円紫さんシリーズと、時の3部作は大好きで何度も読んでいましたが
今回、この作品を読んで、
改めて北村薫さんの作品は間違いないな…と思いました。
あらすじを書くと薄っぺらい。だから書きません。
他のレビューで言いつくされているでしょうしね。
テーマだって、一つ一つをとれば目新しいわけじゃない。
でも、ありそうなテーマを違和感なく繊細に紡ぎ、
様々な人間からの心を豊かに描き出す言葉の巧みさは
他の作家さんとは一線を画すのではないかと感じています。
言葉の遣い方が、とにかく丁寧で、優しいです。
命を燃やして必死に、時に不器用に生きる人間への愛を感じます。
直接的な描写を避け、想像の余地を残してくれているのが好きです。
そして、北村さんの小説のキモは会話でしょう。
淡々とした日常会話がとても知的で詩的。
劇的でない日常にこそ、幸せが宿っていたり。
決して順風満帆でない人間たち、
不完全な、とても「人間らしい」人間たちばかり出てきます。
それぞれの立場に身を置きながら、
「女の幸せって、何だろう…」
そんなことを思いながら、でも悲観的にならず、味わえる作品です。
だって、ここに出てくる女性たちはみな、
それぞれに痛みを抱えているけれど、不幸ではないですから。
私も丁寧に生きよう。
自分の心を細やかに感じて、表現して生きよう。
身近な人と、きちんと向き合おう。
悲しみや寂しさに満ちた場面を経て、擬似的にそれを乗り越えたのち、
そんな前向きな決意を静かに持つことができる。
私にとっては、そんな作品でした。
様々な年齢層の、特に女性に読んでいただきたい本です。
別れ、死、愛、血縁、孤独、仕事、
抗えない・取り戻せない時の流れ、
そんなものに、静かに向き合いたい時に。
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ひとがた流し (新潮文庫) 文庫 – 2009/4/25
北村 薫
(著)
十代の頃から、大切な時間を共有してきた女友達、千波、牧子、美々。人生の苛酷な試練のなかで、千波は思う。〈人が生きていく時、力になるのは自分が生きていることを切実に願う誰かが、いるかどうか〉なのだと。幼い頃、人の形に作った紙に願い事を書いて、母と共に川に流した……流れゆく人生の時間のなかで祈り願う想いが重なりあう――人と人の絆に深く心揺さぶられる長編小説。
- 本の長さ397ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2009/4/25
- ISBN-104101373310
- ISBN-13978-4101373317
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2009/4/25)
- 発売日 : 2009/4/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 397ページ
- ISBN-10 : 4101373310
- ISBN-13 : 978-4101373317
- Amazon 売れ筋ランキング: - 846,710位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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北村 薫
1949(昭和24)年、埼玉県生れ。早稲田大学ではミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、’89(平成元)年「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。’91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。作品に『ニッポン硬貨の謎』(2006年本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(’09年直木賞受賞)など:本データは『1950年のバックトス (ISBN-13:978-4101373324 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年11月7日に日本でレビュー済み
内容:未婚でアナウンサーの千波、子供が1人いるが離婚した牧子、子供が1人いるが再婚した美々、3人は幼なじみで、アラフィフとなった今でも仲良し。美々の旦那が実の父親ではないと、子供が気づいたり、美々の後押しもあって千波が結婚したり、千波が病気になって亡くなったりと、大きな問題起きますが、学生時代の思い出等振り返りながら、登場人物の心の揺れを写し出しでいきます。
感想:文学的な表現が多く、好きな人は好きなんだと思う。さくさくと事実だけをベースに読んでいきたい合理主義的な読み方をする私には、良く理解できませんでした。教養が足りないのか?私が男性だからなのか?いや筆者も男性だよな?と思いつつ、結局何が言いたいんだっけと思ってしまいました。仲良しな友達がいて羨ましいぞ、とは思いましたが。※個人的見解です。
感想:文学的な表現が多く、好きな人は好きなんだと思う。さくさくと事実だけをベースに読んでいきたい合理主義的な読み方をする私には、良く理解できませんでした。教養が足りないのか?私が男性だからなのか?いや筆者も男性だよな?と思いつつ、結局何が言いたいんだっけと思ってしまいました。仲良しな友達がいて羨ましいぞ、とは思いましたが。※個人的見解です。
2015年10月3日に日本でレビュー済み
私にもかけがえのない友達が何人かいます。
千波が牧子に最後に会いに来るシーンは、涙なくしては読めませんでした。
北村薫の描く人物、人間関係は「こんなの現実にはないよ、もっとどろどろしてるよ」と思わせるところもあります。
北村さん自身が学校の先生だったからか、なんとなく教科書っぽいイメージもあります。
でも、よく男の人がここまで、女性同士の感情の機微を書くなあ、と思って感心させられます。
いろんな友達におすすめ本としてプレゼントした私の大好きな一冊です。
千波が牧子に最後に会いに来るシーンは、涙なくしては読めませんでした。
北村薫の描く人物、人間関係は「こんなの現実にはないよ、もっとどろどろしてるよ」と思わせるところもあります。
北村さん自身が学校の先生だったからか、なんとなく教科書っぽいイメージもあります。
でも、よく男の人がここまで、女性同士の感情の機微を書くなあ、と思って感心させられます。
いろんな友達におすすめ本としてプレゼントした私の大好きな一冊です。
2010年2月7日に日本でレビュー済み
この作品には、学生時代からの親友同士の女性が3人登場する。
アナウンサーで独身の「トムさん」こと石川千波。
千波の小學校時代からの友人で作家の、水澤牧子。
この2人が高校で知合つた日高美々。
「學生生活を共にした、かつての娘たちも、いまは四十を越した。さういふ女三人の日常的付き合ひが、いまだに續いてゐる。かなり、珍しいことだろう。」
粗筋を書いても仕方がない。
この作品のなかで、印象に殘つた會話がある。
千波が玲に語る言葉だ。
「人が生きていく時、力になるのは何かつていふと、−《自分が生きてゐることを切實に願ふ誰かがゐるかどうか》だと思ふんだ。−人間は風船みたいで、誰かのさういふ願ひが、やつと自分を地上に繋ぎ止めてくれる。(後略)」
友情つて素晴らしい。
それが若い頃からずつと繼續してゐるのであれば、なほのこと素晴らしい。
彼女達の共有して來た時間といふものの素晴らしさよ。
その時々で濃淡はあれど、最後の瞬間まで分かち合へる、共に積み重ねられてきた時間。
そして、お互ひがお互ひを理解し合へることの嬉しさ。
友情もそして愛も。
かけがへのない時間をともに過ごすことの大切さ。
あなたは、自分の大切な人のつむじの形を知つてゐますか?
私は、そこまでは知らない・・・
「そんな、ささいなこと」といふなかれ。
些細なことの積み重ねが人生といふものではないか。
千波は倖せだつたと私は思ふ。
なぜなら、《自分が生きてゐることを切實に願ふ誰か》が、少なくとも確實にひとりはゐることを知ることができたから。
アナウンサーで独身の「トムさん」こと石川千波。
千波の小學校時代からの友人で作家の、水澤牧子。
この2人が高校で知合つた日高美々。
「學生生活を共にした、かつての娘たちも、いまは四十を越した。さういふ女三人の日常的付き合ひが、いまだに續いてゐる。かなり、珍しいことだろう。」
粗筋を書いても仕方がない。
この作品のなかで、印象に殘つた會話がある。
千波が玲に語る言葉だ。
「人が生きていく時、力になるのは何かつていふと、−《自分が生きてゐることを切實に願ふ誰かがゐるかどうか》だと思ふんだ。−人間は風船みたいで、誰かのさういふ願ひが、やつと自分を地上に繋ぎ止めてくれる。(後略)」
友情つて素晴らしい。
それが若い頃からずつと繼續してゐるのであれば、なほのこと素晴らしい。
彼女達の共有して來た時間といふものの素晴らしさよ。
その時々で濃淡はあれど、最後の瞬間まで分かち合へる、共に積み重ねられてきた時間。
そして、お互ひがお互ひを理解し合へることの嬉しさ。
友情もそして愛も。
かけがへのない時間をともに過ごすことの大切さ。
あなたは、自分の大切な人のつむじの形を知つてゐますか?
私は、そこまでは知らない・・・
「そんな、ささいなこと」といふなかれ。
些細なことの積み重ねが人生といふものではないか。
千波は倖せだつたと私は思ふ。
なぜなら、《自分が生きてゐることを切實に願ふ誰か》が、少なくとも確實にひとりはゐることを知ることができたから。
2014年3月21日に日本でレビュー済み
チープなお涙ちょうだいものになりそうな物語を、心にゆっくり染み込む話にしあげている。
タイトルがそれほどキーにもなってないところなど、数え上げたらきりがない数々の表現が人の世の美しさをあぶり出す。
生きることは周りの人に照らされることでいくらでも輝きを増すということを教わった。
タイトルがそれほどキーにもなってないところなど、数え上げたらきりがない数々の表現が人の世の美しさをあぶり出す。
生きることは周りの人に照らされることでいくらでも輝きを増すということを教わった。
2010年9月4日に日本でレビュー済み
千波、牧子、美々。
3人は40代、それぞれに自分の家族があり、仕事があり、生活がある。
車で気軽に行けるほどそばに住んでいたって、頻繁に会う時期もあれば
1年以上会わない時期もある。
それでも、心はつながっている。
この世に自分が生きていることを、家族と同じ次元で、切実に願ってくれる。
そういう「思い」を、3人それぞれが抱き合っている。
そういう親友が、私にもいます。
自分らしい生き方をしてほしい、悩んでいることがあったらすぐにでも駆けつけたい、と
心から思える友達が。
私はまだ30代。
自分でも生活基盤を作っている途中だし、友達も夢に向かって勉強し続けている途中ですが、
これから10年後、20年後までずっと支えあう存在でいたい。
この本を読んで、その思いが一層強くなりました。
3人は40代、それぞれに自分の家族があり、仕事があり、生活がある。
車で気軽に行けるほどそばに住んでいたって、頻繁に会う時期もあれば
1年以上会わない時期もある。
それでも、心はつながっている。
この世に自分が生きていることを、家族と同じ次元で、切実に願ってくれる。
そういう「思い」を、3人それぞれが抱き合っている。
そういう親友が、私にもいます。
自分らしい生き方をしてほしい、悩んでいることがあったらすぐにでも駆けつけたい、と
心から思える友達が。
私はまだ30代。
自分でも生活基盤を作っている途中だし、友達も夢に向かって勉強し続けている途中ですが、
これから10年後、20年後までずっと支えあう存在でいたい。
この本を読んで、その思いが一層強くなりました。
2014年4月10日に日本でレビュー済み
2007年暮れにNHKで放送されて原作はと思い購入しました。
やはりドラマ同様、トムさんがなくなるところは涙して読みました。
やはりドラマ同様、トムさんがなくなるところは涙して読みました。