いかにも『昭和』の匂いのする小説だった。
本当に吉田修一の作品は読みにくいというか
合わないというか、
いや、嫌いというわけではないが、
肌にこうしっくり来ない、そんな作家である。
なのに何故か次の作品を求めてしまうから不思議だ。
この作品は任侠の世界に産まれた兄弟の話だが、
ほとんどを兄の視点から描いている。
兄は自分のいる場所が本当に自分のいるべき場所なのか、
幼いころから考え、
今の場所から逃げ出そうとするが、結局はその場から出て行くことは出来ず、
最後までその家に留まることになる。
反対に任侠の世界を肌に感じることのなかった弟が家を出て東京に行ってしまう。
最後には残された兄と母親は家の昔の面影を胸に抱いたまま同じ家で二人過ごすことを選ぶ。
何故兄は東京に出なかったのか。
そして亡き叔父が住まいとしていた離れで叔父と同じように絵を描いていたのか、
疑問は残る。
6章あるが、時間が飛び飛びで描かれているので
そこまでに至る経緯が良く分からないのが惜しい、といえば惜しいが、そこに別の余韻も生まれてくる。
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長崎乱楽坂 単行本 – 2004/5/25
吉田 修一
(著)
- 本の長さ206ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2004/5/25
- ISBN-104104628026
- ISBN-13978-4104628025
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
若い男たちの肌の火照り、女たちの熱い息。性と暴力の渦の中から、少年たちが切り取った、自分なりの「男」。長崎の大家族を舞台に描く長編。『新潮』掲載に大幅な加筆を行い単行本化。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2004/5/25)
- 発売日 : 2004/5/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 206ページ
- ISBN-10 : 4104628026
- ISBN-13 : 978-4104628025
- Amazon 売れ筋ランキング: - 311,390位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 7,642位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1968年9月14日、長崎県生まれ。法政大学経営学部卒。
1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞。同作が第117回芥川賞候補となる。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を立て続けに受賞し、文壇の話題をさらう。2007年『悪人』で大佛次郎賞と毎日出版文化賞を受賞した。
他に『東京湾景』『長崎乱楽坂』『静かな爆弾』『元職員』『横道世之介』など著書多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年5月10日に日本でレビュー済み
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地方都市長崎にも、こんな時代があったのだ。荒々しい男達に常に翻弄され、行き辛い人生に、ある種の諦めと救いをもたらしたのが自死した叔父の気配だったと言うことか。運命に弄ばれる青年を描かせれば右に出る者がいないと私は思うが、今回の主人公は、一際脆く不安げで、手を差し伸べたいと何度も思った。弱くても、いいじゃない。
2021年3月29日に日本でレビュー済み
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そうだったよね。そうなんだ。どんな世代でも楽しめる作品。ヤクザな世界知らなくても。「国宝」読む前の作品としては最適だと思います。
2014年4月8日に日本でレビュー済み
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あまり好きな内容ではなかった。
幼年期から青年に移る主人公の、どこか背徳的な匂いが常につきまとう
暗い青春。
こういうジャンルはご勘弁。
幼年期から青年に移る主人公の、どこか背徳的な匂いが常につきまとう
暗い青春。
こういうジャンルはご勘弁。
2010年4月23日に日本でレビュー済み
風呂上がりの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが、下穿き一つで集い、日々酒盛りに明け暮れる一家。人面獣心の荒くれどもの棲む大家族に育った幼い主人公は、ある日、若い衆が女たちを連れ込んでは淫蕩にふける古びれた離れの一隅に、幽霊がいるのに気づくのだった。
「なんもせんで生きとるのも、なかなか難しかとぞ」
「なんもせんで生きとるのも、なかなか難しかとぞ」
2021年3月17日に日本でレビュー済み
○ やくざ一家の暮らしが題材。素材が何よりも面白い。作者は、やくざ一家を描きたいのか、男たちの心意気を描きたいのか、滅びるものの悲哀を描きたいのか、あるいはそのすべてなのか? おそらくこのすべてを描きたかったのだろう。作者にとっては、やくざも哀惜の対象になるのだ。
○ 連作短編の形になっている。全体として大きな物語になっている。全体を通して家の「離れ」が大事な役割を果たしているようだ。昔から何組もの男女を受け入れてきた。その男女の変遷がこの家の変遷を反映している。
○ 素直な生き生きとした文章が魅力だ。文章は自己主張せず素材を生かすことに専念している。そこが技術なのだろうけれど。破綻がなく、魅力的な表現が多い。
○ 連作短編の形になっている。全体として大きな物語になっている。全体を通して家の「離れ」が大事な役割を果たしているようだ。昔から何組もの男女を受け入れてきた。その男女の変遷がこの家の変遷を反映している。
○ 素直な生き生きとした文章が魅力だ。文章は自己主張せず素材を生かすことに専念している。そこが技術なのだろうけれど。破綻がなく、魅力的な表現が多い。
2013年8月18日に日本でレビュー済み
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面白かったです、これが作者の自伝的小説としたら吉田修一が持つ暗さが理解できるような気がしました。
2004年6月29日に日本でレビュー済み
これまでの吉田修一作品とはがらりと作風を変えてます。
どちらかというと、今回のは人間臭いので対局の作品かも。
生々しい文体は、近代化の波に飲み込まれ一旗あげられなかったやくざを
リアリティーある存在として浮かび上がらせる。
一旗あげたい成人した周囲だけでなく、幼少の主人公を置くことで
この街から出たいという鬱積した感情が詰まっている
繁栄していた男の家が、時代と共に女子供だけが棲む家へと落ちぶれてゆく
やくざ、失敗した男、チャンスを活かせなかった男・・・・
鬱積した男たちの思いが結末に昇華する
吉田修一が長崎出身なだけに
自叙伝と錯覚するかのような湿度の高い小説でした
どちらかというと、今回のは人間臭いので対局の作品かも。
生々しい文体は、近代化の波に飲み込まれ一旗あげられなかったやくざを
リアリティーある存在として浮かび上がらせる。
一旗あげたい成人した周囲だけでなく、幼少の主人公を置くことで
この街から出たいという鬱積した感情が詰まっている
繁栄していた男の家が、時代と共に女子供だけが棲む家へと落ちぶれてゆく
やくざ、失敗した男、チャンスを活かせなかった男・・・・
鬱積した男たちの思いが結末に昇華する
吉田修一が長崎出身なだけに
自叙伝と錯覚するかのような湿度の高い小説でした