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ユートピアと性: オナイダ・コミュニティの複合婚実験 (中公叢書) 単行本 – 1990/7/1
倉塚 平
(著)
- 本の長さ307ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1990/7/1
- ISBN-104120019519
- ISBN-13978-4120019517
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1990/7/1)
- 発売日 : 1990/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 307ページ
- ISBN-10 : 4120019519
- ISBN-13 : 978-4120019517
- Amazon 売れ筋ランキング: - 936,273位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 297位アメリカ・中南米の地理・地域研究
- - 1,804位キリスト教入門
- - 2,289位キリスト教一般関連書籍
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年5月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アメリカでは17世紀から20世紀まで600ものユートピアが出現したとあり驚愕しましたが、よく考えれば現代日本でもヤマギシ会や千石イエスの方舟など長年共同生活をしている集団は多数あり、驚くほどでもないと思いなおしました。本書では共産主義という訳語が使われていますが、ここではコミュナリズムのことであり、マルクスのコミュニズムとは別なので共同主義という訳語の方が相応しいのではないでしょうか。普通の教会では性は生殖のためであり、享楽のためではないとしていますが、オナイダでは性は神から与えられた享楽であるとして、生殖は制限されていてまさに邪教という感じです。接して漏らさずを厳守しなければならず、漏らした人はリーカーと呼ばれて更年期後の女性としか交わらせてもらえなかったとあり、大笑いしてしまいました。教祖の老衰とともにお約束どおり崩壊するわけですが、代替わりすると二代目は全くの合理主義者で大量生産を美徳とする製造会社へと変換して成功し、2005年まで操業を続けたというのには驚きました。
2015年3月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1990年に出版された倉塚平氏(2011年没)の著。今回文庫化され、初めて読ませていただいた。
内容は、「世にも希な」ユートピア実験を行ったオナイダ・コミニティ(1848年〜1879年)についての日本で唯一の(たぶん)研究書兼一般読み物である。
私的感想
●なぜ絶版になっていたのか理由がわからない、ほど面白い本である。面白さの第一は、たぶんオナイダ・コミニティと教祖ノイズのユニークさにあるだろうが、対象が対象(面白すぎる)だけに、これだけ真剣に、適度な距離をおいて、批判共感取り混ぜて書くのは、容易でないように思う。
●オナイダ・コミニティは、教祖ノイズが支配し、成員が服従するという構造の、キリスト教共産主義共同体であるが、特異な性モラル、性生活を実践、強制しながら、31年間、存続維持されたのは驚異である。殺人、傷害、自殺、性病が存続期間中全くなかった。(194頁。完璧な数字かどうかは少し疑問があるが)というのは、さらに驚異である。これが実現できた理由は、入ってくるメンバーを厳選したこと、ノイズのカリスマ性、「霊感」のセンスのよさ(論理的、説得的、一面常識的、相手の利益に配慮する政治性、柔軟性)、心理的支配服従構造を熟知した組織運営(上位の側近管理職メンバーを優遇、メンバー全員にユートピア的労働、娯楽生活を提供、一方では、厳しい相互批判制度で規律を維持。豊かさによる弛緩を防ぐため、ルール等を少しづつ変えていく)にあったと思うが、いわゆる原始的暴力支配(肉体、武器による)でなかったことは評価されるべきだろう。本書を読む限り、体制維持のための暴力装置は持たず、内部処刑(支社送りはあり)も、外部との戦争もなかったようである。
●共同体崩壊過程もたいへんに面白い。激しい対立抗争が行われているが、これをはあくまでも組織内政治抗争であり、武闘ではない。平和裏に共産主義共同体は解体され、有限会社に移行している。複合婚が廃止されると、一夫一妻の結婚ブームが起きるのも面白い。ノイズの子孫によって、会社は食器メーカーの大手に発展し、100年以上アメリカの食卓を飾り、現在も存続している。ノイズの子孫が、セックス共同体の過去を恥じ、貴重な資料を廃棄していく者と、祖先と共同体生活を肯定評価し、史料を発掘、刊行していく者に二分化しているのも面白い。
●オナイダ・コミニティの複合婚はフリー・セックスではなく、きびしいルールのもとに、妊娠をセックスから切り離し、性交をキリストとの一体化の象徴とする趣旨で実施された、不特定複数男女間の性生活である。本書では、その制度を支えるものとして、1.メイル・コンティネンス、2.スペシャル・ラブの禁止、3.年長者優位のアセンディング・フェローシップをあげている
●メイル・コンティネンスは射精禁止性交(接して漏らさず)のことであり、厳格に実施された。射精禁止性交は、日本では、平安時代の「医心方房内編」に古代中国医学書の記述が色々引用されており、別にノイズの専売特許ではないが、中国古代宮廷では、射精はエネルギーの喪失、老化原因として嫌われたのに比して、ノイズは、第一に、女性を妊娠の危険から解放するために、射精を禁止した。
●スペシャル・ラブは特定異性と強く結びつくことであり、排他的愛になって、他の異性とのセックスを嫌がるようになるので禁止された。
●アセンディング・フェローシップは、男性から女性へのセックスの申し込みを仲介人が取り次ぐ制度である。二人以上申し込みが重なった時は年長者に優先権が与えられた(自由競争の排除)。女性は拒否権があったが、後で批判されるので拒否は難しかった。イニシエーションのうち、童貞喪失は年配女性によって行われ、処女喪失はほとんどノイズの専売特許だったようである。
●ノイズは優生生殖実験にも乗り出した。これも大変ユニークで、ノイズの許可が出た場合、2週間に4回だけ同一男性との射精付セックスが許されるというものだった。以下略
私的結論
●今日的にいえば、ノイズは、複合婚制度において、女性を妊娠の危険という性的不自由から解放したが、一人の男を愛するという性的自由を奪った。また、一人の男に縛られるという性的不自由から解放したが、複数の男とセックスしなければならないという性的不自由を与えた。そして、共同体の参加メンバーについては、これらは加入時に同意したといえるが、メンバーが連れてきた子や共同体で生まれた子については、ノイズによる初夜権の行使は問題が多そうだ。
●しかし、ノイズは決して大量殺りくを命じた人でも、内部処刑を繰り返した人でもなく、平和的に、貴重なユートピア実験を行った人である。子孫にも才能のある人が多いようだし、一次史料が破棄されることなく広く公開され、研究の進むことを願いたい。
内容は、「世にも希な」ユートピア実験を行ったオナイダ・コミニティ(1848年〜1879年)についての日本で唯一の(たぶん)研究書兼一般読み物である。
私的感想
●なぜ絶版になっていたのか理由がわからない、ほど面白い本である。面白さの第一は、たぶんオナイダ・コミニティと教祖ノイズのユニークさにあるだろうが、対象が対象(面白すぎる)だけに、これだけ真剣に、適度な距離をおいて、批判共感取り混ぜて書くのは、容易でないように思う。
●オナイダ・コミニティは、教祖ノイズが支配し、成員が服従するという構造の、キリスト教共産主義共同体であるが、特異な性モラル、性生活を実践、強制しながら、31年間、存続維持されたのは驚異である。殺人、傷害、自殺、性病が存続期間中全くなかった。(194頁。完璧な数字かどうかは少し疑問があるが)というのは、さらに驚異である。これが実現できた理由は、入ってくるメンバーを厳選したこと、ノイズのカリスマ性、「霊感」のセンスのよさ(論理的、説得的、一面常識的、相手の利益に配慮する政治性、柔軟性)、心理的支配服従構造を熟知した組織運営(上位の側近管理職メンバーを優遇、メンバー全員にユートピア的労働、娯楽生活を提供、一方では、厳しい相互批判制度で規律を維持。豊かさによる弛緩を防ぐため、ルール等を少しづつ変えていく)にあったと思うが、いわゆる原始的暴力支配(肉体、武器による)でなかったことは評価されるべきだろう。本書を読む限り、体制維持のための暴力装置は持たず、内部処刑(支社送りはあり)も、外部との戦争もなかったようである。
●共同体崩壊過程もたいへんに面白い。激しい対立抗争が行われているが、これをはあくまでも組織内政治抗争であり、武闘ではない。平和裏に共産主義共同体は解体され、有限会社に移行している。複合婚が廃止されると、一夫一妻の結婚ブームが起きるのも面白い。ノイズの子孫によって、会社は食器メーカーの大手に発展し、100年以上アメリカの食卓を飾り、現在も存続している。ノイズの子孫が、セックス共同体の過去を恥じ、貴重な資料を廃棄していく者と、祖先と共同体生活を肯定評価し、史料を発掘、刊行していく者に二分化しているのも面白い。
●オナイダ・コミニティの複合婚はフリー・セックスではなく、きびしいルールのもとに、妊娠をセックスから切り離し、性交をキリストとの一体化の象徴とする趣旨で実施された、不特定複数男女間の性生活である。本書では、その制度を支えるものとして、1.メイル・コンティネンス、2.スペシャル・ラブの禁止、3.年長者優位のアセンディング・フェローシップをあげている
●メイル・コンティネンスは射精禁止性交(接して漏らさず)のことであり、厳格に実施された。射精禁止性交は、日本では、平安時代の「医心方房内編」に古代中国医学書の記述が色々引用されており、別にノイズの専売特許ではないが、中国古代宮廷では、射精はエネルギーの喪失、老化原因として嫌われたのに比して、ノイズは、第一に、女性を妊娠の危険から解放するために、射精を禁止した。
●スペシャル・ラブは特定異性と強く結びつくことであり、排他的愛になって、他の異性とのセックスを嫌がるようになるので禁止された。
●アセンディング・フェローシップは、男性から女性へのセックスの申し込みを仲介人が取り次ぐ制度である。二人以上申し込みが重なった時は年長者に優先権が与えられた(自由競争の排除)。女性は拒否権があったが、後で批判されるので拒否は難しかった。イニシエーションのうち、童貞喪失は年配女性によって行われ、処女喪失はほとんどノイズの専売特許だったようである。
●ノイズは優生生殖実験にも乗り出した。これも大変ユニークで、ノイズの許可が出た場合、2週間に4回だけ同一男性との射精付セックスが許されるというものだった。以下略
私的結論
●今日的にいえば、ノイズは、複合婚制度において、女性を妊娠の危険という性的不自由から解放したが、一人の男を愛するという性的自由を奪った。また、一人の男に縛られるという性的不自由から解放したが、複数の男とセックスしなければならないという性的不自由を与えた。そして、共同体の参加メンバーについては、これらは加入時に同意したといえるが、メンバーが連れてきた子や共同体で生まれた子については、ノイズによる初夜権の行使は問題が多そうだ。
●しかし、ノイズは決して大量殺りくを命じた人でも、内部処刑を繰り返した人でもなく、平和的に、貴重なユートピア実験を行った人である。子孫にも才能のある人が多いようだし、一次史料が破棄されることなく広く公開され、研究の進むことを願いたい。
2016年6月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
文庫になっていたんだ。昔読んで面白かったからまた読もうと思ったら見つからない。買お。
2016年1月17日に日本でレビュー済み
もともと本書は歴史研究の一環として着手されたようだが、おそらく資料の乏しさと
教祖ノイズが唱える神学の幼稚さなどから方向転換し、一般向けに特化したのだろう。
そのおかげで、「歴史家・思想史家としての本格的な洞察をも備えた痛快ノンフィクション」
という稀有な読み物となった。
著者の専門は宗教改革史であり、プラトンやトマス・モアから宗教改革期に出現した様々な
ユートピア思想/運動に至る、巨大な視点からオナイダ・コミュニティを見ている。他方で一般
向けに特化することで、吹っ切れた著者自身のジェンダー・バイアスが丸出しになった仮借
ない毒舌ぶりも発揮されており、一回りして新鮮に感じる。抜群に面白いこと請け合いである。
付言すると、トマス・モアを「理想郷=ユートピア」思想の系譜に位置づけるという著者の理解は
いささか古い。『ユートピア』が単純に「理想郷」を描いたものとは言えないというのが近年の
研究者の共通理解となっているようだ(菊池理夫『ユートピア学の再構築のために』を参照)。
教祖ノイズが唱える神学の幼稚さなどから方向転換し、一般向けに特化したのだろう。
そのおかげで、「歴史家・思想史家としての本格的な洞察をも備えた痛快ノンフィクション」
という稀有な読み物となった。
著者の専門は宗教改革史であり、プラトンやトマス・モアから宗教改革期に出現した様々な
ユートピア思想/運動に至る、巨大な視点からオナイダ・コミュニティを見ている。他方で一般
向けに特化することで、吹っ切れた著者自身のジェンダー・バイアスが丸出しになった仮借
ない毒舌ぶりも発揮されており、一回りして新鮮に感じる。抜群に面白いこと請け合いである。
付言すると、トマス・モアを「理想郷=ユートピア」思想の系譜に位置づけるという著者の理解は
いささか古い。『ユートピア』が単純に「理想郷」を描いたものとは言えないというのが近年の
研究者の共通理解となっているようだ(菊池理夫『ユートピア学の再構築のために』を参照)。
2019年12月3日に日本でレビュー済み
究極のプライベートといえるセックスを、パブリックなものにしようとすればその本質はどうなるか――。この本では十九世紀のアメリカ・オナイダに実際に存在したユートピア共同体(オナイダ・コミュニティ)の盛衰を辿る。この共同体は、宗教共同体であり、家内工業を営む共産主義組織であり、複合婚を実践するスワッピング(?)集団でもあり、優性生殖を実行するカルト集団でもあった。
事実関係を追うだけでお腹いっぱい。オナイダ・コミュニティは職場における男女の完全平等や教育・労働政策などある種、非常に優れていたのではとすら思える箇所もあった。ただやはり全体を通して読むに、無理があったよそりゃそうだ、と感じざるを得ない。コミュニティ崩壊の過程では、組織の永続的な存続やカリスマリーダーの難しさが出たし、万人が万人を同等に愛するなんてのも絵空事だったということでしょうか。
このコミュニティが最終的には株式会社になって近年まで存続していた(複合婚などは勿論ないが)というのが実は一番面白かったかもしれない。
事実関係を追うだけでお腹いっぱい。オナイダ・コミュニティは職場における男女の完全平等や教育・労働政策などある種、非常に優れていたのではとすら思える箇所もあった。ただやはり全体を通して読むに、無理があったよそりゃそうだ、と感じざるを得ない。コミュニティ崩壊の過程では、組織の永続的な存続やカリスマリーダーの難しさが出たし、万人が万人を同等に愛するなんてのも絵空事だったということでしょうか。
このコミュニティが最終的には株式会社になって近年まで存続していた(複合婚などは勿論ないが)というのが実は一番面白かったかもしれない。