「カナダへ移住したロシア系家族の人生」などと言われれば、
涙がつきものの苦労話なのかと思ってしまう。
ところがこの物語には感傷的なところがない。
むしろ訥々とした語り口に、
その下にとてつもなく熱い感情を隠しているのではないかと思わせる何かがある。
これがデビュー作となる作者は、主人公マークと同じく移民の子だ。
マークとともに、否応なく作者の成長も綴られる。
子ども、親、仕事、宗教、生活、恋・・・。
家族を取り巻くあらゆるテーマが、それぞれの短編から読み取れるだろう。
静かに、誰かの人生を味わってみるのも悪くない。
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ナターシャ (新潮クレスト・ブックス) 単行本 – 2005/4/1
デイヴィッド・ベズモーズギス
(著),
小竹 由美子
(翻訳)
- 本の長さ196ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2005/4/1
- ISBN-104105900463
- ISBN-13978-4105900465
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2005/4/1)
- 発売日 : 2005/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 196ページ
- ISBN-10 : 4105900463
- ISBN-13 : 978-4105900465
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,119,245位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,699位ロシア・東欧文学研究
- - 16,116位英米文学
- カスタマーレビュー:
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2005年8月29日に日本でレビュー済み
旧ソ連邦ラトヴィア共和国からカナダに移民した一家を主人公とした連作短編。もちろん、自分とは違う環境での生活や価値観への興味、いわゆる「移民文学」として読むことも出来るけど、普遍的な“普通の人々の物語”として読めてしまうのが、この作品の魅力だ。特に、一人息子マークがこどもから大人になっていく過程の心理なんかは、万国共通と言うか、少なくとも僕は、過ぎ去りし日々を甘く切なく思い出してしまった。
こどものつく浅はかな嘘とか、人前での親の行動がめちゃ恥ずかしくってしょうがない場面とか、初めての目くるめく快感と幸福感とか...特に、最後に挙げた「目くるめく快感と幸福感」ってのは、永遠に続くものだと勝手に思ってるんだよね、その時は。終わりはあっけなくやってくる訳だけど。そして“初恋”は決して二度とはやってこない。血のつながってない“いとこ同士”っていうシチュエーションも、幼いエロティックな関係でとても良い。ひとつの関係が終わったときの、少年の無力感、いつか変わってやる、見返してやるみたいな瞬間的な思いなんてのも、とってもわかる、というか思い出した。
あと、このマーク少年をはじめ、一見他人任せ、“なんでも他人に決めてもらいたい”ってタイプの人々に対するシンパシーも感じる。声の大きい人、要領のよい人、人生うまくやってる人のお話は、もう充分って気がする。“普通の人々”の人生もぜんぜん悪くない。この本の中の言葉を借りれば、「世界には使命もなければ意味もない、ただ喜びの可能性があるだけだ」ってことだ。とても素敵な言葉だと思う。
こどものつく浅はかな嘘とか、人前での親の行動がめちゃ恥ずかしくってしょうがない場面とか、初めての目くるめく快感と幸福感とか...特に、最後に挙げた「目くるめく快感と幸福感」ってのは、永遠に続くものだと勝手に思ってるんだよね、その時は。終わりはあっけなくやってくる訳だけど。そして“初恋”は決して二度とはやってこない。血のつながってない“いとこ同士”っていうシチュエーションも、幼いエロティックな関係でとても良い。ひとつの関係が終わったときの、少年の無力感、いつか変わってやる、見返してやるみたいな瞬間的な思いなんてのも、とってもわかる、というか思い出した。
あと、このマーク少年をはじめ、一見他人任せ、“なんでも他人に決めてもらいたい”ってタイプの人々に対するシンパシーも感じる。声の大きい人、要領のよい人、人生うまくやってる人のお話は、もう充分って気がする。“普通の人々”の人生もぜんぜん悪くない。この本の中の言葉を借りれば、「世界には使命もなければ意味もない、ただ喜びの可能性があるだけだ」ってことだ。とても素敵な言葉だと思う。
2005年7月5日に日本でレビュー済み
カナダへ移住したロシア系ユダヤ人一家が、新しい地で生活を築いていく姿を描く連作短編集だ。ロシア系ユダヤ人……ロシアでもユダヤ人だということで差別され、カナダでも移民として苦労する。でも本当に苦しいことって、小説というかたちでしか書けないのかもしれない。そのために小説ってあるのかもしれない、と感じさせる1冊だ。
冒頭の「タプカ」は、両親とともに言葉も生活様式も違う国で暮らし始めたマークが、同郷の老夫婦が溺愛している犬を不注意で事故に遭わせてしまう。しかもその犬は、マークの初めての友達、というなんとも悲哀と皮肉に溢れる物語。でも読み手はこれで、マークがこれから遭遇していくであろう、哀しみとやるせなさと一抹の滑稽さを予測できるのだ。
苦労してマッサージ治療院を開き、客集めに奔走するマークの父が、成功したユダヤ人医師の優越感に打ちのめされる「マッサージ療法士ロマン・バーマン」。16歳になりいっぱしの男を気どるマークが、不機嫌で奔放な従妹に振りまわされる表題作。シナゴーグつきの老人用アパートに入居した祖父を訪ねるマークが、アパートの住人の哀しくも滑稽な生活を垣間見る「ミニヤン」。
淡々とした語り口の中にうねるような感情や人生の真実が潜んでいて、胸をわしづかみにされる。いつの間にかマークを応援している。個性的な作家マイケル・シェイボンが気に入ったのもうなずける作品だ。
冒頭の「タプカ」は、両親とともに言葉も生活様式も違う国で暮らし始めたマークが、同郷の老夫婦が溺愛している犬を不注意で事故に遭わせてしまう。しかもその犬は、マークの初めての友達、というなんとも悲哀と皮肉に溢れる物語。でも読み手はこれで、マークがこれから遭遇していくであろう、哀しみとやるせなさと一抹の滑稽さを予測できるのだ。
苦労してマッサージ治療院を開き、客集めに奔走するマークの父が、成功したユダヤ人医師の優越感に打ちのめされる「マッサージ療法士ロマン・バーマン」。16歳になりいっぱしの男を気どるマークが、不機嫌で奔放な従妹に振りまわされる表題作。シナゴーグつきの老人用アパートに入居した祖父を訪ねるマークが、アパートの住人の哀しくも滑稽な生活を垣間見る「ミニヤン」。
淡々とした語り口の中にうねるような感情や人生の真実が潜んでいて、胸をわしづかみにされる。いつの間にかマークを応援している。個性的な作家マイケル・シェイボンが気に入ったのもうなずける作品だ。