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北回帰線 (新潮文庫) 文庫 – 1969/2/3
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現実、そして夢や幻想、性の交わり――。
小説か、エッセイか、自叙伝なのか、ファンタジーか。
過激な性描写ゆえ物議を醸した、著者の処女作長編。
“ぼくは諸君のために歌おうとしている。すこしは調子がはずれるかもしれないが、とにかく歌うつもりだ。諸君が泣きごとを言っているひまに、ぼくは歌う。諸君のきたならしい死骸の上で踊ってやる"
その激越な性描写ゆえに長く発禁を免れなかった本書は、衰弱し活力を失った現代人に最後の戦慄を与え、輝かしい生命を吹きこむ。放浪のパリ時代の体験を奔放に綴った記念すべき処女作。
本文冒頭より
ぼくはヴィラ・ボルゲエゼに住んでいる。ここには塵(ちり)っぱひとつなく、椅子の置場所ひとつまちがっていない。ここでは、ぼくたちはみな孤独であり、生気をうしなっている。
昨夜ボリスは、からだに虱(しらみ)がたかっているのに気づいた。ぼくは彼の腋の下を剃ってやらなければならなかったが、それでもまだ痒みはとれなかった。こんなきれいなところにいて、どうして虱なんぞにたかられるのか。だが、そんなことはどうでもいい。ボリスとぼくとは、もし虱がいなかったら、これほど仲好くはならなかったかもしれないのだ。……
ヘンリ・ミラー Miller, Henry(1891-1980)
米国ニューヨーク州ヨークビル生れ。ニューヨーク市立大学中退後、国内を放浪。生涯で5度の結婚を経験し、ほとんど定職につかずに創作活動を行なった。大胆な性描写や、人間疎外を生む現代文明への激しい批判にあふれた作風で知られる。代表作に『北回帰線』『南回帰線』『薔薇色の十字架』などがある。
大久保康雄(1905-1987)
茨城県生れ。マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』を始め、現代アメリカ文学を中心に話題作の翻訳を多数手がける。他に、スタインベック『怒りの葡萄』、ヘンリ・ミラー『北回帰線』等がある。
小説か、エッセイか、自叙伝なのか、ファンタジーか。
過激な性描写ゆえ物議を醸した、著者の処女作長編。
“ぼくは諸君のために歌おうとしている。すこしは調子がはずれるかもしれないが、とにかく歌うつもりだ。諸君が泣きごとを言っているひまに、ぼくは歌う。諸君のきたならしい死骸の上で踊ってやる"
その激越な性描写ゆえに長く発禁を免れなかった本書は、衰弱し活力を失った現代人に最後の戦慄を与え、輝かしい生命を吹きこむ。放浪のパリ時代の体験を奔放に綴った記念すべき処女作。
本文冒頭より
ぼくはヴィラ・ボルゲエゼに住んでいる。ここには塵(ちり)っぱひとつなく、椅子の置場所ひとつまちがっていない。ここでは、ぼくたちはみな孤独であり、生気をうしなっている。
昨夜ボリスは、からだに虱(しらみ)がたかっているのに気づいた。ぼくは彼の腋の下を剃ってやらなければならなかったが、それでもまだ痒みはとれなかった。こんなきれいなところにいて、どうして虱なんぞにたかられるのか。だが、そんなことはどうでもいい。ボリスとぼくとは、もし虱がいなかったら、これほど仲好くはならなかったかもしれないのだ。……
ヘンリ・ミラー Miller, Henry(1891-1980)
米国ニューヨーク州ヨークビル生れ。ニューヨーク市立大学中退後、国内を放浪。生涯で5度の結婚を経験し、ほとんど定職につかずに創作活動を行なった。大胆な性描写や、人間疎外を生む現代文明への激しい批判にあふれた作風で知られる。代表作に『北回帰線』『南回帰線』『薔薇色の十字架』などがある。
大久保康雄(1905-1987)
茨城県生れ。マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』を始め、現代アメリカ文学を中心に話題作の翻訳を多数手がける。他に、スタインベック『怒りの葡萄』、ヘンリ・ミラー『北回帰線』等がある。
- 本の長さ561ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1969/2/3
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104102090010
- ISBN-13978-4102090015
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登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1969/2/3)
- 発売日 : 1969/2/3
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 561ページ
- ISBN-10 : 4102090010
- ISBN-13 : 978-4102090015
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 47,138位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年4月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
背表紙にヤケ感がありましたが、中身は新品のように綺麗でした。これからじっくり読みたいと思います。
2019年12月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
"かってぼくは、人間的であることこそ、人のもちうる最高の目標だと考えていた。けれどもいまは、それはぼくを亡ぼすことを意味すると知っている。今日のぼくは、誇りをもって、おれは非人間的だと言うことができる"1934年発表の本書は発禁処分でも有名な、文学史上重要な"プロットなき"自伝的小説。
個人的には、大好きなパリ、セーヌ川左岸にある"ただで泊まれる本屋"シェイクスピア・アンド・カンパニー書店"を題材にした本(シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々)の女好きの登場人物が紹介していて印象的に残りつつも、積ん読状態であった本書。ようやく手にとりました。
さて、そんな本書は、日記や性愛小説で有名な女性、アナイス・ニンが絶賛しているだけあって?当時も非難囂々であったことも理解できるくらいに【起承転結的なプロットはなく、また性描写も赤裸々な】物語なき詩的小説なのですが。女性、特にフランス人女性に対する【差別的な発言こそ眉をひそめてしまう】ものの、淡々と描かれつつも、宿代や食事(とSEX)のために代筆ライターや語学の先生、風俗案内と【サバイバル能力に長け、文学や美術に詳しい】主人公の姿は逞しく、割と楽しく読み終えることができました。(とは言え、個人的には同じアンダーグラウンドな小説ならジャン・ジュネの『泥棒日記』の方が好みですが)特に散発的なエピソードが続く中では【ロシア人映画女優と友人との3人同居の話】がユーモアあって印象的。
一方で、女性遍歴が豊富なことでも有名な著者の【結婚が5回、されど8人目の妻?】日本人女性、ホキ徳田が今も現役最年長のジャズ・シンガーとして、六本木にヘンリー・ミラー・メモリアル・カフェ『北回帰線』を経営、昼はカレー、夜はバーをしながら、今なお演奏もしていることを本書キッカケで知って、近く訪れたいなとか思ったり(一緒に著者の水彩画展示もしてくれたら嬉しいのですが。。)
ロスト・ジェネレーションとビート・ジェネレーションをつなぐ作品に興味ある誰か、また現実逃避的な小説が好きな男性にもオススメ。
個人的には、大好きなパリ、セーヌ川左岸にある"ただで泊まれる本屋"シェイクスピア・アンド・カンパニー書店"を題材にした本(シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々)の女好きの登場人物が紹介していて印象的に残りつつも、積ん読状態であった本書。ようやく手にとりました。
さて、そんな本書は、日記や性愛小説で有名な女性、アナイス・ニンが絶賛しているだけあって?当時も非難囂々であったことも理解できるくらいに【起承転結的なプロットはなく、また性描写も赤裸々な】物語なき詩的小説なのですが。女性、特にフランス人女性に対する【差別的な発言こそ眉をひそめてしまう】ものの、淡々と描かれつつも、宿代や食事(とSEX)のために代筆ライターや語学の先生、風俗案内と【サバイバル能力に長け、文学や美術に詳しい】主人公の姿は逞しく、割と楽しく読み終えることができました。(とは言え、個人的には同じアンダーグラウンドな小説ならジャン・ジュネの『泥棒日記』の方が好みですが)特に散発的なエピソードが続く中では【ロシア人映画女優と友人との3人同居の話】がユーモアあって印象的。
一方で、女性遍歴が豊富なことでも有名な著者の【結婚が5回、されど8人目の妻?】日本人女性、ホキ徳田が今も現役最年長のジャズ・シンガーとして、六本木にヘンリー・ミラー・メモリアル・カフェ『北回帰線』を経営、昼はカレー、夜はバーをしながら、今なお演奏もしていることを本書キッカケで知って、近く訪れたいなとか思ったり(一緒に著者の水彩画展示もしてくれたら嬉しいのですが。。)
ロスト・ジェネレーションとビート・ジェネレーションをつなぐ作品に興味ある誰か、また現実逃避的な小説が好きな男性にもオススメ。
2020年2月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
初めて手に取ったのは中学生の頃だったか、高校生だったか・・。あれから四十年近くたって、今回、十回目かニ十回目かの挑戦ですが、結局、また、最後まで読み通すことができなかった。おれがばかなのか、よほど相性が悪いのか。いつも思うけど、落書きとあまり変わらないような気が・・。でもそんな落書きにも時々真理が語られていたりする。「あんたは勃起すれば情熱的になったと思ってるんだわ」とか、うっ、まさにその通り、ぐさり、です。ただ、激越な性描写などというのはまったくなし(と思われます)。個人的には『南回帰線』の方が好み。といってもこちらも読み通したわけではないですが。
2012年3月27日に日本でレビュー済み
ミラーに関して特に印象に残っていることは、第二次世界大戦末期に、ナチス・ヒットラーを征伐する正義の国として全世界がアメリカに期待していたころ、ミラーがアメリカ人でありながら、『どうして、アメリカが正義で、ナチスが悪と言えるのか。悪という点では、どっちも似たようなものだ』と発言したことである。それでは、ヒットラーにはどう対処すればいいのかという記者の意地悪な質問に対して、ミラーは、平然として、『降伏すればいい』と答えた。『悪が悪をやっつけて、それにとって代わったとしても、結局は、同じことだ。その間、人が無駄に死んでいくのが馬鹿馬鹿しい』
ミラーによると、アメリカがなぜ悪かというと、文明国だからだ。文明と正義は両立しない。文明は、より高度の便利さと贅沢さをめざす制度だから、結局は、他人に分け与える道よりも、他人から奪う道に進む。1945年に、文明国は悪だと言いきったミラーの発言は、当時は、気違い扱いされたものの、今のアメリカを見ると、見事に言い当てていることが分かる。こういうミラーの考え方は、この作品にはっきりと表れている。女の子を求める男はいつの時代にも事欠かないだろうが、この作品の男たちは、仮に明日地球が滅びるということが分かっても、女を求めるような連中なのだ。こういう文明社会は滅ぼしたほうがいいんだ、それが出来ないとしたら、せめて、最後の最後まで建設的なことをするのは一切やめよう。
こういうミラーの考え方を示す一口話をもう一つ。1936年に、共和党軍に加勢するためにスペイン戦争に向かうジョージ・オーウェルは、パリで、文通相手のミラーに会った。正義を守るために命を賭けてスペインに向かおうとするオーウェルに、ミラーは言った。『見物に行くというのなら分からないでもないが、正義を守るという理由で、そんなところに行くなんて、愚か者のやることだ』
オーウェルは、そのときのことを『Inside the Whale』のなかで次のように書いている。
"What most intrigued me about him was to find that he felt no interest in the Spanish war whatever. He merely told me in forcible terms that to go to Spain at that moment was the act of an idiot. He could understand anyone going there from purely selfish motives, out of curiosity, for instance, but to mix oneself up in such things from a sense of obligation was sheer stupidity."
ミラーによると、アメリカがなぜ悪かというと、文明国だからだ。文明と正義は両立しない。文明は、より高度の便利さと贅沢さをめざす制度だから、結局は、他人に分け与える道よりも、他人から奪う道に進む。1945年に、文明国は悪だと言いきったミラーの発言は、当時は、気違い扱いされたものの、今のアメリカを見ると、見事に言い当てていることが分かる。こういうミラーの考え方は、この作品にはっきりと表れている。女の子を求める男はいつの時代にも事欠かないだろうが、この作品の男たちは、仮に明日地球が滅びるということが分かっても、女を求めるような連中なのだ。こういう文明社会は滅ぼしたほうがいいんだ、それが出来ないとしたら、せめて、最後の最後まで建設的なことをするのは一切やめよう。
こういうミラーの考え方を示す一口話をもう一つ。1936年に、共和党軍に加勢するためにスペイン戦争に向かうジョージ・オーウェルは、パリで、文通相手のミラーに会った。正義を守るために命を賭けてスペインに向かおうとするオーウェルに、ミラーは言った。『見物に行くというのなら分からないでもないが、正義を守るという理由で、そんなところに行くなんて、愚か者のやることだ』
オーウェルは、そのときのことを『Inside the Whale』のなかで次のように書いている。
"What most intrigued me about him was to find that he felt no interest in the Spanish war whatever. He merely told me in forcible terms that to go to Spain at that moment was the act of an idiot. He could understand anyone going there from purely selfish motives, out of curiosity, for instance, but to mix oneself up in such things from a sense of obligation was sheer stupidity."
2013年8月18日に日本でレビュー済み
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なかなか難しい内容ですね。ミラーの奥様にサインをいただきました。
2014年9月28日に日本でレビュー済み
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ご提供のサービスに大変満足しています。こんな昔に、こんな素晴らしい小説が存在していた
驚きと発見。ありがとうございました。
驚きと発見。ありがとうございました。
2016年10月31日に日本でレビュー済み
物語とか、プロットとか、登場人物の造形がどうのとか、
そういう小手先のものをすべてとっぱらって
文学の原液をとにかくぶちまけた作品だと思います。
だから、この作品を読むときの心構えは、あまり、「文学」とか「小説」とか
枠にとらわれないでいた方がよい、ということでしょう。
これは変態ヘンリーが射精した、文学の原液そのままなのですから。
そこに洗練されたプロットや物語なんかを求めるのは筋違いな話。
性的な話題がたしかに多いですが
卑猥だとか、下劣だとかいう印象をまったく持ちませんでした。
むしろこれはバリバリ健全な文学でしょう。
退廃的、というのとは対極にあるような。
だからかえって狂ってしまってるんですが。
とにかく、ヘンリーは大変な変態である、ということです。
そういう小手先のものをすべてとっぱらって
文学の原液をとにかくぶちまけた作品だと思います。
だから、この作品を読むときの心構えは、あまり、「文学」とか「小説」とか
枠にとらわれないでいた方がよい、ということでしょう。
これは変態ヘンリーが射精した、文学の原液そのままなのですから。
そこに洗練されたプロットや物語なんかを求めるのは筋違いな話。
性的な話題がたしかに多いですが
卑猥だとか、下劣だとかいう印象をまったく持ちませんでした。
むしろこれはバリバリ健全な文学でしょう。
退廃的、というのとは対極にあるような。
だからかえって狂ってしまってるんですが。
とにかく、ヘンリーは大変な変態である、ということです。
2014年1月5日に日本でレビュー済み
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最初戸惑うかもしれないが、読む内にその表現力に圧倒される、自由の書、20世紀の名著だと思う。