読み始めて最初の数ページで面白いと予感させる小説には中々出逢えない。そして、本谷有希子の新作は、嬉しい事に、北陸のある家族の暮らしぶりの歴史が語られる冒頭を読むだけで、傑作と確信させる幸福な1冊である。
なんて、堅い口調で始めたけど、とにかくスゴク面白い。父、母、姉妹の4人家族の日常の描写から始まり、女性3人でグアム旅行、「珍道中」にすらなり得ないショボさとバッド・タイミングさが滑稽ながらも哀感を誘う。
決して、取り立ててドラマチックでも奇天烈でもない(ちょっと変わっているけど、、、)平凡な家族の小市民的な思考、焦燥、嫉妬、悪意、行動をデフォルメ的に膨らませて、ここまでオカシク書ける才気!劇作家だけに、些細な仕草、小道具への観察眼、洞察力、ユーモアのセンスは相変わらずだし、実に上手い。姉が学生時代にバイトしたピアノバーの敷布のフェルトの扱いひとつ取っても可笑しいし、グアムに旅立つ直前の母と姉の漫才のごとく続けられる掛け合い、ペットボトルを巡るリスクとリターンのくだりでは、思わず椅子からひっくり返った(笑)。
全編クスクス笑いながら読み切ったが、姉妹の積年の思い爆発の心情吐露の先に見える一筋の光明。しょせん、家族は家族、その関係を解体したり、断ち切る事は出来ない。もとの日常、生活に戻っても、ちょっとばかり気持ちを切り替えていけば、人生、少しは生き易くなる。
いつもながらの、筆者流の、逆説的な"人間賛歌(観察)"を思う。
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グ、ア、ム 単行本 – 2008/6/1
本谷 有希子
(著)
母・姉・妹の女3人、いざ南の島へ! それぞれの世代の叫びがぶつかり合う、壮絶で痛快な本谷流ホームドラマ。
子煩悩な母(パート主婦)、わがままな姉(フリーター)、堅実派の妹(信用金庫勤務)。女3人が連れ立って、初めての海外へ(父は留守番)。楽しいはずの道中は、天気も気分も荒れ模様――。遺伝子は一緒なのに、どうしてこんなにバラバラなのか。やっぱり「世代」が違うせい? 21世紀の家族の心の叫びをリアルに描き切った傑作。
子煩悩な母(パート主婦)、わがままな姉(フリーター)、堅実派の妹(信用金庫勤務)。女3人が連れ立って、初めての海外へ(父は留守番)。楽しいはずの道中は、天気も気分も荒れ模様――。遺伝子は一緒なのに、どうしてこんなにバラバラなのか。やっぱり「世代」が違うせい? 21世紀の家族の心の叫びをリアルに描き切った傑作。
- 本の長さ153ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2008/6/1
- ISBN-104103017724
- ISBN-13978-4103017721
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2008/6/1)
- 発売日 : 2008/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 153ページ
- ISBN-10 : 4103017724
- ISBN-13 : 978-4103017721
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,738,293位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 41,581位日本文学
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年8月2日に日本でレビュー済み
2015年8月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本谷さんの作品はたくさん読んでいて、好きなのですが、この作品は面白くありませんでした。何でかな? 家族旅行での平凡な出来事を、面白く書こうと無理をしているような気がしました。この旅を本にしなければいけない大人の事情があったのでしょうか?好きな作家さんだけに残念でした。
2015年1月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容が面白くない。延々と続くネガティブな空気感が笑えません。
2018年10月6日に日本でレビュー済み
堅実な妹、ゆるゆるの姉、二人の間で右往左往の母。三人のついていないグアム旅行の数日間を描いた作品だ。
幼い頃から決して仲が良いわけではない4つ違いの姉妹は、長じてからもシラケ切ったような冷戦状態。せっかくの海外旅行の上手くいくはずがなく、くわえて行く先々で厭な目にあうことになる。
なんとも笑えるお話しじゃあないか。
あちこちにばらまかれた小さなエピソードが、肝心なところでピリっと効いてくるような細やかさに感心してしまった。ちょいちょい顔を出す、一人実家に居残りしている父のボケのかましかたも微笑ましい。三人のすったもんだを経たラストは、ささやかなシアワセを感じたよ。
幼い頃から決して仲が良いわけではない4つ違いの姉妹は、長じてからもシラケ切ったような冷戦状態。せっかくの海外旅行の上手くいくはずがなく、くわえて行く先々で厭な目にあうことになる。
なんとも笑えるお話しじゃあないか。
あちこちにばらまかれた小さなエピソードが、肝心なところでピリっと効いてくるような細やかさに感心してしまった。ちょいちょい顔を出す、一人実家に居残りしている父のボケのかましかたも微笑ましい。三人のすったもんだを経たラストは、ささやかなシアワセを感じたよ。
2011年6月15日に日本でレビュー済み
ダメ人間を描かせたら日本一の作家、本谷有希子の家族小説。
本谷作品では定番の「姉と妹」が母親と一緒にグアム旅行に出かけるというお話。
相変わらずダメぶりはお見事ですが、今回は「突き抜けたダメ」というよりは「笑えるダメ」がテーマみたいで、読んでてくすくすしっ放しでした。
ダメな人がついていなくて愚痴る、その様子がまたダメで、もう愛おしくなってくるほどです。
また、脇役として登場するお父さんもすっとぼけていて相当ユニーク。
お笑い小説としてレベルが高いです。
いや、もちろんそれ以外の部分も十分読ませる作品なのですが。
ひとつだけ。
今年の一月号に掲載された作品が、六月にもう出版されるということに疑問を感じました。
しかも、新潮は他の作家の作品も掲載されていて1100円なのに、単行本はこれのみで1365円。
単行本は未読なので、ひょっとしたら書き足しとか書き直しとかが相当多いのかも知れませんが、それでも疑問は疑問です。新潮社の良心を疑います。
本谷作品では定番の「姉と妹」が母親と一緒にグアム旅行に出かけるというお話。
相変わらずダメぶりはお見事ですが、今回は「突き抜けたダメ」というよりは「笑えるダメ」がテーマみたいで、読んでてくすくすしっ放しでした。
ダメな人がついていなくて愚痴る、その様子がまたダメで、もう愛おしくなってくるほどです。
また、脇役として登場するお父さんもすっとぼけていて相当ユニーク。
お笑い小説としてレベルが高いです。
いや、もちろんそれ以外の部分も十分読ませる作品なのですが。
ひとつだけ。
今年の一月号に掲載された作品が、六月にもう出版されるということに疑問を感じました。
しかも、新潮は他の作家の作品も掲載されていて1100円なのに、単行本はこれのみで1365円。
単行本は未読なので、ひょっとしたら書き足しとか書き直しとかが相当多いのかも知れませんが、それでも疑問は疑問です。新潮社の良心を疑います。
2011年8月21日に日本でレビュー済み
人間(特に女性)のマイナス感情を描かせたら右に出るものがいない本谷有希子。
今回は、母・姉・妹の女三人グアム旅行という楽しそうな題材にも関わらず、やっぱり本谷ワールド全開。
ワーキングプアな姉は、自分の現状を「ロストジェネレーション」のせいにし、そんな姉を反面教師にして堅実に生きる妹はギャル風ファッションに身を包む。
そして、母親はそんな二人に気を使い過ぎる折衷主義の人。
家族小説風なストーリーでありながら、ユーモア小説風(?)の結末。
登場人物のキャラクタが明確なところは、劇作家としての一面が表われているのかもしれませんが、物語としてはとてもわかりやすいです。
本谷さんの話としては、「歪み」度が甘いかもしれないけれど・・・。
今回は、母・姉・妹の女三人グアム旅行という楽しそうな題材にも関わらず、やっぱり本谷ワールド全開。
ワーキングプアな姉は、自分の現状を「ロストジェネレーション」のせいにし、そんな姉を反面教師にして堅実に生きる妹はギャル風ファッションに身を包む。
そして、母親はそんな二人に気を使い過ぎる折衷主義の人。
家族小説風なストーリーでありながら、ユーモア小説風(?)の結末。
登場人物のキャラクタが明確なところは、劇作家としての一面が表われているのかもしれませんが、物語としてはとてもわかりやすいです。
本谷さんの話としては、「歪み」度が甘いかもしれないけれど・・・。
2008年9月3日に日本でレビュー済み
ホームドラマという意味では『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 』
の流れを汲む作品ではあるが、より多面的にココロの声の
スラップスティックが暴走している。
現代人の苦悩と言い切ればもっともらしいが、
この作品がバリバリの文芸誌に発表された事実だけで
正直、痛快である。
ラストに垣間見える、怪しいが一筋の光が
今後の作品にもどのような形で現れてくるのか
楽しみである。
の流れを汲む作品ではあるが、より多面的にココロの声の
スラップスティックが暴走している。
現代人の苦悩と言い切ればもっともらしいが、
この作品がバリバリの文芸誌に発表された事実だけで
正直、痛快である。
ラストに垣間見える、怪しいが一筋の光が
今後の作品にもどのような形で現れてくるのか
楽しみである。
2008年6月30日に日本でレビュー済み
方言とかおかん的思考とか、ハイテンションなノリはどんどん磨きがかかっていて楽しめた。ただこういう勢いのある(悪く言えば乱暴な)文体で三人称小説を書くと、「純文学」という視点から見ると、ちょっと違和感がある。一人称だと登場人物のキャラ込みの語り口と思えばいいわけだけど、三人称だとそうはいかないので……。まあ、かたっくるしく考えなければ、この文体だからこその本谷有希子なのだから、三人称にしたからってかしこまれちゃっては意味がないわけで。内容的には、母、長女、次女のキャラクターを前半でがっしり書き分けて、後半でばばばっとそれをぶつけあう、みたいな構成が面白かった。その書き分けはある意味では図式的(ロスジェネ云々なんてくだりはわかりやすすぎ(笑))で、登場人物の名前も「母」「長女」「次女」としてしか示されないのだけれど、にもかかわらずノリのいい会話でみんなふつうに血肉の通った人物になっているのはさすが。