偶々書店の新刊書売場で平積みになっているのを眼にし、購入してみた。「今時、ルーズベルト?」という疑問がなくもなかったのだが、全く無駄のないストーリーで上・下巻を一気に読了してしまった。
この手のものとしてはF.フォーサイスの『ジャッカルの日』があまりにも傑作の呼び声を恣にしていて、類書の追随を許さない。物語の緊張感、仏大統領ドゴールを狙う謎の暗殺者ジャッカルの造形も素晴らしく、未だにこれを超える作品はないだろう。
本作に登場する暗殺者ジュディスは女性で、またジャッカルのような狙撃手ではない。彼女は密やかに相手に接近し、殺すのだ。しかもストイックだったジャッカルとは異なり、結構饒舌である。本作を『ジャッカルの日』を始めとする類書とは変わった印象にしているのは、ひねりの効いたラストの秀逸さである。物語のなかで彼女は死なないし、彼女の計画を阻止すべく奔走する歴史学者ラメック教授を相手に陰謀の種明かしまでしてしまう。この展開には、正直意表を突かれた。
『ジャッカルの日』の王座は揺るがないにしろ、『鷲は舞い降りた』、『第五の騎手』、『針の眼』といった辺りに伍する傑作。ポリティカルスリラー好きには是非一読をお薦めする。
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