イギリスのクラシックな和訳が、ストーリーの当時に重なって味わい深かった。
教訓めいた綴りが散見され、また読んだら新たな発見とドキドキがあるのだろうと思う。
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長距離走者の孤独 (新潮文庫) 文庫 – 1973/9/3
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権威に抵抗する青年の反抗心を、一人称のリズミカルな文章で描いた傑作。
1962年、イギリス映画『長距離ランナーの孤独』(監督トニー・リチャードソン)原作。
同作で主演トム・コートネイが英国アカデミー賞最優秀新人賞を受賞。
“おれはどんなことがあったって奴らに見せつけてやるんだ、誠実とはどういうことかを”
クロスカントリー競技会で優勝を目前にしながら走るのをやめ、感化院長などの期待に見事に反抗を示した非行少年スミス――社会が築いたさまざまな規制への反撥と偽善的な権力者に対するアナーキックな憤りをみずみずしい文体で描いて、青春の生命の躍動と強靱さあふれる表題作ほか7編収録。訳者解説および著作年譜を付す。
【目次】
長距離走者の孤独(The Loneliness of the Long-Distance Runner/訳:河野一郎)
アーネストおじさん(Uncle Ernest/訳:丸谷才一)
レイナー先生(Mr Raynor the Schoolteacher/訳:河野一郎)
漁船の絵(The Fishing-boat Picture/訳:丸谷才一)
土曜の午後(On Saturday Afternoon/訳:河野一郎)
試合(The Match/訳:河野一郎)
ジム・スカーフィデイルの屈辱(The Disgrace of Jim Scarfedale/訳:河野一郎)
フランキー・ブラーの没落(The Decline and Fall of Frankie Buller/訳:河野一郎)
解説:河野一郎
本書収録『長距離走者の孤独』より
おれは走路を駆けて行った、大動脈をボールダーダムのようにせきとめられた心臓と、木工の万力に挟まれたみたいにギリギリしめつけてくる釘袋をかかえ、しかし両足は鳥の翼のように軽く、両腕はいつでも競技場をひとっとびに飛んで獲物をさらってくる猛禽の爪のように鋭く。ただおれには、そんな見せびらかしをするつもりはなく、まかりまちがってもレースに勝つつもりはなかった。今ゴールへ向かって走りながら、おれは乾いた暑い日の香りをかぎ、仲間が芝刈機の前に取りつけた罐から空けた草の山のそばを走り抜ける。……(本書77ページ)
アラン・シリトー Sillitoe, Alan(1928-2010)
イギリスの作家。労働者の息子としてノッティンガムに生れる。19歳で空軍の無線技手となるが、肺結核にかかり療養中に創作を開始。1958年、労働者階級の生活を内側から描いた『土曜の夜と日曜の朝』で一躍有名になる。『長距離走者の孤独』『華麗なる門出』等、著書多数。
丸谷才一(1925-2012)
山形県鶴岡市生れ。東京大学文学部英文科卒。1967年『笹まくら』で河出文化賞、1968年『年の残り』で芥川賞を受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳と幅広い文筆活動を展開。『たった一人の反乱』(谷崎潤一郎賞)『裏声で歌へ君が代』『後鳥羽院』(読売文学賞)『忠臣蔵とは何か』(野間文芸賞)『輝く日の宮』(泉鏡花文学賞)『持ち重りする薔薇の花』など著書多数。訳書にジョイス『若い藝術家の肖像』(読売文学賞)など。2011年文化勲章受章。
河野一郎
1930年、大阪府生れ。英文学者、比較文学者、翻訳家。東京外国語大学、フェリス女学院大学名誉教授。専門は現代イギリス文学。カポーティ『遠い声遠い部屋』、E・ブロンテ『嵐が丘』、『ロレンス短篇集』、『対訳英米童謡集』など多くの訳書がある。
1962年、イギリス映画『長距離ランナーの孤独』(監督トニー・リチャードソン)原作。
同作で主演トム・コートネイが英国アカデミー賞最優秀新人賞を受賞。
“おれはどんなことがあったって奴らに見せつけてやるんだ、誠実とはどういうことかを”
クロスカントリー競技会で優勝を目前にしながら走るのをやめ、感化院長などの期待に見事に反抗を示した非行少年スミス――社会が築いたさまざまな規制への反撥と偽善的な権力者に対するアナーキックな憤りをみずみずしい文体で描いて、青春の生命の躍動と強靱さあふれる表題作ほか7編収録。訳者解説および著作年譜を付す。
【目次】
長距離走者の孤独(The Loneliness of the Long-Distance Runner/訳:河野一郎)
アーネストおじさん(Uncle Ernest/訳:丸谷才一)
レイナー先生(Mr Raynor the Schoolteacher/訳:河野一郎)
漁船の絵(The Fishing-boat Picture/訳:丸谷才一)
土曜の午後(On Saturday Afternoon/訳:河野一郎)
試合(The Match/訳:河野一郎)
ジム・スカーフィデイルの屈辱(The Disgrace of Jim Scarfedale/訳:河野一郎)
フランキー・ブラーの没落(The Decline and Fall of Frankie Buller/訳:河野一郎)
解説:河野一郎
本書収録『長距離走者の孤独』より
おれは走路を駆けて行った、大動脈をボールダーダムのようにせきとめられた心臓と、木工の万力に挟まれたみたいにギリギリしめつけてくる釘袋をかかえ、しかし両足は鳥の翼のように軽く、両腕はいつでも競技場をひとっとびに飛んで獲物をさらってくる猛禽の爪のように鋭く。ただおれには、そんな見せびらかしをするつもりはなく、まかりまちがってもレースに勝つつもりはなかった。今ゴールへ向かって走りながら、おれは乾いた暑い日の香りをかぎ、仲間が芝刈機の前に取りつけた罐から空けた草の山のそばを走り抜ける。……(本書77ページ)
アラン・シリトー Sillitoe, Alan(1928-2010)
イギリスの作家。労働者の息子としてノッティンガムに生れる。19歳で空軍の無線技手となるが、肺結核にかかり療養中に創作を開始。1958年、労働者階級の生活を内側から描いた『土曜の夜と日曜の朝』で一躍有名になる。『長距離走者の孤独』『華麗なる門出』等、著書多数。
丸谷才一(1925-2012)
山形県鶴岡市生れ。東京大学文学部英文科卒。1967年『笹まくら』で河出文化賞、1968年『年の残り』で芥川賞を受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳と幅広い文筆活動を展開。『たった一人の反乱』(谷崎潤一郎賞)『裏声で歌へ君が代』『後鳥羽院』(読売文学賞)『忠臣蔵とは何か』(野間文芸賞)『輝く日の宮』(泉鏡花文学賞)『持ち重りする薔薇の花』など著書多数。訳書にジョイス『若い藝術家の肖像』(読売文学賞)など。2011年文化勲章受章。
河野一郎
1930年、大阪府生れ。英文学者、比較文学者、翻訳家。東京外国語大学、フェリス女学院大学名誉教授。専門は現代イギリス文学。カポーティ『遠い声遠い部屋』、E・ブロンテ『嵐が丘』、『ロレンス短篇集』、『対訳英米童謡集』など多くの訳書がある。
- 本の長さ246ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1973/9/3
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104102068015
- ISBN-13978-4102068014
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登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1973/9/3)
- 発売日 : 1973/9/3
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 246ページ
- ISBN-10 : 4102068015
- ISBN-13 : 978-4102068014
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 48,194位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年4月7日に日本でレビュー済み
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内容は思った通りだった。でも、ちょっと読みにくい。段落が分かれてないとか、表現がくどいとか、句読点が少ない。残念です。
2020年4月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
若し日に出会えていればと心から思うほど素晴らしい作品に出会えました。
2021年12月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
子供が高校に馴染めず続けるか退学するか悩んでいる時に部屋の机にポンと置いておきました。
読んだかどうか分かりませんが後2ヶ月で卒業と言うところで退学して自分の道を歩き始めました。
良かったのか悪かったのか分かりませんが、今は明るく過ごしてます。
読んだかどうか分かりませんが後2ヶ月で卒業と言うところで退学して自分の道を歩き始めました。
良かったのか悪かったのか分かりませんが、今は明るく過ごしてます。
2018年2月21日に日本でレビュー済み
ネタバレあり
10代の頃、タイトルと表紙のデザインに 引き込まれ 読みました。
僕は、 スミスが 金を 盗んで 家の ソファーで TVを 見ながら くつろいでいる場面が 好きです。
そして 雨の日 ポリ公が 来た場面は、この 小説の ハイライトで またラストのマブ達も 余韻が 残って良いです。
50歳を 越え 未だに、マラソン大会に 出ているのは、10代で 出会えた この小説の 影響だと つくづく思います。
まぁ 反対に 走ることは、ありませんが…
10代の頃、タイトルと表紙のデザインに 引き込まれ 読みました。
僕は、 スミスが 金を 盗んで 家の ソファーで TVを 見ながら くつろいでいる場面が 好きです。
そして 雨の日 ポリ公が 来た場面は、この 小説の ハイライトで またラストのマブ達も 余韻が 残って良いです。
50歳を 越え 未だに、マラソン大会に 出ているのは、10代で 出会えた この小説の 影響だと つくづく思います。
まぁ 反対に 走ることは、ありませんが…
2012年11月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作者自身が労働者階級の生まれだからか、主人公の育った環境や生活感がリアリティに溢れている。
わたしがこの作品に最初に触れたのが中学生のとき。読書感想文の課題図書だったと思う。
この物語が、それに的確かどうかは別にして、強烈な衝撃を受けたのを鮮明に記憶している。
50歳間近になって改めて読み返してみても、そのときの感動が蘇ってくる。
わたしの人生を変えた本、と言っても過言ではない。
このレビューは、物語の内容にまったく触れていない。
だから、ぜひ読んで欲しい。出来れば【土曜の夜と日曜の朝】も。
わたしがこの作品に最初に触れたのが中学生のとき。読書感想文の課題図書だったと思う。
この物語が、それに的確かどうかは別にして、強烈な衝撃を受けたのを鮮明に記憶している。
50歳間近になって改めて読み返してみても、そのときの感動が蘇ってくる。
わたしの人生を変えた本、と言っても過言ではない。
このレビューは、物語の内容にまったく触れていない。
だから、ぜひ読んで欲しい。出来れば【土曜の夜と日曜の朝】も。
2018年8月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大学時代に初めてこの本を読んで以来、三十数年ぶりに再読した。 マラソン、特にフルマラソンを超えるウルトラマラソンにチャレンジしている僕は、今年の100kmマラソンに出場するにあたり、再び読んでみたいという気になった。
この小説はイギリスのポップロックグループ、スタイルカウンシルのポール・ウェラーが愛読していた。
ストーリーは不良少年スミスが感化院の院長の「優勝しろ」の期待に逆らい、優勝目前でレースを止めてしまう・・・。
感化院の院長は権力の象徴、ウェラー自身反権力の左翼アーティストだっただけに、そういう意味では彼がのめり込むのも分かる気がする。
対して僕は反権力に情熱を燃やす人間ではない。 しかしこのストーリーの不良少年スミスの生き方は面白いと思った。
こういう生き方も人生の醍醐味だと思った。 内容自体に感動も面白みもなかったが、考えさせられるものはあった。
この小説はイギリスのポップロックグループ、スタイルカウンシルのポール・ウェラーが愛読していた。
ストーリーは不良少年スミスが感化院の院長の「優勝しろ」の期待に逆らい、優勝目前でレースを止めてしまう・・・。
感化院の院長は権力の象徴、ウェラー自身反権力の左翼アーティストだっただけに、そういう意味では彼がのめり込むのも分かる気がする。
対して僕は反権力に情熱を燃やす人間ではない。 しかしこのストーリーの不良少年スミスの生き方は面白いと思った。
こういう生き方も人生の醍醐味だと思った。 内容自体に感動も面白みもなかったが、考えさせられるものはあった。
2019年3月7日に日本でレビュー済み
中学生の頃、生きづらかった自分に初めて寄り添ってくれた本。50歳過ぎても未だに心の隅で光りを放っている。大人になる中で、聴いてきた音楽にも影響していたことを、今になって思い出した。
…パンクロックの原点だと思う。
…パンクロックの原点だと思う。