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暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う 単行本 – 2010/12/1
たとえばテレビ局。プーチン政権は民放のオーナーを次々と逮捕。釈放の条件として会社の株を手放させ、それを国が買い取るという手法で、すべての局を政権の管理下に置いた。政権から送り込まれた経営者が番組に目を光らせ、ニュースは大本営発表と化した。
そのような状況下で孤軍奮闘、鋭い権力批判をつづけている新聞社がある。その名は「ノーバヤガゼータ(新しい新聞)」。
だが、今のロシアでは最も危険で難しい「不偏不党」「中正公立」を貫くがゆえに、これまで数々のスタッフが犠牲となってきた。白昼街中で射殺された者、放射性物資を密かに飲まされ衰弱の果てに命を落とした者、自宅前で撲殺された者......。
権力と対峙する記者たちの目を通して、「虚構の民主国家」の実態をえぐる、戦慄のルポルタージュ。
- 本の長さ285ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2010/12/1
- ISBN-104103036729
- ISBN-13978-4103036722
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商品の説明
出版社からのコメント
投資の対象として持て囃され、2013年には
国民1人あたりのGDPが先進国並みになると見込まれています。
こう聞くと、あたかも民主主義国家に生まれ変わったかのように
思う方が多いかもしれません。
しかし、その実態は......。
絶望的な状況に立ち向かう人々の信念の物語をぜひお読みください!
著者について
専門誌、編集プロダクション勤務を経て、フリーに。
犯罪、ロシアなどをテーマに取材、執筆活動を行なっている。
著書に『スターリン 家族の肖像』(文藝春秋)などがある。
2007年に『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮社)で第6回新潮ドキュメント賞を受賞。
About this Title
クレムリンや赤の広場からほど近いモスクワの中心部に、「チーストイ・プルディ」という名の地下鉄駅がある。
プラットホームから、モスクワ名物の長いエスカレーターを上って地上に出ると、市電の軌道の向こう側に、大勢の人が人待ち顔でたむろする広場が現れ、その先に並木道が続いているのが見える。並木道を少し歩くと、きれいな湧水をたたえた池につきあたる。
駅名の「チーストイ・プルディ」とは、ロシア語で「澄んだ泉」という意味である。この池にちなんだ命名に違いない。
夏ともなれば、木漏れ日が水面に映えて、キラキラと美しい陰影を作り出すこの池のほとりは、「モスクビッチ(モスクワっ子)」たちのかっこうの憩いの場だ。
「ノーバヤガゼータ」の社屋は、ここから歩いて2、3分ほどの閑静な場所にある。おそらく20世紀初頭に、出版所として建てられたオフィスを現代風に改築したもので、5階建ての2階と3階部分を借り受けているのである。経営部門は2階、編集局は3階にある。
私がこの新聞社に初めて足を踏み入れたのは、2008年6月のことである。新聞社というより、出版社といった方がいいこじんまりしたたたずまいだが、編集局の内部は意外にモダンで快適な空間で、日本の報道機関にありがちな殺風景さはそこにはなかった。
まず目につくのは、廊下の壁にいくつも飾られた写真パネルである。ソ連時代、政府の迫害に屈せず、反体制を貫いた原子物理学者アンドレイ・サハロフとその夫人のエレーナ・ボンネル、バレリーナのマイヤ・プリセツカヤなど、有名人のモノクロ写真が並んでいるかと思えば、世界各地の自然の奇観を大胆に切り取った原色の風景写真もある。
聞けば、これらは、ユーリー・ロストという著名な写真家の作品であるという。
編集室も、日本のように大部屋ではなく、所属によって、3、4人ずつの小部屋に分かれ、評論員には個室が与えられている。
ほとんどの部屋には、外に向かって大きく開け放たれた窓がある。記者たちは、パソコンに向かう仕事に疲れると、窓の外の緑に目をやってつかの間の休息をとるのである。
廊下のつきあたりは、大きなテーブルと椅子が並べられた円形のオープンスペースになっている。この壁にも3葉の写真が飾られているが、それは、ユーリー・ロストの作品ではない。
イーゴリ・ドムニコフとユーリー・シュチェコーチヒン、そして、アンナ・ポリトコフスカヤ。非業の死を遂げた同社のジャーナリスト3名の遺影である(後に、新たに3名の遺影が加わることになる)。
彼らの柔和な笑顔が見下ろすこのオープンスペースで毎日、編集会議が開かれ、企画が練られる。
「ノーバヤガゼータ」の創刊は1993年4月である。
日本でいえば、朝日や読売などになぞらえられるロシアの大手紙「コムソモーリスカヤプラウダ」の記者50人余りが、同紙のタブロイド化に反対して社を去り、今までにない新しい理想的な新聞を作るという意気込みで、その名も「ノーバヤガゼータ(新しい新聞)」をスタートさせた。
社員数126名、部数27万部あまりの小さな新聞である。社員の年齢層は18歳から75歳までと幅広く、平均年齢は40歳である。大学で学びながら正社員として働いている若い記者もいれば、勤めていた新聞が廃刊になったり、報道統制のために書きたいことが書けなくなって移籍してきた著名なジャーナリストもいる。
現在のロシアは建前上は、西側先進諸国と同様、民主主義国である。憲法は、思想と言論の自由、そしてメディアの報道の自由を保障し、検閲を禁止している。それにもかかわらず、今のロシアに報道の自由はほとんどない。いったいどうしてなのか。
政権のメディア支配は、エリツィン時代末期から始まってはいたが、2000年プーチンが大統領の座について以降、一層強化された。プーチンは、反政権色の濃いメディアの経営者や大株主に圧力をかけて経営権の放棄や株の売却を強制し、代わりに、政府や政府系企業が株を独占するというやり方で、着々と言論統制の布石を打った。こうした搦め手からの手法であれば、憲法に抵触することはないのである。
その結果、テレビはもちろん、ほとんどのメディアで、表立った政権批判、権力批判はタブーになってしまったのだ。
そうした中で気を吐いているのが、この「ノーバヤガゼータ」である。いかなる時も一般市民、あるいは弱者の立場に立ち、「普遍不党」「中立公正」を貫き、鋭い権力批判を厭わない。この創立時のモットーは今も不変だ。
しかし、一見当たり前のこの原理原則は、今よりもはるかに報道の自由があったエリツィン時代前期においてさえ、他のメディアにとっては、守るに足るものとは思われていなかったようだ。それは、「ノーバヤガゼータ」の創刊間もない93年10月3日に起こったモスクワ騒乱事件の報道が如実に物語っている。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2010/12/1)
- 発売日 : 2010/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 285ページ
- ISBN-10 : 4103036729
- ISBN-13 : 978-4103036722
- Amazon 売れ筋ランキング: - 690,841位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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言論の自由や民主主義は大変コストがかかる贅沢なもので、言論の自由や民主主義がなくても、経済が堅調ならば(秘密警察等に怯えながらであっても)とりあえず国民は幸せに暮らしていけるのだなぁと思った。
[恐怖政治+堅調な経済] > [言論の自由・民主主義+生活の困窮]
をロシア国民の大部分が支持しているという現実が政権を支えているということがわかった。
この図式は中国についても同様にいえることであり、全体主義や共産主義の現実の姿なのだろう。
安穏と暮らしている自分を含めた日本人が、再度考えなければいけない自由と民主主義。
「国境のない記者団」の評価で情報公開・自由度が59位となった日本。我々は自由だと思っているうちに、情報操作をされているのだろうことを知らなければいけない。
編集風景なのですが、部屋の天井近くには額縁に飾られた何枚もの写真が並べられています。
この写真ですが、実は暗殺された記者たちだそうです。
ロシアにおいて報道の自由はありません。
特に地方は市長が地元マフィアのボス的な人物が多く、彼らの痛いところを付くとすぐに暗殺者がやってきます。
それでも、真実を読者に伝えるために活動する記者たちがいます。
ソ連が崩壊した一時期は、報道の自由が謳歌できたようです。
その後のエリツィン政権からプーチン政権で逆回しが始まり、いまはほとんどのメディアが政権の息がかかっており、反政府的な報道は許されません。
テレビ局は全滅ですが、新聞はまだ影響力が低いために、お目こぼしをもらっているようです。
それでも、次々と記者が殺されていく。
恐ろしい世界ですが、これが世界的には普通のことなのかもしれません。日本に住めることに感謝したい気持ちです。
ロシアにおける生々しい実態を知りたいひとのために!