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魔の山(上) (新潮文庫) 文庫 – 1969/2/25
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購入オプションとあわせ買い
ひとりの少年が様々な経験を重ね、人間として成長していく過程を描いた教養小説。
完成までに十二年の年月を費やした大作。この後、マンはノーベル文学賞を受賞した。
第一次大戦前、ハンブルク生れの青年ハンス・カストルプは、スイス高原ダヴォスのサナトリウムで療養生活を送る。無垢な青年は、ロシア人のショーシャ夫人を愛し、理性と道徳に絶対の信頼を置く民主主義者セテムブリーニ、独裁によって神の国をうち樹てようとする虚無主義者ナフタ等と交流しながら、自己を形成していく――。
“人間"と“人生"の真相を追究して描かれた、ドイツ教養小説の最高傑作。用語、背景などについての詳細な注解を付す。
本文より
ひとりの単純な青年が、夏の盛りに、故郷ハムブルクをたって、グラウビュンデン州ダヴォス・プラッツへ向った。三週間の予定で人を訪ねようというのである。
ハムブルクからダヴォスまでといえば、それははるかな遠い旅である。だいたい三週間などという短い滞在期間のわりにしては遠すぎる。いくつかの国々を通り、山をのぼりくだりして、南ドイツの高原からボーデン湖の岸へおりる。そうして湖の躍る波を越えて、その昔底なしといわれた淵を船で渡っていくのである。……(第一章冒頭)
トーマス・マン Mann, Thomas (1875-1955)
ドイツ、リューベックに生れる。実科高等学校を中退し、火災保険会社の見習い社員となるが一年で辞め、大学の聴講生となる。1894年、処女短編「転落」を発表し、詩人デーメルに認められた。1901年『ブデンブローク家の人々。ある家族の没落』で注目を集め、以降、『トニオ・クレーゲル』『ヴェニスに死す』『マーリオと魔術師』など話題作を次々と発表。1924年、11年の歳月を費やして長編『魔の山』を完成させた。1929年、ノーベル文学賞受賞。他に『ワイマルのロッテ』『ヨゼフとその兄弟たち』『選ばれし人』等著書多数。
高橋義孝(1913-1995)
東京生れ。東大独文科卒。九大、名大、桐朋学園大等で独文学教授を歴任。翻訳の他、評論、随筆でも高い評価を得た。『森鴎外』(読売文学賞)『現代不作法読本』『文学研究の諸問題』『近代芸術観の成立』等著書多数。
完成までに十二年の年月を費やした大作。この後、マンはノーベル文学賞を受賞した。
第一次大戦前、ハンブルク生れの青年ハンス・カストルプは、スイス高原ダヴォスのサナトリウムで療養生活を送る。無垢な青年は、ロシア人のショーシャ夫人を愛し、理性と道徳に絶対の信頼を置く民主主義者セテムブリーニ、独裁によって神の国をうち樹てようとする虚無主義者ナフタ等と交流しながら、自己を形成していく――。
“人間"と“人生"の真相を追究して描かれた、ドイツ教養小説の最高傑作。用語、背景などについての詳細な注解を付す。
本文より
ひとりの単純な青年が、夏の盛りに、故郷ハムブルクをたって、グラウビュンデン州ダヴォス・プラッツへ向った。三週間の予定で人を訪ねようというのである。
ハムブルクからダヴォスまでといえば、それははるかな遠い旅である。だいたい三週間などという短い滞在期間のわりにしては遠すぎる。いくつかの国々を通り、山をのぼりくだりして、南ドイツの高原からボーデン湖の岸へおりる。そうして湖の躍る波を越えて、その昔底なしといわれた淵を船で渡っていくのである。……(第一章冒頭)
トーマス・マン Mann, Thomas (1875-1955)
ドイツ、リューベックに生れる。実科高等学校を中退し、火災保険会社の見習い社員となるが一年で辞め、大学の聴講生となる。1894年、処女短編「転落」を発表し、詩人デーメルに認められた。1901年『ブデンブローク家の人々。ある家族の没落』で注目を集め、以降、『トニオ・クレーゲル』『ヴェニスに死す』『マーリオと魔術師』など話題作を次々と発表。1924年、11年の歳月を費やして長編『魔の山』を完成させた。1929年、ノーベル文学賞受賞。他に『ワイマルのロッテ』『ヨゼフとその兄弟たち』『選ばれし人』等著書多数。
高橋義孝(1913-1995)
東京生れ。東大独文科卒。九大、名大、桐朋学園大等で独文学教授を歴任。翻訳の他、評論、随筆でも高い評価を得た。『森鴎外』(読売文学賞)『現代不作法読本』『文学研究の諸問題』『近代芸術観の成立』等著書多数。
- 本の長さ710ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1969/2/25
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104102022023
- ISBN-13978-4102022023
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出版社より
魔の山〔上〕 | 魔の山〔下〕 | トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す | |
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カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.2
111
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5つ星のうち4.2
76
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5つ星のうち4.2
63
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価格 | ¥1,155¥1,155 | ¥1,265¥1,265 | ¥539¥539 |
【新潮文庫】トーマス・マン 作品 | 死と病苦、無為と頹廃の支配する高原療養所で療養する青年カストルプの体験を通して、生と死の谷間を彷徨する人々の苦闘を描く。 | 美と倫理、感性と理性、感情と思想のように相反する二つの力の板ばさみになった芸術家の苦悩と、芸術を求める生を描く初期作品集。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1969/2/25)
- 発売日 : 1969/2/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 710ページ
- ISBN-10 : 4102022023
- ISBN-13 : 978-4102022023
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 41,060位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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イメージ付きのレビュー
5 星
人生の時間について考えたい誰かにオススメ
"『エンジニアー私は自分の表現をよく覚えています。(中略)礼節、進歩、労働、生命に対立する力、その悪魔的な息吹から青年の魂を守ることは、教育者のもっとも崇高な義務なのです』"1924年発刊の本書は【教養小説の名作】として思想・哲学・宗教・政治、そして時について考えさせてくれる。個人的には随分昔の学生時に挫折してから今回、主宰する読書会の課題本に設定した事で再挑戦、長年にわたる積ん読本にからの解放を目指すべく手にとりました。さて本書はダボス会議でも有名な、スイスはダボスにある国際サナトリウムを舞台に思わぬ挫折から【先が見えない療養生活を過ごす事になった若者】を一応の物語の主人公にして、中国やロシア、イタリア、オーストリアにオランダといった様々な国籍の魅力的な登場人物が現れては消えていくわけですが。名脇役の先生役ゼテブリーニの饒舌さ、そして論敵となるナフタとの【討論における博識さ】には圧倒させられました。また本書では、近年のサブカル文脈で言えば『セカイ系』【主人公とヒロインなどの個人の関係が世界の危機などの大問題に発展するストーリー展開を持つ作品】とも言うべきか。時間経過を前半スローペースから始まり、駆け足だったり、ばっさりだったりとアップダウンしながらも、舞台は7年間あくまで【サナトリウム周辺から動かず】思想・哲学・宗教・政治を語り尽くしていくわけですが。何度も出てくる豪勢な食事シーンとも合わさって【胃もたれ的な生のコッテリさ】と、一方で人生の縮図を眺めているような【確かで静かな死の余韻】が対比されている様で何ともジンワリとした読後感でした。サナトリウム小説を探す誰か、あるいは人生の時間について考えたい誰かにもオススメ。PS 読書会の課題本としても盛り上がります!
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年12月22日に日本でレビュー済み
読むのに時間がかかってしまったのですが、たいへん面白かった。魔の山という題名から、ドイツの神秘的なファンタジー小説みたいなものを想像していたのですが、全然違った。魔の山とは、物語の舞台となる山の上、高地にある診療所のこと。主人公の青年ハンス・カストルプがこの療養所で経験することが、あれやこれやと描かれていく。はじめは、3週間の滞在のつもりが・・・。ここで出会う人々、起こる出来事を読んでいくと、確かに魔の山かも、と思う。カバーの本の紹介に、ドイツ教養小説の最高傑作とある。教養小説とは、何ぞやと思い、Wikipediaで調べてみると「主人公がさまざまな体験を通して内面的に成長していく過程を描く小説のこと。」とのこと。なるほど!と納得。日本だと、夏目漱石の「三四郎」などが、そうらしい。黒澤明の映画なんかも、三船敏郎の主人公などが成長していくところが教養小説っぽいですね。ただ、この小説の主人公は、積極的に成長していくというよりは、時間の停滞のなかで、なんとなく人間が形作られていくようで、不思議な感覚がある。読みはじめて、はじめに興味を持ったのは、主人公の物語というよりも、まえがきにもある、作者の時間についての考察でした。話のところどころに、時間というものについての考えが述べられている。「永遠のスープ」とか面白い比喩だと思った。最近、時間があるので、今まで名前だけ知っていた名作といわれる文学作品をよく読むのですが、読むと、たいていは、もっと若いうちに読んでおけばよかったと思うことが多い。この本は、(個人的なことですが)やることもなく時間がたくさんある今、読んでじっくり味わえる小説でした。同じことを繰り返す毎日、いつの間にか10年が過ぎてしまった・・・などと感じる人にも、この作者の考察は興味深く、何かを考えさせてくれるかもしれない。忙しくしているから時間が経つのが早いのか?何もしていなければ時間はゆっくり過ぎていくのか?自分の体験に照らし合せて、ちょっと考えてしまいました。そんな興味で、読み進めていったのですが、だんだんとこのカストルプ青年の物語にひきこまれていく。上巻のハイライトは、やはり「ワルプルギスの夜」でしょう。その前の「まぼろしの肢体」というところも、妙にエロティックで読ませる(別に、エロなシーンではありません)。下巻にも、いくつものハイライトといえる章がある。わたしは、そのハイライトというべき盛り上がる章の合間にあるセテムブリーニ、ナフタという論客の論争で、読むのに時間がかかってしまった。そんなに内容をしっかり理解しなくてもいいように思うのですが、つい時間をかけてしまった。もう一度、この本を一気に読み直してみたいなと思っています。もう、ハンス・カストルプっていう名前は、ずっと忘れないかもしれないなぁと思う。あとクラウディア・ショーシャ夫人も・・・。スラスラ読める本ではないかもしれませんが、主人公が体験する出来事のかたまり(章)ごとに、時間をかけて読み進めていってもいいと思う。チャレンジする価値はあると思います。などと、書くと大げさに思われるかもしれませんね。あくまでも、自分の読み方であり、感想です。面白い小説です。
2024年5月24日に日本でレビュー済み
トーマス・マンのノーベル文学賞受賞作ともなった、重厚な長編である。
いわゆる story -telling で読ませる作品ではないので「途中ギブアップ」の読者も多いことであろう。
ひとりの青年の知的な回想録、としてじっくりと取り組めば 底味のある名作と評し得よう。
主人公の内的思索に影響を与える役割を担っている作中人物の、Settembrini のキャラクターに「作り物感」が感じられ、やや拝読に手間取ったことを告白しておきたい。
いわゆる story -telling で読ませる作品ではないので「途中ギブアップ」の読者も多いことであろう。
ひとりの青年の知的な回想録、としてじっくりと取り組めば 底味のある名作と評し得よう。
主人公の内的思索に影響を与える役割を担っている作中人物の、Settembrini のキャラクターに「作り物感」が感じられ、やや拝読に手間取ったことを告白しておきたい。
2018年12月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私事ながら短期間の入院生活を送ることになったのを機に、昔読んだ『魔の山』を読み直すことにした。
何と言っても舞台設定の国際サナトリウムが異彩を放っている。実在するスイスのダヴォスは保養地であるとともに、ウィンタースポーツで世界中から観光客が多数訪れる。したがって、サナトリウムで療養する患者も国際色豊かで、ドイツ人のほか、イタリア人やロシア人など多彩である。アルプスの美しい風景と目まぐるしく変化する気候、死と向き合う療養所と賑やかな観光地、こうした舞台の下で主人公が様々な体験を重ねながら人間形成していく。それがBildungsromanと言われるゆえんである。日本語では「教養小説」と訳すが、人間形成小説といった意味であろう。
ただ、主人公は無垢な少年ではなく、造船技術者として就職も決まった立派な大人であり、ハンブルクの商家出身の保守的な気風や思想を持っている。その主人公が、進歩的な民主主義の持ち主である人文主義者セテンブリーニの教育的言説を反発を感じながらも柔軟に受け入れ、他方で、療養所の死の引力やショーシャ夫人への愛欲に惹かれていくのが上巻の展開である。
この小説が書かれたのは第一次世界大戦後であるが、解説によると、ドイツ帝国の敗戦によってトーマス・マン自身が保守的な思想から西欧民主主義を受け入れることになったのが小説の背景にあるらしい。
大変長い小説であるが、療養所の多彩な患者や医師たちの人物造形が見事に描き分けられ、また国際サナトリウムの療養生活が興味深く飽きさせない。飛ばし読みせずに、ゆっくり味わって読みたい(下巻レビューに続く)。
(追記)
上巻のクライマックス、「ワルプルギスの夜」の主人公の告白後のショーシャ夫人との長い対話のほとんどはフランス語で書かれている(訳文ではカタカナ表記)。念のために原文を見たが、この部分はフランス語のみでドイツ語の訳文は当然のごとくつけられていない。著者が想定する読者層の教養レベルの高さが理解できよう(なお、kindleで入手したドイツ語版Fischer Klassik PLUSでは付録Anhangとしてドイツ語訳がつけられている)。
何と言っても舞台設定の国際サナトリウムが異彩を放っている。実在するスイスのダヴォスは保養地であるとともに、ウィンタースポーツで世界中から観光客が多数訪れる。したがって、サナトリウムで療養する患者も国際色豊かで、ドイツ人のほか、イタリア人やロシア人など多彩である。アルプスの美しい風景と目まぐるしく変化する気候、死と向き合う療養所と賑やかな観光地、こうした舞台の下で主人公が様々な体験を重ねながら人間形成していく。それがBildungsromanと言われるゆえんである。日本語では「教養小説」と訳すが、人間形成小説といった意味であろう。
ただ、主人公は無垢な少年ではなく、造船技術者として就職も決まった立派な大人であり、ハンブルクの商家出身の保守的な気風や思想を持っている。その主人公が、進歩的な民主主義の持ち主である人文主義者セテンブリーニの教育的言説を反発を感じながらも柔軟に受け入れ、他方で、療養所の死の引力やショーシャ夫人への愛欲に惹かれていくのが上巻の展開である。
この小説が書かれたのは第一次世界大戦後であるが、解説によると、ドイツ帝国の敗戦によってトーマス・マン自身が保守的な思想から西欧民主主義を受け入れることになったのが小説の背景にあるらしい。
大変長い小説であるが、療養所の多彩な患者や医師たちの人物造形が見事に描き分けられ、また国際サナトリウムの療養生活が興味深く飽きさせない。飛ばし読みせずに、ゆっくり味わって読みたい(下巻レビューに続く)。
(追記)
上巻のクライマックス、「ワルプルギスの夜」の主人公の告白後のショーシャ夫人との長い対話のほとんどはフランス語で書かれている(訳文ではカタカナ表記)。念のために原文を見たが、この部分はフランス語のみでドイツ語の訳文は当然のごとくつけられていない。著者が想定する読者層の教養レベルの高さが理解できよう(なお、kindleで入手したドイツ語版Fischer Klassik PLUSでは付録Anhangとしてドイツ語訳がつけられている)。
2013年3月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
恐ろしく重厚長大な小説であった。
長く、しかも、物語にあまり動きがない。
1500ページほどの物語の間、主人公の行動半径は2キロぐらいであろう。
そんな小さな空間を舞台に時間はとくに変化もなくに過ぎ去っていく。
恐ろしく「停滞」した小説であり、率直に言うと「退屈」とも言える。
しかし「停滞」「退屈」こそがこの小説のテーマであり、
何も起きないことを小説にできていることが、この小説の唯一無二たるゆえんであるから、
そこを否定するのはお門違いかもしれない。
ほとんどの人間の人生は波瀾万丈ではなく「停滞」しているものである。
その停滞具合が本当の人生のようなのである。リアルなのである。
小説の主人公にしていいのだろうか?と思うほどに凡庸で魅力のない主人公、これもまたリアルなのである。
世界的に評価されている小説なのでとても楽しみにしていたが、
この小説がおもしろいのか、時間を忘れるほど読書に没頭してしまうものかどうか、
自分の人生に大きな爪痕を残したか、ぼくにとっては「否」だった。
特に気になったのは、その議論の無意味さ。
この小説は様々な立場の人間の議論が核となって進んでいくのだが、
それが物語に絡んでゆかず、ただ議論として終わっている。
つまり、情報として終わっているのだ。
ドストエフスキーは、それが物語と絡んで大きなうねりとなっていくのだ。
(その形式をポリフォニーと呼ぶ)。そこに大きな違いがあった。
しかし、これはあくまでも私の個人的な感想。
この世界的な評価の理由を汲み取れなかった自身の力量不足もある。
どうぞ他の好評価のレビューもじっくりとみて、魔の山を登るかどうか考えていただきたい。
長く、しかも、物語にあまり動きがない。
1500ページほどの物語の間、主人公の行動半径は2キロぐらいであろう。
そんな小さな空間を舞台に時間はとくに変化もなくに過ぎ去っていく。
恐ろしく「停滞」した小説であり、率直に言うと「退屈」とも言える。
しかし「停滞」「退屈」こそがこの小説のテーマであり、
何も起きないことを小説にできていることが、この小説の唯一無二たるゆえんであるから、
そこを否定するのはお門違いかもしれない。
ほとんどの人間の人生は波瀾万丈ではなく「停滞」しているものである。
その停滞具合が本当の人生のようなのである。リアルなのである。
小説の主人公にしていいのだろうか?と思うほどに凡庸で魅力のない主人公、これもまたリアルなのである。
世界的に評価されている小説なのでとても楽しみにしていたが、
この小説がおもしろいのか、時間を忘れるほど読書に没頭してしまうものかどうか、
自分の人生に大きな爪痕を残したか、ぼくにとっては「否」だった。
特に気になったのは、その議論の無意味さ。
この小説は様々な立場の人間の議論が核となって進んでいくのだが、
それが物語に絡んでゆかず、ただ議論として終わっている。
つまり、情報として終わっているのだ。
ドストエフスキーは、それが物語と絡んで大きなうねりとなっていくのだ。
(その形式をポリフォニーと呼ぶ)。そこに大きな違いがあった。
しかし、これはあくまでも私の個人的な感想。
この世界的な評価の理由を汲み取れなかった自身の力量不足もある。
どうぞ他の好評価のレビューもじっくりとみて、魔の山を登るかどうか考えていただきたい。
2021年8月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大学のドイツ語の講義で読んでいたと思ったので、何十年ぶりかに読んでみました。本が分厚いので最初面喰いましたが、読んでいて、話がなかなか進まなくて、上巻の半分以上読まないと面白さが出てこないです。下巻の最初までにかけて、ちょっと面白いなと思いましたが、教養小説の基本を忠実に行っていて、丁寧に書かれていると思います。なので、退屈です。上下巻を2か月くらいかけて読みましたが、読みにくいと言うことしか心に残りませんでした。これが名作と言われる理由がよくわかりません。
2022年11月22日に日本でレビュー済み
あまりに面白いので二度続けて読んだ。文学の面白さには人それぞれ感じるところがあって当然だ。この小説を退屈だと言う者がいても仕方ない。すべての読者を納得させる小説などあろうはずもない。私は非常に面白いと思った。ひとつ印象に残る場面を書こう。ハンス・カストルプが蓄音機でレコードを聴き感想を述べるところがある。いくつかの音楽が主人公の口を借りてトーマス・マン自身の見解が明かされる。取り上げられている作品は極めて有名な、誰もが知ってる曲ばかりである。その中で私を刮目させたのがカルメンだ。オペラの第二幕、カルメンがカスタネットを持ってドン・ホセの前で踊る。ホセはカルメンが踊ってる最中、帰営を告げるラッパを耳にし兵舎に帰ると言う。カルメンはそれに激怒し、兵士の命とも言うべきサーベルを放り投げホセを罵倒する。もうお前なんか帰っておしまい、せっかくあんたのために踊ったのに、そうカルメンは叫ぶ。この尋常でない怒りは、単にカルメン個人的なものでなく、太古以来綿々と続いている原理に対する怒りだと、カストルプは解釈する。つまりは女による男性原理への怒りなのだ。私ははっとした。そうだ、これが音楽の、芸術の解釈のあり方なのだ。この解釈が正当なものか分らない。単にトーマス・マンの個人的見解に過ぎないと言えばその通りだ。だが、それこそが何も考えず何気なく過ごしている人間には(私がそうなのだが)とうてい得ることの出来ない思索体験である。
2019年5月29日に日本でレビュー済み
"『エンジニアー私は自分の表現をよく覚えています。(中略)礼節、進歩、労働、生命に対立する力、その悪魔的な息吹から青年の魂を守ることは、教育者のもっとも崇高な義務なのです』"1924年発刊の本書は【教養小説の名作】として思想・哲学・宗教・政治、そして時について考えさせてくれる。
個人的には随分昔の学生時に挫折してから今回、主宰する読書会の課題本に設定した事で再挑戦、長年にわたる積ん読本にからの解放を目指すべく手にとりました。
さて本書はダボス会議でも有名な、スイスはダボスにある国際サナトリウムを舞台に思わぬ挫折から【先が見えない療養生活を過ごす事になった若者】を一応の物語の主人公にして、中国やロシア、イタリア、オーストリアにオランダといった様々な国籍の魅力的な登場人物が現れては消えていくわけですが。名脇役の先生役ゼテブリーニの饒舌さ、そして論敵となるナフタとの【討論における博識さ】には圧倒させられました。
また本書では、近年のサブカル文脈で言えば『セカイ系』【主人公とヒロインなどの個人の関係が世界の危機などの大問題に発展するストーリー展開を持つ作品】とも言うべきか。時間経過を前半スローペースから始まり、駆け足だったり、ばっさりだったりとアップダウンしながらも、舞台は7年間あくまで【サナトリウム周辺から動かず】思想・哲学・宗教・政治を語り尽くしていくわけですが。何度も出てくる豪勢な食事シーンとも合わさって【胃もたれ的な生のコッテリさ】と、一方で人生の縮図を眺めているような【確かで静かな死の余韻】が対比されている様で何ともジンワリとした読後感でした。
サナトリウム小説を探す誰か、あるいは人生の時間について考えたい誰かにもオススメ。
PS 読書会の課題本としても盛り上がります!
個人的には随分昔の学生時に挫折してから今回、主宰する読書会の課題本に設定した事で再挑戦、長年にわたる積ん読本にからの解放を目指すべく手にとりました。
さて本書はダボス会議でも有名な、スイスはダボスにある国際サナトリウムを舞台に思わぬ挫折から【先が見えない療養生活を過ごす事になった若者】を一応の物語の主人公にして、中国やロシア、イタリア、オーストリアにオランダといった様々な国籍の魅力的な登場人物が現れては消えていくわけですが。名脇役の先生役ゼテブリーニの饒舌さ、そして論敵となるナフタとの【討論における博識さ】には圧倒させられました。
また本書では、近年のサブカル文脈で言えば『セカイ系』【主人公とヒロインなどの個人の関係が世界の危機などの大問題に発展するストーリー展開を持つ作品】とも言うべきか。時間経過を前半スローペースから始まり、駆け足だったり、ばっさりだったりとアップダウンしながらも、舞台は7年間あくまで【サナトリウム周辺から動かず】思想・哲学・宗教・政治を語り尽くしていくわけですが。何度も出てくる豪勢な食事シーンとも合わさって【胃もたれ的な生のコッテリさ】と、一方で人生の縮図を眺めているような【確かで静かな死の余韻】が対比されている様で何ともジンワリとした読後感でした。
サナトリウム小説を探す誰か、あるいは人生の時間について考えたい誰かにもオススメ。
PS 読書会の課題本としても盛り上がります!
"『エンジニアー私は自分の表現をよく覚えています。(中略)礼節、進歩、労働、生命に対立する力、その悪魔的な息吹から青年の魂を守ることは、教育者のもっとも崇高な義務なのです』"1924年発刊の本書は【教養小説の名作】として思想・哲学・宗教・政治、そして時について考えさせてくれる。
個人的には随分昔の学生時に挫折してから今回、主宰する読書会の課題本に設定した事で再挑戦、長年にわたる積ん読本にからの解放を目指すべく手にとりました。
さて本書はダボス会議でも有名な、スイスはダボスにある国際サナトリウムを舞台に思わぬ挫折から【先が見えない療養生活を過ごす事になった若者】を一応の物語の主人公にして、中国やロシア、イタリア、オーストリアにオランダといった様々な国籍の魅力的な登場人物が現れては消えていくわけですが。名脇役の先生役ゼテブリーニの饒舌さ、そして論敵となるナフタとの【討論における博識さ】には圧倒させられました。
また本書では、近年のサブカル文脈で言えば『セカイ系』【主人公とヒロインなどの個人の関係が世界の危機などの大問題に発展するストーリー展開を持つ作品】とも言うべきか。時間経過を前半スローペースから始まり、駆け足だったり、ばっさりだったりとアップダウンしながらも、舞台は7年間あくまで【サナトリウム周辺から動かず】思想・哲学・宗教・政治を語り尽くしていくわけですが。何度も出てくる豪勢な食事シーンとも合わさって【胃もたれ的な生のコッテリさ】と、一方で人生の縮図を眺めているような【確かで静かな死の余韻】が対比されている様で何ともジンワリとした読後感でした。
サナトリウム小説を探す誰か、あるいは人生の時間について考えたい誰かにもオススメ。
PS 読書会の課題本としても盛り上がります!
個人的には随分昔の学生時に挫折してから今回、主宰する読書会の課題本に設定した事で再挑戦、長年にわたる積ん読本にからの解放を目指すべく手にとりました。
さて本書はダボス会議でも有名な、スイスはダボスにある国際サナトリウムを舞台に思わぬ挫折から【先が見えない療養生活を過ごす事になった若者】を一応の物語の主人公にして、中国やロシア、イタリア、オーストリアにオランダといった様々な国籍の魅力的な登場人物が現れては消えていくわけですが。名脇役の先生役ゼテブリーニの饒舌さ、そして論敵となるナフタとの【討論における博識さ】には圧倒させられました。
また本書では、近年のサブカル文脈で言えば『セカイ系』【主人公とヒロインなどの個人の関係が世界の危機などの大問題に発展するストーリー展開を持つ作品】とも言うべきか。時間経過を前半スローペースから始まり、駆け足だったり、ばっさりだったりとアップダウンしながらも、舞台は7年間あくまで【サナトリウム周辺から動かず】思想・哲学・宗教・政治を語り尽くしていくわけですが。何度も出てくる豪勢な食事シーンとも合わさって【胃もたれ的な生のコッテリさ】と、一方で人生の縮図を眺めているような【確かで静かな死の余韻】が対比されている様で何ともジンワリとした読後感でした。
サナトリウム小説を探す誰か、あるいは人生の時間について考えたい誰かにもオススメ。
PS 読書会の課題本としても盛り上がります!
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