7つの具体例を取り上げ、科学的な態度とはなにか、どのように科学は進歩してきたかを、分かりやすく解説している。
タイトルともなっている「魂の重さの量り方」が最初の例で、魂の重さを量ろうとした科学者が取り上げられている。どうすれば魂の重さを科学的に量ることができるだろうか。
著者が「必要な謎」と呼ぶ概念がどのように形成されてきたか。それを語ることが科学史であり、これからの科学の進歩を推進する原動力となる。
付録として記載されている「必要な謎」のカタログは、常識として受け入れてきた概念がいかに奇抜なものであるかを教えてくれる。この付録を読むだけでも十分に価値があるだろう。
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魂の重さの量り方 単行本 – 2005/1/28
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2005/1/28
- ISBN-104105051210
- ISBN-13978-4105051211
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2005/1/28)
- 発売日 : 2005/1/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 4105051210
- ISBN-13 : 978-4105051211
- Amazon 売れ筋ランキング: - 870,925位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 392位科学史・科学者
- - 3,296位科学読み物 (本)
- - 12,199位生物・バイオテクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年6月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は、ビスケットの浸し方の論文でイグノーベル賞を受賞しているが、この賞は、皮肉たっぷりな、からかわれている受賞と、本当にユニークな業績への受賞とあるが、著者は間違いなく後者のパターンであるため、そこは誤解しないようにしたい。
さて、死ぬ瞬間に体重を量って減ったという話、その科学者の話は、都市伝説的な様相を呈しつつ逸話的に語られている。私は以前から、この件の元ネタを探し、マクドゥーガル(実験超心理学の父であり、ライン博士に道を用意した)だということは見つけていたが、その詳細については見つけていなかった。
ところが、本書が出たことによって、それはもうたっぷりと知ることができ、マクドゥーガルが驚くほど誠実な科学者だったことに感動した次第。この情報価値だけで結構すぐれもの。
そういうわけで、お目当てはその情報価値だったが、読んでみて嬉しい誤算があった。本書は、素晴らしい、まことに生きた科学史の啓蒙書でもあるのだ。取り上げる話題と中身は、ぜひ本書を読んで堪能して欲しい。
とりあえず科学史の概論を読んで把握している人にはおすすめしたい。面白い。★4.72
さて、死ぬ瞬間に体重を量って減ったという話、その科学者の話は、都市伝説的な様相を呈しつつ逸話的に語られている。私は以前から、この件の元ネタを探し、マクドゥーガル(実験超心理学の父であり、ライン博士に道を用意した)だということは見つけていたが、その詳細については見つけていなかった。
ところが、本書が出たことによって、それはもうたっぷりと知ることができ、マクドゥーガルが驚くほど誠実な科学者だったことに感動した次第。この情報価値だけで結構すぐれもの。
そういうわけで、お目当てはその情報価値だったが、読んでみて嬉しい誤算があった。本書は、素晴らしい、まことに生きた科学史の啓蒙書でもあるのだ。取り上げる話題と中身は、ぜひ本書を読んで堪能して欲しい。
とりあえず科学史の概論を読んで把握している人にはおすすめしたい。面白い。★4.72
2006年8月30日に日本でレビュー済み
舞台は20世紀が始まったばかりの米国。魂の実在をテストするため、ある医者が、臨終の際に人体の重量は変化するのかどうかを調べました。亡くなる前と比べて21g軽くなっていたそうです。果たして魂の重さを21gと結論していいのか―この後、彼は実験を繰り返しますが、結果は様々で結論を得ることはできませんでした。タイトルになっているこの話に続いて、「避雷針は尖っているべきか、それとも丸くあるべきか」など今では滑稽に思えるテーマで当時大真面目に繰り広げられた科学者達の論争について全部で7つのエピソードが収められています。
著者は、これらの科学者達を嗤ってはいません。むしろ、彼らを題材にして、科学とは宗教のような最初に結論ありきの信念体系ではなく、絶えざる仮説検証を通じて真実に迫ることができるという方法についての信念体系であることを浮き彫りにしてゆきます。そして科学的方法についての信念の下、科学者達はエネルギーや電磁場など日常の感覚では全く把握できない概念の実在を初めて確信できるようになったことに注意を促します。「魂の重さ」を量ろうとした医者の方法は実は科学的信念に基づくものでした。ただ、魂の実在/不在を確証するには不適であったに過ぎません。科学的方法も他の信念体系同様、万能ではなく自ずと限界があるわけです。
科学的方法がどのようなものかを知っておくことは、我々が日常生活を送る上でも意外と役立ちそうです。例えば、著者は、BSEやダイオキシンなど「目に見えない」リスクを評価する際に、とかく日常の「常識」に頼り一律に排斥しがちな我々の感覚を「真実」に沿ったものに変えることができるのではないか、と示唆しています。
著者は、これらの科学者達を嗤ってはいません。むしろ、彼らを題材にして、科学とは宗教のような最初に結論ありきの信念体系ではなく、絶えざる仮説検証を通じて真実に迫ることができるという方法についての信念体系であることを浮き彫りにしてゆきます。そして科学的方法についての信念の下、科学者達はエネルギーや電磁場など日常の感覚では全く把握できない概念の実在を初めて確信できるようになったことに注意を促します。「魂の重さ」を量ろうとした医者の方法は実は科学的信念に基づくものでした。ただ、魂の実在/不在を確証するには不適であったに過ぎません。科学的方法も他の信念体系同様、万能ではなく自ずと限界があるわけです。
科学的方法がどのようなものかを知っておくことは、我々が日常生活を送る上でも意外と役立ちそうです。例えば、著者は、BSEやダイオキシンなど「目に見えない」リスクを評価する際に、とかく日常の「常識」に頼り一律に排斥しがちな我々の感覚を「真実」に沿ったものに変えることができるのではないか、と示唆しています。
2006年8月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本の10%は「魂の目方」に充てられている。著者の「前著」は好評を得たようで、原書の裏カバーには、この本に対してではなく、「前著」に対しての7件の賞賛が再記されている。「魂の目方は21g」の基になった100年前の医者の6人の人間の実験以来、人に関する同様の実験はないようだ。問題はこの実験結果に対する著者の分析である。著者は200年前に「熱の目方」を量ろうとした実験で当初得られた結果が「熱は負の目方を持つ」となってしまうバカげたものであったことを教訓に、そのバカげた結果が実は秤の周りに生じた空気対流の影響によるものであったのだろうとし、同様の影響が100年前の医者の実験でもあったはずで、それが死体からの21gの重さの消失を説明できるだろうと結論している。著者は、人は死ぬと体温が下がるから秤の周りに不均衡な温度分布を生じて空気対流を生じ、空気の流れが死体ののったベッドを押し上げ、または、秤のもう一方の分銅側を押し下げたのであろうと示唆している。著者はさらに、同じ医者が15匹の犬のケースを測定して目方の変化がなかったことは、自分の説明を覆す可能性があるが、犬は断熱性の毛皮に掩われており、死して体温が下がってもその影響は直ぐには出ないだろうとしている。これらの考察で大変おかしいのは、死んだ人にかけられていたはずの断熱性の毛布や寝間着の話が一言もないこと、死と判断された直後数秒で目方が10g〜21g突然軽くなったことを緩慢な空気の流れの影響にしていること、温度が下がった死体の周りには下降気流が生じるはずで、それは死体の見かけの目方を増やす方向にはたらくはずだが、空気の流れの方向には関しては何も書いていないこと等である。私は引退前は熱流体技術分野の研究に従事していたが、著者の分析には大変な疑問を持つ。風変わりなテーマとはいえ、読者へ誤った解説を与えるのはいけないことだ、が私のレビュー。
[補足](added on 27 Jan. 2013)
Yahoo Japanの「知恵袋」に以下を投稿した。私が本件に投稿した2006年から4年後の科学論文に基づくもので、読者にこの件に関する現状を伝えたい。
Yahoo Japanの「知恵袋」で「魂の重さは21グラム」のテーマに関して、選ばれた「ベストアンサー」は以下の通りです:
________
嘘です。
その話の元ネタは、マサチューセッツの医師ダンカン・マクドゥーガルの1907年の研究によるものです。
上の方の質問に答えると、1907年という時代から、呼吸停止または心臓停止と考えられます。
彼は、6例の患者の死直後に4分の3オンスの体重減少が見られたとしています。
21グラムというと、1グラム単位の精度があるように思えますが、測定結果はかなり怪しげです。
彼の研究は学術的には省みられることなく、子供雑誌のネタと、ヨタ系うんちくの題材となっています。
________
この答えに対して、質問者は「がっかり」したようです。
それでは私から別の科学的Best Answerを提供しましょう。
(1) 第一に、上記のベストアンサーにある6例の患者の死直後の体重減少が「4分の3オンス(21.3 grams)」であったという記述は、回答者が1907年の論文をそもそも読んでいない証拠です。マクドゥーガルの実験で「4分の3オンス(21.3 grams)」であった患者は6人のうちの最初の患者のケースです。
(2) マクドゥーガルが論文に書いている、測定が成功したケースは「4人の患者」のケースで、残りの二人は実験的には失敗したケース(その様な実験に反対する人々の妨害にあったケースと、死期が間近いと思われる患者を秤の上に設けた簡易ベッドに移して、秤を調節している間に死亡したケース)だと記述されています。
(3) その4人の患者の死後の体重減少量((a) 死後数秒で検出された減少と、(b) 患者によってはその後約18分間に追加的に検出された減少の合計値)は、順番に書くと、21.3g (aのみ), 45.8g (a+b), 42.5g(a+b), 10.6g(aのみ)となります。人に依存して結果は違っています。(もし本当だとすると、魂の重さは人によって異なって当たり前でしょう、それぞれの人生経験の記録が関わっているはずでしょうから。)なおここで注意したいことは、大人の健康体は「呼吸」や「発汗」により水分を身体から失うために、一時間当たり約30g〜40gの体重減少があることです。マクドゥーガルの実験でも最初の患者は死の数時間前の体重減少率の平均値は28 g/hでした。
(4) 上記のベストアンサーで、「上の方の質問に答えると、1907年という時代から、呼吸停止または心臓停止と考えられます。」とありますが、これは関連する米国のあるWebsitesに書かれている推測と同じです。つまり、1907年当時の台秤(小学校の身体検査のとき皆さんが乗ったことのある様な秤)が、「呼吸」や「心臓の鼓動」の影響を測定できたという、感度が現代的な秤であったということになり、これは明らかに間違いです。このような影響は、現代的な「ロードセル」(加えられた荷重の大きさに依存して電圧を発生する電子素子)を用いた体重計でなければ測定できないでしょう。
(5) しかし、「呼吸」や「心臓の鼓動」が秤に与える影響があることは科学的な事実であり、その影響を考慮する必要があることは確かです。そのほかにも、マクドゥーガルの実験に対する批判は、私の知る限りでは6つほどあります。これらに答えない限り彼の実験は信頼できないでしょう。彼の実験結果を「否定」する最も簡単な方法は、同じような実験を再度やってみることでしょう。しかし、「犬」(マクドゥーガルも15匹の薬殺実験をやった)や「マウス」の実験はやられたことがあり、本に書かれていますが(いずれのケースも秤の感度の範囲内では体重に変化なしであった)、「人」の実験を実施して、その結果を「科学誌」に発表した例はありません。
(6) そのため、私はマクドゥーガルの実験を理論的計算(ニュートン力学)によって模擬してみました。体重計は現代的な「ロードセル」を用いたものです。従って「呼吸」や「心臓の鼓動」が秤に与える影響も考慮したものです。この理論計算では、マクドゥーガルの実験に対してこれまでに出されている7つの批判に全て答えることを目的としました。その結果は下記の論文に発表されています。
「Journal of Scientific Exploration, Vol. 24, No.1, pp. 5 - 39, 2010: Rebuttal to claimed refutations of Duncan MacDougall’s experiment on human weight change at the moment of death」(amazon.co.jp またはamazon.comから購入可能。その際はVol. やNo.を間違えないよう注意。Amazon.comでは、少なくともこのVol/Noに関しては、目次等の多少の中身がみえる。)
この論文の結論は、
(7) マクドゥーガルの実験には、批判されているような「欠陥」は無い。
(8) 彼の実験結果は、一重に「他の科学者による確認実験」を待つのみであり、既に110年以上経た今日も、それがなされていないと言う嘆かわしい状態にある。(マクドゥーガルの実験そのものは1900年〜1901年に実施されている。)
(9) と言うわけで、「がっかり」は撤回できるでしょう。
(10) なお補足しますと、レン・フィッシャーが「Weighing the Soul (2004年)」を書き、その日本語訳「魂の重さの量り方」が新潮社から出ています(2006年)。全255頁の最初の32頁が「魂の重さ」の実験に関するもので、フィッシャーは「マクドゥーガルの実験では患者を密閉された容器などに入れた実験とはなっていないので、人が死ぬと体温が下がり、その結果、秤の周りに空気対流が起こり、その影響が体重の見かけの減少をもたらしたものであろう」との趣旨の批判を書いていますが、この批判に対する反論も上記(6)の論文に書かれています。フィッシャーはこの批判で「科学的エラー」をしています。それは、仮に彼の言うように、その様な「死直後の体温低下による空気対流の影響」が秤に作用したとすると、見かけの体重は「減少」するのではなく、「増加」するはずだからです。しかし、流体力学で計算してみますとその様な影響はほとんど無視でき、マクドゥーガルの秤では検出できないほどのものです。
(11) もう一つ補足しますと、2009年に作家Dan Brown(「ダビンチ・コード」や「天使と悪魔」の著者)が「Lost Symbol」という本を出版しました(日本語訳「ロスト・シンボル(上、下巻、角川文庫、2012年)」)。この本の第107章に、「魂の目方」を測る実験らしきものが書かれています。この実験では患者を「密閉された容器」に入れて、高感度の現代版の秤で測定しようとしています((3)に書いた、大人の健康体は「呼吸」や「発汗」により水分を身体から失うために、一時間当たり約30g〜40gの体重減少があるため、この仮想実験では、この水分を「密閉された容器」内に閉じ込めようとしている。)。その測定感度は作者の記述では、患者の死亡直前の体重が「51.4534644 kg」と計測装置に出ている、と書かれています。作者は、死直後の体重減少が幾らであったかを書いていません。Dan Brownもここで「科学的エラー」を犯しています。生きている人の体重をこのような精度で測定できません。それは、上記の「ベストアンサー」にありますように、人の呼吸や心臓の鼓動の影響が、100g〜200gの振幅の振動となって顕れるからです(これは上記(6)の論文に書かれています)。1980年代に米国の某タブロイド紙に、東ドイツの科学者が200人の末期患者の死直後の体重の減少を計測し、その全員が「1/3000オンス(0.00945 g = 0.00000945 kg)」の減少を示した、との記事が書かれた。恐らくBrownはこの記事が頭にあって、1/3000オンスを測定するには計測器の感度はこの程度なければならないと考えたのでしょう。(この記事は「イカサマ」であることが確認されています。その様な実験をした科学者は実在しない。)上記(6)の論文にも書きましたが、もし「魂の目方」が1g〜2g以下だとしたら、それを実験的に検出するのは大変難しいことでしょう。マクドゥーガルの実験結果が10g〜45gであったのは、彼にとって幸いであったわけです。
(12) さて、最後に最も大事なことを書きましょう。
もしも本当に人の死直後に「体重の減少が起こる」ことが多数の実験によって確認されたとしたら、それは現代科学の土台となっている「唯物論」が崩れ落ちることを意味します。デカルトの「二元論」が復活するのです。これは大変なことです。科学者にとっては、「魂の目方は何グラムか?」などということよりも大変なことなのです。従って、「魂の目方」の問題は、現代物理学にとってはいわば「時限爆弾(Time Bomb)」なのです。
[補足](added on 27 Jan. 2013)
Yahoo Japanの「知恵袋」に以下を投稿した。私が本件に投稿した2006年から4年後の科学論文に基づくもので、読者にこの件に関する現状を伝えたい。
Yahoo Japanの「知恵袋」で「魂の重さは21グラム」のテーマに関して、選ばれた「ベストアンサー」は以下の通りです:
________
嘘です。
その話の元ネタは、マサチューセッツの医師ダンカン・マクドゥーガルの1907年の研究によるものです。
上の方の質問に答えると、1907年という時代から、呼吸停止または心臓停止と考えられます。
彼は、6例の患者の死直後に4分の3オンスの体重減少が見られたとしています。
21グラムというと、1グラム単位の精度があるように思えますが、測定結果はかなり怪しげです。
彼の研究は学術的には省みられることなく、子供雑誌のネタと、ヨタ系うんちくの題材となっています。
________
この答えに対して、質問者は「がっかり」したようです。
それでは私から別の科学的Best Answerを提供しましょう。
(1) 第一に、上記のベストアンサーにある6例の患者の死直後の体重減少が「4分の3オンス(21.3 grams)」であったという記述は、回答者が1907年の論文をそもそも読んでいない証拠です。マクドゥーガルの実験で「4分の3オンス(21.3 grams)」であった患者は6人のうちの最初の患者のケースです。
(2) マクドゥーガルが論文に書いている、測定が成功したケースは「4人の患者」のケースで、残りの二人は実験的には失敗したケース(その様な実験に反対する人々の妨害にあったケースと、死期が間近いと思われる患者を秤の上に設けた簡易ベッドに移して、秤を調節している間に死亡したケース)だと記述されています。
(3) その4人の患者の死後の体重減少量((a) 死後数秒で検出された減少と、(b) 患者によってはその後約18分間に追加的に検出された減少の合計値)は、順番に書くと、21.3g (aのみ), 45.8g (a+b), 42.5g(a+b), 10.6g(aのみ)となります。人に依存して結果は違っています。(もし本当だとすると、魂の重さは人によって異なって当たり前でしょう、それぞれの人生経験の記録が関わっているはずでしょうから。)なおここで注意したいことは、大人の健康体は「呼吸」や「発汗」により水分を身体から失うために、一時間当たり約30g〜40gの体重減少があることです。マクドゥーガルの実験でも最初の患者は死の数時間前の体重減少率の平均値は28 g/hでした。
(4) 上記のベストアンサーで、「上の方の質問に答えると、1907年という時代から、呼吸停止または心臓停止と考えられます。」とありますが、これは関連する米国のあるWebsitesに書かれている推測と同じです。つまり、1907年当時の台秤(小学校の身体検査のとき皆さんが乗ったことのある様な秤)が、「呼吸」や「心臓の鼓動」の影響を測定できたという、感度が現代的な秤であったということになり、これは明らかに間違いです。このような影響は、現代的な「ロードセル」(加えられた荷重の大きさに依存して電圧を発生する電子素子)を用いた体重計でなければ測定できないでしょう。
(5) しかし、「呼吸」や「心臓の鼓動」が秤に与える影響があることは科学的な事実であり、その影響を考慮する必要があることは確かです。そのほかにも、マクドゥーガルの実験に対する批判は、私の知る限りでは6つほどあります。これらに答えない限り彼の実験は信頼できないでしょう。彼の実験結果を「否定」する最も簡単な方法は、同じような実験を再度やってみることでしょう。しかし、「犬」(マクドゥーガルも15匹の薬殺実験をやった)や「マウス」の実験はやられたことがあり、本に書かれていますが(いずれのケースも秤の感度の範囲内では体重に変化なしであった)、「人」の実験を実施して、その結果を「科学誌」に発表した例はありません。
(6) そのため、私はマクドゥーガルの実験を理論的計算(ニュートン力学)によって模擬してみました。体重計は現代的な「ロードセル」を用いたものです。従って「呼吸」や「心臓の鼓動」が秤に与える影響も考慮したものです。この理論計算では、マクドゥーガルの実験に対してこれまでに出されている7つの批判に全て答えることを目的としました。その結果は下記の論文に発表されています。
「Journal of Scientific Exploration, Vol. 24, No.1, pp. 5 - 39, 2010: Rebuttal to claimed refutations of Duncan MacDougall’s experiment on human weight change at the moment of death」(amazon.co.jp またはamazon.comから購入可能。その際はVol. やNo.を間違えないよう注意。Amazon.comでは、少なくともこのVol/Noに関しては、目次等の多少の中身がみえる。)
この論文の結論は、
(7) マクドゥーガルの実験には、批判されているような「欠陥」は無い。
(8) 彼の実験結果は、一重に「他の科学者による確認実験」を待つのみであり、既に110年以上経た今日も、それがなされていないと言う嘆かわしい状態にある。(マクドゥーガルの実験そのものは1900年〜1901年に実施されている。)
(9) と言うわけで、「がっかり」は撤回できるでしょう。
(10) なお補足しますと、レン・フィッシャーが「Weighing the Soul (2004年)」を書き、その日本語訳「魂の重さの量り方」が新潮社から出ています(2006年)。全255頁の最初の32頁が「魂の重さ」の実験に関するもので、フィッシャーは「マクドゥーガルの実験では患者を密閉された容器などに入れた実験とはなっていないので、人が死ぬと体温が下がり、その結果、秤の周りに空気対流が起こり、その影響が体重の見かけの減少をもたらしたものであろう」との趣旨の批判を書いていますが、この批判に対する反論も上記(6)の論文に書かれています。フィッシャーはこの批判で「科学的エラー」をしています。それは、仮に彼の言うように、その様な「死直後の体温低下による空気対流の影響」が秤に作用したとすると、見かけの体重は「減少」するのではなく、「増加」するはずだからです。しかし、流体力学で計算してみますとその様な影響はほとんど無視でき、マクドゥーガルの秤では検出できないほどのものです。
(11) もう一つ補足しますと、2009年に作家Dan Brown(「ダビンチ・コード」や「天使と悪魔」の著者)が「Lost Symbol」という本を出版しました(日本語訳「ロスト・シンボル(上、下巻、角川文庫、2012年)」)。この本の第107章に、「魂の目方」を測る実験らしきものが書かれています。この実験では患者を「密閉された容器」に入れて、高感度の現代版の秤で測定しようとしています((3)に書いた、大人の健康体は「呼吸」や「発汗」により水分を身体から失うために、一時間当たり約30g〜40gの体重減少があるため、この仮想実験では、この水分を「密閉された容器」内に閉じ込めようとしている。)。その測定感度は作者の記述では、患者の死亡直前の体重が「51.4534644 kg」と計測装置に出ている、と書かれています。作者は、死直後の体重減少が幾らであったかを書いていません。Dan Brownもここで「科学的エラー」を犯しています。生きている人の体重をこのような精度で測定できません。それは、上記の「ベストアンサー」にありますように、人の呼吸や心臓の鼓動の影響が、100g〜200gの振幅の振動となって顕れるからです(これは上記(6)の論文に書かれています)。1980年代に米国の某タブロイド紙に、東ドイツの科学者が200人の末期患者の死直後の体重の減少を計測し、その全員が「1/3000オンス(0.00945 g = 0.00000945 kg)」の減少を示した、との記事が書かれた。恐らくBrownはこの記事が頭にあって、1/3000オンスを測定するには計測器の感度はこの程度なければならないと考えたのでしょう。(この記事は「イカサマ」であることが確認されています。その様な実験をした科学者は実在しない。)上記(6)の論文にも書きましたが、もし「魂の目方」が1g〜2g以下だとしたら、それを実験的に検出するのは大変難しいことでしょう。マクドゥーガルの実験結果が10g〜45gであったのは、彼にとって幸いであったわけです。
(12) さて、最後に最も大事なことを書きましょう。
もしも本当に人の死直後に「体重の減少が起こる」ことが多数の実験によって確認されたとしたら、それは現代科学の土台となっている「唯物論」が崩れ落ちることを意味します。デカルトの「二元論」が復活するのです。これは大変なことです。科学者にとっては、「魂の目方は何グラムか?」などということよりも大変なことなのです。従って、「魂の目方」の問題は、現代物理学にとってはいわば「時限爆弾(Time Bomb)」なのです。
2006年4月12日に日本でレビュー済み
タイトルからはトンデモ科学本、という印象を受けるかもしれませんが、実際の内容はさにあらず。
ガリレオ・ニュートン・アリストテレス・フランクリン・・・。彼らが確立し、現代では常識となっているサイエンスが、当時世間からどのように評価されていたか。
科学者の常識は世間の非常識。そういう意味で裏面科学史的な本だと思いましたが、理論へのツッコミは結構深く、文系の小生はちょっときつかったです・・・。物理とかサイエンス系素養がある方が読めば理解度が異なり受ける印象も違うのかもです。
ガリレオ・ニュートン・アリストテレス・フランクリン・・・。彼らが確立し、現代では常識となっているサイエンスが、当時世間からどのように評価されていたか。
科学者の常識は世間の非常識。そういう意味で裏面科学史的な本だと思いましたが、理論へのツッコミは結構深く、文系の小生はちょっときつかったです・・・。物理とかサイエンス系素養がある方が読めば理解度が異なり受ける印象も違うのかもです。