"どういう具合か、はっきり言ったわけではないが、決まりごとのようになった。双方から打ち明け話をするのだ。"デビュー作の本書でピュリツアー賞を受賞した著者が端麗な文体で描き出す表題作を含む9編のインド系移民の物語は移民政策を実質的に解禁した今年。あらためて読んでみたい。
個人的には、前述の移民政策解禁はもちろん、大阪を襲った大型台風による停電で、ロウソクで過ごさざるを得なかった夜に本書の存在を思い出し再読したのですが。久しぶりに読んで浮かんだのは【(文章が)うまい】【(著者が)やっぱりきれい】という何とも語彙に乏しくて申し訳なくなる言葉でした。
さておき、日本版表題作である【停電の夜に】より【病気の通訳】【三度目で最後の大陸】の方が、今回の再読では、より私的には好みだと感じましたが。平易な、されど選びぬかれた言葉による表現は本当に素晴らしいですね。あらためて著者の才能の豊かさに感心しました。
洗練された短編好きな誰かに、また移民側の視点からの物語に感心がある誰かにオススメ。
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停電の夜に (新潮文庫) 文庫 – 2003/2/28
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毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦──「停電の夜に」。観光で訪れたインドで、なぜか夫への内緒事をタクシー運転手に打ち明ける妻──「病気の通訳」。夫婦、家族など親しい関係の中に存在する亀裂を、みずみずしい感性と端麗な文章で表す9編。ピュリツァー賞など著名な文学賞を総なめにした、インド系新人作家の鮮烈なデビュー短編集。
- 本の長さ327ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2003/2/28
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104102142118
- ISBN-13978-4102142110
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2003/2/28)
- 発売日 : 2003/2/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 327ページ
- ISBN-10 : 4102142118
- ISBN-13 : 978-4102142110
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
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2019年5月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年4月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容は決してつまらなくはないのだけれど、一気に飲み干すような読み方ができない類の作品で、ひとつの話を読んでは何日か休み、途中でほかの本もはさんで、ちょっと映画でも観て、とそんなことをしているうちに、すべての作品を読むまでにかなりの期間を要していて、まだあと2本、未読の作品を残している。
私はよほど合わない作家の本を無理に読むのでもない限り、読書にそういう時間のかけ方はしない方なので、「ふしぎだなぁ、時間かかるなぁ」とこの本を読みながら首をひねっていた。
けれど、さいきん人と話していて、ふと思い出して自分のおすすめ本として『停電の夜に』を挙げたときに、その面白さを言葉にするのが妙にむずかしくて、そのうまく言えないもどかしさが再び「この本ってふしぎだなぁ」という感覚を呼び起こして、いまこうやって文章にして考えている。
どうしてこの小説は、読みすすむのにこんなに時間がかかるのだろう。
ほかの人はどうか知らないのだけれど、少なくとも私はとても時間がかかる。ひとつの作品を読んだら、しばらく次の作品を読む気が起こらない。
そしてその理由は、ジュンパさんの小説の「言いたいことのなさ」に由来するものなのだろうと、何となくそんな気がしている。
彼女の小説を読んでいると、誰かの記憶を撮影したスナップ写真を見せられているような、そんな気分になる。
『停電の夜に』の作品はどれも、悲しみにくれることができない種類の悲しさだとか、不幸だと嘆くにはあまりにありふれている出来事の苦さを描き、ただドライに人生の片鱗を描写している。
そして、それらは限りなく読者である自分自身が生きている人生の手触りにちかく、似すぎていて、小説によって別世界を体験しているというよりは、「今いる自分の居場所からどんなに隔たっても、たとえ違う人間になったとしても、今の自分が味わうのとそう変わらない、同じ種類の人生しかないのだ」という夢のない事実を告げられているようで、それはフィクションの形に置き換えられている分だけ口当たり良く、マイルドになっている部分と、フィクションの形だからこそダイレクトすぎる部分とを両方あわせもっている。
だから作品は作品として開かれているのだけれど、そこに待っているものは単純なる読書というほど優しいものではなくて、自分自身の人生を追体験しているようでもあり、まだ味わっていないことの予告編を見せられているようでもある、そんな体験なのである。
だから、やっぱりそんなものを次々と飲み下せたりはしない。
そして、時間をかけてゆっくり咀嚼したいという思いにも自然となるのだろう。
ジュンパさんの描いているのは、誰かの人生、ではなくて、読者である私の人生、それそのものなのだ。
それを他人事として読んで楽しみたい気持ちと、読み終わった後の苦々しい実感と。
そのはざまにこの作家の魅力があるのではないか、とそんなことを思う。
私はよほど合わない作家の本を無理に読むのでもない限り、読書にそういう時間のかけ方はしない方なので、「ふしぎだなぁ、時間かかるなぁ」とこの本を読みながら首をひねっていた。
けれど、さいきん人と話していて、ふと思い出して自分のおすすめ本として『停電の夜に』を挙げたときに、その面白さを言葉にするのが妙にむずかしくて、そのうまく言えないもどかしさが再び「この本ってふしぎだなぁ」という感覚を呼び起こして、いまこうやって文章にして考えている。
どうしてこの小説は、読みすすむのにこんなに時間がかかるのだろう。
ほかの人はどうか知らないのだけれど、少なくとも私はとても時間がかかる。ひとつの作品を読んだら、しばらく次の作品を読む気が起こらない。
そしてその理由は、ジュンパさんの小説の「言いたいことのなさ」に由来するものなのだろうと、何となくそんな気がしている。
彼女の小説を読んでいると、誰かの記憶を撮影したスナップ写真を見せられているような、そんな気分になる。
『停電の夜に』の作品はどれも、悲しみにくれることができない種類の悲しさだとか、不幸だと嘆くにはあまりにありふれている出来事の苦さを描き、ただドライに人生の片鱗を描写している。
そして、それらは限りなく読者である自分自身が生きている人生の手触りにちかく、似すぎていて、小説によって別世界を体験しているというよりは、「今いる自分の居場所からどんなに隔たっても、たとえ違う人間になったとしても、今の自分が味わうのとそう変わらない、同じ種類の人生しかないのだ」という夢のない事実を告げられているようで、それはフィクションの形に置き換えられている分だけ口当たり良く、マイルドになっている部分と、フィクションの形だからこそダイレクトすぎる部分とを両方あわせもっている。
だから作品は作品として開かれているのだけれど、そこに待っているものは単純なる読書というほど優しいものではなくて、自分自身の人生を追体験しているようでもあり、まだ味わっていないことの予告編を見せられているようでもある、そんな体験なのである。
だから、やっぱりそんなものを次々と飲み下せたりはしない。
そして、時間をかけてゆっくり咀嚼したいという思いにも自然となるのだろう。
ジュンパさんの描いているのは、誰かの人生、ではなくて、読者である私の人生、それそのものなのだ。
それを他人事として読んで楽しみたい気持ちと、読み終わった後の苦々しい実感と。
そのはざまにこの作家の魅力があるのではないか、とそんなことを思う。
2021年11月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
在英インド人が書いた小説です。彼らのの風習がわかりますが、物語の一つ一つはあまり興味が持てない内容でした。途中で読むのを止めました。
2016年5月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
インド在住で、インドを学習中です。
著者は、インドでも好評で、インド人からも"必読"と言われて読みました。
インドと異文化が交錯し、
ユニークな世界を描いて下さっていると感じました。
いいですね〜
著者は、インドでも好評で、インド人からも"必読"と言われて読みました。
インドと異文化が交錯し、
ユニークな世界を描いて下さっていると感じました。
いいですね〜
2020年7月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
乙川優三郎のロゴスの市という小説の中でこの本が紹介されていたので読んでみました。期待を裏切らない密度の濃い一冊でした。
2011年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
素晴らしい、の一言です。
インド系アメリカ人の女性、というバックグラウンドにひかれて読みましたが、
読み進めるうちに、どんどん引き込まれ、
作者がインド系だとか世代がどうだとか賞をとったとかそういうことは些細なことになってしまい、
ただただ、貪るように読んでしまいました。
翻訳もいいです。表現や言葉づかいが、この作者の世界観に合っていると思います。
特に良かったのは、
1、「停電の夜に」
男女のすれ違いの描写が見事です。切ないです。
2、「病気の通訳」
笑えます。ちょっと悲しいけど。
小説として構成が素晴らしい。
人物描写も秀逸。
3、「セクシー」
これが一番好きです。少女が大人の女性になる過程でのもどかしさがすごくいい。
昔、一回り上の男性に恋焦がれた頃を思い出しました。
相手をひきつけようと懸命になっても空回りする様子がリアル。
秀逸なのが、主人公とその友人との子どものやりとり。
子どもにはっとさせられて、友人と子どもの会話を想像し、自分を重ねて泣く主人公。
鮮やかです。
全体的に、残酷なことがさらっと描いています。
でも、現実の日常にも残酷さはさりげなく点々と潜んでいる。
蛇足ですが、作者の写真が載っています。
凄い美人です。
こんなに才能があってこんなに美人なんて・・・ため息が出てしまいます。
インド系アメリカ人の女性、というバックグラウンドにひかれて読みましたが、
読み進めるうちに、どんどん引き込まれ、
作者がインド系だとか世代がどうだとか賞をとったとかそういうことは些細なことになってしまい、
ただただ、貪るように読んでしまいました。
翻訳もいいです。表現や言葉づかいが、この作者の世界観に合っていると思います。
特に良かったのは、
1、「停電の夜に」
男女のすれ違いの描写が見事です。切ないです。
2、「病気の通訳」
笑えます。ちょっと悲しいけど。
小説として構成が素晴らしい。
人物描写も秀逸。
3、「セクシー」
これが一番好きです。少女が大人の女性になる過程でのもどかしさがすごくいい。
昔、一回り上の男性に恋焦がれた頃を思い出しました。
相手をひきつけようと懸命になっても空回りする様子がリアル。
秀逸なのが、主人公とその友人との子どものやりとり。
子どもにはっとさせられて、友人と子どもの会話を想像し、自分を重ねて泣く主人公。
鮮やかです。
全体的に、残酷なことがさらっと描いています。
でも、現実の日常にも残酷さはさりげなく点々と潜んでいる。
蛇足ですが、作者の写真が載っています。
凄い美人です。
こんなに才能があってこんなに美人なんて・・・ため息が出てしまいます。
2018年12月11日に日本でレビュー済み
1999年、インド系アメリカ人作家、ジュンパ・ラヒリのデビュー短編集です。
ピュリッツァー賞、O・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞、
『ニューヨーカー』年間新人賞ほか、多数受賞。
原題は「Interpreter of Maladies」(病気の通訳)、邦訳版は「停電の夜に」
いずれのタイトルも、本書に収録された短編のタイトルです。
日常生活にある綻び。
そこには、幻想、妄想、思い違い、秘密などがある。
表面的に日常を装っても、水面下にドラマが生じる。
このような日常の些細なドラマ(しかし、その人にとっては大きい)を、
作者・ラヒリは、繊細な感性で捉え、肌理細やかな文章へと紡ぎ出していく。
誰にでもあるような心の機微は、ほろ苦く、
一遍一遍読み終える毎に、ため息が出るようである。
私は、文庫版が出た時、受賞数の多さから興味本位で購入したのですが、
最初に収録された『停電の夜に』で、すっかり気に入ってしまった。
電車の中で、ノラ・ジョーンズを聴きながら、
一編読んでは本を閉じ、また一編読んでは本を閉じ
・・・とゆっくり消化するように読んだ記憶があります。
久々に読むと、今は移民や難民の話題が多いためか、
『ピルザダさんが食事に来たころ』を食い入るように読んでしまった。
舞台は、1971年、アメリカ。
両親がインドからの移民である主人公・リリアの一家と、
家族を祖国に残して大学講師をする東パキスタン人・ピルザダさんの交流を描いた作品。
同じベンガル人、同じ言語。
ヒンズーとイスラム、インドと東パキスタン。
リリア一家とピルザダさん。
このような重層的なアイデンティティは、
バングラデシュ独立へと向かう歴史の潮流の中、
遠く離れたアメリカで過ごす登場人物たちにも影響を及ぼしていく。
また、最後に収録された『三度目で最後の大陸』は、
今となっては、次作となる長編『その名にちなんで』の予告編みたいで面白い。
私は、映画版『その名にちなんで』も見ましたが、
映画を見て本書・全編を読むと、映画の情景が目に浮かび、以前より質感豊かに味わえました。
(ラヒリの作品を全部読んでるわけではありませんが、
先述の『ピルザダさん』と『その名にちなんで』は、
移民のアイデンティティを考えるのにいいと思います。)
書店や書評で、本書がお薦めされているのをよく見ます。
その都度、「もはや、クラシック(古典)の域にある」と感じます。
個人的には、ジュンパ・ラヒリはオススメ作家の1人、文庫化を進めてもらいたい作家の1人です。
ピュリッツァー賞、O・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞、
『ニューヨーカー』年間新人賞ほか、多数受賞。
原題は「Interpreter of Maladies」(病気の通訳)、邦訳版は「停電の夜に」
いずれのタイトルも、本書に収録された短編のタイトルです。
日常生活にある綻び。
そこには、幻想、妄想、思い違い、秘密などがある。
表面的に日常を装っても、水面下にドラマが生じる。
このような日常の些細なドラマ(しかし、その人にとっては大きい)を、
作者・ラヒリは、繊細な感性で捉え、肌理細やかな文章へと紡ぎ出していく。
誰にでもあるような心の機微は、ほろ苦く、
一遍一遍読み終える毎に、ため息が出るようである。
私は、文庫版が出た時、受賞数の多さから興味本位で購入したのですが、
最初に収録された『停電の夜に』で、すっかり気に入ってしまった。
電車の中で、ノラ・ジョーンズを聴きながら、
一編読んでは本を閉じ、また一編読んでは本を閉じ
・・・とゆっくり消化するように読んだ記憶があります。
久々に読むと、今は移民や難民の話題が多いためか、
『ピルザダさんが食事に来たころ』を食い入るように読んでしまった。
舞台は、1971年、アメリカ。
両親がインドからの移民である主人公・リリアの一家と、
家族を祖国に残して大学講師をする東パキスタン人・ピルザダさんの交流を描いた作品。
同じベンガル人、同じ言語。
ヒンズーとイスラム、インドと東パキスタン。
リリア一家とピルザダさん。
このような重層的なアイデンティティは、
バングラデシュ独立へと向かう歴史の潮流の中、
遠く離れたアメリカで過ごす登場人物たちにも影響を及ぼしていく。
また、最後に収録された『三度目で最後の大陸』は、
今となっては、次作となる長編『その名にちなんで』の予告編みたいで面白い。
私は、映画版『その名にちなんで』も見ましたが、
映画を見て本書・全編を読むと、映画の情景が目に浮かび、以前より質感豊かに味わえました。
(ラヒリの作品を全部読んでるわけではありませんが、
先述の『ピルザダさん』と『その名にちなんで』は、
移民のアイデンティティを考えるのにいいと思います。)
書店や書評で、本書がお薦めされているのをよく見ます。
その都度、「もはや、クラシック(古典)の域にある」と感じます。
個人的には、ジュンパ・ラヒリはオススメ作家の1人、文庫化を進めてもらいたい作家の1人です。