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赤と黒(下) (新潮文庫) 文庫 – 1958/5/22
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『恋愛論』の著者が描く情熱の犯罪。
実在の事件を元にした、19世紀フランス文学の歴史的名作。
召使の密告で職を追われたジュリヤンは、ラ・モール侯爵の秘書となり令嬢マチルドと強引に結婚し社交界に出入りする。長年の願望であった権力の獲得と高職に一歩近づいたと思われたとたん、レーナル夫人の手紙が舞いこむ……。
実在の事件をモデルに、著者自身の思い出、憧憬など数多くの体験と思想を盛りこみ、恋愛心理の鋭い分析を基調とした19世紀フランス文学を代表する名作。
本文より
ジュリヤンは幸福の絶頂にあった。しらずしらずのうちに、音楽や、花や、美女や、はなやかな雰囲気に魅せられ、それにもまして、自分のためには名誉を、万人のためには自由を夢みる、われとわが空想の世界にひきいれられ、
「じつに豪華な舞踏会ですね! なに一つ欠けたものがない」と、ジュリヤンは伯爵にいった。
「思想が欠けていますよ」と、アルタミラが答えた。……(第九章「舞踏会」)
スタンダール Stendhal(1783-1842)
東南フランス、ドーフィネ地方のグルノーブルに生れた。本名はアンリ・ベール。ナポレオン遠征軍に参加していた陸軍士官時代にミラノに入城し、以来熱烈なイタリア賛美者となる。ミラノでの恋愛体験をもとに著した『恋愛論』、あるいは意志と情熱に満ちた人物の若々しい行動を描きあげた『赤と黒』や『パルムの僧院』など、その著作はロマン主義とリアリズムにまたがる近代文学の最も偉大な先駆とされる。
小林正(1911-1975)
旧満州・旅順生れ。東京帝大文学部仏文科卒。スタンダール研究の権威として知られ、日仏文化センター理事長など数々の要職を歴任した。1968年、レジオン・ド・ヌール勲章を受章。
実在の事件を元にした、19世紀フランス文学の歴史的名作。
召使の密告で職を追われたジュリヤンは、ラ・モール侯爵の秘書となり令嬢マチルドと強引に結婚し社交界に出入りする。長年の願望であった権力の獲得と高職に一歩近づいたと思われたとたん、レーナル夫人の手紙が舞いこむ……。
実在の事件をモデルに、著者自身の思い出、憧憬など数多くの体験と思想を盛りこみ、恋愛心理の鋭い分析を基調とした19世紀フランス文学を代表する名作。
本文より
ジュリヤンは幸福の絶頂にあった。しらずしらずのうちに、音楽や、花や、美女や、はなやかな雰囲気に魅せられ、それにもまして、自分のためには名誉を、万人のためには自由を夢みる、われとわが空想の世界にひきいれられ、
「じつに豪華な舞踏会ですね! なに一つ欠けたものがない」と、ジュリヤンは伯爵にいった。
「思想が欠けていますよ」と、アルタミラが答えた。……(第九章「舞踏会」)
スタンダール Stendhal(1783-1842)
東南フランス、ドーフィネ地方のグルノーブルに生れた。本名はアンリ・ベール。ナポレオン遠征軍に参加していた陸軍士官時代にミラノに入城し、以来熱烈なイタリア賛美者となる。ミラノでの恋愛体験をもとに著した『恋愛論』、あるいは意志と情熱に満ちた人物の若々しい行動を描きあげた『赤と黒』や『パルムの僧院』など、その著作はロマン主義とリアリズムにまたがる近代文学の最も偉大な先駆とされる。
小林正(1911-1975)
旧満州・旅順生れ。東京帝大文学部仏文科卒。スタンダール研究の権威として知られ、日仏文化センター理事長など数々の要職を歴任した。1968年、レジオン・ド・ヌール勲章を受章。
- ISBN-104102008047
- ISBN-13978-4102008041
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日1958/5/22
- 言語日本語
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- 本の長さ521ページ
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【新潮文庫】スタンダール 作品 | ”幸福の追求”に生命を賭ける情熱的な青年貴族ファブリスが、愛する人の死によって僧院に入るまでの波瀾万丈の半生を描いた傑作。 | 美貌で、強い自尊心と鋭い感受性をもつジュリヤ ン・ソレルが、長年の夢であった地位をその手で摑もうとした時、無惨な破局が……。 | 豊富な恋愛体験をもとにすべての恋愛を「情熱恋愛」「趣味恋愛」「肉体的恋愛」「虚栄恋愛」に分類し、各国各時代の恋愛について語る。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1958/5/22)
- 発売日 : 1958/5/22
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 521ページ
- ISBN-10 : 4102008047
- ISBN-13 : 978-4102008041
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 42,191位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 60位フランス文学 (本)
- - 993位新潮文庫
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年3月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ネットで本を買うとまっさらな新品が届くのです好きです。
2024年5月27日に日本でレビュー済み
◯下巻に入ると、驚くほど退屈な描写が続く。同じ人間が書いたのか? と疑いたくなるほど、人物は機械か書割りのようで、ジュリアン・ソレルも魅力的に描かれない。
◯そしてマチルドも全然魅力的ではない。時折、素晴らしいことが起こったように書いてあるが、その素晴らしさを描く筆力が発揮されていない。モームはこのことをスタンダールの「創意がなくなった」と言っているが、的を射た指摘であると思う。
◯それでも我慢して読んでいると、レーナル夫人が再登場すると、こちらも何か花開くような気分にさせられる。まさかレーナル夫人を狙撃するとは思っていなかったし、最期はソレルがギロチンにかけられるのも最後まで疑いながら読んでいた。
◯まだ解説までは読んでいないのだが、階級闘争という長い射程を意識して読むと、複雑な気持ちにさせられる。ソレルの首を大理石のテーブルに置いて、額に口付けするマチルドには、グッときた。
◯そしてマチルドも全然魅力的ではない。時折、素晴らしいことが起こったように書いてあるが、その素晴らしさを描く筆力が発揮されていない。モームはこのことをスタンダールの「創意がなくなった」と言っているが、的を射た指摘であると思う。
◯それでも我慢して読んでいると、レーナル夫人が再登場すると、こちらも何か花開くような気分にさせられる。まさかレーナル夫人を狙撃するとは思っていなかったし、最期はソレルがギロチンにかけられるのも最後まで疑いながら読んでいた。
◯まだ解説までは読んでいないのだが、階級闘争という長い射程を意識して読むと、複雑な気持ちにさせられる。ソレルの首を大理石のテーブルに置いて、額に口付けするマチルドには、グッときた。
2019年2月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
バリューブックス様から購入しましたが質、対応よく、大変感動いたしました。本当にありがとうございました。m(__)m 赤と黒も安定の面白さでこれから楽しませていただきます。
2014年9月20日に日本でレビュー済み
高校生か大学生で読んだ時には、たしか一週間くらいで読了した記憶があるのですが、三十数年後の現在、会議と残業の毎日の合間に読んだ割りには一ヶ月の読了で、自分を誉めるべきか、本書の求心力を讃えるべきか。
下巻は、マチルドとの恋の駆け引きから、レーナル夫人との再会までの縦軸に、激動の社会情勢が横軸としてそこはかとなく見え隠れする様が描かれています。後半は、比較的あれよあれよの展開ですが、丹念に登場人物の心理を追うことに重点が置かれているため、読み応えがあります。約二百年前の作品ではありますが、映像化しても風景や風俗に馴染みがないぶん、古臭さを感じないような気がします。しかし、同様にそのひとつひとつの心の動きは、普遍的であるが故に、ある説得力をもって読むこちらに迫ってくることが多かったと思います。ある意味、現役の作品として十分に楽しめます。
下巻は、マチルドとの恋の駆け引きから、レーナル夫人との再会までの縦軸に、激動の社会情勢が横軸としてそこはかとなく見え隠れする様が描かれています。後半は、比較的あれよあれよの展開ですが、丹念に登場人物の心理を追うことに重点が置かれているため、読み応えがあります。約二百年前の作品ではありますが、映像化しても風景や風俗に馴染みがないぶん、古臭さを感じないような気がします。しかし、同様にそのひとつひとつの心の動きは、普遍的であるが故に、ある説得力をもって読むこちらに迫ってくることが多かったと思います。ある意味、現役の作品として十分に楽しめます。
2017年12月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
予定より早い到着でうれしかったです。
日本語でストーリーを味わってみたいと思い購入しました。
日本語でストーリーを味わってみたいと思い購入しました。
2020年2月2日に日本でレビュー済み
『赤と黒』はある意味悲運に見舞われた小説である。「事実は小説より…」の格言を地で行く出来事が、『赤と黒』がまさに完成しようとするときに現実となったからだ。
当時のフランスは、アンシャン・レジーム(フランス革命以前の不平等な社会体制)への回帰に民衆が不安と怒りを募らせていた時期である。『フランス史』(楠瀬訳、講談社選書メチエ、2019)をひも解くまでもなく、フランスの王政は1789年の革命で崩壊を迎える。しかし、その後に乱立した共和政体は秩序と平和に欠いた混乱の時代を作り出してしまう。
そんな事態を収拾したのがナポレオン・ボナパルトだ。スタンダールの青年時代はナポレオンの隆盛とともにあったといっても過言ではない。17歳のときにはナポレオンのイタリア遠征軍に加わってミラノ入城を経験しているし、29歳のときにはナポレオンのモスクワ遠征に参加して、モスクワの大火も経験している。
そのナポレオンが退位したとき、スタンダールは31歳になっていた。彼は、王政復古のブルボン王朝に忠誠を誓うが、このときからパリで職に就くことができなくなる。ナポレオンが創り出した新たな体制下を生きた彼は、変わりゆくフランス、そして翻弄されるフランス国民の姿を国内外から見つめる人生を歩んだ。
ともあれ、フランスに再び王政が息を吹き返した。もちろん、新たに公布された憲章には国民の平等や立法に参加する権利のほか、個人の自由、思想と表現の自由など、あの一大革命で国民が勝ち取った成果は継承されていた。
ところが、かつての王政の崩壊で国外に逃げていた旧特権階級の貴族や聖職者が優遇される事態が起きはじめた。まさに、アンシャン・レジームの回帰というか逆行である。よみがえりし王、ルイ18世の治世において革命の機運はすでに醸成されていたが、次のシャルル10世はその空気を読むことができなかった。1830年にパリ市民は蜂起する。世にいう7月革命の勃発である。
新潮社版『赤と黒』の訳者、小林正の解説によると、この物語は亡命貴族やイエズス会がはびこる王政復古下の社会に対する強烈な風刺小説だという。ところが、そうした唾棄すべき社会への鉄槌たる「革命」それ自体は小説中では描かれない。というよりも、初めから設定すらされていない。このことをもって事実が小説を超えてしまった、と言い切ることはできないだろうが、慌てたのは版元だ。彼らは本書冒頭に「…あの7月の大事件が起って、人々の関心を架空の物語などには不利な方向に向けてしまった。以下の原稿は1827年に書かれたとみてさしつかえない」(『赤と黒』序文より引用)という序文を付けるに至った。しかし、そうした懸念は杞憂だったと思われる。なぜか。
それは第一に、スタンダールが描きたかったのが、あの時代のパリに生きた第三身分(平民)の若者、それも自らの才能で成り上がろうと野心と自尊心をむき出しにし、その一方で恐ろしいほど社会を冷静に見ることのできる、あの時代を生きた若者だったからと思われる。スタンダールよりもずっと若く、いわば革命後の社会の申し子ともいえるこの若者たちは、アンシャン・レジームへの怒りだけでは説明できない何かの原動力を持っていた。スタンダールは、こうした若者たち個々人に複雑な内面の芽生え、つまり民衆という一括りの言葉では語れない強烈な「個」を見出したのではないか。
彼がそのようなことをはっきりと認識したのは、7月革命よりずっと前に起きたある痴情沙汰だった。スタンダールはこの実際に起きた事件を下敷きに『赤と黒』を着想したらしい(詳しくは小林の解説を参照)。それまでのスタンダールは、パリを離れ、恋愛と観劇に身をやつし、社会への関心は相当薄れていたように見える。上流階級の人間たちは民衆への恐れで萎縮しつつも、相変わらず保身に余念がない。一方の民衆は相変わらず振り回されてばかりいる。
そんなさ中にこの事件は起きた。フランス内外で自由な思想活動を展開していたスタンダールは(そのことが幸いしたのか)、パリの若者の内なる衝動を見逃さなかった。エネルギッシュで型破りな市民階級の若者の姿はスタンダールの目にさぞ魅力的に映ったに違いない。
第二の理由として、この小説はあくまでも恋愛小説であることが挙げられる。スタンダールは恋多き人生を送ったが、悲恋を経験することもまた多かった。スタンダールが何より追究したかったテーマが、まさに恋や愛だったと思われる。
さて、そうした事柄が一つの小説『赤と黒』へと収斂していく。主人公ジュリアン・ソレルは、しがない庶民の出であり、圧政下で搾取される側の人間である。確かに類まれなる才能と美貌を持つ特異な存在ではあるが、権力構造を冷静に観察しながらたくましく生きる当時のリアルな若者像を背負っている。時代や制度によって型にはめられそうになる人々が、しかしその内実は英雄時代に引けを取らぬほど情熱的で人間的でありうるというのは、一つの驚くべき気づきであり感動的ですらある。
なぜ、そんなことがありえたのか。それは、一言でいえば「自由意思の完成」だったのではないだろうか。最初の革命そのものは始まりにすぎず、ジュリアンに象徴される若者たちを経て初めて自由意思というものは生まれた、とは考えられないか。
そして、それは「個の革命」と呼べはしないだろうか。人間は、特権階級の人々も平民も、みんな何らかの虚構に縛られている。家柄や家族はその最たるものだ。神すら人を縛り悩ますものである。本当に神はいるのだろうか……。「おれは真実を愛した。……それはどこにある?……どこを見まわしても、偽善か、せいぜいいかさまばかり。どんなに徳を積んだ連中でも、どんなに偉い連中でもそうなのだ」(『赤と黒』本文より引用)。左右に揺れ動く社会のなか、真実を求めてこの言葉を吐くジュリアンはまさに「革命」のさ中にいたとは言えないだろうか。
民衆による革命が、遅かれ早かれ起きるであろうことは、スタンダールも予感していたかもしれない。ただ、革命が起きるかどうかはあくまでも結果論である。それ以前に、この国で何が起きているかということを、小説『赤と黒』は当時のフランス人たちに突き付けたといえる。小林の解説を読むと、第二部校正のさ中、スタンダールはオペラ座界隈のホテルで、銃声飛び交う7月革命の進展を見守っていたそうだ。目の前で繰り広げられる争いを見ながら、フランスの民衆が向かうべき次の時代について思いを馳せていたのだろうか。
恋愛小説とも、そして政治小説とも読めるこの物語には、ジュリアンを通して見た“フランス人物語”という通底したテーマがある。その才能をもって成り上がろうとする平民の若者が、その若さゆえの粗削りな駆け引きによってこの深淵なテーマを投げかける姿に、読者は惹かれ、ハッとさせられるのだろう。
事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだが、事実より心に残る小説もある。それが本書だ。
当時のフランスは、アンシャン・レジーム(フランス革命以前の不平等な社会体制)への回帰に民衆が不安と怒りを募らせていた時期である。『フランス史』(楠瀬訳、講談社選書メチエ、2019)をひも解くまでもなく、フランスの王政は1789年の革命で崩壊を迎える。しかし、その後に乱立した共和政体は秩序と平和に欠いた混乱の時代を作り出してしまう。
そんな事態を収拾したのがナポレオン・ボナパルトだ。スタンダールの青年時代はナポレオンの隆盛とともにあったといっても過言ではない。17歳のときにはナポレオンのイタリア遠征軍に加わってミラノ入城を経験しているし、29歳のときにはナポレオンのモスクワ遠征に参加して、モスクワの大火も経験している。
そのナポレオンが退位したとき、スタンダールは31歳になっていた。彼は、王政復古のブルボン王朝に忠誠を誓うが、このときからパリで職に就くことができなくなる。ナポレオンが創り出した新たな体制下を生きた彼は、変わりゆくフランス、そして翻弄されるフランス国民の姿を国内外から見つめる人生を歩んだ。
ともあれ、フランスに再び王政が息を吹き返した。もちろん、新たに公布された憲章には国民の平等や立法に参加する権利のほか、個人の自由、思想と表現の自由など、あの一大革命で国民が勝ち取った成果は継承されていた。
ところが、かつての王政の崩壊で国外に逃げていた旧特権階級の貴族や聖職者が優遇される事態が起きはじめた。まさに、アンシャン・レジームの回帰というか逆行である。よみがえりし王、ルイ18世の治世において革命の機運はすでに醸成されていたが、次のシャルル10世はその空気を読むことができなかった。1830年にパリ市民は蜂起する。世にいう7月革命の勃発である。
新潮社版『赤と黒』の訳者、小林正の解説によると、この物語は亡命貴族やイエズス会がはびこる王政復古下の社会に対する強烈な風刺小説だという。ところが、そうした唾棄すべき社会への鉄槌たる「革命」それ自体は小説中では描かれない。というよりも、初めから設定すらされていない。このことをもって事実が小説を超えてしまった、と言い切ることはできないだろうが、慌てたのは版元だ。彼らは本書冒頭に「…あの7月の大事件が起って、人々の関心を架空の物語などには不利な方向に向けてしまった。以下の原稿は1827年に書かれたとみてさしつかえない」(『赤と黒』序文より引用)という序文を付けるに至った。しかし、そうした懸念は杞憂だったと思われる。なぜか。
それは第一に、スタンダールが描きたかったのが、あの時代のパリに生きた第三身分(平民)の若者、それも自らの才能で成り上がろうと野心と自尊心をむき出しにし、その一方で恐ろしいほど社会を冷静に見ることのできる、あの時代を生きた若者だったからと思われる。スタンダールよりもずっと若く、いわば革命後の社会の申し子ともいえるこの若者たちは、アンシャン・レジームへの怒りだけでは説明できない何かの原動力を持っていた。スタンダールは、こうした若者たち個々人に複雑な内面の芽生え、つまり民衆という一括りの言葉では語れない強烈な「個」を見出したのではないか。
彼がそのようなことをはっきりと認識したのは、7月革命よりずっと前に起きたある痴情沙汰だった。スタンダールはこの実際に起きた事件を下敷きに『赤と黒』を着想したらしい(詳しくは小林の解説を参照)。それまでのスタンダールは、パリを離れ、恋愛と観劇に身をやつし、社会への関心は相当薄れていたように見える。上流階級の人間たちは民衆への恐れで萎縮しつつも、相変わらず保身に余念がない。一方の民衆は相変わらず振り回されてばかりいる。
そんなさ中にこの事件は起きた。フランス内外で自由な思想活動を展開していたスタンダールは(そのことが幸いしたのか)、パリの若者の内なる衝動を見逃さなかった。エネルギッシュで型破りな市民階級の若者の姿はスタンダールの目にさぞ魅力的に映ったに違いない。
第二の理由として、この小説はあくまでも恋愛小説であることが挙げられる。スタンダールは恋多き人生を送ったが、悲恋を経験することもまた多かった。スタンダールが何より追究したかったテーマが、まさに恋や愛だったと思われる。
さて、そうした事柄が一つの小説『赤と黒』へと収斂していく。主人公ジュリアン・ソレルは、しがない庶民の出であり、圧政下で搾取される側の人間である。確かに類まれなる才能と美貌を持つ特異な存在ではあるが、権力構造を冷静に観察しながらたくましく生きる当時のリアルな若者像を背負っている。時代や制度によって型にはめられそうになる人々が、しかしその内実は英雄時代に引けを取らぬほど情熱的で人間的でありうるというのは、一つの驚くべき気づきであり感動的ですらある。
なぜ、そんなことがありえたのか。それは、一言でいえば「自由意思の完成」だったのではないだろうか。最初の革命そのものは始まりにすぎず、ジュリアンに象徴される若者たちを経て初めて自由意思というものは生まれた、とは考えられないか。
そして、それは「個の革命」と呼べはしないだろうか。人間は、特権階級の人々も平民も、みんな何らかの虚構に縛られている。家柄や家族はその最たるものだ。神すら人を縛り悩ますものである。本当に神はいるのだろうか……。「おれは真実を愛した。……それはどこにある?……どこを見まわしても、偽善か、せいぜいいかさまばかり。どんなに徳を積んだ連中でも、どんなに偉い連中でもそうなのだ」(『赤と黒』本文より引用)。左右に揺れ動く社会のなか、真実を求めてこの言葉を吐くジュリアンはまさに「革命」のさ中にいたとは言えないだろうか。
民衆による革命が、遅かれ早かれ起きるであろうことは、スタンダールも予感していたかもしれない。ただ、革命が起きるかどうかはあくまでも結果論である。それ以前に、この国で何が起きているかということを、小説『赤と黒』は当時のフランス人たちに突き付けたといえる。小林の解説を読むと、第二部校正のさ中、スタンダールはオペラ座界隈のホテルで、銃声飛び交う7月革命の進展を見守っていたそうだ。目の前で繰り広げられる争いを見ながら、フランスの民衆が向かうべき次の時代について思いを馳せていたのだろうか。
恋愛小説とも、そして政治小説とも読めるこの物語には、ジュリアンを通して見た“フランス人物語”という通底したテーマがある。その才能をもって成り上がろうとする平民の若者が、その若さゆえの粗削りな駆け引きによってこの深淵なテーマを投げかける姿に、読者は惹かれ、ハッとさせられるのだろう。
事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだが、事実より心に残る小説もある。それが本書だ。
2012年12月12日に日本でレビュー済み
ジュリヤンは、ラ・モール公爵の秘書となり、公爵にも気に入られる。ラ・モール公爵の娘であるマチルドは、大貴族の娘としてちやほやされているが、本人の認識では幸福ではない(「名声も富も若さもあるが幸福だけがない」)。退屈しているマチルドはジュリヤンに貴族の貴公子たちにはない魅力を感じ、ジュリヤンを恋するようになる。ジュリヤンはひとりでないと行動しない、才能がある、他人をあてにしたり助けてもらおうという気がない、他人を軽蔑している・・・といったところがマチルドの琴線に触れる(P144)。
マチルドはジュリヤンにラブレターを送る。ジュリヤンは、大貴族の娘から告白を受け、おおいにプライドが満たされる。ただ、マチルドは高慢な性格で、ジュリヤンには才能はあっても財産はないが、財産なら自分がもっているからと、あくまでもジュリヤンのことは「こちらがその気になればいつでも愛してもらえる目下の者(P212)」と考えている。
ジュリヤンは、そんなマチルドに恋しつつも屈服しない。マチルドは、発作的にジュリヤンに服従すると言ってしまうこともあれば、日が変わるとそんなところはつゆぞみせない冷淡さも示す。ジュリヤンもマチルドを抱きしめるとこの女はオレを軽蔑するに違いない、と警戒。マチルドは焦れてくる。ジュリヤンは「恐れさせておくかぎり、敵はおれに服従する。そのあいだはおれを軽蔑したりはしないだろう(P330)」というように二人の恋は、神経戦。結局、マチルドは陥落し、ジュリヤンの子を妊娠(これによりジュリヤンを永遠に愛することを証だてる)。
公爵の娘と平民出の秘書がくっついてしまったことでラ・モール公爵は激怒するものの、結局、公爵はジュリヤンを貴族にしてやることにする。その一方、ラ・モール公爵はレーナル夫人にジュリヤンについて照会。レーナル夫人は、ジュリヤンは女を誘惑して出世しようとする偽善者である、という返事をよこす。結局、これによって破談となる。
ジュリヤンはヴェリエールに向かい、レーナル夫人を狙撃し(レーナル夫人は軽傷で済む)、逮捕される。
ただ、レーナル夫人は、過去のジュリヤンとの不倫を悔いて清廉な生活をしていたとき、ラ・モール公爵の歓心を買おうとしていた告解師のすすめるままにラ・モールに手紙を書いていただけだった。むしろ、ジュリヤンの手にかかって死ねたら最高だとすら思っていたくらいだが皮肉にも生き残る。
一方、マチルドはジュリヤンを追ってヴェリエールの町まで来る。ジュリヤンはマチルドに対してはどこか冷静で、マチルドはお腹の子をずっとかわいがることはないだろう、と予想している。レーナル夫人もジュリヤンの死刑回避のために陪審員に手紙を書くなど尽力。しかし、肝心のジュリヤンはもう生きる気がない。裁判の結果、死刑判決となる。ここでジュリヤンのもとにレーナル夫人が訪ねてくる。ジュリヤンは自分がレーナル夫人だけを愛していたと告白する。嫉妬に狂うマチルド。二人の女に愛されたジュリヤンはギロチンで処刑される。
ジュリヤンの親友のフーケは、ジュリヤンの遺骸をひきとってひとりで通夜をしていたとき、マチルドがあらわれ、ジュリヤンの首にキスをする。一方のレーナル夫人は、ジュリヤンが死んで三日目に子どもたちを抱きしめながらこの世を去る。
・・・という話。
下巻は、貴族のおしゃべりみたいなのがかなり冗長で読みづらいところもあったがラストは引き込まれた。解説によると当時のフランスでは、女性は月に5〜6冊、多い人は15〜20冊も本を読んでいたとか(ホント?)。また、スタンダールは、存命中はそこまで有名でもなかったらしい。
マチルドはジュリヤンにラブレターを送る。ジュリヤンは、大貴族の娘から告白を受け、おおいにプライドが満たされる。ただ、マチルドは高慢な性格で、ジュリヤンには才能はあっても財産はないが、財産なら自分がもっているからと、あくまでもジュリヤンのことは「こちらがその気になればいつでも愛してもらえる目下の者(P212)」と考えている。
ジュリヤンは、そんなマチルドに恋しつつも屈服しない。マチルドは、発作的にジュリヤンに服従すると言ってしまうこともあれば、日が変わるとそんなところはつゆぞみせない冷淡さも示す。ジュリヤンもマチルドを抱きしめるとこの女はオレを軽蔑するに違いない、と警戒。マチルドは焦れてくる。ジュリヤンは「恐れさせておくかぎり、敵はおれに服従する。そのあいだはおれを軽蔑したりはしないだろう(P330)」というように二人の恋は、神経戦。結局、マチルドは陥落し、ジュリヤンの子を妊娠(これによりジュリヤンを永遠に愛することを証だてる)。
公爵の娘と平民出の秘書がくっついてしまったことでラ・モール公爵は激怒するものの、結局、公爵はジュリヤンを貴族にしてやることにする。その一方、ラ・モール公爵はレーナル夫人にジュリヤンについて照会。レーナル夫人は、ジュリヤンは女を誘惑して出世しようとする偽善者である、という返事をよこす。結局、これによって破談となる。
ジュリヤンはヴェリエールに向かい、レーナル夫人を狙撃し(レーナル夫人は軽傷で済む)、逮捕される。
ただ、レーナル夫人は、過去のジュリヤンとの不倫を悔いて清廉な生活をしていたとき、ラ・モール公爵の歓心を買おうとしていた告解師のすすめるままにラ・モールに手紙を書いていただけだった。むしろ、ジュリヤンの手にかかって死ねたら最高だとすら思っていたくらいだが皮肉にも生き残る。
一方、マチルドはジュリヤンを追ってヴェリエールの町まで来る。ジュリヤンはマチルドに対してはどこか冷静で、マチルドはお腹の子をずっとかわいがることはないだろう、と予想している。レーナル夫人もジュリヤンの死刑回避のために陪審員に手紙を書くなど尽力。しかし、肝心のジュリヤンはもう生きる気がない。裁判の結果、死刑判決となる。ここでジュリヤンのもとにレーナル夫人が訪ねてくる。ジュリヤンは自分がレーナル夫人だけを愛していたと告白する。嫉妬に狂うマチルド。二人の女に愛されたジュリヤンはギロチンで処刑される。
ジュリヤンの親友のフーケは、ジュリヤンの遺骸をひきとってひとりで通夜をしていたとき、マチルドがあらわれ、ジュリヤンの首にキスをする。一方のレーナル夫人は、ジュリヤンが死んで三日目に子どもたちを抱きしめながらこの世を去る。
・・・という話。
下巻は、貴族のおしゃべりみたいなのがかなり冗長で読みづらいところもあったがラストは引き込まれた。解説によると当時のフランスでは、女性は月に5〜6冊、多い人は15〜20冊も本を読んでいたとか(ホント?)。また、スタンダールは、存命中はそこまで有名でもなかったらしい。
2008年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
字が小さすぎて読みずらい。
途中で嫌になった。
途中で嫌になった。