三部は最初から最後まで物語が激しく動き、終幕へ向けて突っ走る怒涛の展開を迎えます。
読むのを途中で止められないほど惹きつけられてしまいます。
内容については触れませんが、読み終えた後は心を打たれますし、力も湧いてきます。
この長編を読んでよかったな、という心地良い余韻に浸れます。
解説もとても読みやすく丁寧で、最後まで気持ちの良い読書ができました。
評論家の解説は抽象的で読みにくかったり本筋からそれたりなどでがっかりさせられることが多いですが、
この本の解説は非常にわかりやすく要点がまとめられており、ぼやけていた部分が理解出来てありがたいです。
解説者であろうとする心意気が伝わってきました。
途中、教養のない私にとってはつらい引用だらけで投げ出したくなることもありましたが、
振り返ってみると夢中になれた読書でした。一部、二部も良いですが、三部は本当におもしろいです。
言いはれサッチャン、Rejoice!

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大いなる日に (燃えあがる緑の木 第 3部) 単行本 – 1995/3/1
大江 健三郎
(著)
- 本の長さ356ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1995/3/1
- ISBN-10410303615X
- ISBN-13978-4103036159
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
襲撃され障害者となったギー兄さんと、独自の性的な遍歴から帰還したサッチャン。2人を中心とした"燃えあがる緑の木"教会は分裂の危機を迎えた。現代人の魂の救いを探るライフワーク、ついに完結。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1995/3/1)
- 発売日 : 1995/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 356ページ
- ISBN-10 : 410303615X
- ISBN-13 : 978-4103036159
- Amazon 売れ筋ランキング: - 146,527位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,664位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1935年愛媛県生まれ。東京大学仏文科卒。大学在学中の58年、「飼育」で芥川賞受賞。以降、現在まで常に現代文学をリードし続け、『万延元年のフット ボール』(谷崎潤一郎賞)、『洪水はわが魂に及び』(野間文芸賞)、『「雨の木」を聴く女たち』(読売文学賞)、『新しい人よ眼ざめよ』(大佛次郎賞)な ど数多くの賞を受賞、94年にノーベル文学賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 「伝える言葉」プラス (ISBN-13: 978-4022616708 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年6月27日に日本でレビュー済み
大江の雄渾な長編である。
本作品(三部作)の意図について、大江は1997年のプリンストン大学での講演で以下のように述べている。
「『燃えあがる緑の木』は、日本社会の宗教団体の教理、実践にあきたらぬ若者たちが、魂の救済を求め、混交宗教(シンクレティズム)的な新しい教会を作り出す物語です。その指導者は、学生運動の革命党派の抗争でテロリズムに加わった過去を持っていました。新しく作られた教会は社会と対立し、さらには内部抗争から分裂にいたります。そして続いて起る悲劇の辛い経験から新しい出発にいたるまでを、私は描こうとしたのでした。」
本作品は、大江の人生における宗教経験に対する「総括」であり、精神生活における「中仕切り」であったと評し得よう。
本作品(三部作)の意図について、大江は1997年のプリンストン大学での講演で以下のように述べている。
「『燃えあがる緑の木』は、日本社会の宗教団体の教理、実践にあきたらぬ若者たちが、魂の救済を求め、混交宗教(シンクレティズム)的な新しい教会を作り出す物語です。その指導者は、学生運動の革命党派の抗争でテロリズムに加わった過去を持っていました。新しく作られた教会は社会と対立し、さらには内部抗争から分裂にいたります。そして続いて起る悲劇の辛い経験から新しい出発にいたるまでを、私は描こうとしたのでした。」
本作品は、大江の人生における宗教経験に対する「総括」であり、精神生活における「中仕切り」であったと評し得よう。
2000年11月27日に日本でレビュー済み
三部作を読み終えてのなによりの感想は、大江氏がこの作品であたかも実験をするかのように宗教をめぐる問題に真っ向から取り組んだ姿勢に圧倒された、ということである。古今東西の宗教の諸相をふんだんに盛りこんだだけでなく、四国の森の中で繰り広げられるギー兄さんを中心とした団体を描き出すことで、読者はなにが彼らを駆り立てるのかという問いを喚起させられる。人間の精神的な部分、それは魂と換言してもいいかもしれないが、その存在の価値や在り方を宗教というものを通して改めて考えさせられた。
2019年11月21日に日本でレビュー済み
壮大な『燃えあがる緑の木』の物語は、この第三部で完結します。第三部の序盤では、ギー兄さんに失望を覚えて教会を出たサッチャンの性の遍歴が綴られます。中盤の原子力発電所の場面は、原発事故を予言するかのような内容です。終盤ではギー兄さんの教会でゴタゴタが起こりますが、ラストは希望に満ちた終わり方になっています。第三部は物語の起伏が激しく、なおかつメッセージ性にも富んでいました。
・アウグスチヌスのオマージュ
第三部の序盤でサッチャンは、教父アウグスチヌスに心惹かれます。アウグスチヌスは母モニカが信じるキリスト教から逃れ、色んな女と関わって性の黒歴史を積み重ねました。第三部のサッチャンもギー兄さんの教会から離脱し、性的に堕落した日々を送りました。でも、アウグスチヌスは結局回心してキリスト教徒になりましたし、サッチャンも回心してギー兄さんの教会に戻りました。第三部では、サッチャンの生涯がアウグスチヌスのオマージュになっています。
・見出だされた「怪物的な悪」と「神」
294ページでは、核兵器や原発が極めて邪悪なものとして語られています。核兵器を使用することは「怪物的なほど大きい規模の、神に向けられた侮蔑」であり、原発は「核兵器の使用にひとしい惨禍をもたらす施設」だという。そしてギー兄さんは、「侮蔑を働きたくない相手の総称」を神と呼んでいます。長大な思考実験の末、終盤で浮上した「怪物的な悪」と「神」の存在には、大江の作家としての本心を垣間見たように思います。
・喜びを抱け!
『燃えあがる緑の木』の物語は、“Rejoice!”の一言で締め括られます。“Rejoice!”とはイェーツの詩句に出てくる言葉で、日本語では「喜びを抱け!」という意味があります。第二部では、人間の生を語るうえで喜びという感情が重視されていました。人間存在がいつまでも続いていくこと、大江が好きなエリアーデのいう「人間存在の破壊されえないこと」を感じさせるラストでした。
・アウグスチヌスのオマージュ
第三部の序盤でサッチャンは、教父アウグスチヌスに心惹かれます。アウグスチヌスは母モニカが信じるキリスト教から逃れ、色んな女と関わって性の黒歴史を積み重ねました。第三部のサッチャンもギー兄さんの教会から離脱し、性的に堕落した日々を送りました。でも、アウグスチヌスは結局回心してキリスト教徒になりましたし、サッチャンも回心してギー兄さんの教会に戻りました。第三部では、サッチャンの生涯がアウグスチヌスのオマージュになっています。
・見出だされた「怪物的な悪」と「神」
294ページでは、核兵器や原発が極めて邪悪なものとして語られています。核兵器を使用することは「怪物的なほど大きい規模の、神に向けられた侮蔑」であり、原発は「核兵器の使用にひとしい惨禍をもたらす施設」だという。そしてギー兄さんは、「侮蔑を働きたくない相手の総称」を神と呼んでいます。長大な思考実験の末、終盤で浮上した「怪物的な悪」と「神」の存在には、大江の作家としての本心を垣間見たように思います。
・喜びを抱け!
『燃えあがる緑の木』の物語は、“Rejoice!”の一言で締め括られます。“Rejoice!”とはイェーツの詩句に出てくる言葉で、日本語では「喜びを抱け!」という意味があります。第二部では、人間の生を語るうえで喜びという感情が重視されていました。人間存在がいつまでも続いていくこと、大江が好きなエリアーデのいう「人間存在の破壊されえないこと」を感じさせるラストでした。