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蝦夷地別件〈上〉 (新潮文庫) 文庫 – 1998/6/30

4.2 5つ星のうち4.2 74個の評価

時は18世紀末、老中・松平定信のころ。蝦夷地では、和人の横暴に対する先住民の憤怒の炎が燃えあがろうとしていた。この地の直轄を狙い謀略をめぐらす幕府と、松前藩の争い。ロシアを通じ、蝦夷に鉄砲の調達を約束するポーランド貴族――。歴史の転換点で様々な思惑が渦巻いた蝦夷地最大の蜂起「国後・目梨の乱」を未曾有のスケールで描く、超弩級大作。日本冒険小説協会大賞受賞。
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登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 新潮社 (1998/6/30)
  • 発売日 ‏ : ‎ 1998/6/30
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 539ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4101343136
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4101343136
  • カスタマーレビュー:
    4.2 5つ星のうち4.2 74個の評価

著者について

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船戸 与一
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1944(昭和19)年、山口県生れ。早稲田大学法学部卒業。

1985年『山猫の夏』で吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。1989(平成元)年『伝説なき地』で日本推理作家協会賞を受賞。1992年『砂のクロニクル』で山本周五郎賞を受賞。2000年『虹の谷の五月』で直木賞を受賞する。主な著書に『猛き箱舟』『炎 流れる彼方』『蝦夷地別件』『龍神町龍神十三番地』『緋色の時代』『三都物語』『河畔に標なく』などがある。

カスタマーレビュー

星5つ中4.2つ
5つのうち4.2つ
74グローバルレーティング

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上位レビュー、対象国: 日本

2017年7月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本件でなく「別件」。
タイトルの非情さは作者が読み手に突きつける
刃の切っ先のようではないか。
正史が圧殺した草民たちの咆哮と慟哭は
あくまでも本件ではなく別件に過ぎない、
という非情さだ。
それぞれの憂国と、それぞれの救国は
血溜まりの中でもつれ合う。

物語全編は3人称1視点で描かれてはいるが、
視点は章ごとに異なる。
ひとつの章は、ひとりの登場人物の視点に限定されており、
神の視点で俯瞰される記述はない。
これは他の船戸長編にも採用されている手法だ。
章ごとに一寸の虫、つまり、ひとりの登場人物の五分の魂を
生々しく描き出す効果を、この手法はもたらしている。
だから描写は叙事に徹しておらず、
それ故に、この小説はハードボイルドではない、
と思うのだ。

物語の背骨は
18世紀のユーラシア大陸を串刺しにするダイナミックな歴史観だ。
東欧と極東を貫く、この壮大な視点は
多くの読み手を陶然とさせるが、
この切り口は実際の歴史研究の場でも
指摘されたり議論されていることなのだろうか。
作者による完全なフィクションなのだろうか。
ぜひ専門家の見解をうかがいたいものだ。

という事を考えたのは、
この物語で描かれるユーラシア大陸の東西のパワーバランスで
1939年のノモンハン事件を連想したからだ。
ソ連軍の主要軍力が欧州に集中する状況で
モンゴルで発生したソ連と日本の武力衝突は
その後のドイツとソ連によるポーランド侵攻に結びつき
第二次世界大戦へとなだれ込む。

スターリンがナチスドイツの動向を懸念している隙に
東を攻めようとする関東軍(ノモンハン事件)。
エカテリーナ2世の南下政策を妨害しようと奔走する
救国ポーランド貴族(蝦夷地別件)。

作者が到達する最終地点が満州国演義であったことと
無関係ではないのではないかと、
いや、まあ、これは想像するしかないのだけれど。
15人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2016年12月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
問題ありません。折れてもなく、日焼けもなく十分にきれいです。
2020年9月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
圧倒的に筆致に物語の持つ力、ダイナミックさ、その魅力を存分に感じる作品であった。
船戸作品は初めて。かの有名な満洲…を読もうと全巻買って本棚の肥やしに。そんな折に、ふと北海道旅行に行くことが決定。以前から、アイヌの人々が日本人(和人)から受けてきた略奪、陵辱、差別のことはちらっと、教科書に出てくるシャクシャインくらいしか知らなかった。
苛烈を極める差別。それが物語となり、セリフとして人から人から投げつけられる。目を背けたくなる。
1人の人間として一度は読まなくてならないと思う。
また、丁寧に人物の心の動きを追ってるので、コミュ力を付けるのに多少いいのかなとも感じた。
5人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2017年7月16日に日本でレビュー済み
蝦夷地別件は20年ほど前に読んだ作品である。
当時札幌に住んでいたこともあり、自分の知らなかった歴史が描かれた面白い作品だと思った。
個人的には「砂のクロニクル」に次ぐ船戸与一の傑作である。

時を経て満洲国演義、新雨月を読んだ後で蝦夷地別件を再読をしてみると、当時とは違った
船戸与一の問題意識がはっきりと見えてくるようになった。
船戸与一は常にこう問い続けていたのだ。
「日本とは何か?日本人(日本民族主義)とは何か?」

他の作品を読んでみると改めてその問題意識の片鱗があちこちに散りばめられているのが読み取れる。
・「山猫の夏」の弓削一徳は父が帝国陸軍大尉であり、皇道派とされパージされブラジルに渡った。
・「夢は荒れ地を」の丹波明和の母は関東軍相手に慰安婦をしていた。
・「降臨の群れ」のアンボンは戦時に日本軍が占領していた。
・「虹の谷の五月」のトシオの祖父は抗日組織に属していた。
読み直した本は現時点で限られているので他はどうかわからないが、いずれの作品にも
日本のかつての戦争の影がちらついているのである。
昔は単に辺境で日本人が活躍・暗躍する独特で素晴らしい冒険譚を書いていると思っていたが、それだけではなかったのだ。

つまり、船戸与一は数多の作品を通して「あの戦争は何だったのか?」を中心に
日本とは、日本人とは、をずっと問い続けていたのである。

そして、船戸与一が初めて書いた歴史小説「蝦夷地別件」では現在の日本の形をほぼ完成させる
蝦夷地の日本化の決定的な契機となる、国後目梨の戦いをテーマにしている。

当時はなぜ船戸与一が辺境の冒険譚ではなく歴史小説なのか、と不思議に思ったものだが、今となってはその必然が分かる。
蝦夷地は日本ではなかった。それが、いつからどのように日本になったのか。その秘密を解き明かしたかったのだ。
しかも、その視点は日本にとどまらずヨーロッパの動乱と関連付けているのだから恐れ入る。

そして、船戸与一は関心の核心である「天皇とは何か」着手するはずだったのだが、
構想だけで作品を完成させることなく倒れてしまった。つくづく惜しい人を亡くしたものだ。
いずれにせよこの作品は満洲国演義の関連作品として理解することで、大きな意義が理解できるようになる。

そして、船戸与一は同時に民族とは何か、国とは何か、人が生きるとはどういうことかを常に問い続けていた。

蝦夷地で何があったのか、日本とは何か、本書でしかと確かめてほしい。
踏みにじられるアイヌ、憤怒の咆哮の彼方に現在の日本があることを。
21人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2018年4月17日に日本でレビュー済み
陸続きの欧州の歴史観は特にフェルナン・ブローデルの『地中海』以降、グローバルな人とモノと情報の流れを捉えることが当たり前である。
だからこそ、EUや中近東やアフリカからの人の流れも受け入れられる。
一方で、島国日本人は「日本固有の歴史」みたいな幻想に囚われやすい。
だから、いまだに「単一民族神話」が支配的で、移民へにも不寛容なところがある。
この作品は、史実ではなくても、本当の歴史と言える。
「単一民族政策」なだけで「単一民族」なわけではない歴史。
鎖国してるから、海だから、外国の人も物も情報も入らない?普通に考えたらそんなわけないだろという歴史。
という意味では。

10年以上前に読んで、正直、細かいことは忘れてしまっているけど、一番印象的だったのは、日本史もブローデル的なグローバルな視野から再検証が必要なんだなと思わされたところ。
船戸はこの作品を書く上でブローデル(あるいはそれ以降の歴史観)は意識していたはず。
ルポの『国家と犯罪』では、世界システム論のイマニュエル・ウォーラーステインにも言及してた気がするし(うろ覚えだけど。なお、ウォーラーステインの前提のひとつはブローデル)。
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2009年5月31日に日本でレビュー済み
本書の舞台は蝦夷地、今で言う北海道です。
松前藩、場所請負商人の収奪にあえぐアイヌたち。
不当な取引、差別的待遇に募る不満・・・
しかし、松前藩の火縄銃隊には勝ち目はない・・・

国後の棟梁格・ツキノエに持ち込まれる、ヨーロッパ製の新式銃300丁の譲渡。
話を持ち込んだのはステファン・マホウスキ、
王国復活を志すポーランド貴族です。
極東で事変が起こって、ポーランド復興に何の関係があるのか?

ここがまず、本作のミソ!
アイヌの動乱とヨーロッパの情勢をリンクさせる。
すごい発想です。

しかし、アイヌの中は、慎重派、積極派、世代対立が絡んで、混乱模様。
団結を得られぬ同胞に歯がゆい思いをするハルナフリ。
暗躍を見せる怪婆、厚岸のオッケニ。
そして、なぜかアイヌに好意的な立ち回りを見せる、幕府御家人の子弟・葛西政信。
蝦夷地の情勢に翻弄されながら自分の生活を作り守ろうとする禅僧・洗元

一方の松前藩も、切れ者ながら自由奔放な藩主のもと、
門閥代表の松前監物と権力の鬼・新井田孫三郎が対立。
この孫三郎の権力への執着というか、己の容貌へのコンプレックスというか、
黒い炎を出して燃えています。

二つの陣営の内部を緻密に濃厚に描く点が二つ目のミソでしょう。

そして、本作が単なる秀作で終わらなかった三つ目のミソは、終章・風の譜。
自らの策謀の清算のため、蝦夷を訪れるマホウスキ。
一方、事件全体の清算のため、蝦夷を離れるハルナフリ。
惨たらしく救いのないエンディングですが、
物語全体に因果応報という一つの確固たるテーマを与えます。

この終章は、まさにページを捲る手をとまらせない緊迫感。

読書というエンターテイメントの一つの到達点がここにあると言うべきでしょう。
一人でも多くの人に読んでもらいたい逸作!
14人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2007年4月12日に日本でレビュー済み
さすがに船戸与一、最初から中盤まではあまりの面白さに止まりません。

かなりの長編ですが、キャラクターメイクと構成の素晴らしには脱帽です。最高です!

しかし、どうしてこの人はいつもラストが現実離れするのでしょうか、わかりません。

もったいないの一言です。滅茶苦茶にしてます。それがこの作者の限界でしょうか。

前半の面白さががラストまでもてば、この作品は必ずなんらかの賞を受賞していたでしょうに、ホントもったいないです。

船戸ハードボイルドの最高傑作は、やはり「山猫の夏」。

これを越える作品を作るのはやはり難しい、ということでしょうか。
9人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2008年10月11日に日本でレビュー済み
一ページ目からページをめくる手が止まらす、寝食を忘れ一気に読んでしまった唯一の本であり、僕の船戸作品の入り口となった本です。
とにかく、面白いっ!この一言に尽きます。どんどん自分の頭と胸に入り込んでくる登場人物たちのそれぞれの思いに一瞬でも気を抜くと熱気に燃やされてしまいそうです。
アイヌに鉄砲を運び込むために暗躍するポーランド貴族マホウスキー。
アイヌの存続を第一に考え行動するアイヌの英雄ツキノエ。
蝦夷地で暗躍する侍、葛西政信。その狙いはっ?
アイヌのために養成所を開こうとする和人の僧、洗元
職務の為ならどこまでも冷酷になる男、松前藩番頭新井田孫三郎
そして、それら全てを見届けようとする僧、静澄。
様々な思惑が絡み合う蝦夷地で、
アイヌの少年ハルナフリはその結末に何をみたのか?
物語はどんどんと最低の結末へと加速していきます。
しかし、これこそが船戸の真骨頂っ!
ここまでハッピーエンドという言葉が似合わない小説家は
日本ではこの人だけでしょう。
ほかの船戸作品は主に海外を舞台にしていますが、これは江戸時代中期の日本。
勢いでぐいぐいひっぱっていく作品が多いのにこれだけはラストまで飽きさせません。蝦夷地別件、オススメですっ!
10人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート