マキアヴェッリと聴いて、直ぐ思いつくのは「君主論」の著者、権謀術数の教科書。そういう思考となる。
しかしながら、実際の当人はと言うと、その権謀術数に巻き込まれてフィレンツェの政治の中枢であった外交官の地位を追われて、晩年は、なすこともなく不遇の内に生涯を終えた人物だ。メデチ家不在のフィレンツェ政府に取り入って、上手く外交官として出世したのは良かった。要は、見通しが甘かったのだ。メデチ家が復権してフィレンツェの当主に返り咲こうとは、考えてもいなかったのだ。
外交官をクビになった後もいろいろなツテを頼りに復権を画策するも全て駄目。よもやの晩年。さぞや悔しかったであろう。
本書は、マキアヴェッリの外交官時代とその後の不遇な晩年を上手くコントラストに描いて読者を飽きさせない。「君主論」は、不遇な晩年の時の著作で超有名なものである。他のレビュアーの方々も述べているように、喜劇や悲劇その他の作品もあるのだが、「君主論」以外の作品は一般にはあまりよく知られていない。彼は外交官として駄目なら劇作家として歴史に残りたかったのかなあ?でも権謀術数の大家としていまだに語りつがれているのだから、それをもって良しとしよう。
もちマキアベッリ本人としては不服だろうと思う。塩野七生女史の本作を読めば、マキアヴェッリの本心がよく分かる。とにかく本人の生涯は彼の「君主論」に照らすと明らかに不合格なのだが、意に会することなく、よくぞあそこまで政治の指南が出来るものだ。
さて、「君主論」は、ローマ法王アレクサンドロ6世の庶子、チェーザレ・ボルジアを理想の君主像として著作されているようだ。塩野七生女史には、彼を主人公とした作品もある。興味のある読者は、併読されると良い。「君主論」をより深く理解する上で重要だ。
最後にマキアヴェッリの時代のイタリアは所謂、群雄割拠。並大抵の知力、体力、気力では生きて行けない。日本の戦国史をはるかに凌ぐ複雑さである。この背景を理解すれば、一層面白くマキアヴェッリを堪能出来る。
是非とも挑戦されて、イタリアルネサンスの奥義を極めてもらいたい。
ここまでの拝読、心から深謝したい。ありがとうございました。
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わが友マキアヴェッリフィレンツェ存亡 (塩野七生ルネサンス著作集 7) 単行本 – 2001/10/1
塩野 七生
(著)
- 本の長さ501ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2001/10/1
- ISBN-104106465078
- ISBN-13978-4106465079
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2001/10/1)
- 発売日 : 2001/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 501ページ
- ISBN-10 : 4106465078
- ISBN-13 : 978-4106465079
- Amazon 売れ筋ランキング: - 214,276位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 24位イタリア史
- - 62位個人全集の全集・選書
- - 43,685位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1937年7月7日、東京生れ。
学習院大学文学部哲学科卒業後、イタリアに遊学。1968年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。この年からイタリアに住む。
1982年、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。1983年、菊池寛賞。1992年より、ローマ帝国興亡の歴史を描く「ローマ人の物語」にとりくむ(2006年に完結)。1993年、『ローマ人の物語I』により新潮学芸賞。1999年、司馬遼太郎賞。2002年、イタリア政府より国家功労勲章を授与される。2007年、文化功労者に選ばれる。2008-2009年、『ローマ亡き後の地中海世界』(上・下)を刊行。
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トップレビュー
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2021年1月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本の魅力は、他の方々が書いているとおりです。
ですが電子書籍ならではの魅力として書きます。
冒頭部分でフィレンツェの観光案内が続くんですよ。
紙書籍だと正直これがうっとおしく感じるのですが、
読み上げ機能(kindleFire使用)と、グーグルマップ(PC)を使うと、
めちゃくちゃ楽しいです。
上質の観光案内を聞きながらフィレンツェ観光を楽しめます。
当代有数の歴女を従えてのフィレンツェ観光なんていくらかかるやら。
圧倒的コスパです(⌒∇⌒)
ですが電子書籍ならではの魅力として書きます。
冒頭部分でフィレンツェの観光案内が続くんですよ。
紙書籍だと正直これがうっとおしく感じるのですが、
読み上げ機能(kindleFire使用)と、グーグルマップ(PC)を使うと、
めちゃくちゃ楽しいです。
上質の観光案内を聞きながらフィレンツェ観光を楽しめます。
当代有数の歴女を従えてのフィレンツェ観光なんていくらかかるやら。
圧倒的コスパです(⌒∇⌒)
2006年6月24日に日本でレビュー済み
塩野七生という作家は 自分が女性であることを縦横無尽に使って
いる点では 特筆すべき作家である。好きな男に肩入れしている時の
塩野は 「だって好きだからしょうがないじゃない」と言い切って
いる。これに反論することは難しい。塩野自身が それを分かって
いて そう言っている。これを確信犯と言うのである。
そんな塩野の想い人の一人が マキアヴェッリである。彼は
「君主論」で 日本でもよく知られている。マキアベリズムという言葉
は 日本でも悪い響きを持って言われる。そんな彼の悪評に我慢が
ならないのが 深情けをしてしまっている塩野である。
本書で マキアヴェッリの生涯に親しく触れることが出来た。
そこで描かれる彼は 幾分が滑稽味を帯びた 我々と等身大の男で
ある。塩野は 彼を我々の目線に下げた上で その稀代の現実主義を
説く。
実際 「君主論」を読んで見ると 彼は 科学者の視点で人間を
語っているだけのように思えてしかたない。善悪を超えて 実態を
冷静に叙述する彼は 正しく科学者である。
そんな彼を 愛をこめて塩野七生が描き出す。面白くないわけがない。
いる点では 特筆すべき作家である。好きな男に肩入れしている時の
塩野は 「だって好きだからしょうがないじゃない」と言い切って
いる。これに反論することは難しい。塩野自身が それを分かって
いて そう言っている。これを確信犯と言うのである。
そんな塩野の想い人の一人が マキアヴェッリである。彼は
「君主論」で 日本でもよく知られている。マキアベリズムという言葉
は 日本でも悪い響きを持って言われる。そんな彼の悪評に我慢が
ならないのが 深情けをしてしまっている塩野である。
本書で マキアヴェッリの生涯に親しく触れることが出来た。
そこで描かれる彼は 幾分が滑稽味を帯びた 我々と等身大の男で
ある。塩野は 彼を我々の目線に下げた上で その稀代の現実主義を
説く。
実際 「君主論」を読んで見ると 彼は 科学者の視点で人間を
語っているだけのように思えてしかたない。善悪を超えて 実態を
冷静に叙述する彼は 正しく科学者である。
そんな彼を 愛をこめて塩野七生が描き出す。面白くないわけがない。
2011年12月29日に日本でレビュー済み
『わが友マキアヴェッリ』(塩野七生著、新潮社)の著者は、マキアヴェッリの本質は、仕事が面白くてたまらない有能なノン・キャリアの中間管理職であったというのである。彼が生きたのは、都市国家フィレンツェの国内外でさまざまな勢力が興亡し、合従連衡を繰り返した激動の時代であった。因みに、レオナルド・ダ・ヴィンチは彼より17歳年上、ミケランジェロは彼より6歳年下である。
『わが友マキアヴェッリ』に登場するマキアヴェッリは、肖像画に描かれた気難しそうなマキアヴェッリではなく、私たちの周囲にもいそうな仕事熱心な中間管理職のマキアヴェッリである。常に経費不足に悩みながらも、過密な仕事のスケジュールを前向きにこなしていく姿には、誰もが共感と親近感を覚えてしまうことだろう。やはり、どの時代であろうと、人間にとって一番幸せなことは、自分の能力を最大限に発揮できることなのだ。
『わが友マキアヴェッリ』に登場するマキアヴェッリは、肖像画に描かれた気難しそうなマキアヴェッリではなく、私たちの周囲にもいそうな仕事熱心な中間管理職のマキアヴェッリである。常に経費不足に悩みながらも、過密な仕事のスケジュールを前向きにこなしていく姿には、誰もが共感と親近感を覚えてしまうことだろう。やはり、どの時代であろうと、人間にとって一番幸せなことは、自分の能力を最大限に発揮できることなのだ。
2002年3月20日に日本でレビュー済み
塩野七生と言う人はホントにマキャベリが大好きなんだなあ~と感じる一作。
君主論を読んでみると、この時代に生きた下級外交官が超現実的に世の中を
見ていたフシがありありです。
この本は、マキャベリについての本ですが、題名にもある通り友人である塩野さんの目を通じたマキャベリが描かれています。塩野さんの文体は女性のそれで、少し年季の入ったものを感じます。「~取った刀で~」などと言う言い回しが多く慣れない内は閉口したこともありました。が、今はすっかり板について、ローマだのルネサンスだのを題材にした作品を楽しんでいます。塩野さんはブオトコが好きなのかも知れないと感じさせる作品です。
君主論を読んでみると、この時代に生きた下級外交官が超現実的に世の中を
見ていたフシがありありです。
この本は、マキャベリについての本ですが、題名にもある通り友人である塩野さんの目を通じたマキャベリが描かれています。塩野さんの文体は女性のそれで、少し年季の入ったものを感じます。「~取った刀で~」などと言う言い回しが多く慣れない内は閉口したこともありました。が、今はすっかり板について、ローマだのルネサンスだのを題材にした作品を楽しんでいます。塩野さんはブオトコが好きなのかも知れないと感じさせる作品です。
2006年9月27日に日本でレビュー済み
イタリアの都市国家、なかでもルネサンスの中心となった共和国として、フィレンツェとヴェネツィアの歴史はおさえておきたいところです。後者に関しては同じ作者に「海の都の物語」という大作・好著があり、それがカバーしてくれますが、前者、特にコシモ・メディチが実質的に支配するようになって以降の歴史は、501ページに及ぶ本作がカバーしてくれます。というのは、本書はマキアヴェッリがフィレンツェ共和国の官僚として、そして失脚して以降の本人の言動を中心にすえて彼が活躍した時代を生き生きと描くとともに、その前後の歴史、つまりマキアヴェッリが生まれる前、生まれてから官僚に登用されるまで、そして死後フィレンツェ共和国がトスカーナ大公国になってしまうまでの歴史も簡潔に記してくれているからです。この構成が素晴しい。
マキアヴェッリ本人は有能だが、決して権謀術策の人ではなく、まさに「わが友」と呼びかけたくなる人間味あふれる人物だったことが本書でよくわかります。特に失脚中に、夜書斎で読書、つまり古の人と対話をするときにわざわざ官服を身につけていたという冒頭のエピソードが感動的です。わが国の漢詩に「一穂の青燈万古の心」という読書の醍醐味を集約した名句がありますが、それに通じます。歴史ものの読書を愛する人にとって、このエピソード一つとっても「わが友」と呼びかけたくなる人物にマキアヴェッリが思えてきませんか。
マキアヴェッリ本人は有能だが、決して権謀術策の人ではなく、まさに「わが友」と呼びかけたくなる人間味あふれる人物だったことが本書でよくわかります。特に失脚中に、夜書斎で読書、つまり古の人と対話をするときにわざわざ官服を身につけていたという冒頭のエピソードが感動的です。わが国の漢詩に「一穂の青燈万古の心」という読書の醍醐味を集約した名句がありますが、それに通じます。歴史ものの読書を愛する人にとって、このエピソード一つとっても「わが友」と呼びかけたくなる人物にマキアヴェッリが思えてきませんか。
2015年11月23日に日本でレビュー済み
この本の中公文庫版は長らく買ったことすら忘れていた本です。 書架を整理していて色あせた本に再会して読み始めましたが、読了するのに苦労しました。 根っからの仕事人間で、いわばノンキャリ外交官の人生を、塩野流の文献・書簡から読み解くといったスタイルで話しが進みます。、君主論を失意のうちに書いたような人物ですから、あまりドラスチックなところがなく、ローマ人の物語のハンニバルの記載、五賢帝の記載などを知ってしまった今となっては物足りなさを感じました。
しかし、ルネッサンスから近世に脱皮する時期のイタリアの政治状況と大著の背景を知る上では興味深い本と言えるでしょう。 また、表題に書いた如くの自己評価をしていた本人の生の姿を垣間見て意外な感を待ちました。 塩野流の華々しさ、躍動感を感じさせない、いぶし銀のような作品と思いました。
しかし、ルネッサンスから近世に脱皮する時期のイタリアの政治状況と大著の背景を知る上では興味深い本と言えるでしょう。 また、表題に書いた如くの自己評価をしていた本人の生の姿を垣間見て意外な感を待ちました。 塩野流の華々しさ、躍動感を感じさせない、いぶし銀のような作品と思いました。
2004年10月1日に日本でレビュー済み
マキアヴェッリは、極めて合理的な思考の持ち主で、それを処世術として文
章に表している。塩野女史も彼にほれ込み、彼の解釈本を多く出している。
原典に当たることをお勧めするが、手っ取り早くこの本を読むこともよいか
もしれない。
章に表している。塩野女史も彼にほれ込み、彼の解釈本を多く出している。
原典に当たることをお勧めするが、手っ取り早くこの本を読むこともよいか
もしれない。