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残虐記 (新潮文庫) 文庫 – 2007/7/30

3.9 5つ星のうち3.9 104個の評価

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自分は少女誘拐監禁事件の被害者だったという驚くべき手記を残して、作家が消えた。黒く汚れた男の爪、饐えた臭い、含んだ水の鉄錆の味。性と暴力の気配が満ちる密室で、少女が夜毎に育てた毒の夢と男の欲望とが交錯する。誰にも明かされない真実をめぐって少女に注がれた隠微な視線、幾重にも重なり合った虚構と現実の姿を、独創的なリアリズムを駆使して描出した傑作長編。

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【新潮文庫】桐野夏生 作品 あたりまえのように思えた日常は、一瞬で、あっけなく崩壊する。あなたの心も、変わってゆく。ゆれ動く世界に捧げられた短編集。 時代の趨勢に取り残され、滅びゆく人びと。同級生の自殺による欠落感を埋められない主人公の痛々しい青春。文庫オリジナル作品! 夫に先立たれた敏子、五十九歳。「平凡な主婦」が突然、第二の人生を迎える戸惑い。そして新たな体験を通し、魂の昂揚を描く長篇。〈婦人公論文芸賞受賞〉 自分は二十五年前の少女誘拐監禁事件の被害者 という手記を残し、作家が消えた。折り重なった虚実と強烈な欲望を描き切った傑作。〈柴田錬三郎賞受賞〉 ここに生きているのは、三十一人の男たち。そして女王の恍惚を味わう、ただひとりの女。孤島を舞台に描かれる、”キリノ版創世記”。〈谷崎潤一郎賞受賞〉
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登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 新潮社 (2007/7/30)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2007/7/30
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 255ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4101306354
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4101306353
  • 寸法 ‏ : ‎ 14.8 x 10.5 x 2 cm
  • カスタマーレビュー:
    3.9 5つ星のうち3.9 104個の評価

著者について

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桐野 夏生
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桐野 夏生(きりの・なつお)

1951年生まれ。93年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。98年『OUT』で日本推理作家協会賞(同作品は英訳され、日本人初のエ ドガー賞候補となる)、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で 婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 メタボラ(上) (ISBN-13: 978-4022645548 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)

カスタマーレビュー

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5つのうち3.9つ
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上位レビュー、対象国: 日本

2007年12月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少女誘拐監禁事件を扱った作品であるが、読み進むに従って、物語は謎が謎を呼ぶ。
冒頭で示される手紙の中で、何故「私も先生を許さない」と書かれているのかが当初の大きな謎だ。
そして、謎が一つ増え、また一つ増え、最終的には、謎が謎を呼び、無限大の想像が可能となる。

「先生を許さない」という言葉の意味すら、幾通りもの解釈が成り立つ。
本文中でも、この事に対する解釈が示されているが、それすら、想像の域を出ていない。

一般の推理小説とは逆のパターンの作品だ。
推理小説は、最終的には謎が解明されるのであるが、本作品は、謎が深まるばかりだ。

しかし、被害者となった少女の「他人は信じられない」という姿勢は一貫していて、
その上、他人の心を読む能力は卓越しているので、真実を語ろうとしなかったので、さらに謎は深まる。
その心理描写の深さには、唸らされるばかりだ。

作品中で被害者は、自らを性的人間と語るが、この意図も曖昧模糊としている。
この事に対しても、読み進むに従って、謎がさらに深くなる。

謎が無限大である本作品。
小説という表現手段の、一つの境地が追求されている。
18人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2024年1月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
どうしても読みたかった本。思ったよりも重い内容でズッシリきました
2020年1月22日に日本でレビュー済み
異様で、不可解な欲動に晒された少女

彼は、なぜ私を抱かなかったのか
それだけは、誰にもいえなかった
女は強姦の屈辱を恐れない。強姦の栄誉を恐れているのだ
不可解なのは男の欲望だけではなく、自分の心なのだから

彼の欲望を希求した性的な妄想は同性愛に行き着く
妄想は結局、自分の頭の中だけのことで、少女の心性の内部に留まることは間違いがない
結局、景子は妄執の中に入ったのではなく、彼女の妄執の中に出たのだった。

それが、現実を失う、ということである。自分が自分を瞞すというトリックである。これ程セキュリティの高いシステムもない
他者に、自身に、呼吸をするように欺瞞を続ける女にとって、何が夢で何が現実かという境界は非常に難しい
小説は不可解を、もう一つ大きな不可解のシールド覆うことで結末する。それは、強かで、軽蔑されるべきこの女にふさわしいラストといえる
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2023年11月27日に日本でレビュー済み
誘拐事件をきっかけとした「想像された現実」の記録。被害者は監禁されているときには想像で時間を潰し、解放されてからは周辺の好奇の視線に晒され、そして多様な想像の焦点となった。想像はきっかけとなる「種」があれば際限なく膨張するからには、当局に対して「本当は何が起こっていたのか」について口を噤むことはすなわちそのような想像の「種」を渡さない賢明な行為だったと言える。だが一方で、「種」を保持したままでいることにより、自分自身の内部で想像の膨張が始まるのだ。その想像とは「欲望とは他者の欲望である」というラカンの言葉を地で行くような内容と化してゆく。「他者の欲望」とは言葉のことである。『残虐記』そのものが言葉によって、言葉でしか織り上げられていないのだから、本書は二重の意味で「他者の欲望」が充満しているのだ。
2006年9月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私には、これが特定の猟奇的な事件の深層に迫ろうと試みた作品とは思えませんでした。

むしろ、センセーショナルな事件等の当事者として他人の興味本位の想像の対象となるということがどういうことか、を描いた作品だと思いました。

猟奇的な事件などがおきると、当事者に対しては他人の好奇の目と勝手な憶測という毒が集中します。例えば、なんらかの事件について、被害者に同情することも加害者に憤慨することも、無関係な他人が当事者の心情を一方的に想像しつつ正義感を楽しんでいるのであり、要するにセンセーショナリズムという商品を消費しているに過ぎないのです。当事者にとっては当然「毒」の一つにすぎないでしょう。

そんなセンセーショナリズムを中心として渦巻く他人の好奇の目と勝手な想像の暴風雨、そこから弧絶した当事者の心の奥底という台風の目、両者の相容れなさが見事に描かれています。

センセーショナルな事件の当事者として、他人の想像の対象となるという運命を生きてしまった人の弧絶感と想像することの毒性を、洞察力を稲妻のように走らせつつ描いた、力のある作品だと思います。

なお、具体的な事件の被害者の心情に対する配慮が足りないという趣旨のこの作品に対する批判も、その具体的な事件に関連していえば「勝手な想像の毒」の一種だと思います、なんていったら良識ある方に怒られちゃうかな?
24人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2015年10月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
監禁少女という題材事態の吸引力がすごいのと、流石の文章力で読ませるけど、大したことはないという読後感。でも読んじゃうという中毒性。
2019年11月18日に日本でレビュー済み
本書は、主人公の景子がまだ10歳・小4の時、工員のケンジに拉致・監禁されたところから始まる。景子はケンジの住む部屋に監禁され、監禁生活は1年余りに及ぶ。ケンジの隣室にはヤタベというケンジと同じ鉄工所に勤める男が住んでおり、景子はヤタベに助けを求めようとするが…という物語である。

この小説は2000年に報道された新潟県に少女監禁事件に触発されて執筆されたらしいが、監禁された期間も犯人の年齢・境遇もまるで違うので、実際の少女監禁事件とは全く別個の小説と考えた方が良いと思う。
ケンジの部屋とヤタベの部屋という隣り合った二部屋という狭い空間で、主人公の少女と監禁したケンジと隣人ヤタベの三つ巴(あるいは宮坂検事を含む四つ巴)の性的関係、どこまでが事実でどこまでが想像だかわからない性的関係は、非常にアブノーマルでディープでグロテスクでアグリーだ。異常なまでに異常だ。
解説(筆=精神科医 斎藤環)では、谷崎潤一郎『鍵』との類似に言及されているが、評者に言わせると谷崎『鍵』の方がよほど健全で理解可能だ。
本書は桐野さんの多くの作品の中ではあまり目立たないと思うが、隠れた名作というべき存在と言える。
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2020年12月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本作品は失踪した女流作家の残された小説を夫が出版社に送り付けるとゆう設定で始まる。その小説名は『残虐記』であって本作品はその『残虐記』そのものとなる。従って本作品は劇中劇のスタイルを取る事となるのだかその劇中劇の『残虐記』は失踪した女流作家の過去の体験(11歳の時に起こった一年間の彼女が拉致監され監禁される事件と彼女の推測、創作によって成り立っている。そこで明かされるのは拉致犯人と一種の恋愛関係にあったいう事実と女流作家か創作した犯人の少年時代に隣室の老人の性愛の対象であったとゆいう二点のみであり劇中劇の作品としても桐野夏生の『残虐記』としても内容の薄い作品になっている。連載作品なので桐野夏生がなにか良いアイデアが出て来ないか模索しながら書いていた姿が想像され痛々しい。出てきた収束点はこの女流作家の夫は監禁事件の担当検事であったということでほかにも犯人はフィリピン人女性を殺害していたなどというどうでもよいことでページを割り増してるのがむごすぎる。横溝正史や江戸川乱歩の乱作時代の駄作をどうしても想起してしまうのです。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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