サヨクな人々に精神的自立性がなく、主人持ちの未解放な思考になってしまう理由に、サヨクの本家たるマルクス主義が、権威主義的パーソナリティの持主によって創始されたことがあろう。私は十代の頃からマルクスを読んできたが、結局好きになれなかったのは、断定調で威圧的な権威主義的文体のためだ。翻訳が悪いと言う人もいるが、それはそのような翻訳をする日本のマルクス学者が権威主義的だということだろう。
最近、サヨクな人々の心理学的解明の一助にと、本書を読んだ。シンガーは動物解放論者で、生命倫理学や環境倫理学でも知られた人物だ。その、左派を自認するシンガーでさえ、「共産主義運動は、そもそもマルクスその人以来、権威主義的な人物が支配し続けていた」と書いているのには笑えた。
日本サヨクの場合、マルクス主義の権威性に加えて、拝外主義(外国崇拝)の問題がある。遣唐使の頃から明治の文明開化に至るまで、日本では権威は外国から来るのだ。日本サヨクにとって最大の権威は、かくして、毛沢東ということになる。その最大の権威が作り上げた北京政府が、チベットなど少数民族を弾圧するなど、信じたくないのは無理もない。
いくら信じたくなくとも、事実として認めざるを得なくなると、そのうちサヨクな人々は、変質した中国はもはや社会主義とは何の関係もない、などと言い出すかもしれない。現に、北朝鮮は社会主義とは何の関係もない、という「社会主義者」が、拉致事件以来、出現している。
こういうのを、トカゲの尻尾切り、というのだろう。北朝鮮は極端としても、世界にかつて出現した社会主義国で、独裁的全体主義的にならなかった例が皆無だということからしても、心理学的に見て、独裁と全体主義は社会主義の必然と言わねばならない。帝政ロシアのツアーリズムや朝鮮王朝の儒教的封建的風土のせいにする向きもあるが、そもそも、封建主義と社会主義の間に、精神構造に共通点あったからこそ、そのような国で社会主義革命が成功したのだと、見るべきだろう。
数年前、カナダにいたころ、leftist(左派)を自認する青年と議論したことがあるが、「北京政府は世界最悪の政府だ」と言っていたのが、印象に残った。その当時はちょっとびっくりしたが、今から思えば、その当時から、欧米の左翼の間では、北京政府によるチベットや東トルキスタンへの弾圧が批判の的になっていたと腑に落ちる。
ところで、左派(leftist)の定義だが、シンガーによると、虐げられた弱い立場の人々の側に常に居ようとする人が左派で、「マアしょうがない」と肩をすくめるのが右派だそうだ。この定義に従えば、5年前の北京五輪の前の聖火リレーの際、チベット国旗を買い求めて長野に行ったインターネット市民の若者たちが左派で、沈黙を守り続ける日本の「人権派」「平和団体」や、進歩的マスコミ幹部などは右派だという結果になるのが笑える。
このままでは日本サヨクは、博物館送りになればまだマシな方で、少数民族抑圧の加担の咎で、末永く悪名をとどめてしまうだろう。少数派の側に立ちつつ、昨日よりも今日、今日よりも明日と、少しでもよりよき社会を目指すために、サヨク的社会主義的な思想・メンタリティがかえって障害となるとすれば、いったいどうしたらよいだろう。
多元主義(pluralism)にその答えがありそうな気がする。
多元主義については、上記のシンガー的意味での真の左派であった生物学者の柴谷篤弘氏の著書で教えられたのだった。「社会主義」では、名称に社会を個人より上位に置くという意味合いが暗に含まれてしまうために、どんなに注意しても全体主義を呼び込んでしまうというのだ。
私なりの解釈では、多元主義の真髄は、Nous ne sont pas sous le meme ciel.(私たちは同じ空の下にはいない)の一句で言い表される。「話せば分かる」というのは大間違いなので、話せば話すほど、お互いが同じ空の下にいないことが明白になって、最初の相互理解の意気込みが、しまいに憎悪に変ってしまうのだ。殺し合いにさえ、発展しかねない。
だから、「私にはあなたが理解できないが、あなたも私のことが理解できないのだから、勘弁して欲しい。理解できないことを、お互いに認め合い、理解できないものをお互いに尊重しあって、別々に生きることにしましょう」というのが賢明ということになる。
そんなことを、読み終わってから考えた。
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現実的な左翼に進化する 進化論の現在 (シリーズ進化論の現在) 単行本(ソフトカバー) – 2003/2/24
右も左もよくわからない現在・・・・・・「正しく」リベラルであるとはどういうことでしょう?気鋭の哲学者が示す、「これからを生きる」新しいパラダイム!
- 本の長さ128ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2003/2/24
- ISBN-104105423053
- ISBN-13978-4105423056
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
共産主義国家が崩壊し、冷戦が終わり、労働運動も衰退した現在、貧富の差を無くし、不平等を根絶しようとしたあの「左翼」はどうなってしまったのか。「進化論的に正しく」「政治的に正しく」サヨクであるための方法論を伝授。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2003/2/24)
- 発売日 : 2003/2/24
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 128ページ
- ISBN-10 : 4105423053
- ISBN-13 : 978-4105423056
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,009,706位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2006年8月11日に日本でレビュー済み
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政治運動としての左翼は社会主義圏の崩壊とともに弱体化したが、人間精神における左翼は決してともし火を失っていない。なぜなら左翼の本質とは私有財産の否定とか、人間の無限の可塑性とか、人間の無限の教育可能性の神話ではなく、他の感情を持つ個体への共感にあるからだと著者は言う。
私は彼の功利主義的な議論には大賛成であり、左翼が平等を目指すことそれ自体は人間の利他性の表れであり、高尚なものだと思う。問題があるとするなら、彼が理想とするような利他性を政府を通じて強制的に実現しようとすることだけである。
これからの左翼が目指すべきなのは、NPOなどのように一人ひとりの実践を通じての個別的な利他行動であり、20世紀までのように暴力によって強制される政治システムによる所得の再分配などではないと思われる。
私は彼の功利主義的な議論には大賛成であり、左翼が平等を目指すことそれ自体は人間の利他性の表れであり、高尚なものだと思う。問題があるとするなら、彼が理想とするような利他性を政府を通じて強制的に実現しようとすることだけである。
これからの左翼が目指すべきなのは、NPOなどのように一人ひとりの実践を通じての個別的な利他行動であり、20世紀までのように暴力によって強制される政治システムによる所得の再分配などではないと思われる。
2003年6月23日に日本でレビュー済み
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