トルコの南に位置するがEU加盟国であり、アフロディーテが流れ着いたとされるキプロス共和国について、日本語による情報はかなり限られている中、貴重な本。前半3分の1以上が、これまでのキプロスの歴史についての記述で、残りが著者による紀行文。
それまでもオスマン帝国は財政難で異教徒への重税を課していたといった他の要因もあったものの、1878年、ロシアに負けたオスマン帝国からキプロスを「租借」したイギリスが植民地としてから、ギリシア系とトルコ系の対立が生まれたようだ。トルコ系に言わせると、1878年以降、イギリスがギリシア系の移民を勧めたことで、トルコ系が少数派になってしまったとのこと。オスマン帝国が終わってアタチュルクがトルコ共和国を設立すると、その2年後にイギリスはキプロスを直轄植民地へ。
いずれにしても「それ以前は平和に暮らしていた」のかどうかはきちんと調べる必要はあるが、イギリスがどさくさに紛れてキプロスを植民地にした間に、ギリシア系とトルコ系の民族対立が悪化したことは確かなようだ。
1974年のギリシア軍事政権が煽ったクーデターを口実に、トルコ軍が侵攻、北部37%を占拠。トルコ軍の南下によって、ギリシア系住民は移住を余儀なくされた。
後半の紀行文は、もちろん興味深いのだけど、旅行記としてはややありきたりな印象で、そんなに驚きはなかった。また、平和を祈る気持ちからとは思うが、「また紛争など起こすなよ」とやや上から目線の記述が気になる。
現地の人の話を聞くと、1970年代を知る世代は、日頃は表に出さないものの、わだかまりを抱えて生きている印象を受ける。日本人の間で話題になることはまずない国だが、訪れる機会のある人は読んでみると良いと思う。
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キプロス島歴史散歩 (新潮選書) 単行本 – 2005/5/24
澁澤 幸子
(著)
地中海世界の攻防史が一望できる、ヨーロッパ史を凝縮したような島。類のない案内書。
神話の浜、ギリシアの神殿、ローマの劇場、十字軍の城にオスマンのモスク……。めくるめく九千年の歴史を持つ島。一九七四年の紛争後は南北に分断された島。ヨーロッパ人に陽光溢れるビーチリゾートとして愛される島。名前は知っていても日本人にはなじみ薄いキプロスの、歴史、現状、見所を、懇切かつ生き生きと紹介した快著。
神話の浜、ギリシアの神殿、ローマの劇場、十字軍の城にオスマンのモスク……。めくるめく九千年の歴史を持つ島。一九七四年の紛争後は南北に分断された島。ヨーロッパ人に陽光溢れるビーチリゾートとして愛される島。名前は知っていても日本人にはなじみ薄いキプロスの、歴史、現状、見所を、懇切かつ生き生きと紹介した快著。
- 本の長さ250ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2005/5/24
- ISBN-104106035502
- ISBN-13978-4106035500
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2005/5/24)
- 発売日 : 2005/5/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 250ページ
- ISBN-10 : 4106035502
- ISBN-13 : 978-4106035500
- Amazon 売れ筋ランキング: - 777,003位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,030位紀行文・旅行記
- - 9,205位海外旅行ガイド (本)
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2023年7月15日に日本でレビュー済み
2018年6月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
トルコ研究家である澁澤龍彦の妹さん、澁澤幸子さんの著書。とは知らずキプロス旅行後、購入。キプロスは地中海の中でも、まだまだラフで乾いた島です。トルコとギリシャの間にあり、実に様々な文化、宗教、民族が入り混じっています。話の世界が本当に実在したと思わせてくれる土地で、もっと知識があればもっと楽しめた…と後悔しながら読みました。2005年の著なので情報としてはすこし古い部分もありますが、もう一度行きたい気持ちが加速しました。
2018年10月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
キプロスに行く前に購入しました。
北キプロスにも泊まったのですが、未だに未承認国家なので、何しろ情報が少なく
「地球の歩き方 トルコ」にも10ページしか載っていなかったのですが、
この本ではさすが、渋澤幸子さんが各地域の歴史も、詳しく掘り下げ書かれていてとても分かりやすく、行く前はもちろん、北キプロス滞在中もこの本を読み、
また、帰国後も読み直した、私にとってキプロスのバイブルになりました。
もう10年以上前に書かれた本ですが、あまり状況は変わってない気がしました。
(特に今はトルコリラが暴落しているので)
北キプロスにも泊まったのですが、未だに未承認国家なので、何しろ情報が少なく
「地球の歩き方 トルコ」にも10ページしか載っていなかったのですが、
この本ではさすが、渋澤幸子さんが各地域の歴史も、詳しく掘り下げ書かれていてとても分かりやすく、行く前はもちろん、北キプロス滞在中もこの本を読み、
また、帰国後も読み直した、私にとってキプロスのバイブルになりました。
もう10年以上前に書かれた本ですが、あまり状況は変わってない気がしました。
(特に今はトルコリラが暴落しているので)
2006年1月15日に日本でレビュー済み
筆者がトルコ研究家ということもあり、確かにトルコ贔屓の視点で書かれた本のようですね。私はギリシャ側からアプローチした本が欲しかったので、やや期待外れでした。
しかし内容的にはありきたりの旅行ガイドでは読めない深いものがあり、教養本としては面白かったです。
しかし内容的にはありきたりの旅行ガイドでは読めない深いものがあり、教養本としては面白かったです。
2005年6月13日に日本でレビュー済み
澁澤さんの著書はトルコ愛好家にとっては必読だが、今回キプロスが追加になった。今までの日本人のキプロスについての知識は、全くない、か英国寄り、つまりはギリシャ寄りのものばかりだったと思う。評者の場合も知人の英国人から、あるいは英国人作家の本からの知識ばかりだった。ところが、澁澤さんは、キプロスがトルコとギリシャの狭間で歩んだ苦難の歴史を、トルコ側の視点も紹介しつつ、第三者の目で、一気に読ませてくれる。目からうろこの一冊。但し、紀行文ではないため、歴史的記述に多くが割かれた結果、今までの澁澤さんの本の魅力だった体験談の部分は少ないのが残念。ギリシャ史、民族問題に興味ある人にとっても必読。