DNA、RNAについての基礎知識、常識、通説をほとんどインプットせずに読むと、最後まで読み通しても、結局何がなんだか分からなかった。
DNAとは何か、RNAとは何か、それらの概念が活躍する世界とは大体どのようなものなのか、といった「全体像」を、最後までつかむことができなかった。
説明のしかたが、学者同士で会話している感じで、「新書」の想定読者層たる一般人にとっては難解。果たして著者の主張が妥当なのか、学術的に価値ある言説なのか、この本に立脚して話を進めていいのか、まるでそうでないのか、判断がつかない。もっと欄外注や補足資料などで「基礎知識」の「平易な」解説を充実させてほしかった。
最終章でいきなり哲学書の趣を呈したが、それまでの内容との脈絡が感じられず、滑稽で陳腐な印象を受けた。
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脱DNA宣言: 新しい生命観へ向けて (新潮新書 232) 新書 – 2007/9/1
武村 政春
(著)
いまやDNAの天下である。個人の外見や体質はもちろん、性格や運命までもがDNAに支配されているかのような言説が幅を利かせている。しかし、実は最新の科学では、DNAの絶対的地位は揺らぎつつあるのだ。気鋭の生物学者がわかりやすくユーモラスに遺伝の基礎知識からRNA研究の最前線までを解説。そろそろDNA至上主義から解放されようではないか。その先には新しくて自由な生命観が待っているのだから。
- 本の長さ186ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2007/9/1
- ISBN-104106102323
- ISBN-13978-4106102325
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商品の説明
抜粋
まえがき
今の世はDNAの時代だ、などと言われることがある。
DNA産業と呼ばれるビジネスも盛んになってきた。
ヒトゲノム、すなわち私たち人間の全DNAの塩基配列が解読され、その体を作り出しているもととなる情報が全てわかり、私たちの一生はそれこそDNAに全て支配されているといったような、何となく恐ろしげで、かつ人々の不安をかきたてる物言いが、そこここで安易に成される時代になった。そしてこのことは、今やほぼ、この人間社会の常識にもなっているに等しい。
しかし、である。
常識を疑ってかかることは、じつは科学の発展、そしてときには社会の発展に非常に大切なことであると、私はここで声を大にして言いたい衝動に駆られている。
この本ではDNAにおける常識、そしてDNAといえばすぐに連想される「遺伝子」における常識について、ひとつ疑ってかかりたいと思っている。
DNAの時代という物言い、あるいはDNA産業それ自体には、倫理的問題が様々につきまとうにせよ、まだ許容できる範囲内にある。
しかしながら、そうしたことに踊らされて、冒頭に述べた「生物はDNAに支配されている」といったような、何となくほぼ常識になってしまった考え方に縛られてしまうのはよくないのではないかと思うのだ。
そしてその結果もたらされた、現代日本社会に蔓延しつつある「DNA至上主義」という「何となく常識」は、ぜひとも疑ってかかる必要がある。いや疑ってかかる、というよりも本書を読了されたあとには、そのような「何となく常識」はひっくり返っていることを保証しよう。「DNA至上主義」とはここでは私が勝手に作った言葉だけれども、それは要するに、最後に「DNA」を持ち出せば何でも解決されるだろうという、安易な考え方のことである。
そもそも「DNA」とは? そして「遺伝子」とは、果たしてどういうものなのだろうか?
じつは最近の「DNAブーム」の根底には、DNAのこと、遺伝子のこと、そして生命現象のことがあまり理解されずに行われる「空騒ぎ」があるのではないか、そんな気がしてならないのだ。
今の世はDNAの時代だ、などと言われることがある。
DNA産業と呼ばれるビジネスも盛んになってきた。
ヒトゲノム、すなわち私たち人間の全DNAの塩基配列が解読され、その体を作り出しているもととなる情報が全てわかり、私たちの一生はそれこそDNAに全て支配されているといったような、何となく恐ろしげで、かつ人々の不安をかきたてる物言いが、そこここで安易に成される時代になった。そしてこのことは、今やほぼ、この人間社会の常識にもなっているに等しい。
しかし、である。
常識を疑ってかかることは、じつは科学の発展、そしてときには社会の発展に非常に大切なことであると、私はここで声を大にして言いたい衝動に駆られている。
この本ではDNAにおける常識、そしてDNAといえばすぐに連想される「遺伝子」における常識について、ひとつ疑ってかかりたいと思っている。
DNAの時代という物言い、あるいはDNA産業それ自体には、倫理的問題が様々につきまとうにせよ、まだ許容できる範囲内にある。
しかしながら、そうしたことに踊らされて、冒頭に述べた「生物はDNAに支配されている」といったような、何となくほぼ常識になってしまった考え方に縛られてしまうのはよくないのではないかと思うのだ。
そしてその結果もたらされた、現代日本社会に蔓延しつつある「DNA至上主義」という「何となく常識」は、ぜひとも疑ってかかる必要がある。いや疑ってかかる、というよりも本書を読了されたあとには、そのような「何となく常識」はひっくり返っていることを保証しよう。「DNA至上主義」とはここでは私が勝手に作った言葉だけれども、それは要するに、最後に「DNA」を持ち出せば何でも解決されるだろうという、安易な考え方のことである。
そもそも「DNA」とは? そして「遺伝子」とは、果たしてどういうものなのだろうか?
じつは最近の「DNAブーム」の根底には、DNAのこと、遺伝子のこと、そして生命現象のことがあまり理解されずに行われる「空騒ぎ」があるのではないか、そんな気がしてならないのだ。
「遺伝子」とは何かと言えば、要するにそれは、親から子へと受け継がれる、たんぱく質やRNA(リボ核酸)の「設計図」のことである。発生学的に言えば「プログラム」であるとも言える。そしてこの設計図あるいはプログラムは「DNA」の形で存在することになっている。
本書の基本的なスタンスは、これに対して、「ほんまかいな、うそやろ」と天邪鬼(あまのじゃく)的な疑問を発した上で、新しい考え方を読者諸賢に提示しようというものだ。
何となく面白そうだと思われた方は、ぜひ本書を最後までお読みいただきたい。DNAや遺伝子に対する考え方、心の持ちようが大きく変わって、人生観に「何となく」変化が持てるようになるかもしれない。
「常識」を捨て去り、その陰に隠れていた本当の知識を手に入れる。
科学は常に進歩し続ける。「DNA至上主義」も、いずれは終焉を迎えるのだ。従って、ここでは臆することなく堂々と、声高らかに表明することにしよう。
そう。「脱DNA宣言」を!
著者について
1969(昭和44)年三重県津市生まれ。名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。東京理科大学理学部第一部講師。専門はDNA複製の分子・細胞生物学。著書に『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか』『DNAの複製と変容』『生命のセントラルドグマ』など
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2007/9/1)
- 発売日 : 2007/9/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 186ページ
- ISBN-10 : 4106102323
- ISBN-13 : 978-4106102325
- Amazon 売れ筋ランキング: - 599,813位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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トップレビュー
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2008年6月28日に日本でレビュー済み
現在にも遺伝子で全てがきまっている様な風潮があるがその考えに一石を投じている。
途中までは分子生物学の基礎、発展の歴史がわかり易い文章で書かれているが、
途中からRNAワールドの話に一気に展開してしまい、何をいいたいのが焦点が
絞りきれていない印象をうけた。
途中までは分子生物学の基礎、発展の歴史がわかり易い文章で書かれているが、
途中からRNAワールドの話に一気に展開してしまい、何をいいたいのが焦点が
絞りきれていない印象をうけた。
2007年10月29日に日本でレビュー済み
表題から、分子生物学に対して否定的な印象を受けますが、
中身はバリバリの分子生物学の本です。
内容は、RNAが生命現象の主役であって、
DNA はバックアップコピーに過ぎないという
仮説を最新の各種の研究結果から解説しています。
この本を読んで、RNAの不思議さと、この分野、
まだまだ判らないことだらけだということが
よくわかりました。
著者の主張の正否は別にしても、最近の RNA の
研究成果が手際よくまとまっているので読む価値は
十分にあると思います。
中身はバリバリの分子生物学の本です。
内容は、RNAが生命現象の主役であって、
DNA はバックアップコピーに過ぎないという
仮説を最新の各種の研究結果から解説しています。
この本を読んで、RNAの不思議さと、この分野、
まだまだ判らないことだらけだということが
よくわかりました。
著者の主張の正否は別にしても、最近の RNA の
研究成果が手際よくまとまっているので読む価値は
十分にあると思います。
2009年2月26日に日本でレビュー済み
本書の内容は、安定性の高いDNAではなく、変化しやすいRNAを遺伝の本質として見てみよう、というもの。
その提言自体は、著者も言うように目新しいものではないが、著者はそれを通じて新たな生命観を訴えかけたかった、
つまり、DNAに象徴される生まれ至上主義に、一石を投じたかったのだろう。
その是非はともかくとしても、最近のRNA研究についてコンパクトにまとまっており、とても面白かった。
遺伝に興味のある方なら、一読の価値はあると思う。
ただし、分子生物学についてまったく触れたことがないと、本書の内容はかなり難しいだろう。
その場合、ブルーバックスの新分子生物学入門など、まず他の本で基礎を学んでから読んだほうがよい。
その提言自体は、著者も言うように目新しいものではないが、著者はそれを通じて新たな生命観を訴えかけたかった、
つまり、DNAに象徴される生まれ至上主義に、一石を投じたかったのだろう。
その是非はともかくとしても、最近のRNA研究についてコンパクトにまとまっており、とても面白かった。
遺伝に興味のある方なら、一読の価値はあると思う。
ただし、分子生物学についてまったく触れたことがないと、本書の内容はかなり難しいだろう。
その場合、ブルーバックスの新分子生物学入門など、まず他の本で基礎を学んでから読んだほうがよい。
2008年8月1日に日本でレビュー済み
DNAを絶対視することに対して「もっといろいろ考えてみてもいいんじゃない」といった提言をした本。昨今の目覚しいRNA研究から得られた知見がわかりやすくまとめられているという点では、実によく書けていると思う。
残念だったのは、ボリュームのなさだろうか。本文中で語られている内容は別に真新しいものでもなかったし、考え方としても目がうろこが落ちる、といったレベルの斬新なものではない。しかも文章の書き口が、ある仮説が存在していたときにその仮説を検証するにはいったいどのような実験をしていけばいいのか、というアプローチ重点ではなく、結果だけをつらつらと並べただけであったため、本を読んでその結果「賢くなった」という気が全くしなかった(言葉を変えれば、読みながら読者に頭を使わせる書き口ではないということ)。そこは大いに残念である。
そうは言っても、近年目覚しく発展しているRNA研究をわかりやすくまとめ、「遺伝子」という言葉の再定義を薦めるという本書の主題は注目されるべきであるから、星一つ引いて4つとした。
残念だったのは、ボリュームのなさだろうか。本文中で語られている内容は別に真新しいものでもなかったし、考え方としても目がうろこが落ちる、といったレベルの斬新なものではない。しかも文章の書き口が、ある仮説が存在していたときにその仮説を検証するにはいったいどのような実験をしていけばいいのか、というアプローチ重点ではなく、結果だけをつらつらと並べただけであったため、本を読んでその結果「賢くなった」という気が全くしなかった(言葉を変えれば、読みながら読者に頭を使わせる書き口ではないということ)。そこは大いに残念である。
そうは言っても、近年目覚しく発展しているRNA研究をわかりやすくまとめ、「遺伝子」という言葉の再定義を薦めるという本書の主題は注目されるべきであるから、星一つ引いて4つとした。