べることだろうか。
専門家でありながら旧弊な概念から抜けきれていないスタンスは、恐らく臨床に忙殺されたゆえであろう。淡々とした修羅場の描写に、筆者の苦労がにじみ出ている。社会に対する問題提起としては、意義ある書だと思う。
しかし、あまりにも過酷なケースを見すぎたためか、重篤例の列挙に偏りすぎているきらいがある。執筆の動機は義憤からなのだろうが、精神病者に対する猟奇的な好奇心と差別意識を、却って煽る部分もあるように思う。
精神病者といっても、健常者に近い症例であるがゆえに、わかりやすい福祉の恩恵を受けづらく、不利益を被っている層に対するメッセージは、本書では提供されない。
医療や福祉の現場では、グレーゾーンな「軽症」患者も、犯罪予備軍や前科者のような重症患者も、同じ「アウトカースト・フィールド」の中で、同列に扱われる。良識ある患者は、自分で自分の身を守らねばならない。
本書を読むメリットとしては…重篤患者とうっかり接して危険な目に遭わないための知識を得られることと、行政と対峙する上での自己防衛策が学べることだろうか。
takakokatakotta
冒頭に、精神病者と健常者の間には、画然とした差異はない、とあったので精神病患者を擁護してくれる「人権派」かと思って期待して読み進めていったが、途中から、精神病は生まれたときにすでに、(ウイルス等で)純生物学的に,青年期に自動的、必然的に発症するように定められたまがまがしい宿命疾患と記
されており、なんだやっぱり救いの手はさしのべられない『人間機械論』かとがっかりした。
これでは、岩波新書の「心病める人たち」(石川信義著)の、てきめんに明るいヒューマニズムで口直しするほかはないと思って、岩波先生にはご退場ねがった。あまりにも暗すぎる。
されており、なんだやっぱり救いの手はさしのべられない『人間機械論』かとがっかりした。
これでは、岩波新書の「心病める人たち」(石川信義著)の、てきめんに明るいヒューマニズムで口直しするほかはないと思って、岩波先生にはご退場ねがった。あまりにも暗すぎる。