この小説は,騒音測定やピアノ調律,音の地図作りやピアノのピッチを巡っての夫婦のすれ違いなど現実的な話を基軸にストーリーが展開していきます。フミの行動に不審を持った荒田は盗聴器をしかけたり尾行をしたりします。そういうことも実際にはありえます。終盤になっていよいよ荒田がフミに詰め寄ります。男とはどういう関係なんだと。そうすると「前世からつながっている・・」とかというフミの返事が返ってきます。わたしは「はあ??」と。話が一気に空想の世界に入ります。そこかよ。そこに落ち着んかよと。まあ,読者の期待をあっさりとひっくり返された感じです(笑)結局,一番知りたかったフミと男との関係も分からずにもやもやとしたままthe endとなります。
辻さんは,本当はラストのまとめ方を随分悩んでいたんじゃないかと思います。そして原稿の締め切りが近づいてきて焦って「え~い,つかみどころのない前世にしよう」と考えたんじゃないですかね(笑)謎の小説です。でもやっぱり辻さんの文章は大好きです。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
アンチノイズ (新潮文庫 つ 17-5) 文庫 – 1999/3/1
辻 仁成
(著)
- 本の長さ231ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1999/3/1
- ISBN-104101361258
- ISBN-13978-4101361253
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1999/3/1)
- 発売日 : 1999/3/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 231ページ
- ISBN-10 : 4101361258
- ISBN-13 : 978-4101361253
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,059,530位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
東京生まれ。
89年「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞し、作家デビュー。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年「白仏」の仏翻訳語版「Le Bouddlha blan」で、仏フェミナ賞・1999年外国小説賞を日本人としては初めて受賞。
文学以外の分野でも幅広く活動している。監督・脚本・音楽を手がけた映画「千年旅人」「ほとけ」「フィラメント」「ACACIA」でも注目を集め、メディアの垣根を越えたその多岐にわたる活躍は、今、もっとも注目されている。2003年より渡仏。現在はフランスを拠点に創作活動を続けている。
カスタマーレビュー
星5つ中4.5つ
5つのうち4.5つ
6グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2014年10月30日に日本でレビュー済み
騒音測定の仕事をしながらも、ロックを愛して止まない主人公。
常に音に囲まれ、支配されている世界で、昔のバンド仲間との再会や恋人との歪な恋愛が語られていく。
淡々とした作品だが、辻仁成らしく音楽を通した繊細さを文体に感じことができる。
常に音に囲まれ、支配されている世界で、昔のバンド仲間との再会や恋人との歪な恋愛が語られていく。
淡々とした作品だが、辻仁成らしく音楽を通した繊細さを文体に感じことができる。
2013年3月19日に日本でレビュー済み
「音」をテーマにした『グラスウールの城』(1993年)『パッサジオ』(1995年)に続き、三部作の締めくくりとして発表された。25シーンで構成され、夏から秋にかけての男女4人の物語が交差する。
S区役所の環境保全課に勤める28歳の荒田は、住民からの苦情を受けて、騒音を測定するようになって3年がたつ。この仕事がきっかけで自分の耳で聞こえる音をノートに記し、「音の地図」を作成することを始めた。騒音測定が数値で測る定量的で公的なものに対し、音の地図は何が聞こえるかをしるす、定性的で私的なものである。そうした中、梵鐘の音が測定器のレッドゾーンを振り切ったことで、寺から鳴らされる鐘の音が、実は町の中で一番大きな音であることに気づく。梵鐘の音は本来、人の心を落ち着かせるものであるのに、アルミサッシの窓で遮られたことで聞こえなくなっているのだった。耳をふさぐこと(ノイズ)ではなく、耳を澄ますこと(アンチノイズ)こそ、現代社会では大事なのだということにたどり着く。落ち着きがなくなった現代社会と「音」の関係性を鋭くついている。
荒田は高校から大学時代までバンドでエレキギターを弾いていた。その時の鍵盤楽器を担当していたのが柏木郁夫である。ピアニストになりたかったが、いまは調律師として働いている。彼にはピアニストの妻と5歳の息子・武がいるが「ピッチのとり方の違い」から夫婦関係がうまくいっておらず、別居中であり、ついには離婚することになる。
荒田は大学でフミと知り合う。実家は九十九里の乾物屋で、いまは副都心のオフィスビルで働いていて、交際して6〜7年がたつ。荒田とフミは半同棲しているが、フミの態度が冷たくなっていることに疑問を抱き、フミの留守番電話を盗み聞くようになった。その中に、謎の男(40代半ばの相沢)からの伝言がいくつもあり、彼が浮気相手だと思い込んでしまう。
荒田は、テレクラで知り合った大学生で、テレクラ嬢の自宅アルバイトをするマリコとも関係を持っている。マリコにはコードレスフォンの会話や盗聴器を盗み聞く趣味があった。
荒田と柏木は「音」に関する仕事をしており、荒田とマリコは盗聴するという趣味で共通している。
マリコはいう。「東京は、耳に聞こえない音が充満しているのよ。盗聴器の電波はもちろん、携帯電話や無線機、ポケットベルの電波だってあるでしょう。それに最近ではPHSだって普及しだしている。もっともっと沢山の電波が飛び交っているわ。騒音都市だなんていうけど、本当の騒音は聞こえないところにあったりして」(61ページ)。この傾向はスマートフォンが普及したいま、さらに強まっている。その意味で予言めいた台詞である。実際に聞こえる音でも風や雨など自然が奏でる音や鐘の音はかなりのデジベルだがうるさいとは感じない。本当の騒音は電波にのってやり取りされる無数の会話にこそある。現在ではメールを含めて、そのほとんどが他者にとっては「聞こえざるノイズ」なのである。
読みどころは、フミが相沢という謎の男とどのような関係かという点である。二人を尾行する荒田とともに推測することをお勧めする。荒田にとってマリコは「望むことは何でもしてくれる」人。フミは「欲しくても簡単には手に入れることのできない」人。そのフミが物語の後半、どのような行動に出るのか。『旅人の木』(1992年)と併せて読むと、1990年代前半に辻仁成が主題に据えていたテーマの1つである「輪廻」をじっくりと味わうこともできる。
S区役所の環境保全課に勤める28歳の荒田は、住民からの苦情を受けて、騒音を測定するようになって3年がたつ。この仕事がきっかけで自分の耳で聞こえる音をノートに記し、「音の地図」を作成することを始めた。騒音測定が数値で測る定量的で公的なものに対し、音の地図は何が聞こえるかをしるす、定性的で私的なものである。そうした中、梵鐘の音が測定器のレッドゾーンを振り切ったことで、寺から鳴らされる鐘の音が、実は町の中で一番大きな音であることに気づく。梵鐘の音は本来、人の心を落ち着かせるものであるのに、アルミサッシの窓で遮られたことで聞こえなくなっているのだった。耳をふさぐこと(ノイズ)ではなく、耳を澄ますこと(アンチノイズ)こそ、現代社会では大事なのだということにたどり着く。落ち着きがなくなった現代社会と「音」の関係性を鋭くついている。
荒田は高校から大学時代までバンドでエレキギターを弾いていた。その時の鍵盤楽器を担当していたのが柏木郁夫である。ピアニストになりたかったが、いまは調律師として働いている。彼にはピアニストの妻と5歳の息子・武がいるが「ピッチのとり方の違い」から夫婦関係がうまくいっておらず、別居中であり、ついには離婚することになる。
荒田は大学でフミと知り合う。実家は九十九里の乾物屋で、いまは副都心のオフィスビルで働いていて、交際して6〜7年がたつ。荒田とフミは半同棲しているが、フミの態度が冷たくなっていることに疑問を抱き、フミの留守番電話を盗み聞くようになった。その中に、謎の男(40代半ばの相沢)からの伝言がいくつもあり、彼が浮気相手だと思い込んでしまう。
荒田は、テレクラで知り合った大学生で、テレクラ嬢の自宅アルバイトをするマリコとも関係を持っている。マリコにはコードレスフォンの会話や盗聴器を盗み聞く趣味があった。
荒田と柏木は「音」に関する仕事をしており、荒田とマリコは盗聴するという趣味で共通している。
マリコはいう。「東京は、耳に聞こえない音が充満しているのよ。盗聴器の電波はもちろん、携帯電話や無線機、ポケットベルの電波だってあるでしょう。それに最近ではPHSだって普及しだしている。もっともっと沢山の電波が飛び交っているわ。騒音都市だなんていうけど、本当の騒音は聞こえないところにあったりして」(61ページ)。この傾向はスマートフォンが普及したいま、さらに強まっている。その意味で予言めいた台詞である。実際に聞こえる音でも風や雨など自然が奏でる音や鐘の音はかなりのデジベルだがうるさいとは感じない。本当の騒音は電波にのってやり取りされる無数の会話にこそある。現在ではメールを含めて、そのほとんどが他者にとっては「聞こえざるノイズ」なのである。
読みどころは、フミが相沢という謎の男とどのような関係かという点である。二人を尾行する荒田とともに推測することをお勧めする。荒田にとってマリコは「望むことは何でもしてくれる」人。フミは「欲しくても簡単には手に入れることのできない」人。そのフミが物語の後半、どのような行動に出るのか。『旅人の木』(1992年)と併せて読むと、1990年代前半に辻仁成が主題に据えていたテーマの1つである「輪廻」をじっくりと味わうこともできる。
2007年6月10日に日本でレビュー済み
主人公とその友達。2人の男は中途半端なだめ男だからいいのかもしれない。
そしてまた、登場する女性たちもまた、
中途半端で非常に現代的な病に陥っているキャラクターが非常に良い。
お役所勤めの騒音対策課の男が、ある時「音の地図」を作成しはじめる。
それが一つの描写となって作品を通底しているわけだが、それが主テーマではなく、
現代社会の音も聞けなくなってしまった、まともなんだけど落とし穴に陥ってしまった、
普通の現代人を描いてる様が実に良い。
そしてまた、登場する女性たちもまた、
中途半端で非常に現代的な病に陥っているキャラクターが非常に良い。
お役所勤めの騒音対策課の男が、ある時「音の地図」を作成しはじめる。
それが一つの描写となって作品を通底しているわけだが、それが主テーマではなく、
現代社会の音も聞けなくなってしまった、まともなんだけど落とし穴に陥ってしまった、
普通の現代人を描いてる様が実に良い。
2008年6月18日に日本でレビュー済み
ヘッドホンをかけ、大音量でロックをかけながら、騒音測定をする男と他人の会話を盗聴する女。このキャスティングで参りました。音を遮断することで、社会と隔絶することをのぞみながら、音の地図をつくるという行為にふける矛盾。音をキーワードに現代社会のなかでの人の不器用な生き方を描写しています。とてもクールな作品です。
2002年6月23日に日本でレビュー済み
普段は、意識していない自分たちの周りの音を題材に展開していて、面白かった。意識していない、自然の音、騒音、そして、携帯などの電波。
著者が音に対する意識が強い人だから、書けた作品だと思います。秀作です。
著者が音に対する意識が強い人だから、書けた作品だと思います。秀作です。