「無能の人」はじめ、ちょっと情けない主人公に自身を重ねられるかどうかで、物語の浸透圧は大きく変わってくる。個人的にはしみじみと迫ってくるものがあり、実に居心地がいい。
ちくま文庫の『近所の景色/無能の人』も8割がた同じラインナップだが、新潮文庫版は「池袋百点会」の存在が光る。外交ひと筋二十年の須山さんの、どん底で見せるしたたかさが堪らない。
旅の車中で取り出す本の筆頭として、もう20年近い付き合いをしている。
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無能の人・日の戯れ (新潮文庫) 文庫 – 1998/3/2
つげ 義春
(著)
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このまま野垂れ死ぬか、いっそ蒸発でもするか。
人間存在に迫る〈私〉漫画の代表作12編。
漫画家として行き詰まった〈私〉は、他人の目にはろくでなしに映るかもしれない。ろくに働かず稼ぎもなく、妻子にさえ罵られ、奇天烈な空想に耽りながら、無為な日々を過ごしているのだから……。
甲斐性のない漫画家の悶々とした日常を描く「無能の人」、競輪場の車券売り場窓口越しに仄かに通い合う夫婦の愛「日の戯れ」など、滑稽かつ哀切な人間存在に迫る〈私〉漫画の代表作12編集成。解説:吉本隆明。
【目次】
退屈な部屋
魚石
日の戯れ
散歩の日々
池袋百点会
隣りの女
無能の人
第一話 石を売る
第二話 無能の人
第三話 鳥師
第四話 探石行
第五話 カメラを売る
第六話 蒸発
解説:吉本隆明
つげ義春
マンガ家。1937年、東京都生れ。小学校卒業後、メッキ工場などで働き、1954年にマンガ家デビュー。貸本マンガを経て、1960年代後半から1970年にかけて「月刊漫画ガロ」に発表した諸作は、マンガ史の画期をなす。1987年以降、新作は発表していないが、その作品群は新たな世代のファンを生みつづけている。
人間存在に迫る〈私〉漫画の代表作12編。
漫画家として行き詰まった〈私〉は、他人の目にはろくでなしに映るかもしれない。ろくに働かず稼ぎもなく、妻子にさえ罵られ、奇天烈な空想に耽りながら、無為な日々を過ごしているのだから……。
甲斐性のない漫画家の悶々とした日常を描く「無能の人」、競輪場の車券売り場窓口越しに仄かに通い合う夫婦の愛「日の戯れ」など、滑稽かつ哀切な人間存在に迫る〈私〉漫画の代表作12編集成。解説:吉本隆明。
【目次】
退屈な部屋
魚石
日の戯れ
散歩の日々
池袋百点会
隣りの女
無能の人
第一話 石を売る
第二話 無能の人
第三話 鳥師
第四話 探石行
第五話 カメラを売る
第六話 蒸発
解説:吉本隆明
つげ義春
マンガ家。1937年、東京都生れ。小学校卒業後、メッキ工場などで働き、1954年にマンガ家デビュー。貸本マンガを経て、1960年代後半から1970年にかけて「月刊漫画ガロ」に発表した諸作は、マンガ史の画期をなす。1987年以降、新作は発表していないが、その作品群は新たな世代のファンを生みつづけている。
- 本の長さ397ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1998/3/2
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101328137
- ISBN-13978-4101328133
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対象商品: 無能の人・日の戯れ (新潮文庫)
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出版社より
新版 貧困旅行記 | 無能の人・日の戯れ | 義男の青春・別離 | |
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カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.1
165
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5つ星のうち4.5
206
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5つ星のうち4.4
76
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価格 | ¥737¥737 | ¥935¥935 | ¥935¥935 |
【新潮文庫】つげ義春 作品 | 日々鬱陶しく息苦しく、そんな日常から、そっと蒸発してみたい、と思う。眺め、佇み、感じながら旅した、つげ式紀行エッセイ決定版。 | ろくに働かず稼ぎもなく、妻子にさえ罵られ、無為に過ごす漫画家を描く「無能の人」など、人間存在に迫る私漫画の代表作 12 編集成。 | 浮気した女を恨み自殺を試みるが、ついに死に切れず滂沱の涙を流す男「別離」など 14 編。永遠の衝撃を持ち続ける、つげ漫画集第二弾。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1998/3/2)
- 発売日 : 1998/3/2
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 397ページ
- ISBN-10 : 4101328137
- ISBN-13 : 978-4101328133
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 117,813位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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イメージ付きのレビュー
5 星
内容は文句無しで星は5つ付けますが…
本の内容とは異なり、普段気にして見るようなところではないですが、たまたま目に入ったので書かせて頂きます。上下の裁断の比較写真の通り、上側の裁断だけ酷い有様です。これがたまたま弾かれなかったのか、この程度は合格品としているのかは素人には分かりませんが、あまり気持ちの良いものではないです。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年9月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この作品は、自伝的と思える内容が多いので、つげ義春さんの経歴を知りたい方にはお勧めです。また収録中の「鳥師」には「伝統的なるもの日本的なるものはすべてダサイと否定し…。」と作者の本音?と思われるものが記載されています。貴重な作品です。
2022年1月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ちゃんとストーリーが、一般的なその意味のとおりにですが、存在し、特に整合性が破綻するようなこともなく、淡々と紡がれています。
インパクトという点では、ねじ式から数段落ちる感あり。
とはいえ、漫画界のクラシックでありますので、漫画好きを公言している方であれば、手塚治虫などと共に必読書となりましょう。
どのタイミングでもいいので、一度は読破する義務があると、こう申しております。
なおその際は、精神的に安定した、幸せを感じて生きているタイミングで読むことを、強くお薦めします。
インパクトという点では、ねじ式から数段落ちる感あり。
とはいえ、漫画界のクラシックでありますので、漫画好きを公言している方であれば、手塚治虫などと共に必読書となりましょう。
どのタイミングでもいいので、一度は読破する義務があると、こう申しております。
なおその際は、精神的に安定した、幸せを感じて生きているタイミングで読むことを、強くお薦めします。
2015年12月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
幕末から明治にかけての俳人井上井月(せいげつ)関連から「つげ義春」の
漫画に井月さんが登場するらしいとわかり検索しました。
肝心のタイトルわからず「無能の人」あたりかなぁ。
イメージ的にはここいらがぴったり。いいかげんにアタリをつけてカートへ。
到着しました。早速読み始めました。見始めたというのかしらん。
違ってたのかしらん。次から次へ・・・とうとう最後まできてしまいました。
ここに登場!よかった。第六話。「蒸発」でした。
あっこういうかんじなんだ。絵で見ると井月像がよくわかる。さすがだなぁ。
「~~浪人じみた/凄味も実際の/素顔は剥頭/無髯/眉も薄く/切れ長のトロリと/
したヤブニラミの/きわめて間のぬけた/印象であったという~~」
「降るとまで人には見せて花曇り」「何処やらに鶴の声きくかすみかな」
つげ義春に関してはずーっと昔「小説現代」に日記が掲載されていて当時
どん底の心境にほっと灯りをともされたような安らぎを感じてその後
「つげ義春日記」」となって再び出会うことになって。一時はバイブルだった。
そんな当時を思い出して。本箱の奥に大事にとってあった日記を再び手に
取ってます。漫画は一度も目を通したことがなかった。
今回初めて。漫画世界はわからず。売れるとか売れないとかそういう次元ではなくて。
特異な漫画家なんだなぁということくらいはわかろうというもの。
心情的にはこういうの好きだわ。一緒に暮らすひとはたいへんだろうけど。
吉本隆明の解説がすっごくよかった。こんなにまでもの理解者がいてつげ義春も
幸せだなぁとおもいました。「見させるよりも読ませるマンガ。」
「~~うらぶれた登場人物に囲まれた、生活能力も現実適応力もない、それでいて
深刻な重味などもたずに、どこかに風穴があいたような性格の主人公を設定して、
そんな主人公に幾分か作者つげ義春の面影があるようにおもわせ(私)小説の
性格をもたせていることだ。~~」
読ませるマンガ。他のも急に読みたくなりました。
漫画に井月さんが登場するらしいとわかり検索しました。
肝心のタイトルわからず「無能の人」あたりかなぁ。
イメージ的にはここいらがぴったり。いいかげんにアタリをつけてカートへ。
到着しました。早速読み始めました。見始めたというのかしらん。
違ってたのかしらん。次から次へ・・・とうとう最後まできてしまいました。
ここに登場!よかった。第六話。「蒸発」でした。
あっこういうかんじなんだ。絵で見ると井月像がよくわかる。さすがだなぁ。
「~~浪人じみた/凄味も実際の/素顔は剥頭/無髯/眉も薄く/切れ長のトロリと/
したヤブニラミの/きわめて間のぬけた/印象であったという~~」
「降るとまで人には見せて花曇り」「何処やらに鶴の声きくかすみかな」
つげ義春に関してはずーっと昔「小説現代」に日記が掲載されていて当時
どん底の心境にほっと灯りをともされたような安らぎを感じてその後
「つげ義春日記」」となって再び出会うことになって。一時はバイブルだった。
そんな当時を思い出して。本箱の奥に大事にとってあった日記を再び手に
取ってます。漫画は一度も目を通したことがなかった。
今回初めて。漫画世界はわからず。売れるとか売れないとかそういう次元ではなくて。
特異な漫画家なんだなぁということくらいはわかろうというもの。
心情的にはこういうの好きだわ。一緒に暮らすひとはたいへんだろうけど。
吉本隆明の解説がすっごくよかった。こんなにまでもの理解者がいてつげ義春も
幸せだなぁとおもいました。「見させるよりも読ませるマンガ。」
「~~うらぶれた登場人物に囲まれた、生活能力も現実適応力もない、それでいて
深刻な重味などもたずに、どこかに風穴があいたような性格の主人公を設定して、
そんな主人公に幾分か作者つげ義春の面影があるようにおもわせ(私)小説の
性格をもたせていることだ。~~」
読ませるマンガ。他のも急に読みたくなりました。
2016年4月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「無能の人」、なんという直截な響きなのだろう。
あまりの直截さに、どれほどの無能ぶりを披露してくれるのかと期待するあまり、思わず本書を購入してしまったではないか。
本書の構成は、以下の通り。
1.「退屈な部屋」(1975年10月「漫画サンデー」初出)
2.「魚石」(1979年11月「ビッグゴールド」初出)
3.「日の戯れ」(1980年11月「カスタムコミック」初出)
4.「散歩の日々」(1984年6月「COMIC ばく」初出)
5.「池袋百点会」(1984年12月「COMIC ばく」初出)
6.「隣の女」(1985年3月「COMIC ばく」初出)
7.「石を売る」(1985年6月「COMIC ばく」初出)
8.「無能の人」(1985年9月「COMIC ばく」初出)
9.「鳥師」(1985年12月「COMIC ばく」初出)
10.「探石行」(1986年3月「COMIC ばく」初出)
11.「カメラを売る」(1986年6月「COMIC ばく」初出)
12.「蒸発」(1986年9月「COMIC ばく」初出)
上記短編漫画12作のうち、項番7から項番12までの6つの物語が「無能の人」を指していて、
1988年5月に季刊雑誌「COMIC ばく」の出版元である日本文芸社より「無能の人」名義で刊行されている。
ちなみに、項番1から項番3までが、1981年5月に刊行された晶文社の「必殺するめ固め」に初収録され、
項番4から項番6までが、1985年6月に刊行された日本文芸社の「隣の女」に初収録されている。
また、本書の巻末には、1996年7月、ロッキング・オン誌に掲載された、吉本隆明氏の「消費の中の芸」が、「解説文」として改題され、再録されている。
筆者の「お気に入り」は、漫画家の夫が妻には内緒で、二畳の部屋を借り、子供が押入れを「秘密基地」と称するが如く、
この「秘密基地」で無為に過ごす愉しみを堪能していると、妻がやってきて、浮気目的ではないことを確認すると、
この何もない「退屈な部屋」には、「生活感」がないことを嫌い、本来の住居から家財道具を持ち込み、
夫にとっての「秘密基地」が、夫にとっての「退屈な部屋」へと変貌を遂げてしまう、日常がハレの日を駆逐する、一抹の寂しさを覚える項番1、
子供の頃、河原の石がキラキラ輝く宝石に匹敵するほどの魅力を持っていた「懐かしく大切な思い出」を、大人になってからも忘れられず、
2年かけて飛び切りいい石を採石し、吟味し、「これ、商売になるんじゃね?」と思い込み、「石屋」を初めてしまい、
子供の頃の「懐かしく大切な思い出」を、大人の「金儲けの道具」として利用してしまう男の悲哀を描いた項番7、
野鳥を自由自在に飼い慣らす、「鳥師」のような「玄人」が駆逐され、
その代わりにやってきたのが、
己れの未熟を正当化するために、「価値観の多様化」などと、都合のよい言葉を弄して物ごとの本質を曖昧にし、
手前えの理解できないことは何でも古臭いと決めつけ、自律自制を忘れ、自己主張ばかりの「素人」であるという指摘が、
筆者の心に突き刺さる項番9、
霧のように伊那に現れ、そのまま三十年伊那に住みつき、耄碌が進行すると次第に厄介者扱いされて、子供に石を投げつけられても決して怒らず、
善光寺詣でに連れ出され、捨てられても何故か伊那に戻ってきて、辞世の句を詠んで、伊那の旧友宅で果てた、幕末から明治にかけて生きたとされる、
考証の手がかりすら、霧に包まれたかの如く判然としない、
俳人、柳の家井月と、井月の生き様、死に様に憧れ、「郷土の誇り」とまで呼ぶ、自称伊那出身の古本屋の山井を描いた項番12である。
自称「無能の人」、助川助三は、彼自身に言わせると、
漫画屋としても、中古カメラ修理屋としても、骨董品屋としても、目論見が外れたため、石屋を始めた、とあるが、彼の女房はそうは思ってはいない。
アンタには漫画しかない、アンタ自身も内心では、とっくに気づいている。
なのに何で中古カメラを修理したり、散々贋作をつかまされるためだけに骨董品屋をやるのか、挙句石屋ときたわ!
アンタの目論見が外れるのは、アンタが本気じゃないからよ、アンタが本気になれるのは漫画だけなんだから、漫画を描いてよ!本気を出してよ!
つげ義春氏は「無能の人」の最後の物語「蒸発」を執筆したのち、
翌年(1987年)、「海へ」、「別離」を執筆後、現在(2016年)に至るまで、新作漫画を発表してはいない。
あまりの直截さに、どれほどの無能ぶりを披露してくれるのかと期待するあまり、思わず本書を購入してしまったではないか。
本書の構成は、以下の通り。
1.「退屈な部屋」(1975年10月「漫画サンデー」初出)
2.「魚石」(1979年11月「ビッグゴールド」初出)
3.「日の戯れ」(1980年11月「カスタムコミック」初出)
4.「散歩の日々」(1984年6月「COMIC ばく」初出)
5.「池袋百点会」(1984年12月「COMIC ばく」初出)
6.「隣の女」(1985年3月「COMIC ばく」初出)
7.「石を売る」(1985年6月「COMIC ばく」初出)
8.「無能の人」(1985年9月「COMIC ばく」初出)
9.「鳥師」(1985年12月「COMIC ばく」初出)
10.「探石行」(1986年3月「COMIC ばく」初出)
11.「カメラを売る」(1986年6月「COMIC ばく」初出)
12.「蒸発」(1986年9月「COMIC ばく」初出)
上記短編漫画12作のうち、項番7から項番12までの6つの物語が「無能の人」を指していて、
1988年5月に季刊雑誌「COMIC ばく」の出版元である日本文芸社より「無能の人」名義で刊行されている。
ちなみに、項番1から項番3までが、1981年5月に刊行された晶文社の「必殺するめ固め」に初収録され、
項番4から項番6までが、1985年6月に刊行された日本文芸社の「隣の女」に初収録されている。
また、本書の巻末には、1996年7月、ロッキング・オン誌に掲載された、吉本隆明氏の「消費の中の芸」が、「解説文」として改題され、再録されている。
筆者の「お気に入り」は、漫画家の夫が妻には内緒で、二畳の部屋を借り、子供が押入れを「秘密基地」と称するが如く、
この「秘密基地」で無為に過ごす愉しみを堪能していると、妻がやってきて、浮気目的ではないことを確認すると、
この何もない「退屈な部屋」には、「生活感」がないことを嫌い、本来の住居から家財道具を持ち込み、
夫にとっての「秘密基地」が、夫にとっての「退屈な部屋」へと変貌を遂げてしまう、日常がハレの日を駆逐する、一抹の寂しさを覚える項番1、
子供の頃、河原の石がキラキラ輝く宝石に匹敵するほどの魅力を持っていた「懐かしく大切な思い出」を、大人になってからも忘れられず、
2年かけて飛び切りいい石を採石し、吟味し、「これ、商売になるんじゃね?」と思い込み、「石屋」を初めてしまい、
子供の頃の「懐かしく大切な思い出」を、大人の「金儲けの道具」として利用してしまう男の悲哀を描いた項番7、
野鳥を自由自在に飼い慣らす、「鳥師」のような「玄人」が駆逐され、
その代わりにやってきたのが、
己れの未熟を正当化するために、「価値観の多様化」などと、都合のよい言葉を弄して物ごとの本質を曖昧にし、
手前えの理解できないことは何でも古臭いと決めつけ、自律自制を忘れ、自己主張ばかりの「素人」であるという指摘が、
筆者の心に突き刺さる項番9、
霧のように伊那に現れ、そのまま三十年伊那に住みつき、耄碌が進行すると次第に厄介者扱いされて、子供に石を投げつけられても決して怒らず、
善光寺詣でに連れ出され、捨てられても何故か伊那に戻ってきて、辞世の句を詠んで、伊那の旧友宅で果てた、幕末から明治にかけて生きたとされる、
考証の手がかりすら、霧に包まれたかの如く判然としない、
俳人、柳の家井月と、井月の生き様、死に様に憧れ、「郷土の誇り」とまで呼ぶ、自称伊那出身の古本屋の山井を描いた項番12である。
自称「無能の人」、助川助三は、彼自身に言わせると、
漫画屋としても、中古カメラ修理屋としても、骨董品屋としても、目論見が外れたため、石屋を始めた、とあるが、彼の女房はそうは思ってはいない。
アンタには漫画しかない、アンタ自身も内心では、とっくに気づいている。
なのに何で中古カメラを修理したり、散々贋作をつかまされるためだけに骨董品屋をやるのか、挙句石屋ときたわ!
アンタの目論見が外れるのは、アンタが本気じゃないからよ、アンタが本気になれるのは漫画だけなんだから、漫画を描いてよ!本気を出してよ!
つげ義春氏は「無能の人」の最後の物語「蒸発」を執筆したのち、
翌年(1987年)、「海へ」、「別離」を執筆後、現在(2016年)に至るまで、新作漫画を発表してはいない。
2019年8月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ねじ式や夜が掴むといった作品で心を鷲掴みにされた口ですが、
この文庫ではあれほどの衝撃はなかったものの、また違った面が見られました。
私小説を漫画にしたような作品が多く、ほとんど地の文と絵でストーリーが進んで行ったりと、
純文学や不条理小説好きにもたまらないにおいがしていました。
背景の書き込みが凄まじく、ノラクロの顔がちょこんとあったりなどのユーモアもあり描写に圧倒されます。
新品で買えなくなっている文庫も復刊してほしいところです。
この文庫ではあれほどの衝撃はなかったものの、また違った面が見られました。
私小説を漫画にしたような作品が多く、ほとんど地の文と絵でストーリーが進んで行ったりと、
純文学や不条理小説好きにもたまらないにおいがしていました。
背景の書き込みが凄まじく、ノラクロの顔がちょこんとあったりなどのユーモアもあり描写に圧倒されます。
新品で買えなくなっている文庫も復刊してほしいところです。
2014年2月20日に日本でレビュー済み
生活に密着した「どうにもならない感」が、全編に満ち溢れている。
で、オチがあるかと言えばそうでもなく、わりと淡々としている。
この、なんとも言えない、「行き詰まっている感じ」もまた、人間の一側面だと思う。
そこに魅力を感じる(感じそうな)人は、読んでみるのが良いのではとオススメする。
映画になったりするくらいには、味わいがある作品なのだ。
で、オチがあるかと言えばそうでもなく、わりと淡々としている。
この、なんとも言えない、「行き詰まっている感じ」もまた、人間の一側面だと思う。
そこに魅力を感じる(感じそうな)人は、読んでみるのが良いのではとオススメする。
映画になったりするくらいには、味わいがある作品なのだ。
2020年10月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読んでいて、胸が苦しくなります。
名作なのかは、私には良くわからないのですが、映画で例えるなら「自転車泥棒」を見た後の気持ちを煮詰めた暗さが、毎ページ続くような。
仕事で落ち込んでいるときに読んで、余計にしんどい気持ちになったのは、これは私の勝手な事情ですが、ある程度元気な時に読むことをオススメします。
名作なのかは、私には良くわからないのですが、映画で例えるなら「自転車泥棒」を見た後の気持ちを煮詰めた暗さが、毎ページ続くような。
仕事で落ち込んでいるときに読んで、余計にしんどい気持ちになったのは、これは私の勝手な事情ですが、ある程度元気な時に読むことをオススメします。