息子や娘がその父親について書いた物は、どうしても身内としての甘さが出るもので、時としては読んでいて厭になる作物が多いようです。しかし、この著者は新潮社に勤務し、週刊新潮、その後フォーカスの編集者を務め、最後にはその編集長になっただけに、そんな身内の出す嫌味な欠点を熟知しているようです。読んでいくにつけ、肉親である父親への冷静な観察とそれを綴る文章は見事と言えます。
特に、本来近親者なら隠したいであろう、老年になってからの父親の情事らしき振る舞い、即ち性へ向かう心が記された多くの書簡類を、その相手の書いた物を含め、「恋に似たもの」という章で公開しています。父・山本夏彦氏が恋文でさえ推敲を重ね、下書きを保存していたことから、「今、なぜ、公開するのか、という意見もあるだろう。しかし、それは世に出ることを想定して父は書いていたのだ、と私は思う。」と著者はあとがきで触れています。実に息子でありながら、編集者としての分析と解釈を入れた冷静な姿勢が、この書物を並の回想記から一段上の作品に仕上げています。
膨大な数の手帳の細かい記述を整理し、現実生活と照らし合わせ、的確で読み易く注釈を与えたのも編集者ならではの技輌と言えるでしょう。読み始めは少々退屈でしたが、どんどん引き込まれていきました。誠に読ませる一冊です。古くは森鴎外・広津和郎・室生犀星等、最近では山口瞳・有吉佐和子等、様々な息子・娘達の書いた物を読みましたが、群を抜いた出来栄えです。
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夏彦の影法師: 手帳50冊の置土産 単行本 – 2003/9/1
山本 伊吾
(著)
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- 本の長さ333ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2003/9/1
- ISBN-104104624012
- ISBN-13978-4104624010
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
遺された五十冊余りの手帳と日記が伝える真実とは…。憂い多き青春の日々。語らなかった「過去」。恋文の束。だれもしらない「山本夏彦」がここにいる! 長男が読み解く、父のもうひとつの人生。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2003/9/1)
- 発売日 : 2003/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 333ページ
- ISBN-10 : 4104624012
- ISBN-13 : 978-4104624010
- Amazon 売れ筋ランキング: - 583,406位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年12月17日に日本でレビュー済み
2019年10月18日に日本でレビュー済み
「人の一生はせいぜい手帖五十冊で、それは高く積んでも一メートール、平らに並べても一坪にならない……人の一生はこの手帖何十冊に尽きる」。コラムニスト山本夏彦は昭和24年から平成14年まで半世紀分の手帳と昭和8年から16年まで18歳から26歳までの日記を遺した。「遺された手帳やノートの中には、父の八十七年の一生がぎっしり詰まっていたのである……手帳の中に、私の全く知らない父が居た」。本書は山本の子息伊吾氏が遺された手帳をたよりに父の人生をたどる記録である。
全体の構成は、最初に胃癌で死に至るまでの闘病、若かりし頃、雑誌「室内」、父子、夫婦、交友、恋文といったテーマごとに手帳の記述をたどり、関係するコラムを抜粋し、関係者の証言をつけ加えた読みやすいものになっている。なお著者の伊吾氏は新潮社で記者から編集長を経て、父の死後に後を継いで工作社で編集長兼発行人になったが、山本の個性に依存した「室内」を続けることができずに休刊、工作社を閉めることになった。自称「理解なき倅」だが、充分できた子息である。
若い頃は人生に悩んで2度も自殺を試みたが、仕事が成功して人々から認められるようになってからは、優しい家族に囲まれて、美味しいものを食べて、多くの著名人と交遊し、晩年になっても恋文をやり取りした。「ダメの人」どころか充分に充実した人生である。不肖がひねくれていた若い頃なら読んで「なーんだ」と言って放り出しそうだが、今は素直に「よかったですね」と言ってあげたい。きっと伊吾氏も同じではないだろうか。
全体の構成は、最初に胃癌で死に至るまでの闘病、若かりし頃、雑誌「室内」、父子、夫婦、交友、恋文といったテーマごとに手帳の記述をたどり、関係するコラムを抜粋し、関係者の証言をつけ加えた読みやすいものになっている。なお著者の伊吾氏は新潮社で記者から編集長を経て、父の死後に後を継いで工作社で編集長兼発行人になったが、山本の個性に依存した「室内」を続けることができずに休刊、工作社を閉めることになった。自称「理解なき倅」だが、充分できた子息である。
若い頃は人生に悩んで2度も自殺を試みたが、仕事が成功して人々から認められるようになってからは、優しい家族に囲まれて、美味しいものを食べて、多くの著名人と交遊し、晩年になっても恋文をやり取りした。「ダメの人」どころか充分に充実した人生である。不肖がひねくれていた若い頃なら読んで「なーんだ」と言って放り出しそうだが、今は素直に「よかったですね」と言ってあげたい。きっと伊吾氏も同じではないだろうか。
2010年8月27日に日本でレビュー済み
本日立ち寄った書店にて発見、まだ半分くらいしか読んでないのだが、確か、コラムで手帳は真っ白だっていうのを読んできてずっとそうなのだ、と思っていたのに。
本書のサブタイトルに「手帳50冊の置土産」とあって、これ如何に?と思うのが普通だろう。
夏彦翁の少年のころの日記からお亡くなりになる約一週間前までの様子が分かる。
各章のタイトルはほとんど(知らないものを除く)氏の著書やコラムのタイトルが当てられているのが面白い。“「戦前」という時代” “生きている人と死んだ人” “人の一生” など。
少ないが、写真も掲載されている。まだ読んでいないがパラパラとめくっていて目にとまったのが、「ミッキー(言うまでも無くあのネズミ)と記念撮影」と題された一枚(259ページ)。勧められて撮ったものだという。
本書のレビュータイトルが言いたいことのすべてだったのだが、以上は余計な付け足し。
本書のサブタイトルに「手帳50冊の置土産」とあって、これ如何に?と思うのが普通だろう。
夏彦翁の少年のころの日記からお亡くなりになる約一週間前までの様子が分かる。
各章のタイトルはほとんど(知らないものを除く)氏の著書やコラムのタイトルが当てられているのが面白い。“「戦前」という時代” “生きている人と死んだ人” “人の一生” など。
少ないが、写真も掲載されている。まだ読んでいないがパラパラとめくっていて目にとまったのが、「ミッキー(言うまでも無くあのネズミ)と記念撮影」と題された一枚(259ページ)。勧められて撮ったものだという。
本書のレビュータイトルが言いたいことのすべてだったのだが、以上は余計な付け足し。
2007年11月10日に日本でレビュー済み
中公新書で以前出た、山本夏彦を読んで以来、
引っかかる人(読みあさる対象)となっている。
今回の本は、ご子息である山本伊吾氏が、夏彦氏の残した手帳、手紙を素材にして
夏彦氏の生前を明らかにしていった本の文庫版。
山本夏彦氏は、『室内』というインテリア雑誌を40年以上発行した編集者であり、
かつ、週刊新潮などで辛口コラムを書いたコラムニストでもある。
中公新書での語り口は、ちょっとひねくれたおしゃべり好きのおじいさん、といった
印象をうけていたが、この本で、その内面にとても奥深くて暖かいものがあったんだな、
と思った。
でも、それよりも(こう書いては失礼っぽいが)印象深かったのは、
自分の親を改めて「親」としてではなく、「山本夏彦」として知っていく、伊吾氏の好奇心というか、ある種冷静で対等に親を見る視線と気持ちが、文字の奥から、隙間からしみ出てきていたこと。
非常に趣深い。
引っかかる人(読みあさる対象)となっている。
今回の本は、ご子息である山本伊吾氏が、夏彦氏の残した手帳、手紙を素材にして
夏彦氏の生前を明らかにしていった本の文庫版。
山本夏彦氏は、『室内』というインテリア雑誌を40年以上発行した編集者であり、
かつ、週刊新潮などで辛口コラムを書いたコラムニストでもある。
中公新書での語り口は、ちょっとひねくれたおしゃべり好きのおじいさん、といった
印象をうけていたが、この本で、その内面にとても奥深くて暖かいものがあったんだな、
と思った。
でも、それよりも(こう書いては失礼っぽいが)印象深かったのは、
自分の親を改めて「親」としてではなく、「山本夏彦」として知っていく、伊吾氏の好奇心というか、ある種冷静で対等に親を見る視線と気持ちが、文字の奥から、隙間からしみ出てきていたこと。
非常に趣深い。