「小説新潮」、1995-98年連載。書名の「達人」は、追悼文を書いた文人たちのことかと思っていたが、もしかして自分のことなのか。50代半ば、4年をかけ、厖大な資料を読み込んで仕上げた642ページ……たしかに自画自賛してもいいかもしれない。
俎上にあがるのは49人の著名な文人たち。まわりがその死を、その生き方をどう見たか。本人はもういないので、恨みつらみ、罵詈雑言、言いたいだけ言う人もいる。あるいはひたすら褒めまくる、あるいは無言で通す。人間関係もわかって、これほどおもしろいものはない。
宮澤賢治は亡くなった時にはほとんど無名だった。もし草野心平らによる追悼文集がなかったら、私たちの知る賢治はいなかったかもしれない。小泉八雲、太宰治、高村光太郎の章も読み応えがある。
志賀直哉の章もおもしろい。志賀は88歳で亡くなった。追悼する側も高齢で、追悼文はどれもこれもボケが入っている。そしてそれらのボケ文のあとにくるのが大江健三郎の追悼文。志賀に対する明晰で真摯な評価。嵐山お得意のどんでん返しがなんとも堪らない。
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追悼の達人 (新潮文庫 あ 18-6) 文庫 – 2002/6/1
嵐山 光三郎
(著)
- 本の長さ642ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2002/6/1
- ISBN-10410141906X
- ISBN-13978-4101419060
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2002/6/1)
- 発売日 : 2002/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 642ページ
- ISBN-10 : 410141906X
- ISBN-13 : 978-4101419060
- Amazon 売れ筋ランキング: - 109,748位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,363位新潮文庫
- - 3,664位エッセー・随筆 (本)
- - 24,493位ノンフィクション (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2012年12月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
母からのリクエストで購入しました。廃版だと思ってたのがアマゾンで簡単に手に入ったのでびっくりしたみないです。
内容もすばらしいって、、、、手元に置いておきたい一冊だと。
内容もすばらしいって、、、、手元に置いておきたい一冊だと。
2020年9月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
こちらの予想していた通りのものでした。良かったです。どうもありがとうございました。
2012年2月21日に日本でレビュー済み
単行本が上梓されたのが1999年、すでに一度2002年に新潮文庫が出ていますが、再文庫化ということで、ともかくあの名作『追悼の達人』が帰ってきました。
病気や死がテーマの宮澤賢治や安部公房などの文学作品を、『病いの人間学』(1999年)で鮮やかに私たちの目の前で私たちの日常的に役立つように説いてくれたのが立川昭二でした。
あるいは追悼=死者を思って悲しみにひたるということなら、吉本隆明が『追悼私記』(1993年)という、美空ひばりや手塚治虫からミシェル・フーコーや昭和天皇への自分が書いた追悼文を集めた本を出していますが、それなら負けじと、わが鶴見俊輔も『悼詞』(2008年)というバートランド・ラッセルや高橋和己から司馬遼太郎や赤塚不二夫まで、総勢125名への半世紀にわたった全追悼文を集めた本を書いています。
この文脈でいうと、立川昭二は別として、両巨頭には申し訳ありませんが、二冊の本がどう逆立ちしても、タモリが赤塚不二夫の葬儀のときに、まるであたかも原稿をよんでいるような振りをして、まったくのノー原稿でながながと弔辞を述べたパフォーマンスにとうてい太刀打ちできません。
実は嵐山光三郎とは、その著書を読む前からのつきあいでした。といっても、実際に知っていたわけではなく、私が小学生の頃から雑誌『太陽』や『別冊太陽』を読んでいて、その編集長が彼だったこと、毎回とても興味ある特集を企画するこの人はいったいどういう人なのだろうという編集者に関心を持った最初だったこと、そこで知った本名が祐乗坊英昭(ゆうじょうぼう ひであき)という僧侶のような名前だったことなど、興味尽きない人なのでした。
本書は、追悼といっても故人を忍んで称えるばかりではない追悼もある、というところに眼をつけて書かれた本だと思います。
とかく追悼というと欠点や悪行は伏せておいて、美辞麗句を重ねたよそ行きの言葉で語られがちで、誰もひどい飲んだくれとか、とんでもない嘘つきだったとか、助平で淫乱で尻軽で不逞の輩だった、などとは、いくら今にも喉元から出そうでも、口が裂けても言わないのが人情みたいなところがあるからです。
まあ、自分のときを想像してかもしれませんが、つまり、いまあんなにひどいこの人に言わないから、私のときにもみんな言わないでねみたいな感じ。
それはともかく、現代において確固たる地位を確立している、文豪と呼ばれるまでになった作家なのに、批判される夏目漱石や罵倒される永井荷風、軽視される谷崎潤一郎という事実が面白くないわけがありまん。
きっと当人たちは言われて面白くなかったはずですが、ともかく嵐山光三郎が調べに調べつくして集めた追悼文の数々によって、その赤裸々な追悼文、死者に鞭打つこの所業、かつてのあの時代の文豪たちがいかに周りにねたまれていたかがわかるのか、それとも、はたまた、彼らがずる賢く、虎視眈眈と有名になるために他人を蹴落としてまで振舞ったのかの真相は、実際に読んでお確かめあれ!
記述日 : 2011年1月31日 12:59:57
病気や死がテーマの宮澤賢治や安部公房などの文学作品を、『病いの人間学』(1999年)で鮮やかに私たちの目の前で私たちの日常的に役立つように説いてくれたのが立川昭二でした。
あるいは追悼=死者を思って悲しみにひたるということなら、吉本隆明が『追悼私記』(1993年)という、美空ひばりや手塚治虫からミシェル・フーコーや昭和天皇への自分が書いた追悼文を集めた本を出していますが、それなら負けじと、わが鶴見俊輔も『悼詞』(2008年)というバートランド・ラッセルや高橋和己から司馬遼太郎や赤塚不二夫まで、総勢125名への半世紀にわたった全追悼文を集めた本を書いています。
この文脈でいうと、立川昭二は別として、両巨頭には申し訳ありませんが、二冊の本がどう逆立ちしても、タモリが赤塚不二夫の葬儀のときに、まるであたかも原稿をよんでいるような振りをして、まったくのノー原稿でながながと弔辞を述べたパフォーマンスにとうてい太刀打ちできません。
実は嵐山光三郎とは、その著書を読む前からのつきあいでした。といっても、実際に知っていたわけではなく、私が小学生の頃から雑誌『太陽』や『別冊太陽』を読んでいて、その編集長が彼だったこと、毎回とても興味ある特集を企画するこの人はいったいどういう人なのだろうという編集者に関心を持った最初だったこと、そこで知った本名が祐乗坊英昭(ゆうじょうぼう ひであき)という僧侶のような名前だったことなど、興味尽きない人なのでした。
本書は、追悼といっても故人を忍んで称えるばかりではない追悼もある、というところに眼をつけて書かれた本だと思います。
とかく追悼というと欠点や悪行は伏せておいて、美辞麗句を重ねたよそ行きの言葉で語られがちで、誰もひどい飲んだくれとか、とんでもない嘘つきだったとか、助平で淫乱で尻軽で不逞の輩だった、などとは、いくら今にも喉元から出そうでも、口が裂けても言わないのが人情みたいなところがあるからです。
まあ、自分のときを想像してかもしれませんが、つまり、いまあんなにひどいこの人に言わないから、私のときにもみんな言わないでねみたいな感じ。
それはともかく、現代において確固たる地位を確立している、文豪と呼ばれるまでになった作家なのに、批判される夏目漱石や罵倒される永井荷風、軽視される谷崎潤一郎という事実が面白くないわけがありまん。
きっと当人たちは言われて面白くなかったはずですが、ともかく嵐山光三郎が調べに調べつくして集めた追悼文の数々によって、その赤裸々な追悼文、死者に鞭打つこの所業、かつてのあの時代の文豪たちがいかに周りにねたまれていたかがわかるのか、それとも、はたまた、彼らがずる賢く、虎視眈眈と有名になるために他人を蹴落としてまで振舞ったのかの真相は、実際に読んでお確かめあれ!
記述日 : 2011年1月31日 12:59:57
2019年4月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
当時の青山の事務所に仕事の打ち合わせでいった時、何日も風呂に入っておらず不機嫌な感じの嵐山さんが出てきた。傍らに愛人の女性(そう紹介していた)がいた。あまたの資料のエッセンスをさらに煮詰めた内容が豪奢。嵐山さんが文豪になりたかったんだろうな。
2018年6月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
元々編集者であった嵐山氏ならではの力作。収集と分析のその力がすごい。明治から昭和の古きよき時代を振り返る意味でも貴重。広く読まれてほしい一冊です。ちなみに私は紙媒体を紛失し電子書籍で再購入でき嬉しく思っている者です。
2002年8月7日に日本でレビュー済み
年代順に亡くなった作家が並べられている。みっちりといろいろな作家が亡くなった作家に宛てた追悼文を分析している。作家って死んだ後が怖いのね。
2013年7月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
人を見送るときに、利害を超えて見えてくるものを
確かな筆致でとらえている。にもかかわらず嵐山さん
がうまく隠れて人物を描き出す。感服。
特に『幸田露伴おれはもう死んじゃうよ」は胸にこたえた。
確かな筆致でとらえている。にもかかわらず嵐山さん
がうまく隠れて人物を描き出す。感服。
特に『幸田露伴おれはもう死んじゃうよ」は胸にこたえた。