本書は、ニーチェの言葉（箴言）を引用し、それを嚙み砕いて解説したもの。
この種の本は多くあるが、本書はニーチェの著書だけでなく、「遺された断
想」からも箴言が採用され、その言葉の引用先もしっかりと明記されている
ので、読者にとって使い勝手が良いものになっている。
著者は、ニーチェの主要な作品だけでなく「遺された断想」にも目を通した上
で、その思想の輪郭を示す、あまり知られていないが、魅力的な言葉を紹介し
ている。そのため、ニーチェの読者にも新たな発見があり、楽しめるだろう。
たとえば、著者は「遺された断想」を読んだことで、ニーチェへのエマソンの
影響について指摘する。また、ニーチェが少年時代に生真面目なキリスト者で
あったが故に、キリスト教批判に向かったのだと論じる。このような著者の解
釈を通して、ニーチェの言葉の奥深さについて改めて考えさせられた。
ただ、残念なのは書名である。『人生を考えるヒント』では穏健な人生論と誤
解されてしまうのではないか。そもそもニーチェの思想は、そして著者の考え
方もそんなに常識的なものではない。ニーチェの言葉をめぐるエッセイである
ことを強調した方が、本書の実態に合っているのではないかと思う。
ニーチェの再読につながる１冊であり、オススメ。
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