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ハツカネズミと人間 (新潮文庫) 文庫 – 1994/8/10
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自然への豊かな感受性、労働者に向ける暖かい眼差し。
木曜日の夕方から日曜日の夕方まで、河畔と農場での会話と情景を切り取った〈戯曲的小説〉。
『怒りの葡萄』でピューリッツァー賞を受賞した著者による中編。
一軒の小さな家と農場を持ち、土地のくれるいちばんいいものを食い、ウサギを飼って静かに暮らす――。からだも知恵も対照的なのっぽのレニーとちびのジョージ。渡り鳥のような二人の労働者の、ささやかな夢。カリフォルニアの農場を転々として働く男たちの友情、たくましい生命力、そして苛酷な現実と悲劇を、温かいヒューマニズムの眼差しで描いたスタインベックの永遠の名作。
本文より
二人は砂の上に寝床を作った。たき火のほのおが弱まるにつれ、あかりの範囲もせばまってゆく。突き出た枝が見えなくなり、弱い薄あかりが幹のあたりを照らしているだけだ。やみの中からレニーが呼ぶ。「ジョージ――おめえ寝たか」
「いや。なんの用だ」
「いろんな色のウサギを飼おうね、ジョージ」
「ああ、飼おうよ」ジョージはねむそうに答えた。「赤や青や緑のウサギをな、レニー。何百万と飼おう」
ジョン・スタインベック Steinbeck, John(1902-1968)
カリフォルニア州サリーナス出身。スタンフォード大学で海洋生物学などを学ぶかたわら、農場や商店で働き、創作をはじめた。代表作『怒りの葡萄』で1940年にピューリッツァー賞を受賞、1962年にはノーベル賞を受けた。作品にはほかに『ハツカネズミと人間』『赤い小馬』『エデンの東』などがある。
大浦暁生
1931年生れ。東京大学卒業。中央大学名誉教授。訳書にベロー『この日をつかめ』、スタイロン『ソフィーの選択』『見える暗闇』など。
木曜日の夕方から日曜日の夕方まで、河畔と農場での会話と情景を切り取った〈戯曲的小説〉。
『怒りの葡萄』でピューリッツァー賞を受賞した著者による中編。
一軒の小さな家と農場を持ち、土地のくれるいちばんいいものを食い、ウサギを飼って静かに暮らす――。からだも知恵も対照的なのっぽのレニーとちびのジョージ。渡り鳥のような二人の労働者の、ささやかな夢。カリフォルニアの農場を転々として働く男たちの友情、たくましい生命力、そして苛酷な現実と悲劇を、温かいヒューマニズムの眼差しで描いたスタインベックの永遠の名作。
本文より
二人は砂の上に寝床を作った。たき火のほのおが弱まるにつれ、あかりの範囲もせばまってゆく。突き出た枝が見えなくなり、弱い薄あかりが幹のあたりを照らしているだけだ。やみの中からレニーが呼ぶ。「ジョージ――おめえ寝たか」
「いや。なんの用だ」
「いろんな色のウサギを飼おうね、ジョージ」
「ああ、飼おうよ」ジョージはねむそうに答えた。「赤や青や緑のウサギをな、レニー。何百万と飼おう」
ジョン・スタインベック Steinbeck, John(1902-1968)
カリフォルニア州サリーナス出身。スタンフォード大学で海洋生物学などを学ぶかたわら、農場や商店で働き、創作をはじめた。代表作『怒りの葡萄』で1940年にピューリッツァー賞を受賞、1962年にはノーベル賞を受けた。作品にはほかに『ハツカネズミと人間』『赤い小馬』『エデンの東』などがある。
大浦暁生
1931年生れ。東京大学卒業。中央大学名誉教授。訳書にベロー『この日をつかめ』、スタイロン『ソフィーの選択』『見える暗闇』など。
- ISBN-10410210108X
- ISBN-13978-4102101087
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日1994/8/10
- 言語日本語
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- 本の長さ156ページ
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出版社より
怒りの葡萄〔上〕 | 怒りの葡萄〔下〕 | ハツカネズミと人間 | スタインベック短編集 | |
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カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.5
32
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5つ星のうち4.3
30
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5つ星のうち4.3
134
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5つ星のうち4.2
59
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価格 | ¥880¥880 | ¥880¥880 | ¥572¥572 | ¥605¥605 |
【新潮文庫】ジョン・スタインベック 作品 | 天災と大資本によって先祖の土地を奪われた農民ジョード一家。苦境を切り抜けようとする、情愛深い家族の姿を描いた不朽の名作。 | 南カリフォルニアの農場をわたり歩く二人の労働者を主人公に、夢を追いながらも過酷な現実に裏切られる下層の人々を描いた出世作。 | 自然との接触を見うしなった現代にあって、人間と自然とが端的に結びついた著者の世界は、その単純さゆえいっそう神秘的である。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1994/8/10)
- 発売日 : 1994/8/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 156ページ
- ISBN-10 : 410210108X
- ISBN-13 : 978-4102101087
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 91,499位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年11月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
切ない結末。何がそうさせたのか。世相なのか。こんなこともあるのかと他人事のように捉えられるが、同じような事を場面は異なれども誰もがしているのではないかと思う。ではどうするのか、同じことを繰り返すのか、違う方法があるのか、答えがみつかっているわけではない。
2021年12月7日に日本でレビュー済み
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映画を見てから本を購入しました。本に忠実に映画化されているようでした。本当のラストはちょっと異なるようでしたが、あの時代の雰囲気は十分味わえました。J. マルコビッチが何故アカデミー主演賞を取らなかったのかが何とも不思議です。本は短いので何度も読み返しました。切なく人情もあって、あの時代の保険制度の無い老後、それでもお互いが人情、残酷さもみせてのドラマでした。心に残る名作だと思います。
2022年3月11日に日本でレビュー済み
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心に傷痕を残す物語だ。記憶にあるユニバーサル映画製作の『フランケンシュタイン』の怪物のように自らの力を抑えられない大男と、しかしその裏切ることを知らない無垢な魂を理解し庇護する小男の二人連れのたどり着いた終着点…小男が物語る将来の展望は二人の心に灯りを点すが、それは叶わぬ夢物語として現代社会に生きる自分たちにも現実の無常を知らしめるように思われてならない。悪女と敬遠される女は夫の無関心に傷つき関心を求めて災厄を招いてしまう。人間は社会の生き物だ。一人では生きてゆけない。そしてときにその社会に依って葬り去られてしまう。
2022年6月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
他の人もコメントされてましたが、なんでハツカネズミやねん! レニーは自分のこと「おら」って言うとるし。翻訳が違和感だらけでした。
読み始めた途端に、四十年以上前に読んだ大門一男訳の『二十日鼠と人間』を本棚の奥に見つけて、結局そちらを読みました。小説自体は、とても良い話です! それにしても、「おら」って...。
読み始めた途端に、四十年以上前に読んだ大門一男訳の『二十日鼠と人間』を本棚の奥に見つけて、結局そちらを読みました。小説自体は、とても良い話です! それにしても、「おら」って...。
2023年8月28日に日本でレビュー済み
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1930年代のカリフォルニア州。木曜の午後、サリーナス川沿いには、小柄なジョージ・ミルトンと巨漢のレニー・スモールの姿があった。二人は農場を渡り歩く放浪労働者だ。面倒を起こしてウィニーという町を追われた二人は、金曜の午前中に次の農場へたどり着く。そこで大きな悲劇が二人を襲う……。
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大恐慌時代の農業地帯で、血を分けた兄弟かと見紛うほどの男二人が、いつか自分たちだけの農場を持つ夢を語り合い、額に汗して生きる生活を送っています。生まれ落ちたときから宿命付けられたかのような貧困状態を脱して生き伸びるには、是が非でも夢物語を抱かざるを得ない哀しみが二人を捉えて放しません。
中学生時代に『 二十日鼠と人間 』(大門一男訳版)を読んでいたので、物語の大筋は記憶にありましたが、主人公二人以外にも、登場人物たちの多くが30年代アメリカで打ちひしがれた人生に倦んでいることに改めて気づきました。
馬屋係の黒人クルックスは、農場内で自分だけの居住空間を与えられ、一見優遇されているかのように見えますが、それは彼が肌の色によって遠ざけられているからに過ぎません。ですから彼は白人たちの遊興の場には決して誘われることがなく、孤独を味わっています。第4章の最初で塗り薬をひとり体に塗っている姿で登場し、そしてその第4章は彼が塗り薬をひとり体に塗る姿で閉じます。相も変わらぬひとりぼっちの日常が彼の毎日であることが象徴されています。
農場主の息子で背の低さに極度のコンプレックスを抱くカーリーは、雇用主という優越的立場を利用して体の大きなレニーをねじ伏せようとします。おのれの体格コンプレックスを暴力によってのみ解消しようとする明らかな歪みが彼の心に巣食っています。
カーリーの妻で、物語の中では終始「カーリーの妻」とのみ呼称される女は、かつて映画女優になるという夢を抱いていました。人から注目を浴びることを乞い願い、その夢を果たせぬまま、母との暮らしから逃亡するための単なる足がかかりとしてカーリーとの結婚を選んだに過ぎません。そのカーリーの自分への関心が薄れている今、農場におけるたったひとりの女という立場を使って、労働者たちの興味の対象となろうと哀しい努力を重ねているようです。
片手がない老人キャンディは最初のうちこそジョージとレニーの夢の農場計画に加わる意志を見せます。しかしその計画が見果てぬ夢物語に過ぎないとの諦念にやがて達するようです。今の生活から出る道は見いだせそうもありません。
このように、強い閉塞感を抱く彼らの人生が交錯するところに、スタインベックは大きな悲劇を置いていくのです。
創世記第45章18節の「土地のくれるいちばんいいもの」を食って暮らす夢が潰えていく物語は、アメリカンドリームがドリームで終わる悲しさを描いているといえるでしょう。
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*Soledadという町のカタカナ表記が終始「ソルダード」となっています。実際には「ソレダード」とするのが、原音に近いといえます。実在する町で、スペイン語で「孤独」を意味します。
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1930年代のカリフォルニア州。木曜の午後、サリーナス川沿いには、小柄なジョージ・ミルトンと巨漢のレニー・スモールの姿があった。二人は農場を渡り歩く放浪労働者だ。面倒を起こしてウィニーという町を追われた二人は、金曜の午前中に次の農場へたどり着く。そこで大きな悲劇が二人を襲う……。
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大恐慌時代の農業地帯で、血を分けた兄弟かと見紛うほどの男二人が、いつか自分たちだけの農場を持つ夢を語り合い、額に汗して生きる生活を送っています。生まれ落ちたときから宿命付けられたかのような貧困状態を脱して生き伸びるには、是が非でも夢物語を抱かざるを得ない哀しみが二人を捉えて放しません。
中学生時代に『 二十日鼠と人間 』(大門一男訳版)を読んでいたので、物語の大筋は記憶にありましたが、主人公二人以外にも、登場人物たちの多くが30年代アメリカで打ちひしがれた人生に倦んでいることに改めて気づきました。
馬屋係の黒人クルックスは、農場内で自分だけの居住空間を与えられ、一見優遇されているかのように見えますが、それは彼が肌の色によって遠ざけられているからに過ぎません。ですから彼は白人たちの遊興の場には決して誘われることがなく、孤独を味わっています。第4章の最初で塗り薬をひとり体に塗っている姿で登場し、そしてその第4章は彼が塗り薬をひとり体に塗る姿で閉じます。相も変わらぬひとりぼっちの日常が彼の毎日であることが象徴されています。
農場主の息子で背の低さに極度のコンプレックスを抱くカーリーは、雇用主という優越的立場を利用して体の大きなレニーをねじ伏せようとします。おのれの体格コンプレックスを暴力によってのみ解消しようとする明らかな歪みが彼の心に巣食っています。
カーリーの妻で、物語の中では終始「カーリーの妻」とのみ呼称される女は、かつて映画女優になるという夢を抱いていました。人から注目を浴びることを乞い願い、その夢を果たせぬまま、母との暮らしから逃亡するための単なる足がかかりとしてカーリーとの結婚を選んだに過ぎません。そのカーリーの自分への関心が薄れている今、農場におけるたったひとりの女という立場を使って、労働者たちの興味の対象となろうと哀しい努力を重ねているようです。
片手がない老人キャンディは最初のうちこそジョージとレニーの夢の農場計画に加わる意志を見せます。しかしその計画が見果てぬ夢物語に過ぎないとの諦念にやがて達するようです。今の生活から出る道は見いだせそうもありません。
このように、強い閉塞感を抱く彼らの人生が交錯するところに、スタインベックは大きな悲劇を置いていくのです。
創世記第45章18節の「土地のくれるいちばんいいもの」を食って暮らす夢が潰えていく物語は、アメリカンドリームがドリームで終わる悲しさを描いているといえるでしょう。
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*Soledadという町のカタカナ表記が終始「ソルダード」となっています。実際には「ソレダード」とするのが、原音に近いといえます。実在する町で、スペイン語で「孤独」を意味します。
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2019年4月25日に日本でレビュー済み
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ノーベル文学賞作家ということで構えてしまいがちですが、難しく考えて読まなくとも
うだうだした心理描写もなく筋を追うだけでさらりと読めるわかりやすい文体です。
風景の描写は無駄な装飾もなく美しく、場面ごとに土地のにおいが立ちのぼってきます。
直接的な暴力や性表現はありませんが、生々しい毒気も含んでいて適度に刺激があります。
会話も多く難解な漢字や小難しい表現もないので、誰にでも非常に読みやすい小説です。
うだうだした心理描写もなく筋を追うだけでさらりと読めるわかりやすい文体です。
風景の描写は無駄な装飾もなく美しく、場面ごとに土地のにおいが立ちのぼってきます。
直接的な暴力や性表現はありませんが、生々しい毒気も含んでいて適度に刺激があります。
会話も多く難解な漢字や小難しい表現もないので、誰にでも非常に読みやすい小説です。
2019年12月5日に日本でレビュー済み
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映画で知り、原作を読みました。
どちらもよかった。出会えてよかった。手元に置き、折に触れ読み返すことでしょう。
どちらもよかった。出会えてよかった。手元に置き、折に触れ読み返すことでしょう。