かつて『新潮』に掲載された
「aqua」「terra」(2008年1月、8月)
「aer」「ignis」(2009年1月、7月)
「mundus」(2012年9月)
の五つをあつめた作品集です。
「ignis」と最後の「mundus」の間にだいぶん期間があいているのは『七夜物語(上・下)』(朝日新聞出版)の連載、単行本化があるためでしょう。このことが影響しているのか「mundus」はそれまでの四つとは別種の、いってみれば高次な視点から描かれているかのように感じられます。
裏帯には「川上弘美の『ヰタ・セクスアリス』」と書かれています。これは森鴎外の小説です。「の」は「川上弘美バージョンの」というような意味合いでしょう。森鴎外のこの小説ように性描写をせずに、しかし性について描こうとしている。そういう試みの小説集として扱われていることが分かります。そして概ねその通りです。「aer」では『真鶴』で描かれたような、母親にとっての子どもという存在が『真鶴』よりも濃く扱われています。いままでにないような流れの良い文体であまりにすらすらと読めてしまうのに、書かれていることには、すこしぞっとします。あまりにも本当らしいからでしょうか。冒頭部分を引用してみます。
「そのしろものはとてもやわらかくて垢がたまりやすくて熱くてよくわめくものだった。しろものが出てきた時は苦しくて痛くてずるっとしていて時々は途中で眠ってしまってようやく出てきたらあんまり紫色でみにくいのでがっかりした。」
私はこの作品集を、現時点における氏の最高傑作として読み終えました。
ちなみに、新潮社のサイト『波』には「生きること、死ぬこと、セックスのこと」という著者インタビューが掲載されています。
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なめらかで熱くて甘苦しくて 単行本 – 2013/2/28
川上 弘美
(著)
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- 本の長さ189ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2013/2/28
- 寸法13.6 x 2.1 x 19.5 cm
- ISBN-104104412066
- ISBN-13978-4104412068
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2013/2/28)
- 発売日 : 2013/2/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 189ページ
- ISBN-10 : 4104412066
- ISBN-13 : 978-4104412068
- 寸法 : 13.6 x 2.1 x 19.5 cm
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- - 236,489位文学・評論 (本)
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著者について
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1958年生まれ。1996年「蛇を踏む」で芥川賞。1999年『神様』で紫式部文学賞。2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞。2001年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞。2007年『真鶴』で芸術選奨を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 パスタマシーンの幽霊 (ISBN-13: 978-4838721009 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年3月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2018年1月28日に日本でレビュー済み
他の話はそれほどでもなかったのですが、terraがものすごく切なくて号泣しました。
普通に語ればめずらしくもない話を、視点を変えて魅せる、文章力、感受性のある作家さんだと思います。思い出すとまた涙が出ます。
普通に語ればめずらしくもない話を、視点を変えて魅せる、文章力、感受性のある作家さんだと思います。思い出すとまた涙が出ます。
2013年6月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
男だけど(子供の弁当とか作っちゃう)母親の気持ちの部分に共感できました。というより、まったく同じ思いをした部分が幾重にもあって笑った。引き込まれた。
これってみんなそうなのかな。それとも、性別っていうより性格の問題なのかな。
これってみんなそうなのかな。それとも、性別っていうより性格の問題なのかな。
2014年7月11日に日本でレビュー済み
久しぶりに本書の魅力的で生々しい表紙カバーに引かれて単行本を買ってみた。
著者は名前を聞いたことがある程度だけど、官能コーナーにあったので、妙に表紙とタイトルが気になった。
5つの短編集のうち、最初と二番目は上質な物語を読ませてもらっているという感じ。
特に2つ目のterraは、最後になるとそうだったのかなと話の中でつっかえていた疑問が解けるのだが、
二人の会話が幸せすぎて、かつ、現実的なのに最後で本当の現実に戻される。
このterraの中には、縄で縛る表現が沢山出てくるが、
きっと自分は作者の意図は吸収できていないはず。
ただ、3つ目から5つ目は正直理解超えていた。そのため、星は3つ。
著者は名前を聞いたことがある程度だけど、官能コーナーにあったので、妙に表紙とタイトルが気になった。
5つの短編集のうち、最初と二番目は上質な物語を読ませてもらっているという感じ。
特に2つ目のterraは、最後になるとそうだったのかなと話の中でつっかえていた疑問が解けるのだが、
二人の会話が幸せすぎて、かつ、現実的なのに最後で本当の現実に戻される。
このterraの中には、縄で縛る表現が沢山出てくるが、
きっと自分は作者の意図は吸収できていないはず。
ただ、3つ目から5つ目は正直理解超えていた。そのため、星は3つ。
2013年3月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
かなりエロチックで官能的な感じがして購入しましたが、がっかりです・・
2013年3月31日に日本でレビュー済み
川上弘美的異界の短編集。「aqua」水、性の目覚め、「terra」土、幼いザ・恋愛、「aer」風、ザ・妊娠出産小説、「ignis」炎、「伊勢物語」を下敷きにした大人の性愛、「mundus」宇宙、複数の三角関係のもはや宇宙的な愛憎。エロス (性愛)、アガペー (真の愛)、フィリア (隣人愛) 、ストルゲー (家族愛)、性愛の多様なありよう、とらえようのないものを、とらえようのないままに書いた実験的な短編 。ページが進むに従って物語の形すらぼやけ散文詩的。読むことそのものの感覚を楽しむ。意味そのものが脳をすり抜ける奇妙な感覚が性愛の本質なのか。読む端から意味が熔解、見えない物と鬼ごっこしてるような感じで、読み終わっても答えはとらえられないまま。『蛇を踏む』などの匂いを漂わせながら。言うまでもないけど、性愛って奥が深い。
2014年2月5日に日本でレビュー済み
「aqua」、「terra」、「aer」、「ignis」、「mundus」の5つの作品から構成される短篇集。作者の従来の殻を打ち破って"性愛"を直裁的に描いたという評を聞いたが、個人的には従来の路線(牧歌的な雰囲気の中で性愛をサラッと描く)を踏襲していると思う。「なめらかで熱くて甘苦しくて」という官能的な題名は「aer」の冒頭の文言そのもので、母乳(初乳)を意味している。
「aqua」は少女期の性の目覚め、「terra」は女子大生の性と生への執着、「aer」は妊娠と性との関わりあるいは母子関係を描いたものだが、性愛に関する描写はドギツクはなく、むしろ死者と生者の重層的な描写、自在な時間軸での奔放な描写といった技巧面が目立つ。作者の筆力は感じるが、目新しいという印象は受けなかった。「ignis」は「伊勢物語」を下敷きにした作品で、在原業平に関わりのあった女性の側から見た男女関係という面白い視座を持つ作品。本短篇集では一番の出来ではないか。「mundus」は他の作品とは異なる意匠・構成を持った作品。三代に渡る大家族とその関係者の間の複数な関係を自在な時間軸で幻想的に描いたもので、本短篇集の総括という形にしたかったのだと思うが、意匠倒れに終わった感がある。
題名や前評判から想起していた程の官能感こそないものの、作者の安定した筆力で女性の生理に関して読ませる短篇集。女性の生理に関して興味を持っている男性読者にも適しているのではないか。
「aqua」は少女期の性の目覚め、「terra」は女子大生の性と生への執着、「aer」は妊娠と性との関わりあるいは母子関係を描いたものだが、性愛に関する描写はドギツクはなく、むしろ死者と生者の重層的な描写、自在な時間軸での奔放な描写といった技巧面が目立つ。作者の筆力は感じるが、目新しいという印象は受けなかった。「ignis」は「伊勢物語」を下敷きにした作品で、在原業平に関わりのあった女性の側から見た男女関係という面白い視座を持つ作品。本短篇集では一番の出来ではないか。「mundus」は他の作品とは異なる意匠・構成を持った作品。三代に渡る大家族とその関係者の間の複数な関係を自在な時間軸で幻想的に描いたもので、本短篇集の総括という形にしたかったのだと思うが、意匠倒れに終わった感がある。
題名や前評判から想起していた程の官能感こそないものの、作者の安定した筆力で女性の生理に関して読ませる短篇集。女性の生理に関して興味を持っている男性読者にも適しているのではないか。