なんとも傷ましくむごたらしく、「人間が嫌いになる」反面「人間の救い」も感じ、その両極端さに一読では読み取れない様々な「錘」が重なっていくのを感じました。
筆致は淡々としていても、その描写から当時の様子がいちいち想像できて、何度も本を閉じました。
絶望の病室では、医師たちが到底助からない患者たちにナチスに殺されるよりもマシと「毒」を飲ませる。ナチスの兵隊たちが次々と無差別に人を殺す。
夥しい遺体を、ユダヤの「囚人」たちに運ばせ。あるいは埋めたものを掘り起こさせ、ごみ処理のように「焼かせる」
シンドラーは確かにほんの一握りではあっても、ユダヤ人を助けましたが、彼の功績よりもどうしてもナチの非道さに意識が行ってしまうのでした。
映画も見ましたが、最後のシーンで、シンドラーに助けられた人々と、演者がともに花を手向ける長い列に
「生きてこれたからこそ…」と。本書のラストを強固に捕捉されて少し救われました。
命を奪う「戦争と差別」「ここまでも残酷になれる人間」に改めてゆるしてはならないのだと痛感します。知らなけばいいのかもしれませんが、過去は真実であり、平和ボケの現在、改めて振り返るべき「戦争の罪」を知るべきだと思います。
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シンドラーズ・リスト: 1200人のユダヤ人を救ったドイツ人 (新潮文庫 キ 5-1) 文庫 – 1989/1/1
- 本の長さ611ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1989/1/1
- ISBN-104102277013
- ISBN-13978-4102277010
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1989/1/1)
- 発売日 : 1989/1/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 611ページ
- ISBN-10 : 4102277013
- ISBN-13 : 978-4102277010
- Amazon 売れ筋ランキング: - 266,418位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年10月10日に日本でレビュー済み
1989年に翻訳版が新潮社から出版された時、あの有名な映画「シンドラーのリスト」はまだ公開されていいない。原作は、1982年なので、映画監督スピルバーグがこの原作本を読み、彼は、彼自身のライフワークの一つとしてこの小説の映画化に取り組んでいったと想像する。私もこの映画は数回鑑賞したことがあるが、原作(とは言っても翻訳だが)を最初から最後までじっくり読んだのは今回が初めてだった。翻訳本でも全部で600頁以上もわたる濃厚な記述に圧倒され、通常、長編小説を余り読んだことのない自分だが、意外にもストーリーに引き込まれ、あれよあれよ、という間にすべて読破してしまった。
やはり一度鑑賞した映画の場面場面が小説のあちらこちらに散在し、どうしても映画の場面を思い浮かべながら読んでしまうのはしかたがない。本当であれば、原作本を読んでから映画を見た方がよかったかもしれない。そこで気づいたことは、映画では十分描き切れていない各場面のその背景となる様々な状況が事細かに、そして丹念な文献リサーチや関係者への聞き取り(50人以上)に基づいて再現されていることだ。あのプシュワフ強制収容所で悪名高き所長アーモン・ゲート親衛隊少尉についての描写もかなり詳細であり、映画で描かれているよりも残酷な親衛隊隊員であったこと、終戦間際に実は親衛隊によって逮捕され、親衛隊当局により取り調べを受けて収監されていた事実などを改めて知ることができた。
ただそうした事実もさることながら、オスカー・シンドラー(小説ではヘル・シンドラー、と書かれている)が1200人以上(実際はそれ以上のユダヤ人が救われた)のユダヤ人を親衛隊による奴隷労働や絶滅作戦から匿うために、ありとあらゆる希少資源(財力や人的コネクション)を駆使しながら奔走する場面は、とても通常の人間ではできない行動であり、その複雑怪奇な救出劇は読むものを飽きさせない。その非常に複雑な救出劇は、ユダヤ人の囚人たちにとっても、一方でその囚人を支配していた親衛隊の将校や下級隊員たちにとっても人間味溢れるシンドラーによってこそなし得た技とした言いようが無い。単に財力だけを駆使したとしてもこれだけの救出劇を実現できたかと言えば、あの時代の状況を考えると、それは難しかったのではなかろうか。
最後の部分で、シンドラーの戦後の状況が書かれているが、いわゆるシンドラーグループの援助によりアルゼンチンへ移住したり、その事業に失敗し再びドイツへ帰国したりしても、多くのユダヤ人たちの援助のもとで彼はなんとか老後も安泰に生き永らえた。彼は、人として決して完璧な「善人」ではなかったが、どんな人でも無意識のうちに惹きつけられる人望が備わっていたのだろう。
小説では原作で綴られているドイツ系、ポーランド系ユダヤ人の多くの名前が取り上げられていて、こうした名前に親しみを感じない日本人にとってはなかなか読みづらいものがあった。ポーランドがナチスドイツの占領下に置かれた時期はほんの数年に過ぎないが、日本人にとってなじみの薄い東ヨーロッパの歴史を知ることも大切かもしれない。
やはり一度鑑賞した映画の場面場面が小説のあちらこちらに散在し、どうしても映画の場面を思い浮かべながら読んでしまうのはしかたがない。本当であれば、原作本を読んでから映画を見た方がよかったかもしれない。そこで気づいたことは、映画では十分描き切れていない各場面のその背景となる様々な状況が事細かに、そして丹念な文献リサーチや関係者への聞き取り(50人以上)に基づいて再現されていることだ。あのプシュワフ強制収容所で悪名高き所長アーモン・ゲート親衛隊少尉についての描写もかなり詳細であり、映画で描かれているよりも残酷な親衛隊隊員であったこと、終戦間際に実は親衛隊によって逮捕され、親衛隊当局により取り調べを受けて収監されていた事実などを改めて知ることができた。
ただそうした事実もさることながら、オスカー・シンドラー(小説ではヘル・シンドラー、と書かれている)が1200人以上(実際はそれ以上のユダヤ人が救われた)のユダヤ人を親衛隊による奴隷労働や絶滅作戦から匿うために、ありとあらゆる希少資源(財力や人的コネクション)を駆使しながら奔走する場面は、とても通常の人間ではできない行動であり、その複雑怪奇な救出劇は読むものを飽きさせない。その非常に複雑な救出劇は、ユダヤ人の囚人たちにとっても、一方でその囚人を支配していた親衛隊の将校や下級隊員たちにとっても人間味溢れるシンドラーによってこそなし得た技とした言いようが無い。単に財力だけを駆使したとしてもこれだけの救出劇を実現できたかと言えば、あの時代の状況を考えると、それは難しかったのではなかろうか。
最後の部分で、シンドラーの戦後の状況が書かれているが、いわゆるシンドラーグループの援助によりアルゼンチンへ移住したり、その事業に失敗し再びドイツへ帰国したりしても、多くのユダヤ人たちの援助のもとで彼はなんとか老後も安泰に生き永らえた。彼は、人として決して完璧な「善人」ではなかったが、どんな人でも無意識のうちに惹きつけられる人望が備わっていたのだろう。
小説では原作で綴られているドイツ系、ポーランド系ユダヤ人の多くの名前が取り上げられていて、こうした名前に親しみを感じない日本人にとってはなかなか読みづらいものがあった。ポーランドがナチスドイツの占領下に置かれた時期はほんの数年に過ぎないが、日本人にとってなじみの薄い東ヨーロッパの歴史を知ることも大切かもしれない。
2017年8月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
改めて歴史上の事実を知ることができ、とても内容の濃い本です。ありがとうございます。
2017年8月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1982年、トマス・キニーリー氏の作品です。
ブッカー賞受賞。
ノンフィクション・ノヴェル形式で、オスカー・シンドラーの功績を描いた作品です。
後に、スピルバーグ監督が映画化したことでも有名ですが、
原作は、映画よりかなり情報量が多く、内容は文句なく「☆5」。
「カナリス提督のドイツ防諜部」(P52)なんて表記を見ると、
思わず嬉しくなってしまう人も多いのではないだろうか。
ここでは、レビューというより、
「ルドルフ・ヘス」「ルドルフ・ヘース」について注記したいと思います。
ちなみに、現在、私の手元にあるのは、
中古で購入した「八刷」と図書館で借りてきた「十刷」の2冊です。
まず、P256について。
八刷では、
「その区域の住民は、ヒトラーの片腕のルドルフ・ヘスが所長をしている
アウシュヴィッツの広大な絶滅収容所へ送られる。」とあります。
他方、十刷では、
「その区域の住民は、ルドルフ・ヘース(訳注 総統代理のルドルフ・ヘスとは別人)が
所長をしているアウシュヴィッツの広大な絶滅収容所へ送られる。」とあります。
このような混同は、
P478「シンドラー・グループの女たちが、まるで宇宙旅行者のように用心深く~」という段落から、
P480にかけても見られ、八刷では「ヘス」、十刷では「ヘース」と記載されています。
(他にもあるかもしれません。)
正しいのは、十刷です。 別人です。
”ルドルフ・ヘス”でネット検索すると、
Wikiで「ルドルフ・ヘス」「ルドルフ・フェルディナント・ヘス」の2人が出てくるので、
確認してみるといいでしょう。
書籍によっては、ルドルフ・フェルディナンド・ヘス(本書でのルドルフ・ヘース)も、
「ルドルフ・ヘス」と表記していますが、一度知れば混同しなくなると思います。
本書をお持ちの方は、一度、ご自身の本をチェックしてみては?
おかしい場合は、メモを挟んで置けばいいでしょう。
復刊してもらいたい1冊です。 中古本がこんな具合ですし・・・
ブッカー賞受賞。
ノンフィクション・ノヴェル形式で、オスカー・シンドラーの功績を描いた作品です。
後に、スピルバーグ監督が映画化したことでも有名ですが、
原作は、映画よりかなり情報量が多く、内容は文句なく「☆5」。
「カナリス提督のドイツ防諜部」(P52)なんて表記を見ると、
思わず嬉しくなってしまう人も多いのではないだろうか。
ここでは、レビューというより、
「ルドルフ・ヘス」「ルドルフ・ヘース」について注記したいと思います。
ちなみに、現在、私の手元にあるのは、
中古で購入した「八刷」と図書館で借りてきた「十刷」の2冊です。
まず、P256について。
八刷では、
「その区域の住民は、ヒトラーの片腕のルドルフ・ヘスが所長をしている
アウシュヴィッツの広大な絶滅収容所へ送られる。」とあります。
他方、十刷では、
「その区域の住民は、ルドルフ・ヘース(訳注 総統代理のルドルフ・ヘスとは別人)が
所長をしているアウシュヴィッツの広大な絶滅収容所へ送られる。」とあります。
このような混同は、
P478「シンドラー・グループの女たちが、まるで宇宙旅行者のように用心深く~」という段落から、
P480にかけても見られ、八刷では「ヘス」、十刷では「ヘース」と記載されています。
(他にもあるかもしれません。)
正しいのは、十刷です。 別人です。
”ルドルフ・ヘス”でネット検索すると、
Wikiで「ルドルフ・ヘス」「ルドルフ・フェルディナント・ヘス」の2人が出てくるので、
確認してみるといいでしょう。
書籍によっては、ルドルフ・フェルディナンド・ヘス(本書でのルドルフ・ヘース)も、
「ルドルフ・ヘス」と表記していますが、一度知れば混同しなくなると思います。
本書をお持ちの方は、一度、ご自身の本をチェックしてみては?
おかしい場合は、メモを挟んで置けばいいでしょう。
復刊してもらいたい1冊です。 中古本がこんな具合ですし・・・
2019年12月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画の原作を読んでから見ようと購入しましたが、字が小さめで老眼の私には辛いかもしれません。分厚いです。古本なので多少日焼けしていますが折り込み済みです。じっくり読むか一気読みするか、ですね。
2019年12月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画は観ていないが、ずっと読みたかった。
享楽主義的なオスカーシンドラーが、ナチスによるユダヤ人虐殺に強い憤りを感じ、自らの危険を冒してまで、
ユダヤ人救出に邁進する姿が、とにかく印象に残る。
自分ならあそこまでしてやれるだろうか。大勢に流され、虐殺側に回るのだろうか。
糞まみれの貨車、零下二十度に薄着で放置されるシーンを、ぬくぬくした部屋で読んでいる自分。
おそらく一人一人のナチス親衛隊員は家庭ではいい笑顔を見せるのだろうが、ここまで無情にユダヤ人を
平易に虐殺する姿に、人間の底知れぬ恐ろしさを感じずにはいられない。
戦後、倒産を繰り返し、輝きを失った感じのオスカーだが、彼によって救出されたユダヤ人が、いつまでも
彼の恩を忘れず、彼を支援する様子が、人間の希望を感じさせた。
有名小説なのに、新潮文庫ではもう刷ってないのだろうか。中古でしか手にできなかった。
享楽主義的なオスカーシンドラーが、ナチスによるユダヤ人虐殺に強い憤りを感じ、自らの危険を冒してまで、
ユダヤ人救出に邁進する姿が、とにかく印象に残る。
自分ならあそこまでしてやれるだろうか。大勢に流され、虐殺側に回るのだろうか。
糞まみれの貨車、零下二十度に薄着で放置されるシーンを、ぬくぬくした部屋で読んでいる自分。
おそらく一人一人のナチス親衛隊員は家庭ではいい笑顔を見せるのだろうが、ここまで無情にユダヤ人を
平易に虐殺する姿に、人間の底知れぬ恐ろしさを感じずにはいられない。
戦後、倒産を繰り返し、輝きを失った感じのオスカーだが、彼によって救出されたユダヤ人が、いつまでも
彼の恩を忘れず、彼を支援する様子が、人間の希望を感じさせた。
有名小説なのに、新潮文庫ではもう刷ってないのだろうか。中古でしか手にできなかった。
2020年4月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
奇跡の大救出、それがどのように行われたか、その一部始終を綿密な聞き取り・調査に基づき綴った、ドキュメンタリー・タッチの小説です。筆致は至って静か、しかも丁寧で、淡々としていますが、登場する人物の想像を絶する言動に、圧倒されてしまいます。しかもオスカー・シンドラーも、その例外でないのです。
印象に残ったのは、かのシンドラーの行為が、崇高な理念や思想からではなく、怒りを基底に宿した感情から生まれたものであること。そして彼の人の欲得に付け入る強かさとネットワーク構築や使い方の巧みさ、更には悪化する状況に追いやられながら、或いは目を覆いたくなる事態を繰り返し目前にしながら、「こんなことはこれが最後かもしれない」、或いはどんなに些細なことの中にも、今はこうあっても先には何とかなる、ついそう思いやってしまう虐げられしユダヤ人や、シンドラー自身でもあったことです。命に係わる危機に臨み、人の抱く希望の哀切に痛みを感ずるとともに、そこに現在の自分達が重なっているように思えて、身につまされました。
最後に偏屈な見方になりますが、シンドラーが辺境のドイツ人であったこと、また父に向けた葛藤と乗り越えたい衝動を抱えていたこと、そして無類の「酒飲み」「女たらし」であったことなどの、属性が寄与した側面もあった、そうした複雑さが見えもしました。それにしても30代半ばという年齢には驚きです。
印象に残ったのは、かのシンドラーの行為が、崇高な理念や思想からではなく、怒りを基底に宿した感情から生まれたものであること。そして彼の人の欲得に付け入る強かさとネットワーク構築や使い方の巧みさ、更には悪化する状況に追いやられながら、或いは目を覆いたくなる事態を繰り返し目前にしながら、「こんなことはこれが最後かもしれない」、或いはどんなに些細なことの中にも、今はこうあっても先には何とかなる、ついそう思いやってしまう虐げられしユダヤ人や、シンドラー自身でもあったことです。命に係わる危機に臨み、人の抱く希望の哀切に痛みを感ずるとともに、そこに現在の自分達が重なっているように思えて、身につまされました。
最後に偏屈な見方になりますが、シンドラーが辺境のドイツ人であったこと、また父に向けた葛藤と乗り越えたい衝動を抱えていたこと、そして無類の「酒飲み」「女たらし」であったことなどの、属性が寄与した側面もあった、そうした複雑さが見えもしました。それにしても30代半ばという年齢には驚きです。
2019年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
当初、工場経営の必要からユダヤ人を雇ったにすぎないのに、だんだんと人道支援にはまっていくという人間の利己的心と善意の不可思議さに興味を持ち、本書を読み始めました。
オスカーのやったことの本質はこれだという次の一文がある。
「オスカーが本能的に企図したのは、現実を調整すること、おのずから定まってしまっていた囚人というイメージや親衛隊というイメージを改変することだった。」(551頁)
オスカーのやったことの本質はこれだという次の一文がある。
「オスカーが本能的に企図したのは、現実を調整すること、おのずから定まってしまっていた囚人というイメージや親衛隊というイメージを改変することだった。」(551頁)
他の国からのトップレビュー
J. Galanti
5つ星のうち5.0
Shindler's List
2009年5月18日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
The book came very fast, was in great shape! I will definately order from them again!