久しぶりに行間の読解を要求される作品を読んだなという印象です。
構造的には「バベットの晩餐会」という小説が少し近いでしょうか。
この作品で描かれているのは「宗教的な見識はないけれど、聖人のように一生を過ごした女性ソーネチカの崇高さ」だと思います。
というのも、ソーネチカはそうと知らないうちに宗教的に崇高とされる(おそらくユダヤ教関連の)振る舞いをずっと続けています。
・恩寵への感謝
自分の人生に急に現れた幸福を「誰かのものが間違って与えられた」という受け取り方をして、
いつもそれが存在するだけで感謝をしている。
・崇拝
夫ロベルトの芸術家としての才能を崇めている(引いてはそれを自分の人生に与えてくれた神を崇めている)。
・施し
生気を失ったロベルトという男に、新たな命を与えた。
またヤーシャという恵まれない女性にたいしても、彼女がおそらく最も求めていたであろう、家族としての愛情を与えている。
・赦し
夫ロベルトとヤーシャの不貞への赦し。
普通はまずできない成人のような振る舞いだと思いますが、これを可能にしたのは、彼女の読書家という特性ですね。
あまりにも熱心な読書家なので、現実と遜色ないほど本の世界に没頭してしまう。
それゆえに、現世(浮世)のことをあくまで一つの物語として捉え、達観した受け取り方ができたのでしょう。
最初はすべてを失って流れ着いてきた夫ロベルトへ、次は愛娘のターシャへ、そして最後には孤児のヤーシャへ。
ソーネチカは惜しむことなく愛情を与え続けました。
見返りとして得たものはあまり多くありません。むしろ愛情を得て、生気を得た彼ら彼女らは、ソーネチカの元から去っていきました。
この容赦ないリアリズムがあるからこそ、宗教的な崇高さ、つまりはソーネチカという女性の崇高さが際立って清廉に感じられるのですね。
しかし、老年のソーネチカもおそらく幸せなままでしょう。
なぜなら幸せというのは何を得たとか、何をしてもらったとかではないからです。
彼女はこの世で与えられたすべてのものに感謝し、愛し、大切にしました。だから幸せなのですね。
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ソ-ネチカ (Shinchosha CREST BOOKS) 単行本 – 2002/12/20
リュドミラ ウリツカヤ
(著),
沼野 恭子
(翻訳)
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- 本の長さ142ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2002/12/20
- ISBN-104105900331
- ISBN-13978-4105900335
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【新潮クレスト・ブックス】リュドミラ・ウリツカヤ 作品 | 本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカ。最愛の夫の秘密を知って彼女は……。神の恩寵に包まれた女性の、静謐な一生。あたたかく深く、幸福な感動を残す愛の物語。 | 彼女が語った波瀾万丈の生いたちが、全くの嘘だったとしたら!もう一人の自分の物語を生きる女たちの、面白く哀しく、ときに微笑ましい人生。六篇の連作短篇集。 | 短篇小説はこんなにも自由だ!ミランダ・ジュライ、ラヒリ、イングランダーのフランク・オコナー国際短篇賞受賞の3冊を含む 11 冊から厳選。創刊 15 周年特別企画。 | 中庭のあるアパートに住む子供たちが出会った奇跡。「キャベツの奇跡」「つぶやきおじいさん」「折り紙の勝利」等、祝福されたかけがえのない時に心打たれる六篇。 | 自分の死が受け入れられ皆が愛で満たされるように、何が出来るだろう。亡命ロシア人画家アーリクの最期の贈り物とは。不思議な祝祭感と幸福感に包まれる中編小説。 | いつも文学だけが拠りどころだった――。スターリンが死んだ一九五〇年代初めに出会い、ソ連崩壊までの激動の時代を駆け抜けた三人の幼なじみを描く群像劇。近年ではノーベル文学賞候補にも目される女性作家が、名もなき人々の成長のドラマを描き、強大なシステムに飲み込まれることに抗する精神を謳いあげた新たな代表作。 |
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカ。最愛の夫の秘密を知って彼女は…。神の恩寵に包まれた女性の、静謐な一生。幸福な感動を残す愛の物語。フランスのメディシス賞、イタリアのジュゼッペ・アツェルビ賞受賞作。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2002/12/20)
- 発売日 : 2002/12/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 142ページ
- ISBN-10 : 4105900331
- ISBN-13 : 978-4105900335
- Amazon 売れ筋ランキング: - 117,161位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年4月11日に日本でレビュー済み
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やや芸術よりな作風で重厚というほどの文量には至っていない 同作者のクコツキィーの症例の簡易版といった感じ これを読むならクコツキィーを薦める 明るい女性の出世物語とかではないので読後感が悪いかも 、古典なロシア文学を現代風に読みたい方はどうぞ ただ時代背景は古いので古典風な絵面である
2024年5月28日に日本でレビュー済み
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4分の1ぐらいまで読んだのかな。読み終える自信がないわ。
2011年7月23日に日本でレビュー済み
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娘が、かわいそうな孤児の女友達を家に連れてくる。彼女は少女のころから生きていくためには何でもやってきた。
彼女は美しく、本好きで、生まれながらのデリカシーも持ち合わせていた。 ソーネチカは、同情し、家族同様に面倒を見るが、その彼女が愛する夫とできてしまう。
ひとはこんな時、どんな態度を取るだろう。「恩を仇で返す薄汚いめす犬!」などとののしるだろうか。
ソーネチカはこんなふうに考える。
「あの人のそばに、若くて、きれいで、やさしくて、上品なあの子がいてくれたら、こんないいことはない。優れているところも非凡なところも、あの人と釣り合っているもの。
人生ってなんてうまくできてるんだろう、老年にさしかかったあの人にこんな奇蹟がおとずれて、あの人のなかの一番大事なもの、絵の仕事にもう一度立ち戻らせてくれたなんて」
ソーネチカはいまや、夫も、娘も、家も自分のものでなく、自分には何もないということを悟る。そしてただ、愛する人たちの幸せだけを願う。
小説の持つ大きな力は、こういうふうに考え、生きてゆく人もいるのだと読者に納得させることである。そして、この中編もまた、作者が登場人物を愛することによってその大きな力を持っている。
世の中にはたしかに、ソーネチカのように考え、生きる人もいるのだ。
ちっぽけなエゴにとらわれ、何か事があるとすぐおどおどとまわりを見回す習性を持つわれわれには、すべてを受け入れ、すべてを失くした彼女が、なにを得たかを考えることはとても意味のあることではないだろうか。
ロベルトが死ぬまでの、ロベルトとヤ―シャとソーネチカの絆、彼が死んでからのヤ―シャとソーネチカの絆のことを思う。それはまさに「神に祝福された」絆ではないだろうか。
彼女は美しく、本好きで、生まれながらのデリカシーも持ち合わせていた。 ソーネチカは、同情し、家族同様に面倒を見るが、その彼女が愛する夫とできてしまう。
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「あの人のそばに、若くて、きれいで、やさしくて、上品なあの子がいてくれたら、こんないいことはない。優れているところも非凡なところも、あの人と釣り合っているもの。
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ソーネチカはいまや、夫も、娘も、家も自分のものでなく、自分には何もないということを悟る。そしてただ、愛する人たちの幸せだけを願う。
小説の持つ大きな力は、こういうふうに考え、生きてゆく人もいるのだと読者に納得させることである。そして、この中編もまた、作者が登場人物を愛することによってその大きな力を持っている。
世の中にはたしかに、ソーネチカのように考え、生きる人もいるのだ。
ちっぽけなエゴにとらわれ、何か事があるとすぐおどおどとまわりを見回す習性を持つわれわれには、すべてを受け入れ、すべてを失くした彼女が、なにを得たかを考えることはとても意味のあることではないだろうか。
ロベルトが死ぬまでの、ロベルトとヤ―シャとソーネチカの絆、彼が死んでからのヤ―シャとソーネチカの絆のことを思う。それはまさに「神に祝福された」絆ではないだろうか。
2010年1月25日に日本でレビュー済み
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読みやすく、ふーん、と読了し、これでおしまいか、「停電の夜」同様、評判ほどじゃないな、こんなもんか、と思ったら、3日後ずしーんときました。
ずしーんはなんなんでしょう。上のレビュアーのかたのように、
確かに「かわいい女」をほうふつとさせます。
なんでも肯定する主人公の生きかたはたしかに同じですが、
チェーホフの「かわいい女」は目の前の愛の対象への没入ぶりが、
過去のふっきりぶりの爽快さがキャラクターを立たせていますが、
本作の主人公は過去をふっきってはいません。
「あたしの人生にしたら、マシなもんだわ」という
『あきらめの女』っぷりがすごいのです。
これは中島みゆきや日本の演歌の感性に近いのではないでしょうか?
作者は東洋的ともいえる「諦念」の人です。
最近作「通訳ダニエル・シュタイン」での物語る力には
脱帽しました。というか、魂、揺さぶられました。
同じ新潮社のクレスト・ブックスシリーズから出ています。
ぜひご一読をおすすめします。びっくりします。
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「あたしの人生にしたら、マシなもんだわ」という
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ぜひご一読をおすすめします。びっくりします。
2020年1月26日に日本でレビュー済み
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ふと、ソルジェニーツィンの『マトリョーナの家』を思い出した。マトリョーナとソーネチカ、時代も生き方もまったく違うけど、ソルジェニーツィンとリュドミラ・ウリツカヤが伝えたかったことというのは、実は同じことだったのかもしれないと思った。
2018年9月7日に日本でレビュー済み
P106〜107の文章がたいへん哀しい。
ソーネチカの悲しみが静かにじんわり伝わってきてしんみりしてしまう。
P114も悲しい。淡々と描かれているが、とても伝わってきます。
後半の「レアとラケル」にたとえられるシーンも印象的。
心優しく聡明なソーネチカ。
ソーネチカの悲しみが静かにじんわり伝わってきてしんみりしてしまう。
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心優しく聡明なソーネチカ。
2012年7月6日に日本でレビュー済み
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中編小説。ソビエト政権下での、ソーネチカという女性の数奇な一生の物語。読書好きだが、容姿のぱっとしない少女ソーネチカ。図書館で働くことになった彼女はそこで閲覧者のひとりロベルト・ヴィクトロヴィッチに逢い、プロポーズを受け、結婚(ふたりともユダヤ人)。ヨーロッパのあちこちを転々とし、反体制的な彼との幸せな結婚生活。ふたりはターニャという娘を授かる。
そのターニャが18歳になり、学校の掃除婦であり同級生のヤーシャというポーランドの女の子と仲良しになる。ところが、夫のロベルトがヤーシャと愛人関係におちいり、最後は腹上死(?)。
ソーネチカは裏切り、失望のなかでも全てを受け入れ、パーキンソン病の晩年を過ごして行く。著者はひとりの女性の一生を賞賛するでもなく、非難がましく見つめるでもなく、淡々と描いていく。
訳者はこの小説をひとことで言い表すなら、平凡な女性の非凡な物語と評している(p.137)。ロシアでは当初目立った評価がなかったがフランスのメディシス賞(1996年)、イタリアのジュゼッペ・アシェルビ賞(1998年)をそれぞれ受賞。ウリツカヤは2001年、「クコツキーの事例」でロシア・ブッカー賞受賞。現在、ロシアで人気と実力をそなえた作家のひとりである。
そのターニャが18歳になり、学校の掃除婦であり同級生のヤーシャというポーランドの女の子と仲良しになる。ところが、夫のロベルトがヤーシャと愛人関係におちいり、最後は腹上死(?)。
ソーネチカは裏切り、失望のなかでも全てを受け入れ、パーキンソン病の晩年を過ごして行く。著者はひとりの女性の一生を賞賛するでもなく、非難がましく見つめるでもなく、淡々と描いていく。
訳者はこの小説をひとことで言い表すなら、平凡な女性の非凡な物語と評している(p.137)。ロシアでは当初目立った評価がなかったがフランスのメディシス賞(1996年)、イタリアのジュゼッペ・アシェルビ賞(1998年)をそれぞれ受賞。ウリツカヤは2001年、「クコツキーの事例」でロシア・ブッカー賞受賞。現在、ロシアで人気と実力をそなえた作家のひとりである。