どこかしら滑稽な響きのある「チャップリン」。てっきり芸名と思っていたが、本名だった。しかも父親も、チャップリンの長男も、同じファーストネーム。Sr.とJr.では足りないではないか。
原著“My Autobiography”は1964年刊。チャップリン、75歳の時。波乱に富むその人生を振り返るにはちょうどよい年齢だったかもしれない。邦訳の新潮文庫は上下の分冊、合わせると1000ページ弱。挿入されている写真も122葉。その分量に見合うだけの人生、豊かな回想エピソードと細かな描写に圧倒されまくる。
上巻「若き日々」は、出生から20代半ばまで。ロンドンでの貧窮生活に始まり、イギリスでの巡業、そしてアメリカに渡って、映画の世界で驚くような成功を収めるまで。とくに後半は、アメリカという映画の新天地で、水を得た魚のようだ。
その文章力と記憶力にはとにかく舌を巻く。学校にはほとんど行かなかったのに、どこでこれほどの文章力を身に着けたのか? 日記をつけ、詳細なメモを残していたのか? 読書については触れているが、これらの疑問への答えは書かれていない。
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チャップリン自伝 上 ―若き日々 (新潮文庫) 文庫 – 1981/4/28
突然声の出なくなった母の代役として五歳で初舞台を踏み、母の発狂、父の死、貧民院や孤児院を転々とし、ついに地方まわりの一座に拾われて役にありつく――あの滑稽な姿、諷刺と哀愁に満ちたストーリーで、全世界を笑いと涙の渦に巻き込んだ喜劇王チャップリンの生いたちは、読む者を興奮させずにおかない。神話と謎につつまれたその若き日々を、みずからふりかえって描く。
- ISBN-104102185011
- ISBN-13978-4102185018
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日1981/4/28
- 言語日本語
- 本の長さ390ページ
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登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1981/4/28)
- 発売日 : 1981/4/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 390ページ
- ISBN-10 : 4102185011
- ISBN-13 : 978-4102185018
- Amazon 売れ筋ランキング: - 230,160位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年3月3日に日本でレビュー済み
「チャップリン」といえば、喜劇王という呼び名で知られているぐらいの
理解しかなかったが、書店でふと見かけて、手にとってみた。
年齢を重ねると、誰かの人生に興味が湧くようになるものだ。
読んでまず思ったのは、驚くほど困窮した家庭で育ったということ。
チャーリーと兄と母の3人で暮らすその家庭は、
明日はどうやって生きていこうの状態がずっと続いていた。
今の日本なら、生活保護のようなセーフティーネットも存在するが、
当時の彼らの環境にはそのような制度があるわけでもなく、
「兄に黙って兄の服を質屋に入れ、気づかれる前に戻す」といったようなことを
毎週繰り返していたのを見ると、本当に切羽詰まった状態だったんだろうなというのが伺えた。
役者だった母の影響で5歳で舞台に立ったチャーリーが、
あの「山高帽にでかい靴、ちぐはぐなサイズのセットアップ」でおなじみの
チャップリンになるまでのその道のりは、サクセスストーリーと呼ぶにはあまりにも過酷なものだ。
天才型というより、努力してしっかり蓄積をしたものが、
チャップリンで一気に結晶化した、というタイプの人間なのだと感じた。
チャップリンというキャラクターがアメリカに渡り、
彼の存在を知らない人はいない、という状態の時に、
先輩役者から言われたこのセリフは、金言だと思う。
「大した成功者だよ、きみは。あとそれで身の処し方さえ心得ていたら、前途にはすばらしい生活が待ってるってもんさ・・・。ニューヨークに行ったらね、ブロードウェイなんぞへ出ちゃいかん。つまり、大衆の目なんてものは、できるだけ避けることだな。成功した俳優のたいていがやるまちがいというのは、みんなに見られて、ほめられたがる、これなんだよねーーーところが、それがだめ、せっかくのイリュージョンをこわしてしまうだけなんだな。そうだ、招待攻めになるだろうが、決していちいち出ていちゃいかん。友人もせいぜい一人か二人選ぶだけ、あとは想像するだけで満足するんだな。社交の招待をいちいちうけていたために失敗した偉い俳優は、それこそいくらでもいる。たとえばあのジョンドルーさね。あれは大変な社交界の人気男になってね、みんなそういった連中の家へ出入りしたのはいいが、向こうじゃ彼の劇場へは足を運ばなくなった。いくらでも客間で見られるんだものな。きみも見事に世界を征服した。いつまでもそれをつづけたいのなら、つねに世界の外にいることだ、いいかね」
つねに世界の外にいること。
これはすごく大事にしたい精神性だと思った。
理解しかなかったが、書店でふと見かけて、手にとってみた。
年齢を重ねると、誰かの人生に興味が湧くようになるものだ。
読んでまず思ったのは、驚くほど困窮した家庭で育ったということ。
チャーリーと兄と母の3人で暮らすその家庭は、
明日はどうやって生きていこうの状態がずっと続いていた。
今の日本なら、生活保護のようなセーフティーネットも存在するが、
当時の彼らの環境にはそのような制度があるわけでもなく、
「兄に黙って兄の服を質屋に入れ、気づかれる前に戻す」といったようなことを
毎週繰り返していたのを見ると、本当に切羽詰まった状態だったんだろうなというのが伺えた。
役者だった母の影響で5歳で舞台に立ったチャーリーが、
あの「山高帽にでかい靴、ちぐはぐなサイズのセットアップ」でおなじみの
チャップリンになるまでのその道のりは、サクセスストーリーと呼ぶにはあまりにも過酷なものだ。
天才型というより、努力してしっかり蓄積をしたものが、
チャップリンで一気に結晶化した、というタイプの人間なのだと感じた。
チャップリンというキャラクターがアメリカに渡り、
彼の存在を知らない人はいない、という状態の時に、
先輩役者から言われたこのセリフは、金言だと思う。
「大した成功者だよ、きみは。あとそれで身の処し方さえ心得ていたら、前途にはすばらしい生活が待ってるってもんさ・・・。ニューヨークに行ったらね、ブロードウェイなんぞへ出ちゃいかん。つまり、大衆の目なんてものは、できるだけ避けることだな。成功した俳優のたいていがやるまちがいというのは、みんなに見られて、ほめられたがる、これなんだよねーーーところが、それがだめ、せっかくのイリュージョンをこわしてしまうだけなんだな。そうだ、招待攻めになるだろうが、決していちいち出ていちゃいかん。友人もせいぜい一人か二人選ぶだけ、あとは想像するだけで満足するんだな。社交の招待をいちいちうけていたために失敗した偉い俳優は、それこそいくらでもいる。たとえばあのジョンドルーさね。あれは大変な社交界の人気男になってね、みんなそういった連中の家へ出入りしたのはいいが、向こうじゃ彼の劇場へは足を運ばなくなった。いくらでも客間で見られるんだものな。きみも見事に世界を征服した。いつまでもそれをつづけたいのなら、つねに世界の外にいることだ、いいかね」
つねに世界の外にいること。
これはすごく大事にしたい精神性だと思った。
2011年7月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
届いた商品は、表紙が破けていて相当古い。こんなの商品と言えるのか。ショック!
2014年1月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
よかったです。内容も問題なくすばらしいと思います。また、買います。
2006年8月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画で見せるコミカルな表情、動き。浮浪者なのになぜか紳士的。
そんなチャップリンって一体どんな人? それを知りたい人にはおすすめです。
読めば読むほど、彼の懐の深さ、器の大きさというものを感じます。恵まれない環境にあっても、前を見続けるという事。
教訓めいた言葉もなく、極貧生活もさらりと表現しているところがさすがです。
読んだ後は、少しチャップリンに近づけたような気になる本です。
そんなチャップリンって一体どんな人? それを知りたい人にはおすすめです。
読めば読むほど、彼の懐の深さ、器の大きさというものを感じます。恵まれない環境にあっても、前を見続けるという事。
教訓めいた言葉もなく、極貧生活もさらりと表現しているところがさすがです。
読んだ後は、少しチャップリンに近づけたような気になる本です。
2007年10月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
チャップリンのチャップリンたる深い哲学に溢れている本。
毀誉褒貶の人生のなか生涯にわたってユーモアを表現し続けた偉人に尊敬の念を持たずにいられません。
一流の人物は全てを達観している。
毀誉褒貶の人生のなか生涯にわたってユーモアを表現し続けた偉人に尊敬の念を持たずにいられません。
一流の人物は全てを達観している。
2010年3月10日に日本でレビュー済み
やっぱり人間くささがいい
努力・苦労があるからスゴイって認められるもんやね
努力・苦労があるからスゴイって認められるもんやね
2014年7月30日に日本でレビュー済み
これはチャップリンの口述筆記だろうか。若き日々を細部に亘ってよく覚えていることに驚く。
エピソードを読むと、そのエピソードを使った映画のワンシーンが自然と思い浮かんでくる。
「わずか4メートル四方ほどの広さしかない部屋は、息がつまりそう・・・傾いた天井が、これまた実際以上に低く見える」
→ 「モダン・タイムス」 彼女と住む部屋
「突然、音楽が聞こえてきた。にぎやかな音楽だった。角の酒場『白鹿』の扉口でやっているらしく、がらんとなった広場に明るく反響した・・・小型オルガンとクラリネットでやっている・・・」
→ 「ライムライト」 カルヴェロは楽師たちを部屋に招き入れ、自らもヴァイオリンをもって一緒に奏でる
「エイト・ランカシア・ラッズに人気があったのは、ジャクソンさんも言ったように、わたしたちが、まだまったく舞台ずれしていなからだった・・・とたんに、わたしたちは、電気にうたれたように、あわてて明るい笑顔をふりまくのだった」
→ チャーリーが随所で浮かべるあの人なつっこい、茶目っ気たっぷりの笑顔
「ブラックモア俳優周旋所へ定期的に顔を出していた。・・・事務所には寸分の隙もなく着かざった男女俳優たちが大勢いて、たがいに大口をたたきあっていた・・・ときどき奥の部屋から若い事務員が現れては、尊大な俳優たちの誇りを、まるで刈入れ機のように一言のもとになぎたおしてしまうのだった。『君、今日はなんにもないよ−ああ、君もだ−それから君も−君も』」
→ 「ライムライト」 カルヴェロが俳優周旋所を訪れて
等々
そして、チャーリーより時は遡るが、ディケンズの「オリバー・ツィスト」に出てくるような貧民院での兄弟の生活。
父親の影は薄いが、母親と兄シドニイとの生活。シドニイとは離れていてもずっと心がつながっている。兄弟とも舞台俳優になることが夢で、それをかなえる。
一目惚れや片思い。ボクシングによるボクサーとのけんか。トランプの誕生。ロンドンからアメリカ、その行き来。舞台技術を映画に初めて取り入れる。
様々なエピソードがぎっしり詰まった、チャップリンからの贈り物を堪能しました。続けて、下巻を読みます。
エピソードを読むと、そのエピソードを使った映画のワンシーンが自然と思い浮かんでくる。
「わずか4メートル四方ほどの広さしかない部屋は、息がつまりそう・・・傾いた天井が、これまた実際以上に低く見える」
→ 「モダン・タイムス」 彼女と住む部屋
「突然、音楽が聞こえてきた。にぎやかな音楽だった。角の酒場『白鹿』の扉口でやっているらしく、がらんとなった広場に明るく反響した・・・小型オルガンとクラリネットでやっている・・・」
→ 「ライムライト」 カルヴェロは楽師たちを部屋に招き入れ、自らもヴァイオリンをもって一緒に奏でる
「エイト・ランカシア・ラッズに人気があったのは、ジャクソンさんも言ったように、わたしたちが、まだまったく舞台ずれしていなからだった・・・とたんに、わたしたちは、電気にうたれたように、あわてて明るい笑顔をふりまくのだった」
→ チャーリーが随所で浮かべるあの人なつっこい、茶目っ気たっぷりの笑顔
「ブラックモア俳優周旋所へ定期的に顔を出していた。・・・事務所には寸分の隙もなく着かざった男女俳優たちが大勢いて、たがいに大口をたたきあっていた・・・ときどき奥の部屋から若い事務員が現れては、尊大な俳優たちの誇りを、まるで刈入れ機のように一言のもとになぎたおしてしまうのだった。『君、今日はなんにもないよ−ああ、君もだ−それから君も−君も』」
→ 「ライムライト」 カルヴェロが俳優周旋所を訪れて
等々
そして、チャーリーより時は遡るが、ディケンズの「オリバー・ツィスト」に出てくるような貧民院での兄弟の生活。
父親の影は薄いが、母親と兄シドニイとの生活。シドニイとは離れていてもずっと心がつながっている。兄弟とも舞台俳優になることが夢で、それをかなえる。
一目惚れや片思い。ボクシングによるボクサーとのけんか。トランプの誕生。ロンドンからアメリカ、その行き来。舞台技術を映画に初めて取り入れる。
様々なエピソードがぎっしり詰まった、チャップリンからの贈り物を堪能しました。続けて、下巻を読みます。