18年に及ぶ電子出版との格闘が克明に記述されている。東映の非正規社員時代の苦悩、レーザー
ディスクLDC、またボイジャー'ジャパンでの後世へのと連なる人的連なりの連綿なる歴史は著者の人
格無しではなり得ない歴史である。著者の熱き思いは以下の2点に収斂される。
たった1人でも読者が居るならば出版する意義があるとの信念は揺らぎ様もない。例えば、視覚障碍
者が本を「読む」には「PC-Talker」で読み上げる必要がある。この為には電子的なテキストが必要不
可欠なのである。
そして、読者始め電子出版に携わる方達の合理性を高めるにはフォーマット統一が急務である。(ア
マゾンはazw、グーグルとアップルはePub)
ただ、近年の電子書籍激動模様の記述が乏しいのは少し残念ではある。(ドコモvsKDDI、大日本印
刷vs凸版印刷)
そして、著者は主張する。
出版社とは表現物を世に送り出す事、紙の本であれ電子書籍であれ関係ない。何故ならばpublisherで
あるからだ。
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電子書籍奮戦記 単行本 – 2010/11/1
萩野 正昭
(著)
- 本の長さ223ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2010/11/1
- ISBN-104103284110
- ISBN-13978-4103284116
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2010/11/1)
- 発売日 : 2010/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 223ページ
- ISBN-10 : 4103284110
- ISBN-13 : 978-4103284116
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,103,177位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 311位出版・自費出版関連書籍
- カスタマーレビュー:
著者について
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1946年東京都生まれ。株式会社ボイジャー取締役。1970年、映画助監督をふりだしに、ビデオ制作、パイオニアLDCでのレーザーディスク制作等を経て1992年にボイジャー・ジャパンを設立。著書に『電子書籍奮戦記』『木で軍艦をつくった男』。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年2月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年12月15日に日本でレビュー済み
著者が映画製作にたずさわったあと,パイオニアでレーザーディスクをあつかうようになったいきさつから,アメリカでボブ・スタインという人物とボイジャー社に影響をうけてボイジャー・ジャパン社を設立し,米社が解散したあとも日本で電子書籍をつくりつづけたこと,そして電子書籍の未来についてまで書いている. 日本のボイジャー社がてがけてきたエキスパンド・ブックや T-Time,青空文庫などについての貴重な記録だといえるだろう.
最後のほうで著者はハードウェアがうつりかわっても本はいきのこっていかなければならない,そのためにはフォーマットの統一が必要だということを強調している. ハードがなくなると読めなくなるだろうアプリとして電子書籍を制作しているひとには,ぜひ読んでもらいたいものだ.
最後のほうで著者はハードウェアがうつりかわっても本はいきのこっていかなければならない,そのためにはフォーマットの統一が必要だということを強調している. ハードがなくなると読めなくなるだろうアプリとして電子書籍を制作しているひとには,ぜひ読んでもらいたいものだ.
2010年11月18日に日本でレビュー済み
Mr.電子書籍の異名をとる、萩野正昭氏による文字通りの奮戦記。ジャーナリストの視点ではなく、実業として電子書籍に取り組んできた方によるノンフィクションだけに、全編を通して臨場感や必死さが溢れ出ている。おそらく著者にとって今年は、1992年にボイジャー・ジャパン(現・ボイジャー)へ転職して以来、「今年こそ!」と思い続けた”19回目の電子書籍元年”ではないだろうか。そんな愛憎入り交じる著者の思いは、下記の一文に集約される。「お前らに電子書籍の一体何がわかるのか。」
◆自分の視点を持つことの重要性
冒頭、同時多発テロの際、崩壊するビルではなく、その瞬間を見る市民の表情を写した写真の話を題材に、自分の視点を持つことの大切さを訴える。著者自身、レーザーディスクの可能性を模索しているうちに、電子書籍の原型を見い出したという経験を持つ。そこへ導いた独自の視点とは、レーザーディスクを”見る側が時間をコントロールできるメディア”と見立てたこと。出版社の人でもなく、ハード機器メーカーの人でもない著者が、電子書籍の道を切り拓いてこれた要因はここにある。
◆著者の主張する電子書籍の理念
・必要性が本を生み出す
電子書籍によって、売れない本でも出せるということは、ある人々にとっては切実な「必要性」をすくいとる力をもっている。本来電子書籍とは、小さなものののためのメディアである。
・「本」ではなく「読む」を送る
言葉を一定の形式に固定して残すことが本の役割。しかし電子書籍の場合、「読む」ということだけに拘り、形は読み手が再構築できるようにすることが、新しい価値を生み出す。
電子出版を文化として育んでいくためには、最先端の技術に翻弄されたり、巨大プラットフォームによる囲い込みに屈したりせず、「残す」という課題と向き合うことが一番大切なことである。
そんな著者の理念こそ、残していかなければならない。
◆自分の視点を持つことの重要性
冒頭、同時多発テロの際、崩壊するビルではなく、その瞬間を見る市民の表情を写した写真の話を題材に、自分の視点を持つことの大切さを訴える。著者自身、レーザーディスクの可能性を模索しているうちに、電子書籍の原型を見い出したという経験を持つ。そこへ導いた独自の視点とは、レーザーディスクを”見る側が時間をコントロールできるメディア”と見立てたこと。出版社の人でもなく、ハード機器メーカーの人でもない著者が、電子書籍の道を切り拓いてこれた要因はここにある。
◆著者の主張する電子書籍の理念
・必要性が本を生み出す
電子書籍によって、売れない本でも出せるということは、ある人々にとっては切実な「必要性」をすくいとる力をもっている。本来電子書籍とは、小さなものののためのメディアである。
・「本」ではなく「読む」を送る
言葉を一定の形式に固定して残すことが本の役割。しかし電子書籍の場合、「読む」ということだけに拘り、形は読み手が再構築できるようにすることが、新しい価値を生み出す。
電子出版を文化として育んでいくためには、最先端の技術に翻弄されたり、巨大プラットフォームによる囲い込みに屈したりせず、「残す」という課題と向き合うことが一番大切なことである。
そんな著者の理念こそ、残していかなければならない。
2010年12月2日に日本でレビュー済み
“電子書籍元年”と騒がれる2010年は電子書籍の利便性について多くの人が語る年でした。在庫がいらない、24時間どこでも買える、マルチメディアがリンクできる……etc.
しかし、それらの利便性は既にボイジャーがはるか昔から人々に示していたことであったと分かります。ボイジャーがエキスパンドブックを世に示した頃、人々から投げつけられた言葉は「画面でなんか本が読めるか!」であったと語られています。今でこそ、誰もがネットやメールで画面の読書を行っています。
電子書籍の利点は、商業的な理由のみではありません。視覚に障碍のある方が言われた「本は私達にとっては単なる紙の束にしか過ぎないのです」という言葉が印象的です。そういった方が自由に読書できるのも電子書籍の魅力なのです(朗読ボランティアなどもありますが、ボランティアに頼らない自由な読書もされたい筈です)。ボイジャーは、ロービジョン対応、音声朗読ソフトと組み合わせて朗読機能を追加するなど、他の電子書籍ソフトとは一線を画する活動も行っておられとか。
私達は単純に電子書籍の汎用性や見栄え、価格にばかりに目が行きがちですが、それ以外にも様々な要因が絡んでいます。iPadもキンドルも5年後にはどうなっているか分かりません。ボイジャーは何度もハードウェアに翻弄された経験を持ち、それからあらゆる物(ハード、OSなど)に対応できる手法を磨いてきました。また、本はそこにあって、データはネット上にある「T-Timeクロッシェ」という形の試みも行っています。
アップルの検閲に対抗して独自のネット書店(理想書店)を運営している背景なども読むことができます。
この本は、電子書籍に関する技術や運営、産業論ではありません。ですが、今新しいことのように語られている全てが既に約20年前から始まっていたということに驚かされるのです。
ボイジャーの魔法に掛かってみるのも面白いですよ。
しかし、それらの利便性は既にボイジャーがはるか昔から人々に示していたことであったと分かります。ボイジャーがエキスパンドブックを世に示した頃、人々から投げつけられた言葉は「画面でなんか本が読めるか!」であったと語られています。今でこそ、誰もがネットやメールで画面の読書を行っています。
電子書籍の利点は、商業的な理由のみではありません。視覚に障碍のある方が言われた「本は私達にとっては単なる紙の束にしか過ぎないのです」という言葉が印象的です。そういった方が自由に読書できるのも電子書籍の魅力なのです(朗読ボランティアなどもありますが、ボランティアに頼らない自由な読書もされたい筈です)。ボイジャーは、ロービジョン対応、音声朗読ソフトと組み合わせて朗読機能を追加するなど、他の電子書籍ソフトとは一線を画する活動も行っておられとか。
私達は単純に電子書籍の汎用性や見栄え、価格にばかりに目が行きがちですが、それ以外にも様々な要因が絡んでいます。iPadもキンドルも5年後にはどうなっているか分かりません。ボイジャーは何度もハードウェアに翻弄された経験を持ち、それからあらゆる物(ハード、OSなど)に対応できる手法を磨いてきました。また、本はそこにあって、データはネット上にある「T-Timeクロッシェ」という形の試みも行っています。
アップルの検閲に対抗して独自のネット書店(理想書店)を運営している背景なども読むことができます。
この本は、電子書籍に関する技術や運営、産業論ではありません。ですが、今新しいことのように語られている全てが既に約20年前から始まっていたということに驚かされるのです。
ボイジャーの魔法に掛かってみるのも面白いですよ。
2010年12月20日に日本でレビュー済み
著者の萩野さんが主宰するボイジャーとの付き合いは古い。エキスパンドブックの最初のボックスセットを買ったのが96年だったろうか(あまりに高くて会社に調査研究費で落としてもらった--苦笑)。その後のバージョンアップ版(ネットエキスパンドブック対応)で、自分で「すみれ文庫」という屋号を作って、知り合いの詩人たちに許可をもらって、その人その人の詩を10編選んでエキスパンドブックにして16点発表した。その後、エキスパンドブックはバージョンアップされず死に体となり、後継のT-Timeはどちらかと言うと、出版社の見本ページ向けという印象が強く、放っている間にパブリッシャーズキットも改訂のため絶版になってしまった。
この本で改めて、萩野さん、そしてボイジャーの足取りを読むと、電子書籍の技術開発、アイデアに対するアーティスティックな興奮と、ビジネスとしての困難さが伝わってくる。萩野さんの出版姿勢を見るとドキュメンタリー・フィルムの小川プロ、そのプロデューサーの伏屋博雄さんの困難さ、残したものの素晴らしさを思い出したりした。
そして萩野さんのスピリット、元気をもらって、また個人電子出版をやってみようというファイトが沸いてきた。新しいパブリッシャーキットができたときはアナウンスをよろしく。
この本で改めて、萩野さん、そしてボイジャーの足取りを読むと、電子書籍の技術開発、アイデアに対するアーティスティックな興奮と、ビジネスとしての困難さが伝わってくる。萩野さんの出版姿勢を見るとドキュメンタリー・フィルムの小川プロ、そのプロデューサーの伏屋博雄さんの困難さ、残したものの素晴らしさを思い出したりした。
そして萩野さんのスピリット、元気をもらって、また個人電子出版をやってみようというファイトが沸いてきた。新しいパブリッシャーキットができたときはアナウンスをよろしく。
2010年11月27日に日本でレビュー済み
電子書籍に携わってきた18年を含む著者の半生記といえる本です。マイクロソフトに翻弄された1年など、海外企業とビジネスすることの難しさなど、著者でしか書けない内容、大変興味深く読めます。
電子書籍に関する技術的な内容は必要最小限の記述に抑えられていますが、長年、電子書籍に取り組んできた著者の日本の電子書籍の将来に対する的確な内容、「電子書籍元年」として上滑りな調子のマス・メディアや目先の利益だけでグローバルな視点の欠けた将来展望の見えない業界に重く受け取ってほしいと考えてしまいます。
電子書籍に関する技術的な内容は必要最小限の記述に抑えられていますが、長年、電子書籍に取り組んできた著者の日本の電子書籍の将来に対する的確な内容、「電子書籍元年」として上滑りな調子のマス・メディアや目先の利益だけでグローバルな視点の欠けた将来展望の見えない業界に重く受け取ってほしいと考えてしまいます。