サブカルのオマージュが強い小説家、という以外に予備知識はなかったが、潔いタイトルに惹かれて購入。
あっという間に読み終える。
「あっという間に読み終える」本なんて、裏を返せば、それだけ知的負荷の乏しい内容ということで、少なくとも「論」と銘打つかぎり備えておくべき思索的歴程や体系的射程が欠落している、というのが、個人的なこれまでの読書経験にもとづく結論。でも、この「タモリ論」は完全に例外。いまだ知的興奮から脱け出せない。
「人は生きているうちに何度か、人生の通過儀礼として、タモリを刮目して見るときがきます」
著者は書中でこう記している。
この奇妙なレトリックがはらむ、その一方的な断定ゆえの説得力、いや納得力のすごさ。
その納得力に本書全体は貫かれているから、あっという間に読み終えてしまう。
よく目を凝らすと、実にたくみ、かつ、さりげなく思索的歴程や体系的射程が織り込まれていて、こうした行論上のしなやかさ、巧緻さは、まさに小説家としての面目躍如、といったところだろうか。
タモリがさんまを震わせ、さんまがたけしを痺れさせ、たけしがふたりに爆弾を投じる。
三者はそうやっていつしかともに絶望の高みへと上り詰めていく。そして、笑いが、破壊的な笑いが、炸裂する。だからわたしたちは腹を縒って爆笑してしまう。
ビック3はそれぞれ孤独だ。しかし、孤独であるためには仲間が必要なのである、つれない仲間が、人生に直接かかわりあわない仲間が。
本書について「論」ではない、というレビューも散見していて、それもそれなりに一理あるのかもしれないが、文献を渉猟して書ける「論」などたかが知れている。
きっとわたしたちが読みたいのはそのさきだ。「論」を超えた「論」。「論」それ自体が、たくらみと、慎みと、あつかましさと、そして上質の知性をたたえているような「論」。
とにかく愉しい一冊。
ふだん小説など読まないが、この樋口毅宏という人物の小説を読んでみようと思った。
そこにはきっと本書とアングルが違えども、刺激的な、熱狂と絶望の人生論が描かれているような気がする。
個人的に、今年の新書、いまのところベスト1。
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タモリ論 (新潮新書) 新書 – 2013/7/13
樋口 毅宏
(著)
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「タモリが狂わないのは、自分にも他人にも何ひとつ期待をしていないから」(『さらば雑司ヶ谷』より)
小説デビュー作に忍び込ませた「タモリ・エピソード」が話題となった作家・樋口毅宏が、積年の愛を込めて、その狂気と神髄に迫る。
タモリの本当の〈凄さ〉って何だろう――。
なぜ30年以上も毎日、生放送の司会を超然と続けられるのか? サングラスの奥には、人知れぬ孤独や絶望が隠されているのだろうか?
小説デビュー作でタモリへの愛を告白した作家が、秘蔵の「タモリうんちく」を駆使して、その謎めいた正体に迫る。伝説やエピソード、私的「笑っていいとも! 」名場面など、読めば〝タモリ観″が一変する、革命的芸人論。
小説デビュー作に忍び込ませた「タモリ・エピソード」が話題となった作家・樋口毅宏が、積年の愛を込めて、その狂気と神髄に迫る。
タモリの本当の〈凄さ〉って何だろう――。
なぜ30年以上も毎日、生放送の司会を超然と続けられるのか? サングラスの奥には、人知れぬ孤独や絶望が隠されているのだろうか?
小説デビュー作でタモリへの愛を告白した作家が、秘蔵の「タモリうんちく」を駆使して、その謎めいた正体に迫る。伝説やエピソード、私的「笑っていいとも! 」名場面など、読めば〝タモリ観″が一変する、革命的芸人論。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2013/7/13
- 寸法11 x 1.1 x 17.4 cm
- ISBN-104106105276
- ISBN-13978-4106105272
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2013/7/13)
- 発売日 : 2013/7/13
- 言語 : 日本語
- 新書 : 192ページ
- ISBN-10 : 4106105276
- ISBN-13 : 978-4106105272
- 寸法 : 11 x 1.1 x 17.4 cm
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タモリの全てがわかると、期待して読むと、 タモリについての記述が 全体の半分くらいの印象で ちょっと期待はずれ。
どっちかというと ビートたけし や さんま の分析に力が入っている印象で、これはこれで おもしろかったが。
タモリの出演番組については ほとんど 「笑っていいとも」についての 印象、エピソード紹介 で
他の いかにもタモリらしい「タモリ倶楽部」や「ぶらタモリ」についての言及はあまり無い。
まあ、タモリ、たけし、さんま の3大芸人についての 裏話といったところか。
どっちかというと ビートたけし や さんま の分析に力が入っている印象で、これはこれで おもしろかったが。
タモリの出演番組については ほとんど 「笑っていいとも」についての 印象、エピソード紹介 で
他の いかにもタモリらしい「タモリ倶楽部」や「ぶらタモリ」についての言及はあまり無い。
まあ、タモリ、たけし、さんま の3大芸人についての 裏話といったところか。
2022年8月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルの通り、タモリを論じている内容ではないため、出版社に不信感を覚えた。自分の名前をつけて本を出されたタモリに迷惑がかかる。
2022年12月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タモリさんの事がいろいろとわかり良かった。
2014年7月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
拝読して、、、うん、そうそう、と物凄くうなづいた。
作者である樋口さんもおっしゃる通り、何も残らない。
いっそ清々しいまでの1980年代~2000年代までの
お笑い総括話。
というか、TV世代はこれをもって終了。
タモリ論、というタイトルはキャッチーでしたが、叩かれるだろうな、コレ。
作者である樋口さんもおっしゃる通り、何も残らない。
いっそ清々しいまでの1980年代~2000年代までの
お笑い総括話。
というか、TV世代はこれをもって終了。
タモリ論、というタイトルはキャッチーでしたが、叩かれるだろうな、コレ。
2020年1月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タモリと言う人物の再発見の端緒となった点は評価したい。しかし、中盤のビートたけしのくだりは賛否は置くとしても、タモリ論において有効に機能していたとは言いがたく、タモリと言う人間を論じるものとしては物足りなさを覚えた。
2013年10月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
他の方のレビューにもあるように、この内容でこの題名は誤解を生みますね。
「いいとも!考察」「いいとも!にまつわる知られざるBIG3」とかのほうが似合っているかと。
結局のところ、題名から期待していたタモリ氏の奥深さについての文面は、ごく僅かで残念でした。
が、テレビ界が大好きな作者の視点による著作は、私にとって未知の世界だったので、斜め読み的ではありましたが一気に読破させる面白さはありました。
冒頭のエロ業界の件や、BIG3の意外な側面が印象に残り、それなりに楽しめましたので、読んで損は無かったと思います。
「いいとも!考察」「いいとも!にまつわる知られざるBIG3」とかのほうが似合っているかと。
結局のところ、題名から期待していたタモリ氏の奥深さについての文面は、ごく僅かで残念でした。
が、テレビ界が大好きな作者の視点による著作は、私にとって未知の世界だったので、斜め読み的ではありましたが一気に読破させる面白さはありました。
冒頭のエロ業界の件や、BIG3の意外な側面が印象に残り、それなりに楽しめましたので、読んで損は無かったと思います。
2013年7月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あえていま、この時点でタモリを論じる。なぜ?
BIG3と称され、かつてはその過激な芸で世に出たものの、今では平凡な平日午後の日常風景と化してしまっていると思われている、あのタモリを…。
すでにそこに著者の決死の覚悟が見てとれる。
「誰が何と言おうとタモリは凄いんだよ! みんな忘れてるよ! 俺がもう一度、タモリの凄さを世間に教えてやるよ!」と。それもまた半端な熱量ではない。
同時に一見彼単体だけでは見えづらく語りづらいタモリの凄味を、著者はたけし、さんまとの対比によって浮き彫りにしようとするものの、これがまたそれぞれタモリ論とは別途に内容が濃くなり過ぎ、それぞれ独立したたけし論、さんま論にまでなっている(それぞれまた一冊ずつ書けるのではないか)。
お昼時に思わずチャンネルを合わせて見てしまいつつ、吉田修一さんの言葉を引用して語られる通り、「見終えた途端にまったく内容を思い出せない」「笑っていいとも」という''「ゼロ記号的」'番組を毎日30年にわたって受け持ってきたそのタモリの''虚無'とも''絶望'とも''空(くう)'ともいえる境地を指し示す言葉と場面を、著者は記憶をもとに必死にまさぐる。
読み終えてふと、思った。四半世紀を超えて休まずリタイアせず大きな事件も起こさず、ただただテレビと並走し、勤勉さと空虚さ、密やかな狂気を同時に湛えたタモリこそがもっとも「日本人」を象徴している唯一の芸人なのではないか、と。
BIG3と称され、かつてはその過激な芸で世に出たものの、今では平凡な平日午後の日常風景と化してしまっていると思われている、あのタモリを…。
すでにそこに著者の決死の覚悟が見てとれる。
「誰が何と言おうとタモリは凄いんだよ! みんな忘れてるよ! 俺がもう一度、タモリの凄さを世間に教えてやるよ!」と。それもまた半端な熱量ではない。
同時に一見彼単体だけでは見えづらく語りづらいタモリの凄味を、著者はたけし、さんまとの対比によって浮き彫りにしようとするものの、これがまたそれぞれタモリ論とは別途に内容が濃くなり過ぎ、それぞれ独立したたけし論、さんま論にまでなっている(それぞれまた一冊ずつ書けるのではないか)。
お昼時に思わずチャンネルを合わせて見てしまいつつ、吉田修一さんの言葉を引用して語られる通り、「見終えた途端にまったく内容を思い出せない」「笑っていいとも」という''「ゼロ記号的」'番組を毎日30年にわたって受け持ってきたそのタモリの''虚無'とも''絶望'とも''空(くう)'ともいえる境地を指し示す言葉と場面を、著者は記憶をもとに必死にまさぐる。
読み終えてふと、思った。四半世紀を超えて休まずリタイアせず大きな事件も起こさず、ただただテレビと並走し、勤勉さと空虚さ、密やかな狂気を同時に湛えたタモリこそがもっとも「日本人」を象徴している唯一の芸人なのではないか、と。